バラトングループの合宿が終わりました。今回の合宿のテーマは、私もずっと考え、試行錯誤や実践を進めてきているものだったので、楽しく学びました。
テーマは「持続可能性への変化の担い手(チェンジ・エージェント)」
Agents of Change for Sustainability
- From Agent-Bsed Modeling to Real World Change Agents -
いろいろな学びがありましたが、中でも、世界の各地で、そして特に企業が温暖化対策や持続可能性への動きをものすごい勢いで加速していることにびっくりしました。
また、去年の春ぐらいからセミナーやワークショップで実践している「ワールド・カフェ」方式のダイアログ(対話)の手法を使った事例が、数人のプレゼンに出てきたことにもびっくりしました。「より深い、本当の変化を創り出すためのプロセスや手法」が同時多発的に各地で広がりつつあるのだなあ!と。
今回の合宿で得たことを今後にしっかりつないでいきたいと思っています。
さて、スウェーデン出張中に、新しい翻訳書が書店に並びました。この本は「ぜひ日本の人々に知ってほしい、使ってほしい」という20年越しの思いがかなって出版に至った、とてもうれしい本です。
20年前といえば環境問題に関わる前でしたが、「伝えること」「コミュニケーション」はそのころからのテーマでした。「伝える」ことが仕事の重要な一部だという方、日常生活でも「伝えたい」「わかってもらいたい」と思っている方、ぜひご一読ください〜! 訳者まえがきと目次を紹介します。
『どんな相手ともうまくいく!「心の合い鍵」の見つけ方
―必ずイエスを言わせる「ソーシャル・スタイル」セールス教本』
ウィルソン・ラーニング・ライブラリー (著), 枝廣 淳子 (翻訳)
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訳者はしがき──「何かを売りたい」と思うすべての人へ
私もセールス・パーソンです。
私はモノを売っているわけではありません。でも、環境問題の重要さや、温暖化をこれ以上進めないためにこれまでの暮らしや企業経営を変えていく必要性などを「売って」歩いています。考え方やアイディアであっても、わかってほしい、受け取ってほしいと思ってコミュニケーションするとき、あなたもやはり「セー
ルス」をしているのです。
私はいま、年に一〇〇回ほど各地で講演をしたりパネルディスカッションのコーディネータを務めたりしています。講演では必ず来場者にアンケートをお願いしています。いただいたフィードバックを次の講演の改善につなげるためですが、あるとき一緒にアンケート結果を見ていた人に、「これほど多くの人に『わかりやすい』『なるほどと納得した』と言ってもらえる人は、なかなかいませんよ」と言われました。
私も最初から、多くの人に「わかりやすい」「納得できる」と言ってもらえたわけではありません。では、どうやって自分なりに講演スキルを改善してきたのか?──その答えのひとつが「ソーシャル・スタイル」なのです。
セールスをしていればなおのこと、「いろいろな相手がいる」「でもどの人にもイエスと言ってもらって買ってほしい」と思うことでしょう。そのための秘密は、どんな相手の扉でも開けられる万能の「心の合い鍵」をつくること──それが「ソーシャル・スタイル」なのです。
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大学院生時代、ウィルソン・ラーニングという企業向けの研修会社で教材開発のアルバイトをしていました。この会社では、奇妙な言葉が飛び交っていました。「あの人はエクだから」「エミ向けにはこういうやり方をしなくちゃ」などなど。
「エク」とは「エクスプレッシブ」、「エミ」とは「エミアブル」のことでした。この会社の人々は、主力の研修プログラムである「ソーシャル・スタイル」の考え方を基盤に、クライアントや同僚とのやりとりを考えていたのです。私もこの研修を受講させてもらい、目からウロコが何枚も落ちたのでした!
性格や人格ではなく、他人とのやりとりの仕方を二つの軸で四分割し、相手の特徴に自分のスタイルを合わせることで、相手に安心と居心地のよさを感じてもらい、コミュニケーションをスムーズに進めようというソーシャル・スタイルのアプローチは、セールスだけではなく、あらゆる場面でとても有効だ──そう確信した私は、このソーシャル・スタイルの考え方を、ぜひ多くの方に伝えたいと思い続けてきました。その願いが今回こうしてかなったことをとてもうれしく思っています。
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ウィルソン・ラーニングでアルバイトをしていた私は、まわりの人たちからよく「エダヒロさんはドラドラね」と言われました。私は典型的なドライバータイプなのです! ドライバーのなかでもドライバー傾向の強い「ドライバー中のドライバー」(ドラドラ)であることは、ソーシャル・スタイルを身につけた人たちには一目瞭然だったようです。
私の「ドラドラ」傾向はいまも変わっていません。放っておけば、自分の居心地のよいドライバーの言動スタイルをとります。つまり、単刀直入に結論だけを述べ、時間や効率を重視し、感情を表さず、淡々とものごとを進めていきます。
しかし、講演など、多くの人々に伝えたい、わかってもらいたい場を重ねてきたこの数年の間、「どうすれば、自分とは違うソーシャル・スタイルの人にもわかってもらえるか」を工夫し続けてきました。
講演の感想に、「結論だけではなく、データも示してほしい」と書いてあれば、「この人はアナリティカルかな? 確かにアナリティカルの人にはきちんと詳細を出したほうがわかってもらえる」とデータの説明を追加したり、「話が単調過ぎる。もっとメリハリを効かせたほうがよい」と書いてあると、「この人はエクスプレッシブかも。確かに私の話し方はいつも淡々としているからね」と、(ふだんはしない)身振りを加えたり、間合いの取り方を考えたり。また、聴衆の四分の一はエミアブルでしょうから、(ふだんはしない)自分の個人的な話も織り交ぜたり……少しでも伝わるよう、工夫を重ねています。
このように、講演での「対応力」を高める努力をしてきたため、講演のどこかしらにはどのソーシャル・スタイルの人たちにも居心地のよい部分がつくり出せているのかもしれない、だから多くの人にわかりやすいと言ってもらえるのかなと思うのです。
パネルディスカッションのコーディネータ役も同じです。パネリストのソーシャル・スタイルもさまざまなのです。打ち合わせ時間に各パネリストのソーシャル・スタイルの見当をつけ、それぞれが居心地よく、しかもほかのソーシャル・スタイルの聴衆にも伝わりやすい形で話を引き出すにはどうしたらよいかを、頭のどこかで考えながら、コーディネータを務めています。
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ソーシャル・スタイルは、モノやサービスを販売するセールス・パーソンに大いに役立つばかりではなく、何かしら伝えたい、わかってほしいと思っている人たちすべてに役立つアプローチだ──私は自分の体験からそう確信しています。
何をしていても、だれと向き合っていても、対人関係の緊張をゼロにすることはできないでしょう。相手のソーシャル・スタイルを見抜き、自分のスタイルを合わせることで、その緊張をいかに下げることができるか。そして、より危機的な緊張状態に陥ったときに、相手のソーシャル・スタイルを念頭に置きながら、い
かに早く緊張を和らげ、生産的な対人関係に戻るにはどうしたらよいのか。本書は、仕事の上でもプライベートの場面でも、とても役に立ちます。
毎日、一つでも二つでも成約を増やそうとがんばっていらっしゃる営業の方々へ、そして、相手にわかってもらいたいと苦労していらっしゃる方々へ、本書をお届けできることをうれしく思います。自分や相手のソーシャル・スタイルを把握し、対応力を高めることで、より実りある仕事や対人関係、人生をぜひ手に入れて下さい!
本書の意義を理解して出版を進めてくださった東洋経済新報社の井坂康志さん(エミアブル傾向のあるアナリティカル)、いつものように私の読み上げる翻訳を美しくテープ起こししてくれた阿部泰子さん(たぶんエミアブル)、ありがとうございました!
枝廣淳子(ドライバー)
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目次
日本版への序文(ラリー・ウィルソン)
訳者はしがき──「何かを売りたい」と思うすべての人へ(枝廣淳子)
序文──本書はあなたのために書かれた(ラリー・ウィルソン)
第1章 ナンバー1になるための教え
売れる・売れないは対応力次第
ブランドだけでは立ち行かない
品質さえよければ売れるのか
第三の源泉──知られざる方法
違いを理解し、違いに向き合う
●汝のせられんと欲することを人に施すなかれ
二〇〇万人以上が学んだ折り紙付きの手法
第2章 対応力を鍛える
対応力セールスの秘訣
安心と居心地よさ
それは「おまけ」ではない
●安心や居心地よさをつくる
緊張には二種類ある
人間的なつながりが鍵
緊張の振幅
二つの次元──「主張性」と「対応性」
主張性──他者に影響を与えるキーポイント
対応性──感情を表現するキーポイント
マトリクス化してみる
習慣に頼ってはならない
一〇〇万人のセールス──「関係をつくる」「発見する」「主張する」「サポートする」
信頼がなければ顧客は「いない」
何が得られるか
ニーズがはっきりしなければはじまらない
魔法の杖となる質問
自社の製品とサービスを心から信じているか
「よかった」と思い続けてもらう四つのステップ
トラブル・シューティング──「闘うか、逃げるか」
●後ろ向きの言動に関する悪いニュース
言動は予測可能である
効くクスリ──「緊張緩和の5K」
「闘うか、逃げるか」問題への対処法
本章の要諦
ソーシャル・スタイルの自己観察記録用紙
第3章 ソーシャル・スタイルを使いこなす
観察し、耳を傾けるのが基本
「人生を変える経験」──二〇〇万人分のデータベースから析出した「四種類の顧客」
汝のソーシャル・スタイルを知れ
変えようとしてはならない
そのはかりしれないパワー
●ソーシャル・スタイル間の共通する言動
アナリティカル──「問いかける」「課題から離れない」
ドライバー──てきぱきと意思決定
エミアブル──協力、支援提供、合意
エクスプレッシブ──巻き込み上手
スタイルのなかの「スタイル」
識別するためのコツ
初対面の場合は?
役に立つ質問
本章の要諦
第4章 アナリティカルに対する方法
「何を根拠にそんなことを言うの?」
●アナリティカルのソーシャル・スタイル
重要な教訓
趣味の話は我慢する
彼らはどうしてほしいと思っているのか?
関係をつくる──もっとも居心地よく感じるやり方で
下準備は必須
アポを取るのが難しい
発見する──もっとも重要なプロセス
主張する──クロージングを求めるために
サポートする──終わるまでは終わらない
自らのスタイルを合わせる
領分を侵害しない
なすべきことに最大の注意を
トラブルへの対処法──介入する
本章の要諦
第5章 ドライバーに対する方法
典型的な行動
どうやって合わせればよいか
●ドライバーのソーシャル・スタイル
「個人的に受け取らないでください」
人なつこさはいらない
関係をどうつくるか
手紙でフォローアップが効果的
主導権を握らせろ
単刀直入がいい
スピード感の大切さ
てきぱきと的を射たコミュニケーションを
自らのソーシャル・スタイルをどう合わせるか
会話を牛耳ってはならない
関係がピリピリしてきたとき
本章の要諦
第6章 エミアブルに対する方法
セールスはアートである
「ほかの人たちはどう思うだろう?」
対人関係の力学は忘れがち
●エミアブルのソーシャル・スタイル
熱心に耳を傾ける
好感を持ってもらうために
リラックスして自然体で
仕事の前に、打ち解けた会話を
最善の解決策
フィードバックが鍵
自信を与えてあげる
プレッシャーをかけない
できたことを褒める
スタイルを調整する
人間中心型が好き
後ろ向きになったら──「黙従」に対処する
「介入」が効く
本章の要諦
第7章 エクスプレッシブに対する方法
手ごわい人々
情熱、直観、創造性、影響力
●エクスプレッシブのソーシャル・スタイル
最上級の傾聴スキルが必要
彼らはこうしてほしがっている
得られるものをはっきり伝える
解決策の土台づくり
まず「理想的な成果」を確認する
「自分は特別」と感じさせる
やってはならないこと
一貫したスタイル
注意すべきことは何か
断言するタイプに安心する
攻撃への対処法
本章の要諦
第8章 使いこなすためのコツ
この本から「持ち帰ってほしいもの」
ある自己啓発中毒者の気づき
自分自身でいればいい
たくさんの人に会う
小さなことに注目する
一対一だけではない
果たすべき役割がある
分断攻略法──チームに対するとき
なぜある人たちとはウマが合わないのか
会社にもあるソーシャル・スタイル
ときには瞬発力も必要
三〇秒で二つも成約
いつでも手遅れということはない
最初は小さな一歩から
書くときでも効果的
目を離さない──エクスプレッシブの顧客
「違い」のすばらしさ
ソーシャル・スタイルのまとめ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これまで何人かの方に「エダヒロさん、どうやったら伝え方がじょうずになりますか?コミュニケーションをテーマにした本を出して下さいよ」と言ってもらっていたのですが、お待たせしました〜! その第1弾です。
『どんな相手ともうまくいく!「心の合い鍵」の見つけ方
―必ずイエスを言わせる「ソーシャル・スタイル」セールス教本』
ウィルソン・ラーニング・ライブラリー (著), 枝廣 淳子 (翻訳)