去年の秋に、ある高校に招かれて、全学年を前に「夢をカタチにしよう」というタイトルで講演をする機会がありました。90分の時間をもらったので、温暖化を中心に環境問題の話のほか、ビジョンのつくりかた、自分マネジメント、時間のつくりかた、集中力のつけ方、英語の勉強法など、いろいろな話をしました。
生徒たちからは、「これからの人生を考えるためにとても役に立った」「これまでの自分を見直すきっかけになった」「受験勉強がんばろう!という気になった」「夢をあきらめなくてよいのだと思えた」「時間がなくて勉強が進まないと悩んでいたけど、時間のつくりかたがわかったのでがんばれそう」などなど、講師冥
利に尽きる感想をたくさんいただくことができ、とてもうれしく思いました。
なかでも「あの詩がよかった」「人間関係で悩んでいたが、気がラクになった」と多くの感想文に言及があったのが、『朝2時起きで、なんでもできる!』で紹介した心理学者フレデリック・パールズの詩でした。
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「ゲシュタルトの祈り」 フレデリック・パールズ
わたしはわたしのことをやる。
あなたはあなたのことをやる。
わたしはあなたの期待に沿うために、
この世に生きているわけじゃない。
あなたはわたしの期待に沿うために、
この世に生きているわけじゃない。
あなたはあなた、わたしはわたし。
だけど、もしわたしたちが互いを必要としているなら、
それは素晴らしいことだね。
しかし、もしそうじゃなければ、
それはそれでしかたがないこと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私も、中学の頃「だれがどう言った」ということを気にしていたことを覚えていますし、軟式テニスに明け暮れていた高校時代には、友達から「私とテニスとどちらをとるの?」詰め寄られて対応に苦慮した経験もあり、クラスや部活できっといろいろな対人関係に考え込んでいる生徒さんもいるのではないかなー、と思って、対人関係のストレスマネジメントの話を入れ、上記の詩を紹介したのでした。
ついでに、『朝2時起きで、なんでもできる!』でこの詩を紹介している下りを紹介しましょう。
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*他人の期待に自分を合わせようとしない、自分の期待に他人を合わせようとしない
人間関係のストレスや葛藤はいろいろとありますが、おそらくそのほとんどが「こうあってほしい相手」と「実際の相手」とのズレから生じているのではないでしょうか。または、相手から「こうあってほしい」と期待されているけど、「実際の自分」はそうではない、というズレです。
私も、このような相手や自分の「期待する姿」と「実際の姿」のズレにカッカしたり、失望したり、落ち込んだりしていました。しかし、そんな私を人間関係のストレスから解き放ってくれた詩があります。
わたしはわたしのことをやる。
あなたはあなたのことをやる。
わたしはあなたの期待に沿うために、
この世に生きているわけじゃない。
あなたはわたしの期待に沿うために、
この世に生きているわけじゃない。
あなたはあなた、わたしはわたし。
だけど、もしわたしたちが互いを必要としているなら、
それは素晴らしいことだね。
しかし、もしそうじゃなければ、
それはそれでしかたがないこと。
(「ゲシュタルトの祈り」フレデリック・パールズ)
私にもいろいろな「期待」の声が届くことがあります。だいたいが善意や厚意からのお声掛けですし、こちらも背伸びしてでも引き受けようかと思うこともあります。でも無理して期待に合わせても、長続きはしないでしょう。自分がつらくなってきたり、その結果、相手に迷惑を掛けたりするでしょう。この詩を知っ
てから、「思いが重なる部分があれば、ごいっしょしましょう」といえるようになりました。
私には私のやりたいことがあります。相手にも相手のやりたいことがある。それが完全に一致することはありえません。でも重なっている部分はあるでしょう。それならその「重なっている部分」で精一杯の協力をすればいい。そうすれば私が無理することもない。相手が無理することもありません。お互いにラクです。
また、自分にとって大切な人に対しても、いうべきことをいわなくてはならないときがあります。はじめは、相手とのつながりが切れるかもしれないという恐れに、「いわずに我慢していようかな」と思うのですが、やはり我慢していることが、自分にも相手との関係にも無理を引き起こすことがあります。
そういうとき、私は、「いうべきことを伝えて、それで切れてしまうような縁ならば、所詮そこまでの縁だったのだ」と考えることにしています。その結果、残念な、悲しい思いをしたこともありますが、あとで考えれば、それでよかったのだと思えます。そして、「いうべきことを伝えても続いている縁」はいっそうありがたく、「本当に大切にしたいなぁ」と思うのです。
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環境に関わる活動をしていると、「善意からの期待」を感じることがありませんか? エコ=よいこと・正しいこと だから、エコをやっている人=よい人・正しい人 という人々の無意識の前提から、ヘンに窮屈になってしまったり。。。
「相手が期待する」→「応えたいと思う」→「がんばる」→「成果が出る」→「相手はますます期待する」→「応えなくちゃと思う」→「もっとがんばる」→……
こんなつながりを経験したり、まわりで見たりしたこと、ありませんか? この「期待に応えたいループ」にはまってしまうと、その人はがんばり続けることになります。でも、やはり限度がありますから、どこかで体を壊したり、ストレスが大きくなっていったり、うまくいかない状況が出てくることでしょう。
ではどうしたらよいのか? 自己破壊的なループにはまらず、はまっているなら脱出して、それでも「自分の存在を意味あるものとして認められたい」という自分の基本的な欲求を満たすには……?
この「期待に応えたいとがんばってしまい、あとで疲れちゃうループ」だけではなく、「いつも一大決心して資格や語学の勉強をはじめるのだけど、いつの間にか止まってしまって挫折感に落ち込むループ」や、「自分の時間が作りたくて、一生懸命がんばっているのに、なかなか自分の時間ができなくて、まわりに当たってしまい、あとで落ち込むループ」、「机の上を片づけようと思うのに、なぜか片づけが進まず、散らかった机を見てイライラが募るループ」、「地域の人々のつながりを取り戻そうと、イベントをやっても人が集まってくれなくて、それならば、と別の会をやってもやっぱり不首尾で、自分だけが空回りしているような焦燥感に囚われてしまうループ」などなど、「なぜかいつもこうなっちゃう……」というパターンに気づくことがあるかもしれません。
そのパターンが、自分のやりたいことを進めていく上でじゃまになっているのだとしたら、一度、「自分はどんなループにはまってしまっているのか?」「その構造を変えるためには何をすればよいのか?」をじっくり考えてみませんか? そのための考え方やツールを学びませんか?
> ではどうしたらよいのか? 自己破壊的なループにはまらず、はまっているなら
> 脱出して、それでも「自分の存在を意味あるものとして認められたい」という自
> 分の基本的な欲求を満たすには……?
と書きましたが、残念ながら、「答えはこれです」と差し出すことはできないのです。同じようなパターンに見えても、人によってその要素やつながりはさまざまであるためです。大事なのは、自分の状況を、要素やつながりとして理解する力をつけること。答えはそれぞれの人の中にあります。それをどうやって見つけて引き出していくか?--システム思考はそのためのツールのひとつです。
「自分の成長を考えるための システム思考入門セミナー・ワークショップ」を9月7日に開催します。年に2〜3回しか開催できないコースですので、ご興味のある方は、ぜひお見逃しなく! 以下、ご案内です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○日程:2008年9月7日(日)
○場所:
NHK青山荘 2階 銀杏全室
〒107-0062 東京都港区南青山5-2-20(表参道より徒歩1分)
TEL:03-3400-3111
○講師:枝廣淳子・小田理一郎
○スケジュール:
☆「システム思考入門セミナー」
9:15 開場(受付開始)
9:30 システム思考入門
1. システム思考の基本的な考え方
2. システム思考のツール(1)時系列パターングラフ
3. システム思考のツール(2)ループ図
4.応用と展開について
12:30 終了
★「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」
13:30 開場
13:45 システム思考を自分の成長に役立てる
1.自分の目標をシステム思考のツールで表す
2.自分の問題や課題の構造をシステム思考で掘り下げる
3.問題解決のために構造を変える働きかけを考える
4.発表、講評
17:45 終了
○定員:
☆「システム思考入門セミナー」:約35名
★「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」:約12名
○参加費:(いずれも税込)
☆「システム思考入門セミナー」(午前のみ):12,000円
★「システム思考入門セミナー」と「システム思考を自分の成長に役立てるワー
クショップ」の両方(全日参加):52,000円
※これまで午前の入門セミナーに参加された方は、午後のワークショップのみでもご参加いただけます(お申し込み時にそのようにお伝えください)
これまでのシステム思考コースに参加された方のフォローアップやスキルアップにも最適です。さらに考えてみたい、別の課題を取り上げてみたい、復習してしっかり身につけたいという方も、ぜひどうぞ。
○お申し込み・お問い合わせ:
メールで以下の申込書をお送りください。参加費の振込についてご案内します。参加費の振込をもって正式受付とし、受講票をメールでお送りいたします。定員に達した時点で締め切り、あとはキャンセル待ちとなります(キャンセル待ちの方には、次回のご案内を先行してお送りします)。
申込書送付先: info@es-inc.jp
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申 込 書
2008年9月7日 (いづれかに印をおつけください)
( )「システム思考入門セミナー」(午前のみ)
( )「システム思考入門セミナー」と「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」の両方(全日参加)
ご氏名 [ ]
メールアドレス [ ]
連絡先電話番号 [ ]
※この講座をどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 枝廣淳子のメールニュース(enviro-news)
( ) b. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名( )
( ) c. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) d. イーズのウェブサイト
( ) e. イーズメール
( ) f. 他のメールマガジンによるご案内 ( )
( ) g. その他 ( )
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
前回のセミナー・ワークショップ受講者の感想の一部をご紹介します。
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●午前中のセミナー
○身の回りのこと、仕事のことなど、何でもループ図に落とし込みができると確信できたのが良かったです。(よりよいループ図にするには、かなり練習が必要とも思い知りましたが。。。)3時間あっという間でした。これまで、ブレストにはマインドマップを使うことが多かったのですが、今後はループ図がメインに
なりそうです。
○以前、枝廣さんのシステム思考の本を読んだのですが、今回、直接セミナーを受けて、以前より理解が深まりました。システム思考が大きな事だけでなく、日常の些細なことにも役立つということを、事例を挙げながら教えて頂けてとてもうれしかったです。ありがとうございました。
○頭で考えていただけよりも、ずっとずっとおもしろく、でも簡単そうで難しく、そして自分の課題に対して効きそうなツールだと感じています。困ったり悩んだりしたときは、どんどん、「時系列変化パターングラフ」と「ループ図」を実際に書いてみて、自分の立ち位置を冷静に見つめなおしてみようと思います。
○ループ図というツールが新鮮で面白かったです。→でつなぐのは日常のワークフローでも使用しているが、“同”“逆”、“自己強化”“バランス型”で分類すると、これまで複雑でわかりにくかった問題が分解しやすくなると感じました。
○複雑に見える現状も、システム思考により頭が整理され、問題点、次にすべきことが明確になる。事例でおっしゃっていた通り、言葉での問題提示は受け取る側により、捉え方が様々になるうえ、場合によっては細部にとらわれ、議論が進まなくなることが多い(実際今の職場でもそのことで本題から外れてしまい、解決されないままのことが多い)が、この思考を皆が身に付けることで、議論がぶれず、効果が高くなると思った。
○皆でシステムをつくり、働きかけの結果を体感する実験はとてもおもしろく、よく理解できてよかったと思う。今まで「解決不可能では。。。」とあきらめていた事にも希望が持てるような気持ちになった。
○直接話を聞き、演習をしたりゲームをしたりすることで短時間で効率的に考え方を理解することができた気がする。
●午後のワークショップ
○気付きがたくさんありました。ループ図はまだまだ未完ですが、今日作ったものをベースに自分が成長していけるはずと確信しています。半日でここまで深く自分自身と向き合える場の力に驚きです。快く送り出してくれた家族に感謝です。
○自分の癖や問題にとりかかる作業は、つらいと思い込んでいたので、恐かったが、 自分のペースで、できるところまでで大丈夫だと言われて、とりくめた。
○講師の方から、具体策が案外、小さなしくみにあると具体的に教えていただき、 嬉しい驚きでした。その積み重ねで、直したいパターンが改善できるとわかりました。
○講師の方からの問いかけに答えることで、 自分の行動を加速していたものや思い込みに気づくきっかけになった。私自身が、こんなに何も考えず、自動的に「やるべきこと」と思い込んで行動しているとは思ってもみませんでした.。
○他の受講者のループや説明、そしてお二人の講師の方それぞれのコメントや解説を聞けて、よかった。まったく違う環境にいる他の受講者のループなのに、聞いていたら、自分の作業中にはわからなかった自分の問題とつながっていることに気づいた。なじみの問題に関しても、将来、他の人の問題を理解する上でも役に立つと思いながら、拝聴できた。
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「また失敗してしまった」というような「出来事」を作っているのは、「パターン」です。パターンを作り出しているのは「構造」です。そして、その構造のさらに深くには、「○○はこういうものだ、こうあるべきだ」という無意識の前提、「メンタルモデル」があります。
フレデリック・パールズの詩が多くの人に響くのは、「メンタルモデル」に働きかけているからでしょう。それぞれの人の中に、「人間関係とはこういうものなのだ、こうあるべきだ」という無意識の前提があります。それがその人の人間関係に関する行動の原型を形作っているのです。
でも、自分のその思い込みに気づき、「そうでなくてもよいのかもしれない」「違うあり方があるのかもしれない」と思ったとき、それまで自分を縛っていたメンタルモデルから自分を解放してあげることができます。
特に、午後のワークショップでは、温かい雰囲気の中で、ひとりひとりが4時間かけ、講師の助言を得ながら、自分のメンタルモデルに気づき、それが自分を不自由にしている場合には、「そうでなくてもよい」と解き放つ作業を、それぞれのペースで進めていきます。
コワクはないんですよ(^^;)、終わった後は、心地よい疲労感と共に、ある種の解放感と達成感に、みなさん、素敵な笑顔でお帰りになります。
なお、ビジネス向けのシステム思考のコースは、こちらにご案内があります。
http://change-agent.jp/news/000153.html
東京で8月20日、9月23日、10月21日に開催するほか、10月20日には名古屋でも開催します(名古屋には私も講師として参加します)。
お問い合わせ・お申し込みもこちらへ。
http://change-agent.jp/news/000153.html