講談社の「モウラ」というサイトの「エコログ」という環境プラットフォームで、「世界のエコイストたち」という連載をさせてもらっています。
第1回のセヴァン・スズキさんにつづき、第2回のレスター・ブラウン氏へのインタビューの前半がアップされました。(写真もなかなか素敵です〜!)
http://moura.jp/ecologue/ecoist/index.html
ちょうど先ほどのメールニュースと重なる部分ですので、その一部をご紹介します。私が前から不思議でしかたなかったことも聞いています。
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(前略)
枝廣
以前からレスターさんは、原油価格がある一定の価格を超えると、穀物からバイオ燃料を作ることが採算性をもつようになるだろうとおっしゃっていました。今となって世界各国の指導者が、バイオ燃料の問題について議論するために食糧サミットで集まっているのを見て、「ほら、前から言っていたでしょう?」と言い
たくなりませんか? ほかにそのような予測で警告する人はいなかったのに、レスターさんはなぜ、この全体像をつかむことができたのですか?
レスター
そうそう、取材にきた『フィナンシャル・タイムズ』の記者に、「ほかの人たちより2〜3年前に、こうなることを予測していたのですね」といわれたことがあります。そこで、私は『ワールドウォッチ・ペーパー』が入っている棚へ行って、1980年3月号を取りだし、「食糧か、燃料か?:世界の耕作地の新しい競合」というタイトルで書いた記事を見せました。こんな記事があったことさえ誰も知らなかったのですから、私はかなり先を行っていたということになるのでしょうね。
石油は再生可能なエネルギー源ではありませんし、世界の石油需要は増加の一途をたどるばかりで、最終的にはピークオイル(注3)に直面するだろうということは、私にとっては明らかでした。地質学者のなかには、すでにピークオイルに達したと考える人もいます。
枝廣
去年、システム思考の第一人者であるデニス・メドウズさん(注4)が来日したとき、彼は、ほかの人たちがなぜわからないのか不思議だと言っていました。彼にとっては一目瞭然なのです。でも、多くの人たちにとって、そうではありません。
レスター
デニスや私から見ると、世界は専門家で溢れているのですね。それぞれがパズルのひとつひとつのピースについて非常によく知っています。しかし、少しうしろに下がって、あらゆるものがどのように収まっているか、ある場所で変化したことが、違うところでどのような変化をもたらすか、大局的に見ることができる人が少ないのです。
これが私たちの社会のシステムの弱点です。複雑性が増すにつれて、学術分野はより細分化されます。政府も同じで、各省庁がそれぞれの抱える問題にとり組んでいます。
大局的見地から物事を考えるのはトップにいる人たちだけですが、彼らは忙しすぎて時間がありません。つまり、私たちのシステムには、政策決定において、本質的な構造上の欠陥があるのです。理にかなった決定を下すためには、多くの分野にわたる情報と知識をまとめる必要があります。しかし、何もかもが細分化されていて、情報がまとまらないまま、トップに届けられます。そのトップである国会議員や州知事は、忙しすぎて情報を分析して大局を見る時間などないのです。
枝廣
そうなると、世界はレスターさんやデニスさんのような人たちに頼るしかないわけですね。レスターさんはどうして、大局的見地から物事をとらえられるようになったのでしょうか?
レスター
私の場合は、実際に農業に携わった経験が大きかったのだと思います。農民は、土壌から天候、市場、植物の病気、経済まで、異なる分野にまたがって考えなくてはなりません。長年、農業をしてきた私にとって、こうした大きな枠組みで考えることは、第二の天性といえます。
そして、知的興味と好奇心がもうひとつの理由かもしれませんね。1959年に、米国農務省の海外農業局に入った当時......(つづきはサイトでどうぞ!)
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最後の私のメッセージを紹介します。
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枝廣
みんなが、特に政治指導者が、そうしたシステム的な見方を持ってほしいと思います。私たちはつい、"出来事"レベルで反応してしまいます。やれガソリンの値段が上がった、だから安いガソリンスタンドを探そうとか、政府に文句をいおうとか。
でも、どうして、いまガソリンの値段が上がり続けるという"パターン"が生まれているのか、つまり、そのパターンを生み出している"構造"は何か、を見抜かないかぎり、いつまでたっても、出来事に翻弄されつづけてしまいます。
個人の生活でもそうですが、国がそのように出来事に翻弄されるようでは困ってしまいます。出来事の奥底にある構造とその構造の変化を見抜く力――システム思考と呼びますが――を、私たちひとりひとりが、そして、政治家や企業の経営層などのリーダーたちがもつことが、これまで以上に重要な時代になってきていると思うのです。
⇒後編は8月7日アップの予定です。レスター・R・ブラウンさんがなぜ、異なる分野の知識や情報を統合できるのか、その背景には青年時代のトマト農場経営があったことや、人材の条件、今後の最重要課題である食糧問題などについて聞きました。
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ちょうど企業でのシステム思考研修(3日間)を終えたところです。いつもの仕事や生活では、目の前のことをいかに早くこなすかと、どちらかというと「反射的な対応」が多くなってしまいますよね。ですから、よほど意識したり、そのためのトレーニングをしたりしないと、「物事のつながりをたどって全体像を見抜
く」思考方法はとれないものです。でもそれが大事だし、ますます大事になってきます。個人にとってもそうですし、企業にとってはさらにそうでしょう。
システム思考についてもっと知りたいというご質問をよくいただくので、参考書や参考サイト、ワークショップなどをまとめておきますね。
●『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか? ―小さな力で大きく動かす! システム思考の上手な使い方』
システム思考の基本的な考え方から、基礎的ツールの紹介と練習、個人やグループ、組織のさまざまな事例を紹介し、「学習する組織」での展開例もあります。どこにも見られる構造の基本パターンである「システム原型」の紹介や、システムの構造を「小さな力で大きく動かせる介入点」である「レバレッジ・ポイント」についての手引きなど、参考になると思います。
●チェンジ・エージェントのサイト
http://change-agent.jp/index.html
いろいろな情報やリソースがあります。メルマガも出していますので、システム思考や学習する組織にご興味がある方、ぜひご登録下さい。
システム思考とは?
http://www.change-agent.jp/systemsthinking/index.html
システム思考についてよく寄せられる質問
http://www.change-agent.jp/faq/index.html
●システム思考トレーニングコース
やはり体験してこそ「腑に落ちる」ものが多いですから、ぜひ受講してみてください。今後開催されるコースの一覧です。秋には名古屋でも開催します。
http://change-agent.jp/news/000153.html
●一般の方向けのシステム思考の入門セミナーとワークショップ
ビジネスに限らず、自分の思考の幅を広げたい、自分の成長や自分らしく生きるために自分の考え方や物の見方をしなやかに豊かにしていきたい、という方へ。次回は9月7日(東京)です。
※トレーニングコースやセミナー・ワークショップは、最低催行人数が集まれば、おうかがいして開催することができます。地方から何人か東京に出てくるより、東京から私たち講師を呼んだ方が経済的に多くの方に受講していただける場合も多いと思いますので、ぜひご相談下さい。info@change-agent.jp
では、レスターへのインタビュー、後半もどうぞお楽しみに!