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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年07月07日

「気候問題の打開へ向けて〜低炭素未来への道」よりエグゼクティブ・サマリー前半 (2008.07.07)

温暖化
 

トニー・ブレア氏とクライメート・グループがG8サミットのために出した報告書「気候問題の打開へ向けて〜低炭素未来への道」より、エグゼクティブ・サマリー(大事な部分の要約)の前半をお届けします。

問題の認識とともに、

「すでにある技術と実用化が近い技術とで,今後の20年間で必要な削減の約70%を達成できます」

「さまざまな予測で排出量削減が経済に影響を与えると示されていますが,IPCCもスターンレビューも,この影響は比較的小さい――たとえば,最近の石油価格高騰と比べてずっと小さい――としています」

「新しい低炭素経済への移行の中で大きな投資がなされ,雇用とビジネスチャンスが生まれるでしょう。たとえば,今日,再生可能エネルギー分野で200 万人以上が雇用されており,新しい環境技術に対する投資は1998年から2007 年のあいだに100 億ドルから660 億ドルに増加しています」

「酸性雨やフロンガスといった過去の環境問題に関する経験からすれば,コストは誇張されることが多いものです。どちらのケースでも,実際のコストは当初見積もり額の1/3 以下でした」

など明るい気持ちになれる部分もあります。しかしやはり

「先延ばしすればするほど,削減にかかる費用は大きくなり,経済改革はより痛みを伴う急激なものとなり,適応にかけなければならない時間や費用も大きくなるでしょう。最近のアメリカのレポートによれば,排出量削減の開始を2010年から2020年に遅らせた場合,必要となる年間削減量はほぼ2倍になります」

「中国,インド,その他の開発途上国は,大規模なエネルギー投資の多くを今後の10年間に行います。この電力インフラをできるだけエネルギー効率のよいものにするための時間は少ししかありません。これを後で達成するには,はるかに多くの費用が必要となります」

ということで、「一刻も早く!」と気が引き締まります。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

エグゼクティブ・サマリー

A. 課題は途方もなく大きい

今では,気候変動とその結末については,反論を許さない証拠があります。不確かなところも残ってはいますが,元に戻すことのできない悪影響の危険性が高いことは明らかです。

-2007 年11 月,「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」に100 を超える国々から参加した2500 人以上の科学者たちが出した結論は,「気候システムの温暖化は間違いなく発生しており」,人間の活動がその原因である「可能性が非常に高い」というものでした。

-最近の研究では,気温上昇を2℃程度に抑える必要があるとされています。温暖化がこのレベル以上に進めば,元に戻せないほどの壊滅的な気候変動が起こる危険性が大きいことが示唆されています。

-2005 年、大気中の二酸化炭素換算(CO2e:温室効果ガスの基準)濃度は455 百万分体積率(ppmv)の二酸化炭素と同等の濃度レベルでした。煙露質の影響を考慮すると、実質濃度は375 百万分体積率(ppmv)でした。

-温暖化による気温上昇を約2℃に抑えるための目途をある程度立てるには,最高475 から500ppmv 程度までに濃度上昇を食い止めてから(煙露質含む)減少に転じさせ,23 世紀までに400 から450ppmv で安定させる必要があります。

-こうしたCO2e 濃度抑制の道のりを実現するには,2020 年までに世界の年間排出量の増加を食い止め,2050 年までに世界の年間排出量を(京都議定書の基準年である)1990 年の水準から少なくとも半減する必要があるというのが,科学的な大方の見方です。しかし,世界の排出量増加を2020 年までに食い止めるには先進国による迅速で大規模な排出量削減が必要ですが,今日,それが出来るかは疑わしい状況です。

-1990 年,世界で排出されたCO2e は約400 億トンでした。今日では,この数字は550 億トンと推定されます。行動を起こさなければ,2030 年までに600 億トン,2050 年までに850 億トンにまで増えるでしょう。増やさずに半減させるためには,2050 年までに200 億トン以下にまで抑える必要があります。

-世界の人口が予想どおり90 億人にまで増えるとすれば,2050 年までに年間一人あたりの平均CO2e を約2 トンに抑えなければならないということになります。今日の世界平均は8 トンで,アメリカでは20 トン以上,ヨーロッパと日本で10 トン,中国で6 トン,インドで2 トンです。

-これらすべてから,世界経済が大きく変わる可能性があるということがわかります。炭素をこの水準にまで減らしながら現在の経済成長水準を維持するには,炭素生産性(炭素1 トンあたりのGDP)を今後の40 年間で10 倍に増やす必要があります。行動面と技術面で大きな変化を起こさなければ,これを実現することはできないでしょう。

B. この課題は達成可能である

-すでにある技術と実用化が近い技術とで,今後の20 年間で必要な削減の約70%を達成できます。

-エネルギー効率を高めるだけで,エネルギー需要を20〜24%減らし,年間数千億ドルの費用を削減することができます。

-風力や原子力などの低炭素エネルギー源が今日すでに大規模に活用されており,拡大することも可能です。

-サトウキビを原料としたバイオ燃料や次世代リグノセルロース系バイオ燃料は,ほかの比較的持続可能性の低いバイオ燃料と比べると,食糧や土地利用に対する影響をはるかに減らししながら,輸送分野に大きな可能性をもたらします。

-導入間近の新しい技術もあります。炭素回収・貯留(CCS)や新輸送燃料,太陽光,エネルギー使用を監視するための情報技術の活用などで,これらはすべて,排出量大幅削減の可能性を開いてくれます。

-世界の天然の二酸化炭素吸収源,すなわち森林を保護することも大変有効です。現在,CO2e 排出量の15〜20%が森林破壊によるものです。

C. 経済に悪影響を与えずに課題を達成できる

-さまざまな予測で排出量削減が経済に影響を与えると示されていますが,IPCC もスターンレビューも,この影響は比較的小さい――たとえば,最近の石油価格高騰と比べてずっと小さい――としています。

-費用は民間部門と政府借入金によって長期的にまかなわれることになりそうで,通常の資本交換サイクルと比べればそう大きな額ではありません。したがって,ある年度のGDP 成長に対する実際の影響は非常に小さくなり,プラスとなることもありそうです。

-新しい低炭素経済への移行の中で大きな投資がなされ,雇用とビジネスチャンスが生まれるでしょう。たとえば,今日,再生可能エネルギー分野で200 万人以上が雇用されており,新しい環境技術に対する投資は1998年から2007 年のあいだに100 億ドルから660 億ドルに増加しています。

-貿易は微妙な問題となりますが,貿易の流れに対する影響はそう大きくならないことを示す証拠があります。

-酸性雨やフロンガスといった過去の環境問題に関する経験からすれば,コストは誇張されることが多いものです。どちらのケースでも,実際のコストは当初見積もり額の1/3 以下でした。

D. 気候変動への取り組みがエネルギー安全保障につながる

エネルギーの効率化,再生可能エネルギー,バイオ燃料,原子力といった,可能性のある削減対策の約半数は,エネルギー安全保障を高めるのに役立ちます。そのほかの緩和対策も,大部分はエネルギー安全保障に対してなんら影響を与えるものではありません。また、潜在緩和はエネルギー安全保障に対して3%以下です。

-ただし,気候に配慮しないでエネルギー安全保障を追求すれば,特に石炭の使用を増やしたり,タールサンドのようなエネルギー集約型資源の使用を増やしたりすれば,気候に対して悪影響を及ぼすことになります。

ーしかし,気候とエネルギー安全保障の両方を追求すれば,エネルギー供給ははるかに多様化し,エネルギーの現地生産の範囲が広がり,輸入された石油やガスへの依存が減るでしょう。

-気候とエネルギー安全保障の問題に取り組まなければ,将来,気候の影響と資源不足によって対立が起こる危険性が高まります。

E. 変化を起こすことに選択の余地はなく,必ず行わなければならない

-気候変動はすでに起こっており,たとえ強力な処置を講じたとしても,今後も起こり続けるでしょう。

-沿岸地域に住む10 億人を超える人々が洪水の危険にさらされており,徹底的な処置を講じたとしても,影響を避けることはできません。

-干ばつ,農業形態の変化,暴風雨の激化,病気の蔓延といった影響が起こり,特にもっとも貧しくてもっとも弱い人たちのため,これらに対する対策を講じる必要があります。

-地域の保険システムと世界的な再保険システムによる効果的な安全策を提供するため,保険が大きな問題となるでしょう。低所得の家庭向けに新しい形態のマイクロ・インシュランス(小規模保険)が必要となるでしょう。

F. 先延ばしは危険で費用もかさむ

-気候変動の危険に対する科学的な見地からの憂慮は,時間の経過とともに減るどころか,増える一方です。

-先延ばしすればするほど,削減にかかる費用は大きくなり,経済改革はより痛みを伴う急激なものとなり,適応にかけなければならない時間や費用も大きくなるでしょう。最近のアメリカのレポートによれば,排出量削減の開始を2010 年から2020 年に遅らせた場合,必要となる年間削減量はほぼ2 倍になります。

-中国,インド,その他の開発途上国は,大規模なエネルギー投資の多くを今後の10 年間に行います。この電力インフラをできるだけエネルギー効率のよいものにするための時間は少ししかありません。これを後で達成するには,はるかに多くの費用が必要となります。

-森林破壊を食い止めなければなりません。さもなければ,二酸化炭素吸収源の破壊が進んで元に戻せなくなり,もっと費用のかかる対策をほかで講じなければならなくなります。

上記のことを考えれば,気候変動に関する国際的な取り決めが不可欠です。こうした取り決めがなければ,それぞれの国で行動を起こすことはできても,先進国と開発途上国の両方での変化のプロセスを促進する枠組みの中で協調して行動を起こした場合と比べ,累積効果はずっと小さくなります。

国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)のもとで2007 年12 月に合意されたバリ行動計画は,2009 年12 月にコペンハーゲンで行われる京都議定書後の話し合いに対する全体的な方向性を示しています。本レポートの目的は,世界的な取り決めに含まれるべき中心的な要素や,それらに対する理解を広げ深めるために必要な研究,そしてそれらを相互に関連付ける方法を示すことです。今後,2009 年G8 のためのレポートで,これらの要素をどのようにして首尾一貫した取り決めにまとめることができるのかを示していくことになります。

世界的な取り決めの中心となる10の基本要素を特定しました。

(以下略)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

10の基本要素配下の通りです。それぞれに解説と今後の課題が挙げられています。

1. 全体目標
2. 中間目標
3. 先進国の責任と炭素市場
4. 開発途上国世界の分担
5. 部門別対策
6. 資金調達
7. 技術
8. 森林
9. 適応
10. 取り組みの組織と仕組み

報告書の全文はこちらにありますので、詳しくはこちらをどうぞ。
http://www.theclimategroup.org/assets/resources/BTCDJune08Report.Japanese.pdf


今日は久しぶりに1日に3本配信してしまいました。
(今日はもうやめますので、ご安心を!)

洞爺湖サミット記念大売り出し、ということで〜。(^^;

 

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