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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年07月25日

apbank fes2008トークセッション「温暖化を伝えること」発言録(2008.07.25)

温暖化
 

7月19〜21日、apbank fes が開催されました。私も参加してきました。
http://www.apbank-ecoreso.jp/

とっても楽しかったです。3日目の午前中、「温暖化を伝えること」というテーマのトークセッションに出ました。トークセッションでは、王理恵さんをコーディネータに、サンゴ礁を守る活動をなさっている田中律子さんとの3人のトークに、リハーサル前に駆けつけてくれた小林武史さんも飛び入りで参加して、楽しい時
間でした。

そこでの私のおしゃべりの一部をお届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

皆さん、こんにちは。私は、皆さんが知ってくださっているので言うと、アル・ゴアさんが書かれた『不都合な真実』の翻訳をしたり、それから自分でも本を書いたり、講演をしたり、まさに今日のテーマの「温暖化を伝えること」という活動を、いろんな形でやっています。

去年もap bank fesにおじゃまして、今年も、昨日のイベント会場でずっと聴いていて思ったんですけど、ほんとにみんなが楽しんでいるし、あったかい雰囲気で、いま小林さんがおっしゃったように、ここへ来ることでつながっている、そのことの気持ちよさを、みんなで共有している。

何か、「環境」とか言うと、眉間にしわ寄せて「ねばならない」という感じにすぐなっちゃうけど、何かそこにいることが気持ちいいとか、自分がそこに参加することが、自分の楽しみや幸せだという、そういう新しい、もっと心地良い参加の仕方をap bankは、fesも含めてつくってくれている。

その中で、さっき話に出た「つなぐこと」というのがキーワードですよね。田中さんの活動ももちろん、サンゴを移植してつなぐことをやっていらっしゃる。apbankそのものも、お金という「つなぎ」を通じて、これまでつながっていなかったものをつなげていくし、このfes全体も、これだけの人がいろんな形でつながっているって、面白いなと思います。

いまの田中さんの「地球は入れ物」というのはすごくわかりやすいお話ですよね。これまで、地球はすごく大きいから、私たち人間が何したって、地球を変えることなんかあり得ないと、みんな思っていました。でも、やっぱり、これだけ技術力が大きくなってくると、私たちがちょっとやることによって、実は地球はすでに、たとえばサンゴ礁を含めて変わり始めている。

そのときに、やっぱり自分たちは地球っていう入れ物の中でしか生きられない、それを超えては生きられないということに、ようやく気がつかざるを得なくなってきた。そういう意味で言うと、これは、人類の次の進化への大きなチャンスではないかと、私は思っているんです。

地球って、すごく微妙なバランスで、いまの姿を維持しているんですね。たとえば、昨日と今日と温度を比べたら何度か違うというのは当たり前だけど、地球全体の気温で見ると、やっぱりずっと安定しているんですね。

たとえば、すべてのものが凍っていた氷河期ってありますよね。氷河期といまの温度って、6℃しか違わないそうなんですね。すごく違うと思うでしょ。6℃平均の温度が変わると、そんなに状況が変わっちゃいます。すごく微妙なバランスで地球は生きている。

いま、温暖化が進んでいます。2℃上がっただけでもかなり地球がまずい状況になると言われています。その中で実際に、もう0.7℃上がっているんですね。だから2℃上がると大きな影響が出てくるというのに、その3分の1、0.7℃も上がっていて、このままいくと4℃上がるとか6℃上がるといわれています。なので、このままだとかなりまずい状況にあるというのは間違いないですね。

異常気象というのは、たまにしか起こらないから異常気象ですけど、いま、毎年のように、「今年も異常気象です」みたいに言われている。ある年の温度が上がるのは、温暖化だけではなくて、いろんなほかの要因もありますが、でも全体として上がりつつあるのは間違いなく、これは温暖化の影響でしょう。

温度が上がるだけじゃなくて、たとえばサンゴ礁が死滅するとか、海水面が上がってきて砂浜がなくなるとか、農作物が採れなくなるとか、熱帯にしかない病気、たとえばマラリアが日本にも入ってくるとか、いろんな被害が出るということが言われていますね。

温暖化って、二酸化炭素が大きな原因です。二酸化炭素が増えれば増えるほど温暖化が進むんですが、地球にはもともと、さっきのサンゴ礁もそうだし、山や森もそうですけど、二酸化炭素を吸収する力があります。なので、自然が吸収できる範囲の中で二酸化炭素を出していれば、温暖化は起きませんよね。でもいま、自然が吸収できる量を超えて、私たちが二酸化炭素を出している。それが温暖化の問題のいちばん本質だと思っています。

ちょっと数字を挙げると、地球が自然に吸収できる二酸化炭素は、1年間に31億トンといわれています。いま私たち人間が出している二酸化炭素は、毎年72億トンです。だから、それがどんどんたまってしまっているという。

だから、「温暖化、解決するにはどうしたらいいんですか」と言われたら簡単で、人間が出す二酸化炭素の量を31億トン以下にすればいいんです。半分以下です。

そのために必要なことが2つあります。二酸化炭素って、多くの場合、エネルギーを使うと出るんですね。たとえば、私たちの生活で言うと、電気・ガス・ガソリン。なので、電気・ガス・ガソリンを減らしましょう、ということです。

たとえば、毎日、車で買い物に行っていたけど、それを2日いっぺんの買いだめにするとか、晴れた日は自転車で行くとか、そんなふうにすると減らせますよね。いらない電気を消すとか。

減らしつつ、もうひとつ大事なのが、何でエネルギーをつくっているかというのを替えていくことですね。たとえば同じ電気を使っても、ap bankでやっているような風力発電の電気なのか、それとも石油を燃やしている火力発電の電気なのか。それで出す二酸化炭素の量は全然違うんです。何十倍も違います。

なので、自分が使っている電気などのエネルギーの量を減らしつつ、電気をできるだけグリーン電力にしていく。そうやって風力とかソーラーとか、そういう電気に、日本全体として切り替えていけばいいんです。使う量を半分にして、電気を自然エネルギーに替えれば、私たちの家庭から出す量は、少なくても4分の1とか5分の1に減らせます。

日本ではまだ、電気を選べないんですね。たとえばヨーロッパとかアメリカでは、「うちは風力発電の電気が欲しいワ」とか、選べるんです。でも、いま日本では、たとえば東京だったら東京電力の電気だし、東京電力がどのような燃料で発電するかは、東京電力が決めるわけですね。

私たちができるのは、自分でできる範囲でグリーン電力を使うこと。たとえば、ここでも売っていると思いますが、ケータイのストラップでソーラー発電がついているものがあるんですね。ストラップで発電してケータイに充電ができるんです。それとか、このapbank fes のバスもすべて、ガソリンではなくて、バイオディーゼルといって、てんぷら油でいらなくなったものから作っています。

そうやってエネルギー源は替えていけるから、自分でできることを替えつつ、周りの人に、もしくは電力会社にも、「私はグリーン電力が欲しいんです」といっていくこと。みんなで言えば、電力会社も変わっていきます。

企業でもいま、そのコットンのTシャツもそうだし、たとえばタオルとかでも、「風で織るタオル」というのがあって、風力発電で工場を回して、それでタオルをつくっているところがある。そういうふうにグリーン電力でつくっている商品を私たちが選んで買えば、その会社を応援することになるし、グリーン電力を応援することになります。

本当に温暖化って、温暖化だけの話じゃなくて、いまおっしゃった食糧にもつながっているし、たとえば温暖化が進むと食糧ができなくなるから、ますます大変になってくる。逆に言うと、いま、今度はエネルギーの問題があって、もともと食糧として使われていた小麦とか大豆とか、そういうものを自動車の燃料にしちゃおう。バイオ燃料にしちゃおう。そうすると食糧が足りなくなって、ますます値段が上がる。何か、温暖化と食糧とエネルギーが三つ巴の関係で。

だから、それをすべて解決するにはどうしたらいいかと言うと、できるだけ二酸化炭素を出さない、つまりエネルギーは地域のエネルギーを買う。食糧は近くのもの、地産地消にする。そうやっていくと、3つの問題がすべて解決できます。

どうやって進めていけばよいか? 私はよく、「ホップ・ステップ・ジャンプの3段階」という話をするんですが、まずホップ、第一段階は「知ること」ですね。たとえばここに来てくださっている方は、ほんとにいろいろなことを知ろうと思って来てくださっている。

たとえば自分の家庭から出ている二酸化炭素のうち、40%は電気なんですね。ですから、電気はすごく大きい。その中でも、照明って大きいんですね。なので、白熱電球ではなくて電球型蛍光灯、つまり省エネ電球に替えると、同じ明るさで二酸化炭素を減らせる。そういうことを知ることが第一段階です。

次の段階は「行動すること」。実際にそれをやってみる。次に電球が切れたら電球型蛍光灯に替える。スーパーに行ったら、どこでその省エネ型電球を売っているか探してみる。

そして、ホップ、ステップ、ジャンプの最後は「伝えること」です。「実際に自分は電球を替えてみたんだよ。そしたら、最初買うときはちょっと高くてびっくりしたけど、でも消費電力は5分の1で、寿命は10倍で、50倍もお得で、お財布にもやさしかった。だからあなたも、どう?」と。

知って、行動して、伝えていく。それはちっちゃなことでもいいので、やっていってほしいなと思います。

おっしゃるように、「伝える」というのは、いろいろ難しいなと思うことがよくありますが、もし「伝えたい」と思っているのだとしたら、やっぱり「伝わってなんぼ」ですよね。なので、伝わったか伝わらなかったか、自分の伝え方をどうやって変えていったらいいだろうか。そうやっていくことできっと、自分の伝え方ってどんどん上達していくと思います。

私が伝えるときにいつも気に掛けているのは、「聞く人にはいろんなタイプの人がいる」ということです。自分の得意な伝え方で伝わる人もいるし、そうじゃない伝え方のほうが伝わる人もいる。

たとえば、私は主に結論だけに言うタイプですが、聞く人によっては、「もっとデータをちゃんと出してほしい」とか、「自分の個人的な話も入れてほしい」とか、伝わりやすい伝え方が違います。ですから、いろいろと手を替え品を替え、いろんなタイプの人がいるから、いろんな話し方をして、いろんな伝え方をする。

それからもうひとつ大事に思うのは、めげないこと。だって絶対に、わからず屋さんって、どこにでもいますもん。どんなに一生懸命話をしたって、「わかんない」とか「そんなことない」とか「自分はいやだ」とか言う人がいる。そういう人がいると、落ち込んだりめげたりする人もいるけど、でも、「そうだよね」と
思う人も必ずいるんだから、だからめげないで、手を替え品を替え、伝えていくことかなと。

いま田中さんがおっしゃったように、「100年後」ということを考えられる力がある人とない人って、大きな違いが出てくると思います。たとえば「100年後の子どもたちにこうしたい」とか、「こういう地球を残したい」というイマジネーションが、想像力があると、「だったら、いま自分はどうしたい」と出るでしょう。

でも、いまのほとんどの人は忙しすぎて、なかなか立ち止まって遠くのことを考えたり、思いをはせる時間すら、余裕すらない。

なので、たとえばap bank fesのような、ちょっと日常から離れて音楽を楽しみに来ているときに、じゃあ、50年後、100年後、地球の裏側、そんなことにちょっと思いをはせてもらうきっかけにしてくれるといいなと思いますね。

つながりをたどっていくことですよね。たとえばここにカップがあるけど、このカップは何からつくられて、どういうふうにしてここに来たんだろう。このあと、どうなっていくんだろう。こうやってつながりをたどっていくと、実は、自分がいまやろうとしていることが昔にもつながるし、将来にもつながる。それがわかってきたときに、つながりがわかること自体楽しいし、「じゃあ、どうしたい」というのが出てきますよね。

いまから皆さん、きっとお昼を食べようと思っていらっしゃると思いますが、その食べ物が「どこから来たんだろう」というふうに、ちょっと思いをはせると、自分といま食べようとしているものがつながってきますよね。

私たちがご飯を食べるときに、「いただきます」とあいさつしますよね。日本語のとてもすてきなあいさつですが、あれってもともとは「あなたの命、いただきます」ということなんですよね。

動物にしても植物にしても、私たちは命をいただいて食べているわけで、そこに対する「いただきます」って。だから「最後まできちんときれいに食べます」っていう。それが、お肉がどこから来たかというのに全然思いをはせないで、ただ肉として、栄養としてだけ食べていると、そういうふうに思いがいかないんです
よね。なので、「いただきます」と言うときだけでも、思いをはせられるといいですよね。

今回のap bank fesもカーボンオフセットというのをやっています。カーボンオフセットって片仮名だし、なんじゃらほい、という感じの方も多いと思いますが、カーボンというのは炭素、つまり二酸化炭素のことですね。オフセットというのは相殺する。つまり、なかったことにするという意味です。

どういうことかと言うと、たとえばap bank fesでどれだけみんなが省エネしてグリーン電力を使ったとしても、どうしても出しちゃう二酸化炭素があります。それを「出すな」と言ったらfesできなくなるので、そのどうしても出しちゃう分については、その分、たとえば「1トンいくら」というお金を計算して、お金として、ほかの場所で二酸化炭素を減らす。

今回はラオスのビール工場だと思いますが、たとえばそういう、ほかの所で省エネをしたり、ほかの所での自然エネルギーにお金を回すことで、そちらで減らしてもらう。それがap bank fesのカーボンオフセットのお金を使って減らしたわけだから、ap bank fesが出さなかったことと同じだというふうに見なしましょう。そういうことです。

なので、これも「つなぐ」ということです。ここで出す二酸化炭素をあちらで減らすために、カーボンオフセットのお金でつなぐ。そうすることで、地球全体として減らしていきましょうということです。

これは日本でもいまはやり始めているし、世界的で用いられています。つまり、先進国に技術とお金があるけど途上国にはないという場合に、オフセットという枠組みがあると、お金と技術を先進国から途上国に持っていくことができるんですね。

今回のラオスのビール工場も、自分たちだけで減らすのは難しいかもしれないけれど、日本から技術とap bank fesのオフセットのお金を回すことで、実際に減らすことができます。そうやって上手につなぐことで、地球全体として減らしていくということです。

ただ、カーボンオフセットで、ひとつ気をつけないといけないのは、「お金を出してオフセットを相殺しているから、出したっていいじゃん」となってしまうと元も子もない、ということです。

だから「できるだけ減らして、どうしても出てしまうものについてはオフセット」。オフセットは最後の手段だということを、覚えておいてほしいと思います。「減らして、エネルギー源を替えて、最後にオフセット」という順番ですね。

ここに来てくださっている方は、意識も高いし、いろんなことを自分でされている方が多いと思います。そのときに「でも、私ひとりがこんなことやったって、何になるんだろう」と思うかもしれない。「いま、北極が溶けそうになっているというのに、私がマイ箸を使ったぐらいで、私がマイバックを使ったぐらいで、何が変わるんだろう」って思う人がいるかもしれない。

けれども、やっぱり小さいことでも、それをずっとやっていく、もしくは小さいことでもたくさんの人に伝えて、みんなでやっていけば、大きな違いにつながります。少なくても自分は、温暖化を進める側には加担したくない。だから、ほかの人がどう言おうと、自分はマイ箸を使うし、マイバックを使う。そのほうが自分の腑に落ちるし、気持ちいいって、きっと皆さん、思うんじゃないかな。

いろいろ活動していると、「何でそんなことやってるの?」とか「それやったって、意味ないじゃん」って、周りの人が言うかもしれない。でも「そのほうが自分が気持ちいい」から、「自分がやりたいから」と思っているとしたら、それをそのまま言えばいい。

人に何かを言われたからってめげないで。そういう姿を見て人たちがいる。「あ、そういうものかも」と思って、広がっていくと思います。そういうふうに考えてほしいなと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

apbank や apbank fes については、去年の参加記を日経エコロミーのコラムに書き、メールニュースでもご紹介しました。ご興味のある方は、こちらをどうぞ!
http://www.es-inc.jp/lib/archives/070822_142035.html

 

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