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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年03月26日

レスター・ブラウン氏「水で流して、おわり」はもうやめよう(2008.03.26)

森林のこと
 

いま、成田空港です。インドネシアへ(初めて!)行ってきます。バラトン仲間のところでシステム思考のワークショップをおこなったり、農村地帯でのバイオガスプロジェクトの支援をしてくる予定です。また報告記を出しますね。

以下は、レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所の『プランB2.0』からの抜粋のリリース文です。実践翻訳チームが訳してくれましたので、お届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「水で流して、おわり」はもうやめよう

http://www.earthpolicy.org/Books/Seg/PB2ch11_ss5.htm

レスター・R・ブラウン

都市部では、人の排泄物や工場の廃棄物を洗い流すために水を使い捨てるという方法が、現状に合わなくなっている。新しい技術と水の不足がその理由だ。都市部に入った水は、生活排水や産業排水で汚れ、街を汚染して危険にさらす。川や湖、井戸に流された有毒な産業排水は帯水層にも染み込むため、地表の水も地下の水も飲むのは危険になってしまう。

さらに、こうした有毒な排水は、地域の漁場を含む海洋生態系を破壊している。これからの時代は、廃棄物を地域に垂れ流すことなく管理し、水を継続的にリサイクルし、都市と産業の水の需要を大幅に減らすべきなのだ。

現在の排泄物の処理方法は、「大量の水で洗い流し、可能ならば排水を下水処理場で処理して地域の川に流す」という考え方が主流だ。しかし、この「流して、おわり」というシステムは高コストで、大量に水を使い、養分の循環を妨げ、開発途上国では病気の主な原因となっている。

水不足が広がる中、今後水を使う下水システムの継続は難しくなるだろう。このシステムでは、土壌の養分は下水道に流され、通常は川や湖、海に排出されてしまう。このため、農地の養分が失われるだけでなく、流された養分によって富栄養化が進み、多くの川が「死」に追いやられ、200あまりの沿岸海域は、酸素濃度の極端に低い「デッドゾーン」になってしまった。排水を処理しないまま河川や小川に流す下水システムは、病気や死亡の主な原因ともなっている。

インドの科学・環境センターのスニータ・ナラインは、下水処理施設を使う水依存型の処理システムは、インドでは環境的にも経済的にも無理がある、と断言する。ナラインによると、インドの5人家族の場合、人の排泄物は年間250リットルで、それを水洗トイレで流すためには15万リットルの水が必要になる。

現在のインドの下水システムは、実際には「病原体拡散システム」になってしまっている。少量の汚染物質を取り込んでは、人が使えない水を大量に作る……その多くはそのまま近くの河川や小川に垂れ流される。「私たちの川も、子どもたちも死んでしまいます」とナラインは言う。

多くの開発途上国の例に漏れず、インド政府も、水を使う下水道や下水処理施設の全面的な普及をひたすら目指しているが、下水施設の整備が需要に全く追いつけないのが現状だ。しかし、インド政府はこの選択が経済的に実現不可能だとは認めようとしない。「流して、おわり」方式は機能しない、とナラインは結論づけている。

病原体の拡散は、公衆衛生上の深刻な問題だ。下水道設備が不十分で、人々の衛生状態も劣悪なために、世界で年間270万人の命が失われており、この数は、飢えと栄養失調で死亡する590万人に次いで多い。

幸いにも、コンポストトイレという低コストの代替方法がある。これは小型の堆肥設備につなげた、簡単な、水を使わない、無臭のトイレである。食べ残しもこの発酵槽に入れることができる。乾式の堆肥設備を使えば、人間の排泄物は、ほとんど無臭の腐植土となり、体積はもとの10%足らずになる。

こうした堆肥設備は、その構造や大きさにもよるが、年に1回程度、中身を空にする必要がある。業者が定期的に中の腐植土を回収し、それを堆肥として販売することで、養分と有機物が土に戻り、肥料をそれほど使わなくてすむ。

この技術により、住宅での水の使用量が減らせるので、水道代の節約になり、水のくみ上げと浄化に必要なエネルギーも削減できる。さらによいことには、食べ残しをコンポスト設備で処理することで、ゴミの量が減り、下水処理の問題は解決され、養分の循環も復活する。米国の環境保護庁は、使用を承認したコンポストトイレをリストアップしている。こうしたトイレは、スウェーデンが世界に先駆けて開発したもので、現在スウェーデンの集合住宅、米国の個人住宅、中国の村落など、さまざまな条件の場所で使われ、効果を挙げている。

一般家庭においては、シャワーヘッドや水洗トイレ、食器洗浄機や洗濯機、その他の電化製品を節水型のものにすることで、水を節約することができる。節水基準を設け、電化製品にラベル表示をしている国もある。これは、エネルギー効率向上に取り組んだときと同様のことだ。将来、水道料金の値上がりは避けられそうになく、そうなると、コンポストトイレや節水型の家電製品を購入したいと思う人が増えるだろう。

トイレとシャワーという2つの家庭用設備で使う水を合わせると、屋内の水使用の半分以上を占める。従来の水洗トイレは1度の洗浄で約23リットルの水を使っていたが、米国では新式トイレは、法律により最高水量が6リットルに規制されている。ボタンが2つあって洗浄水量を選択できオーストラリア製のトイレは、液状物を流すにはたった3.8リットル、固形物には6リットルの水しか使わない。

また、シャワーヘッドを1分間に約19リットルの水が出るタイプから約9.5リットルのものに変えることで、水の使用量はおよそ半分になる。洗濯機については、欧州で開発された横置きドラム洗濯機の水使用量は、従来の上部投入型洗濯機の40%にも満たない。さらに、この欧州モデルの洗濯機は、省エネ仕様でもあり、世界中で売り出されている。

都市において、水の生産性を上げるために最も効果的な唯一の方法は、総合的な水処理・再利用システムを導入して、同じ水を繰り返し再利用することだ。このシステムでは、循環するたびに数パーセントの水が蒸発で失われるにすぎない。既存の技術を利用すれば、都市に供給される水を総合的に再利用することは十分可能であり、それによって多くの都市で水資源の不足が解消されるだろう。

水の供給量不足とコスト上昇に直面する一部の都市では、水のリサイクルが始まっている。例えば水をマレーシアから購入するシンガポールは、水の再利用を開始し、輸入量を減らしている。いくつかの都市にとっては、水を繰り返して再利用することが、都市存続のカギとなるかもしれないのだ。

都市と同じように水に関した問題に直面している各業界も、水を使って産業廃棄物を洗い流すというやり方を変革しはじめている。廃液の流れを分離して、それぞれ適切な化学薬品と濾過膜で処理し、水を再利用できるようにしている企業もある。

隔年で刊行される『仮邦題:世界の水資源』(The World’s Water)の首席執筆者兼編集者であるピーター・グリックは、「実際、紙・パルプやクリーニング、金属表面処理などの産業では、『ループの閉じた』システムの開発に取りかかっている。このシステムでは、すべての廃水を内部で再利用する。新しい水は、製品に注入したり、蒸発によって失われたりした分を補うために、わずかに必要になるだけだ」と書いている。産業界では都市より速い動きを見せているが、開発されている技術は都市における水の再利用にも利用できるものだ。

現在のような、水によって廃棄物を処理する経済は、持続不可能である。この混み合った地球の上に廃棄物を洗い流すには、家庭や工場や畜舎が多すぎるからだ。それは、エコ精神に欠けた時代遅れの方法だ。もっと人が少なく、経済活動もはるかに少なかった時代のやり方なのだ。

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出典:レスターR.ブラウン著『邦題:プランB2.0―エコ・エコノミーをめざして』
(Plan B 2.0: Rescuing a Planet Under Stress and aCivilization)
第11章「持続可能でウェルビーイングな都市を設計する」(2006年、W.W.ノートン社、ニューヨークより刊行)
www.earthpolicy.org/Books/PB2/index.htmからも入手可能。

さらに詳しい情報は、アースポリシー研究所のウェブサイトを参照www.earthpolicy.org

問い合わせ先:
メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線 12
電子メール:rjk @earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線 14
電子メール:jlarsen @earthpolicy.org

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403Washington, DC 20036
www.earthpolicy.org

(翻訳)
浜崎輝・山口淳子・小林紀子

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

明日はジャカルタ市内の貧困地域に行きます(地元の仲間が連れて行ってくれますので、迷子などご心配なく〜!^^;)。水の問題、エネルギーの問題、保健衛生の問題など、限られた時間ですが、勉強してきます。

では行ってきます〜!

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