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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年04月23日

第2回環境モデル都市・低炭素社会づくり分科会(2008.04.22)

温暖化
 

おとといの夜、無事にオマーン出張から帰ってきました。

今日、福田総理の「地球温暖化に関する懇談会」の第3回が開催されました。私が何をお話ししたか、またお伝えしたいと思います。

第2回では、多くの方にご協力をいただいたアンケート調査(最終的に500人近い方々から回答をいただきました!)の結果を総理や委員の方々にお伝えするできました。本当にありがとうございました!

これまでの第1回、第2回の発言録はこちらにあります。また、第2回の資料を見たいという声をいただいており、発言録のリンクから、パワーポイントの資料をみていただけるようにしました。よろしければどうぞ。

第1回: http://daily-ondanka.com/edahiro/2008/20080420_0.html
第2回: http://daily-ondanka.com/edahiro/2008/20080421_0.html

さて、この懇談会には分科会が設置されています。私も、最初に設置された「環境モデル都市・低炭素社会づくり分科会」の委員になっています(親会議にあたる懇談会から数人の委員が分科会に参加することになっています)。

第1回はインドネシア出張と重なって出られなかったのですが、先日開催された第2回の会合に参加した際、どのようなお話をさせていただいたか、お届けしたいと思います。

何度かお話の機会をいただいたので(いちばんしゃべってましたねー、とあとで言われましたが ^^;)、並べて報告します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

枝廣でございます。前回は、ご一緒することができず、申しわけありませんでした。

私自身は、伝える活動をずっとやってきておりまして、翻訳であったり、自分で本を書いたり、講演をしたり、企業のトップと対談したり、いろいろな形で、特に市民とのやりとりをしながら伝えて、それを行動につなげるというあたりでずっと活動してきております。

バックグラウンドとしては、大学、大学院で心理学をやっておりました。ですから、人はなぜ行動を変えるのかということをずっと勉強してきて、今もそれを環境の分野で、いろいろ応用を考えているところです。

用意させていただいたプレゼンテーションに入る前に、今回の分科会に参加させていただくに当たって、思ったことを最初にお話ししたいと思います。

これは、環境モデル都市を10選んで、政府がサポートして進めていくという趣旨だというふうに理解しているんですが、こういうモデル事業の場合、2種類のやり方がきっとあると思っています。

1つは、モデル事業を選んで、お墨つきを与えて、例えば財政的な支援を与えて、それでそれぞれ進めていってもらうもの。もう1つは、この分科会で本当に環境のモデル都市とはどういうものなのだろう、モデルになるような環境都市というのはどういうものなのだろうというのをつくって、それをどこかの自治体で一緒につくっていくというもの。選んでお墨つきを与えるのか、一緒にここがつくっていくのか、それによってアプローチは大分違うと思っています。

その中間的なアプローチもあります。経産省の環境コミュニティビジネスのモデル事業の委員をやらせていただいたことがあったんですが、あのときは、選んだ後、それぞれの委員が担当を決めて、そのモデル事業に2回、3回と足を運んで、しっかり現場を見て向こうの人と話し合いをして、アドバイスをして、よい形でやっていくことを進めました。

ですから、今回の分科会が単に選ぶだけなのか、それとも結果を出すところまで一緒にやっていくのか、もしくは新しい環境モデル都市をつくっていくのか、ちょっと前回参加していなかったので、そのあたりの理解をしたいと思います。

それからそれに関連して、レビューのタイミングとプロセスをどのような形で考えているのか。やりっ放しではなくて、本当にそれが、「こういった形でモデル都市ができた」とか、「それがこういうふうに広がっていくようになっている」とか、そのレビューのタイミングとプロセスについても、もし議論があったのであれば確認したいなと思いました。

自分の話に入りますが、私はずっと、特に市民側の活動をしてきたし、市民の立場からしかお話ができないのですが、このように事務局が用意してくださったマトリックスとちょっと違う形で、自分はもっと一般の感覚で考えています。

三重になっている、3つの円が重なっているようなイメージをしていただければいいと思います。一番真ん中にあるのが「人」だと思います。一人一人の市民、個人がいます。その市民、一人一人の周りにあるもう一つ大きい円というのが、「家」という言葉であらわされるもので、整理してくださった資料の「プライベート・キャピタル」のあたり、住宅のあたりに当たるのかと思います。例えば、その人が何を使って、どういうふうに暮らしをしていくか、どういった空間に住むか、それが2番目の円になります。

それを取り巻く一番大きな円が、私の言葉で言うと、「地域」という言葉になるんですが、それが恐らく「ソーシャル・キャピタル」と言っているところだと思います。何で、どうやって移動するのか、買い物はどうなのか、職場の位置関係はどうなのか、交通のほか、いろいろなインフラがどう整っているか。そして、そのすべてのエネルギーがどうなっているかということだと思います。

私が今回お話をするのは、もしくは私の立場というのは、一番真ん中の「人」のところです。なぜかというと、どんなにすばらしいものをつくっても、人が選んで使わない限り、それは広がらないし、実際の効果を上げることはできません。ですから、実際にどういうものがあるか、どういうすばらしい技術があるかというのと同時に、人がどうやってそれを選んでいくのか、もしくは選ばせるように持っていくのか、そのところが私は大事だと思っています。

「人」というのはもちろん、例えば値札に反応するというふうに、状況や条件に反応するんですが、それだけではなくて、やはり一人一人の思いというのがとても大事だと思います。ですから、環境なり温暖化なりに対して一人一人がどういう思いを持っているか、それによって、行動が違ってくる、選ぶものが違ってくる。それが、実は環境モデル都市が本当によい形でできるかどうかにつながっているのではないかと思います。

私の資料は、とても厚いものにしてしまって恐縮なんですが、これを見ていただければほとんど自明なので、今お話しした環境マインド並びに低炭素ライフスタイル・マインドというあたり、これは真ん中ぐらいにありますが、17というスライド番号のあたりになります。

低炭素ライフスタイル・マインドというのは、自分のカーボンフットプリント、自分がどれぐらい暮らしの中で炭素を出しているかを自覚している。それが、世界全体にどういう影響を与えているかという相対的な影響も理解している。

そして、長期的な時間軸を持って、例えば今がよければよいというのではなくて、長期的にプラスにするために、今どうしたらよいだろうかということを考えられる。

そして、残念ながら、温暖化はこれからもう悪化してしまうので、恐らくあまり見たくないような惨状があちこちで出てくると私は思っています。そういった中でも、絶望しないで、あきらめないで、やはり取組みなり思いを続けられる、そういったマインドを持った市民を育てていかないと、簡単にパニックに陥ったり、絶望してあきらめてしまったり、何も行動しなくなってしまうと、ますます悪循環に入ってしまいます。ですので、どこまでが環境モデル都市の範囲なのかわからないのですが、「人」ということに焦点を当てると、このような人の思いというものがとても大事になってくると思います。

その次のページの19番というところですが、特にこれは親会議に出ていても思うのですが、政府から見たときに国民というと、何か一枚岩、みんな同じように思えているようなところがあって、そうではないだろうと思うんですね。

意識が高くて、もう行動して、言わなくたってやっている人もいるし、いくら言ったってやらない人もいるし、今、私たちが考えないといけないのはこの真ん中で、何となく意識はある、「温暖化に対して関心があるか」と聞くと、96%が「関心がある」というのがこの国ですから、みんなそういう意識はあるけれども、でも、行動につながっていない。

その人たちを、どういうふうに行動につなげていくか。そのためのいろいろな仕組みとか仕掛けを、このモデル都市の中に入れていかないと、どんなにすばらしいオプションが出たとしても、それを選んでいく人がいない限り、やはり実現が難しいだろうと思います。

ということと、あと、一番最後、25というスライドです。これは、どちらかというと出口のところになるかもしれませんが、人々への伝え方というのもとても大事だと思っています。人々の低炭素ライフスタイル、もしくは環境モデル都市というのを、何か辛抱しなければいけない、我慢しなければいけない、縮こまらなければいけないというネガティブなイメージで捉えるのか、それとも私が思っているように、これは実は新しい幸せの形なんだというふうな形で出していくことができるか。

「低炭素」というと、私は、イメージがネガティブな気もするので、「軽炭素」というのはいかがですかと、この間、親会議でも言いました。例えば、軽く食べることを軽食と言いますし、軽く装うことを軽装と言います。

それと同じように、軽やかに生きること、それで地球に対する負荷も減らし、自分も幸せに生きる、そういったライフスタイルが実現できる都市、それがきっと環境モデル都市であろうというふうに思っています。

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今の議論にも重なる部分があるんですが、多分、このマトリックスは、ほとんどの一般の市民にとっては、とても遠い、とても自分が関係しているように思えない、そういったもので、「ああ、また国からこういうものが出たのね」というので終わってしまう気がします。

例えば、低炭素化を図るときに、何をやるときでもそうですけれども、3つのアプローチを同時にやる必要があると思っています。1つは、意識啓発を図る。これは、低炭素化に関していうと、チームマイナス6%等で政府がずっとやってきたことで、この成果はあらわれていて、国民のほとんどは温暖化に関して危機感を持っているという状態にまでなっています。2番目が技術開発。同じように電気を使っていても、例えば消費エネルギー、二酸化炭素が減らせる等、この技術開発も、日本は非常に進んでいます。

でも、なぜそれなのに、日本でなかなか二酸化炭素が減らないのかというと、これは3番目の柱になると思うんですが、やはり仕組みが日本はすごく弱いと思います。

啓発して、とってほしい行動をとりたくなるような仕組み、もしくは普及したい技術を取り入れたくなるような、もしくは取り入れないと損するような仕組み、そういった仕組みをやはり入れ込んでいかないと、技術はあり、いろいろなハードがあっても、やはりそのソフト・アプローチと申しましょうか、それを人々の行動変革につなげていくところが弱いと、とても難しいなと思います。

自治体でも、熱い思いの担当者がいる間はすごく頑張って進むんだけれども、担当者が二、三年たって異動すると、止まってしまうということがよくございます。ですから、環境モデル都市、多分、応募される方は熱い方だと思うんですが、その人がたとえいなくなっても動き続けるような仕組みをどれぐらい提案の中に入れ込んでいるかということ、これはモデル都市の成否にもかかわると思っています。

例えば、ソフト・アプローチと言ってもいいですし、ソーシャル・イノベーションと私はよく言っているんですが、具体的に人々の行動を変えるためのインセンティブ、これがこのマトリックスでいうと、座長が出されている「可視化」ということになっています。

「見える化」は、本当に大事なんですが、これは本当に第一歩でありまして、では、それがわかった後、どうするか。やはり、その行動をとりたいと思わせるような、これは主に経済的手法、例えば炭素に価格をつけるということになってくると思います。

これは例えば、なぜソーラー発電が日本はドイツに抜かれたかというのも、この仕組みのところの問題でありますし、自治体を見ていても、今、例えば名古屋市のようにエコポイントをつけて人々の行動を変え始めているところ、それから東京都や広島市が考えているように、例えば排出量取引の仕組みを入れて、人々の行動を変えようとしている。

もしくは、固定買い取り価格についても、幾つかの自治体が独自のものを入れて、ですから、日本の中でもソーラー発電が広がっている地域と広がっていない地域がある。これは、やはりその仕組みをつくっているかどうかだと思うんですね。

ですので、繰り返しになって恐縮ですが、このモデル都市を進める上では、どのようなハードやいろいろな技術があるかということだけではなくて、それを本当に形にしていく仕組みがどれぐらいあるか、それが本当に人々の行動を変えていくような広がりを持ったものなのか、それだけのインセンティブを、ちゃんとこのモデル都市の中で入れ込んでつくっていくことができるか、それは強調してもし切れないほど大事だと思っていますので、一言申し上げました。

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ちょっと違った観点からの提案なんですが、これは環境モデル都市をつくろうというプロジェクトですよね。そこには、箱があるだけではなく、技術があるだけではなく、そこに住まう人がいるわけですよね。ですから、そこに住みたいと思うような都市のイメージを、やはり最初に持っておきたいなと思うんですね。

例えば、提案ですけれども、この分科会自体、原則として公開でやっていますし、この議論にいろいろな人が参加してくれるといいなと思うんですね。なので、例えば「2030年の私の一日」みたいな感じで、そのとき自分はどういうふうな場所でどういう暮らしをしているのか、それは恐らく衣食住、それから働く、遊ぶ、いろいろな側面で、全くのイマジネーションですけれども、そういった自分の住みたい暮らしというのを、いろいろなところから公募というか、集められないかなと思います。

その中で、例えば、国民はここまではやる覚悟があるということも、きっとわかってくる。それを実現するためには、今、何が必要かもわかってくる。技術的な面も、制度的な面もそうですし、それと同時に、ほかの方からも出ているように、それを実現するために必ずコストが伴いますから、そのコストをちゃんと国民にもわかってもらうようにしていく必要があります。

ここの分科会では、恐らくその実現したい2030年なり2050年の都市での暮らしをどのような形で実現できるか、それは、技術的、制度的、様々な面を含めてですね、どこを目指しているかのお話を、もう少したくさんの人とクリアになるような形でできるプロセスが、入ればいいなと思いました。

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今回の環境モデル都市で、どれぐらいこれが反映できるかというのは難しいかなと思いつつ、とても大事な点を、今、桝本委員(東京電力顧問)からご指摘があったので、一言述べたいと思います。

例えば、私たちが本当に低炭素化を目指すとしたら、私たちはどれぐらいの質のものを必要としているのだろうというところの問い直しから始めないといけないと思うんですね。

電力会社としては、常に最高品質の電気を、途絶えることなく提供しなくてはならないという提供義務があるのはよくわかっています。ですから、今の枠組みの中で何かをやろうとしたときに、やはり非常に高いものになってしまう。それは、そのとおりだと思うんです。

では、一般の人たちが暮らしの中で、常に最高品質の電力が必要かというと、きっとそうではない。ですから、今回できるかどうかは別として、そのあたりの必要な品質に対する基準や期待値を緩めるような働きかけも、そのうち必要になってくると思います。

例えば、電力でいうと、「松竹梅がありますよ。絶対落ちては困るパソコンの電気は、松を使ってください。そのかわり高いですよ」と。例えば、冷蔵庫とかクーラーは、時々とまっても、実はあまり関係ないわけで、それだったら「竹で、安い電気でよいのではないですか」と。

そうすれば、例えば自然エネルギーの電気を、そのまま系統せずに使うこともできるかもしれない。たとえば、昔は何でも水は上水でしたけれども、今は例えば「水まきやトイレの水は中水でいいよね」というふうになってきたように、本当に必要なものを、必要な質で、必要な量で使うような、多分、これが低炭素化には欠かせないと思っています。

ですから、今の枠組みだと、何をやっても高くなる。それは、今のルールがそうだからですよね。なので、今回の枠組みの中でも、何らかルールなり期待値なりを緩めるような試みができるモデル都市が1つでもあると、とてもよいモデルになるのではないかと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あ、やっぱりいっぱいしゃべっていますね。(^^;

> 「2030年の私の一日」みたいな感じで、そのとき自分はどういうふうな場所
> でどういう暮らしをしているのか、それは恐らく衣食住、それから働く、遊ぶ、
> いろいろな側面で、全くのイマジネーションですけれども、そういった自分の住
> みたい暮らしというのを、いろいろなところから公募というか、集められないか
> なと思います。

これ、いくつかでも、次回の会合に出せないかな〜、と思っています。自分でも作りますが、もしよかったら、みなさんの「○○○○年の私の一日」という、まったくのイマジネーションの作文、寄せて下さいませんか? 

こんなところに住んで、こんな暮らしで、仕事と遊びはこうなっていて、、、などと、「低炭素社会って、こんな暮らしになるんじゃないかな?」「こんな低炭素型の町に住んでみたい」とでっかい夢を描いて、共有して下さいませんか?

次回の会合までに、このメールニュースへの返信でお送りいただければうれしいです。

次回会合は5月14日。こちらの分科会は公開なので、傍聴ができます。事前登録制ですので、ご興味のある方はこちらをどうぞ!
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai03kankyo/03syousai.html

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