この分野で何年も活動をしてきて、「地方自治体こそが日本の温暖化対策をリードする!」との思いを強くしています。
目標ひとつとっても、いまの国レベルの「90年比マイナス6%」という“はじめの一歩”の目標にとどまらず、自治体として思い切った目標を掲げ、その実現に向けてしっかり動き始めているところが出てきています。
2010年という短期目標を見てみると、
静岡市「温室効果ガスを2010年度に90年度比マイナス37%」
名古屋市「温室効果ガスと二酸化炭素を、2010年度に90年度比マイナス10%」
京都市「温室効果ガスを2010年度に90年度比マイナス10%」
大阪市「温室効果ガスを2010年度に90年度比マイナス7%」
堺市「二酸化炭素を2010年度に90年度比マイナス8%」
など。
意欲的な長期目標を掲げている自治体もあります。
柏市「温室効果ガスを2030年度に2000年度比マイナス25%以上」
千代田区「二酸化炭素を2020年度に90年度比マイナス25%」
横浜市「市民1人当たり温室効果ガスを2025年に2004年比マイナス30%以上、
2050年に2004年比マイナス60%以上」
広島市「温室効果ガスを2030年度に90年度比マイナス50%、
2050年度に90年度比マイナス70%」
すばらしいと思いませんか?!
地球が吸収できる二酸化炭素は31億トン/年。現在、化石燃料の燃焼で人類が排出している二酸化炭素は72億トン/年。吸収できる範囲に減らすには、世界全体で60〜70%の削減が必要ですが、横浜市や広島市は、その線に沿った削減目標を立てているのです!
欧米の人々と会うと、「2050年に60%削減」「うちの国は75%削減」と国レベルで目標を掲げている欧米に対して「日本は……6%削減が目標なのです……」と言っていたのですが、「でも自治体はがんばっています!」とちょっとは胸を張ることができるようになりました。
先進的な自治体をいくつか見聞きしていたのですが、「日本の自治体、全体ではどうなっているのだろう? どんな目標を立てて進めようとしているのだろう? 先進的な自治体の例が明らかになったら、『よし、自分のところもがんばろう!』って思ってくれないかな。 住民から『うちもがんばれ!』ってプッシュする力にならないかな」と思いました。
そこで、株式会社 Governance Design Laboratoryの助けを借りて、「地方自治体の温暖化対策目標と政策に関する調査」を実施し、その結果を3月下旬に発表しました。共同通信が配信してくれたので、いくつかの地方紙で取り上げられたり、テレビで紹介されたようです。少しでも「自分のところもがんばろう!」という力になってくれたら、と願っています。
以下、そのときのプレスリリース文を紹介します。レポート自体は、日刊温暖化新聞のサイトからダウンロードできますので、ぜひごらん下さい。
http://daily-ondanka.com/
よかったら、ぜひ地元の自治体にも教えてあげて下さい。がんばっている自治体には、「がんばっていますね!」と声を掛けてあげて下さい。リリース文には詳しく載せられませんでしたが、レポートには、自治体の素敵な取り組み例も載っています。ぜひご参考に。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地球温暖化対策の都道府県ランキングも公表
「地方自治体の温暖化対策目標と政策に関する調査」の結果を発表
平成20年3月24日
有限会社イーズ
株式会社 Governance Design Laboratory
有限会社イーズ(本社:東京都世田谷区、代表取締役:枝廣淳子)と株式会社Governance Design Laboratory(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:石橋直樹)は、本日、「地方自治体の温暖化対策目標と政策に関する調査」の結果を発表しました。
本調査は、WEB掲載情報と都道府県・政令指定都市・県庁所在地へのアンケートをもとに、都道府県の温室効果ガス削減状況ランキングや、目標の厳しさランキング、目標に向けての実効性の高い独自の政策について調査を行ったものです。
温室効果ガス排出量を見ると、90年(基準年)に比べて、日本全体は2006年速報ベースで6.4%増ですが、宮崎県が-37%(主にナイロン製造プロセスからの一酸化二窒素の削減による)、和歌山県が-7%、京都府が-5%と、削減しています(入手可能な最新データを利用したため、年次は都道府県で異なります)。
二酸化炭素の削減ランキングでは、和歌山県(-7%)、京都府(-6%)、茨城県(-2%)、岩手県(0%)、滋賀県(0%)、福岡県(0%)となりました。県民一人当たり、実質県内総生産95年価格百万円当たりで見ても、和歌山県、京都府、茨城県、岩手県、滋賀県、福岡県、岐阜県が、排出抑制の成果を出しています。
今後の削減目標(90年/年度比)では、既に現時点でナイロン製造プロセスからの一酸化二窒素の削減を進めている宮崎県をのぞき、森林吸収分を排除すると、東京都が2020年に-20%、京都府が2010年度に-10%といった厳しい目標を掲げていることが分かりました。
政令指定都市・県庁所在地51自治体の2010年の温室効果ガス削減目標を見ると、90年/年度比で静岡市が-37%、名古屋市、京都市が-10%、大阪市が-7%を掲げています。静岡市は2003年度で-12%、京都市は2004年で-2.6%、大阪市は2004年度で-5%と排出量を減らしており、高い目標設定の効果が出ている可能性があります。
2025年〜2050年の長期の目標を設定し、本格的な脱炭素地域社会を構築する意気込みを見せる市区町村は、柏市(2030年度に温室効果ガスを2000年度比-25%以上)、千代田区(2020年度に二酸化炭素を90年度比-25%)、横浜市(2050年に市民一人当たり温室効果ガスを2004年比-60%以上)、広島市(2050年度に温室効果ガスを90年度比-70%)です。
高い目標を掲げる自治体には、普及啓発やモデル事業にとどまらない実効性の高い政策が見られ、エコポイントなどの省エネに応じて経済的メリットが受けられる仕組みの構築(名古屋市)、大規模排出者に削減計画の提出を義務付けた上で、市民参加型の排出量取引市場の構築を目指す(広島市)など、“排出削減に価値を付ける”ことで新たな市場を創出しています。
本報告書はイーズの主宰する「日刊温暖化新聞」ウェブサイトからダウンロードできます。
http://daily-ondanka.com/
以 上
【お問い合わせ先】
有限会社イーズ 東京都世田谷区船橋1-11-12 産興ビル3F
Tel:03-5426-1128 E-Mail:info@es-inc.jp 担当:飯田
別表1 “90年からどれだけ排出削減したか”ランキング
温室効果ガス増減率 二酸化炭素増減率 県民ひとりあたり 実質県内総生産あたり
二酸化炭素増減率 二酸化炭素増減率
1 宮崎県02 -37% 和歌山県03 -7% 滋賀県02 -11% 岩手県04 -17%
2 和歌山県03 -7% 京都府03 -6% 京都府03 -7% 滋賀県02 -14%
3 京都府03 -5% 茨城県02 -2% 茨城県02 -6% 福岡県05 -14%
4 大阪府06 -3% 岩手県04 0% 福岡県05 -4% 茨城県02 -14%
5 福岡県05 -1% 滋賀県02 0% 和歌山県03 -4% 和歌山県03 -14%
6 岐阜県04 -1% 福岡県05 0% 埼玉県04 -4% 京都府03 -13%
7 兵庫県03 0% 兵庫県03 2% 兵庫県03 -2% 宮崎県02 -12%
8 滋賀県02 0% 岐阜県04 2% 岐阜県04 0% 大分県05 -11%
9 静岡県05 4% 宮崎県02 2% 神奈川県04 0% 佐賀県00 -9%
10 神奈川県04 4% 大阪府06 4% 岩手県04 2% 岐阜県04 -9%
※都道府県名のあとの数字は最新年/年度の年次
別表2 “削減目標の厳しさ”ランキング
90年比%(森林吸収考慮なし) 90年比(森林吸収考慮)
1 宮崎県 -37% 宮崎県 -43%
2 東京都 -20% 島根県 -28%
3 群馬県 -15% 東京都 -20%
4 京都府 -10% 山梨県 -16%
5 徳島県 -10% 京都府 -15%
6 静岡県 -9% 群馬県 -15%
7 大阪府 -9% 静岡県 -12%
8 岡山県 -6% 福井県 -12%
9 兵庫県 -6% 兵庫県 -12%
10 岐阜県 -6% 和歌山県-11%
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本調査について、よくある質問にお答えしておきます。
・報告書は「日刊 温暖化新聞」ウェブサイトより、PDFでダウンロードできます。
http://daily-ondanka.com/
※画面の下までスクロールすると「温暖化REPORT」というアイコンがあるので、そこをクリックすればダウンロードページに飛びます。
・調査方法について
今回の調査は、Web上で公開されている情報をもとに文献調査を行いました。
(調査期間:2008年2月18日〜3月18日)
なお、温暖化対策目標については、こちらで調査した結果を各自治体宛にお送りし、内容をご確認いただいています。返信のなかった場合にはこちらで調査した内容をそのまま公開させていただく旨お断りをしたうえで、報告書に掲載しています。(実績についてはWeb上での情報収集のみ)
・年次について
自治体によって年次が「年」か「年度」かが異なるため、自治体の公表した情報をベースにした今回の調査報告書では「年」と「年度」が混在しています。
・最新データの年次のばらつきについて
自治体によって、公開している最新データが異なるため、データの年次にばらつきがあります。すべての自治体を同じ年次のデータで比較するという方法もありますが、今回の調査では入手可能な最新データを利用しての比較を行いました。
この自治体の温暖化対策目標については、JFSや海外で話す機会などを通じて、世界にも伝えようと思います。
また、自治体の温暖化対策目標の調査・報告は、毎年アップデートしていく予定です。先進的な目標と、それを実現するための方策やしくみが、次々と、競うように出てきますように!
※有限会社イーズは、2017年12月25日に移転いたしました。
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