昨日ご紹介しました日刊温暖化新聞の「温暖化REPORT」に、「21世紀のための再生可能エネルギー・ネットワーク:REN21」事務局が出した「2007年 世界の再生可能エネルギーの現状報告書」があります。
リード文は以下のようになっています。
パリに事務局を置く国際ネットワークREN21が2008年2月に発行した報告書によると、2007年までに世界の66カ国が再生可能エネルギー利用促進目標を掲げており、各地で再生可能エネルギーの取り組みが進められている。また、日本の再生可能エネルギー国別ランキングでは、2006年現在の既存容量で小水力が2位、太陽光発電が2位、太陽熱温水が4位となっている。
レポート本文はこちらにあります。
http://daily-ondanka.com/report/world_04.html
このレポートの日本語要約をつくるにあたり、レポート本文よりも詳しくまとめたバージョンを作ってもらいました。このメールニュースでは、その「より詳しいバージョン」をお届けします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
概要:
再生可能エネルギーは、CO2削減や大気汚染の対策、エネルギー安全保障の改善や経済発展を促進するための重要な鍵であり、従来型エネルギーに代わり、発電、温水・暖房、輸送燃料に利用されている。2007年には、EU27カ国と米国29州、カナダ9州を含む世界66カ国が再生可能エネルギー利用促進の政策目標に掲げた。
再生可能エネルギー設備容量拡大と製造工場建設、研究開発において2007年に投資された額は1,000億ドル以上となった。レポートには、ほかにも2億4,000万kWに達した再生可能エネルギーの発電容量(2004年比で50%の増加)や1年で28%増加した風力発電、生産量が530億リットルを記録したバイオ燃料などについての情報が、具体的な数字とともにまとめられており、再生可能エネルギーがどれだけ成長したかがわかる。
また、レポート前半には、風力や太陽光などの発電容量、投資額、バイオ燃料生産量など13の指標について、2005〜2007年の数字の動きがわかる表が示されている。生産量や投資額などさまざまな観点から順位付けし、それぞれ上位5カ国が示された、再生可能エネルギーをめぐる国別ランキング(2006年)も興味深い。
このなかで、日本は、容量拡大への投資額で5位、太陽光発電(系統連系型)の新設数で2位(いずれも2006年1年間での成長率)。2006年現在の既存容量では、小水力で2位、太陽光発電(系統連系型)で2位、太陽熱温水で4位となっている。
本レポートは、近年激変する再生可能エネルギーの実態に即した認識を広める目的で作成された。これまでに2005年版(2005年北京再生可能エネルギー国際会議で発表)、2006年版に続き、今回発行された2007年版は2008年3月に開催されたワシントン再生可能エネルギー国際会議で発表され、世界の関心を集めている。
すでに発行されたレポートの形態に沿って、本レポートも大きく5つ(世界市場概観、投資フロー、産業の潮流、政策の展望、電力網が接続されていない農村地域)の観点から詳しい説明を展開していく。
(1)世界市場概観
世界の最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は18%。そのうち大型水力発電と伝統的なバイオマスを除いた新再生可能エネルギー(小水力発電、新バイオマス、風力、太陽光、地熱、バイオ燃料)の割合は2.4%である。2002〜2006年、世界の再生可能エネルギー容量は年間15〜30%増加しているが、これは化石燃料の増加率2〜4%に匹敵するほどの増加率である。
再生可能エネルギー発電容量は、2007年には大型水力発電を除いた世界の総発電容量の5%を、また総発電量の3.4%を占めている。最も発電容量が増えたのが風力で、2007年には28%増加(2006年比)の推定2,100万kWとなり、累積容量は推定9,500万kWに達した。風力は70カ国以上で利用されるようになったが、5カ国(米国、ドイツ、インド、スペイン、中国)だけで、2006年の追加容量の2/3を占めている。
系統連系型太陽光発電は、最も急速な成長を続けており、2006年、2007年とも年平均50%伸び、2007年末には累積容量が推定780万kWに達した。2006年には世界市場の半分を占めるドイツが約85万〜100万kW、日本が約30万kW、米国が約10万kW、スペインが約10万kW増加した。
また、電力と暖房にバイオマスと地熱エネルギーを導入する国が増加(特にオーストリアやデンマークなどのEU諸国)し、2006年のバイオマス既存発電容量は推定4,500万kWとなった。熱電併給システム(CHP:combined heat-and-power)もオーストリア、デンマーク、フィンランドなどで伸びている。地熱発電は年間およそ2〜3%の増加。
そのほか、2007年末現在で世界の総発電量が推定1,050万kWに達した太陽光発電、中国やトルコ、日本、イスラエルなどで普及が進む太陽熱温水設備、オーストリアやドイツ、スウェーデンで発達している太陽熱冷暖房、2005年比で生産量が18%増加したエタノール燃料、2006年比で生産量が50%増加したバイオディーゼルなどについて詳しく説明している。
また、10年前に比べると供給率はダウンしたものの、主に途上国で成長している水力発電や、コスト面から急速な発展はないが、1年あたり数十万kW増加している洋上風力発電、2004年まで停滞気味だったがその後は、イスラエル、ポルトガル、スペイン、米国で設置が進む集光型太陽熱発電(CSP:TheTheconcentrating solar thermal power)についても触れている。
(2)投資フロー
2007年、再生可能エネルギー設備容量拡大には、世界全体で推定710億ドルが投資された。2006年の550億ドルからの増加である。投資内訳は風力が47%、太陽光発電30%、太陽熱温水9%、残りは小水力、バイオマス、地熱などとなっている。
2007年の主な投資国はドイツ、中国、米国、スペイン、日本、インドで、第1位のドイツは、主に風力と太陽光設備に投資し、その額は2007年1年間で140億ドルに達した。中国は120億ドル、3位の米国は100億ドル以上の投資だった。
また、再生可能エネルギーの製造工場や設備新設への投資も伸びている。特に著しいのは、太陽光発電とバイオ燃料への投資で、太陽光発電への投資額は2006年の80億ドルから2007年には100億ドルに増加、バイオ燃料への投資額は2007年に40億ドルに達したと予想される。
再生可能エネルギーへの投融資は、ここ数年来、大手機関投資家、世界規模の銀行、ベンチャーキャピタルが行ってきた。ベンチャーキャピタルによる太陽光発電とバイオ燃料への投資は2006〜2007年に急増し、2006年の投資額は30億ドルを超えた。
ベンチャーキャピタルによる投資で世界をリードする米国は、2006年の再生可能エネルギーに対するベンチャーキャピタル投資額において世界の60%を占め、なかでもセルロースからエタノールに変換するための開発・商品化の技術などのバイオ燃料への投資は8億ドルにのぼる。
発展途上国に対する再生可能エネルギー投資への開発援助額は2005〜2007年に著しく増加し、年間6億〜7億ドルを超えた。財源を拠出する主な組織は、ドイツ復興金融公庫(KfW)、世界銀行グループ、地球環境ファシリティ(GEF)である。
世界銀行が新再生可能エネルギーへ2億2,000万ドル、大規模水力発電へ6億9,000万ドルを投資したことなど、報告書はそれぞれの投資額、投資分野などについて詳しく説明している。そのほかの投融資財源として、国連の各機関やアジア開発銀行、日本の国際協力銀行(JBIC)やスウェーデン国際開発協力庁(Sida)をはじめ世界各国の金融機関などを挙げている。
(3)産業の潮流
2006年中間期に世界全体で85社あった再生可能エネルギー企業は、2007年中間期に140社に増加し(主要企業で新設された再生可能エネルギー部門も含む)、これら企業・部門の時価総額合計は推定1,000億ドルを超えた。
2006〜2007年は、風力タービンやその部品、従来型太陽電池、薄膜太陽電池、集光型太陽熱発電設備部品の製造工場に対する投資が加速した時期であった。従来型バイオ燃料製造工場への投資は数カ国で引き続き増加したほか、カナダ、日本、オランダ、米国では最新型バイオ燃料製造工場への商業投資を開始した。
世界の主要風力発電企業には、ヴェスタス(デンマーク)、ガメサ(スペイン)、ゼネラルエレクトリック(米国)、エネルコン(ドイツ)、スズロン(インド)などが挙げられる。大手製造会社が2006〜2007年に風力タービンの製造能力を増加した一方で、多くの地元製造会社はギアボックスやブレード、ベアリングなどの部品製造に関心を寄せた。
しかし、風力産業の需要が高まっているため、サプライチェーンに困難が生じ、風力部品製造会社はかつてないほど圧迫されている。鉄や銅、炭素繊維などの原材料価格の高騰と風力タービンが大型化していることも原因である。また、米国、インド、中国での製造設備が増加し、製造ベースがヨーロッパから離れて世界各地に広がった。
とりわけ中国では、すでに製造を拡大しているゴールドウィンドのほか、40を超える企業が風力タービンなどの部品の製造に乗り出し、その多くがプロトタイプ開発やテストを実施したり、もしくは2006〜2007年に製造を始めたりしている。
太陽光発電は2006年には250万kWであった生産量が2007年には推定350〜380万kW増加した。主要企業はシャープ(日本)、クー・ツェル(ドイツ)、京セラ(日本)、サンテック(中国)、サンヨー(日本)であり、この5社だけで世界の生産量のほぼ半分を占めている。
太陽光発電新設設備への主な投資国はEUと日本、中国、台湾、米国で、特に目を引くのは2006年に中国の生産量(37万kW)が米国(20万kW)を初めて上回ったことである。2006年に台湾は生産量18万kWに達し、2005年比で倍増した。
そのほか、2006〜2007年の2年間で太陽光発電の主流技術となった薄膜太陽電池、ベルギーやチェコ共和国などのEUのほか、アルゼンチンやブラジルなど途上国でも伸びたバイオディーゼル、米国で2007年の製造能力が2005年から60%増加したエタノール、スペイン、ドイツ、米国企業(ドイツのソーラー・ミレニアム社、米国のオースラ社など)が生産規模を拡大している集光型太陽熱発電産業の動向について説明している。
こうした再生可能エネルギー産業の成長にともない、雇用が増大し、2006年には製造、稼働、維持管理などの業務で推定240万人が従事している。うち110万人がバイオ燃料製造に携わっており、全体の雇用数は日々増加している。
(4)政策の展望
再生可能エネルギー促進のための政策は、80年代、90年代には数カ国でしか見られなかったが、1998〜2007年(特にここ5年間)で多くの国、州、県や郡、市レベルでのエネルギー政策が見られるようになった。
エネルギー政策は本レポートの前半で述べたように市場発展に大きな影響を及ぼす。報告書では、再生可能エネルギーの政策目標、再生可能エネルギー発電、太陽熱による温水・暖房、バイオ燃料における促進政策の再考を取り上げている。さらに、グリーン購入や認証制度、地方自治体での政策についても論じている。
<再生可能エネルギーの政策目標>
2007年までにEU27カ国を含む少なくとも世界64カ国と米国29州(コロンビア特別区を含む)とカナダ9州などが再生可能エネルギーの政策目標を掲げた。ほとんどの国が、再生可能エネルギーによる発電の割合を全体の5〜30%に設定している。
欧州委員会は2020年までに最終エネルギーの20%、輸送燃料の10%を再生可能エネルギーとする新たな目標を掲げた。64ヶ国のうち途上国は22ヶ国で、現在最もその動向が注目されている中国は2007年9月、2020年までに一次エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を15%にするという目標とともに、水力で3億kW、風力で3,000万kW、バイオマス3,000万kW、太陽光発電で180万kWと産業別の目標値を発表した。この目標値が達成されれば2020年には中国の再生可能エネルギーの割合は今のほぼ3倍になると推測される。
そのほかにも電力に占める再生可能エネルギーの割合について、アルゼンチンは2016年までに8%に、エジプトは2020年までに20%にするなど、途上国各国で目標値が設定されている。
<発電促進政策>
少なくとも60カ国(37先進国と23途上国)で、再生可能エネルギー発電を促進するためのさまざまな政策が進められている。最も一般的なのは固定価格制で、1978年には米国が導入し、その後1990年初頭には、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、インド、イタリア、スペイン、スイスが導入した。2007年には少なくとも37カ国と9つの自治体が取り入れている。
ここではスペイン、ドイツ、オンタリオ州(カナダ)、イタリア、フランス、韓国、南オーストラリア州(オーストラリア)など、さまざまな国や自治体の固定価格制について述べている。
また、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別処置法(RPS法)も、オーストラリア、中国そして日本などの国家レベルで、また米国、カナダ、インドなどでは自治体レベルで、世界44の国や自治体で導入されている。
ほかにも再生可能エネルギー発電に対する政策支援として、投資補助、屋上太陽光発電に対する余剰電力買取制度、競争入札などが挙げられており、それぞれについて導入事例を盛り込みながら解説している。
<太陽熱温水/暖房促進政策>
世界の国や自治体で、新設の建物に太陽熱温水器の設置を義務付ける傾向にある。長年にわたり国家レベルで義務化しているイスラエルに続き、2006年にスペインは、新・増築する建物に、一定レベル以上の太陽熱温水器と太陽光発電システムの設置を義務化する建築基準を導入した。
太陽熱温水器は、インド、韓国、中国、ドイツなど4カ国以上の国のほか、多くの自治体で義務付けられており、日本を含め、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダなど少なくとも19カ国では、助成制度、割戻し、投資税控除を行っている。ほかにもいくつかの国で、別の政策が考えられている。
<バイオ燃料促進政策>
バイオ燃料に対する政策は17カ国と中国、米国、カナダ、オーストラリアの36の自治体が政策を掲げている。その多くはガソリンにエタノール燃料を10〜15%混合、またはバイオディーゼルを2〜5%混合するよう義務づけている。
30年来、混合バイオ燃料を義務化してきたブラジルの混合率は20〜25%で、すべてのガソリンスタンドで混合率25%のエタノール混合ガソリンと100%純粋のエタノールを販売するよう義務づけた。米国では2022年までに流通事業者に年平均1,360億リットルのバイオ燃料を混合するよう要求している。
日本はエタノール製造目標値を2030年までに60億リットル/年と設定しており、輸送エネルギーの5%をエタノール燃料で賄う量に相当する。バイオ燃料免税措置と生産補助も重要な政策である。米国政府はエタノール混合ガソリンとバイオディーゼルに税控除を実施し、カナダ政府はバイオ燃料の生産補助金政策を導入した。ほかにもベルギー、フランス、ギリシャなどEUの少なくとも10カ国がバイオ燃料免税措置を行なっている。
<グリーン電力購入と再生可能エネルギー証書>
再生可能エネルギーから発電されたグリーン電力の購入者は、欧州、米国、カナダ、オーストラリア、日本に合わせて400万人以上いる。グリーン電力購入の促進手段には、グリーン電力料金制度、グリーン電力自由化による価格競争、再生可能エネルギー証書の取引がある。
EUの数カ国では、1990年代からグリーン電力購入制度とグリーン電力料金制度が導入された。しかし、グリーン電力の市場占有率は依然低く、フィンランドやドイツ、スウェーデンなど電力の小売市場が自由化された国でも、グリーン電力の市場占有率は5%未満にとどまっている。グリーン電力購入で先進的なのはオランダで、化石燃料電力に課税し、グリーン電力を免税する制度のため、国内全家庭の30%に相当する230万人ものグリーン電力購入者がいる(2006〜2007年)。
EU加盟国のうち21カ国が、グリーン電力証書の取り扱いが許される「再生可能エネルギー証書システム」に加入しており、2007年1月から10月までの間に1,000億kWh分の証書を発行した(2006年は670億kWh)。また米国も環境保護庁(EPA)による「グリーン電力パートナーシップ」や電力会社にグリーン電力販売を促す施策などのおかげでグリーン購入者が増加している。
ほかにも、オーストラリア、カナダ、南アフリカ、日本でもグリーン電力が進んでいる。日本で販売されたグリーン電力証書は、5,800万kWh(2006年)。日本のグリーン電力主要販売企業は日本自然エネルギー株式会社である。また、電力各社がグリーン電力基金を設立し、再生可能エネルギー発電施設に投資(毎月の寄付)を募集、2007年初めには35,000人が参加している。
<地方自治体による政策>
2006〜2007年には、世界各地の都市で、気候保全、大気汚染の改善、持続可能な地域開発を進める目的で、温室効果ガス排出削減と再生可能エネルギー利用のための新しい政策が打ち出されている。
ニューヨークは太陽光発電システム導入を奨励し、カーボンニュートラルの建築物や分散型発電の試験的な取り組みを含めた地球温暖化対策計画「PlaNYC2030」を発表した。カナダのトロントでは再生可能エネルギーへの投資支援のために「Green Energy Fund」として2,000万ドルを投入することを制定した。
オーストラリアのアデレードなど、電力総消費量に占める再生可能エネルギーの割合を10〜20%と掲げる自治体が多くみられる。ほかには、2020年までに総エネルギー消費に占める再生エネルギーの割合を20%とする英国のレスターのような自治体や、英国オックスフォードのように2010年までに太陽熱温水器と太陽光発電システムを全家庭の10%に導入するといった設備容量を目標に掲げる自治体も紹介している。
それ以外にもグリーン電力購入に積極的に取り組む自治体にも触れており、例えば、米国ではポートランド州などが州の建物や業務に利用するためグリーン電力の購入を決定した、と報告書に挙げられている。
日本での再生可能エネルギー発電に対する政府および民間、自治体の主な取り組み例を以下に掲げる。
・日本政府は2007年にRPS目標値を見直し、2010年までに1.35%の目標値を、2014年までに1.63%と改訂した。この目標が達成すれば、2014年の発電容量は推定160億kWhに達することになる。
・東京都が中心となって、グリーン電力購入推進に積極的な全国の自治体による「グリーンエネルギー購ネットワーク」を2007年に発足した。
・東京都は総エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合を現状の3%未満から2020年までに20%に引き上げるという大胆な目標を提案した。これは「東京都環境基本計画」にあるCO2排出量削減目標(2000年比でCO2排出量を25%削減)の一環であり、後に500億円の予算が承認されている。また、同時に民間企業、電力会社による「太陽エネルギー利用拡大会議」を設置し、2017年までに東京都内の太陽光発電と太陽熱温水の容量が100万kWにする目標を掲げている。
【訳者注:『東京都環境基本計画(2008年3月)』には「温暖化効果ガス」排出量を25%削減するとあるが、本サマリーレポートでは原文に従い「CO2排出量」を25%削減としてある】
・横浜市などの市町村や都道府県の半数以上が、「地域新エネルギービジョン」の一環として再生可能エネルギー導入を盛り込んだ都市計画を進めている。
・9つのコミュニティが風力発電所を所有や融資し、2007年の発電容量は2万kWにのぼる。長野県飯田市では全国の市民からの出資を募集し、太陽光発電所に融資額2億円の事業を稼働している。
ほかに、京都議定書の目標に従って、世界の多くの都市がCO2排出量の削減目標値を定めていることにも触れている。ベルリン、メルボルン、オレゴンなどの例に混じって、10%の削減目標値を設定した日本の札幌市も例に挙げられている。
(5)電力網が接続されていない(独立型)農村地域の再生可能エネルギー
農村地域(独立型)へのエネルギー供給は、伝統的なバイオマス(木や農業残渣、糞など)の利用が一般的であるが、現在では、調理や照明、動力、揚水に近代的な技術(風力、太陽光発電、バイオマスガス化、小規模水力など)の導入に目が向けられている。報告書では、農村地域(独立型)で、再生可能エネルギーがどのように活用されているかを述べ、あわせて電化政策についても紹介している。
伝統的な活用とは、薪、農業・森林残渣、糞、そのほか未加工のバイオマス燃料を燃焼させて、家庭用調理や暖房などに活用することである。バイオマスの中には炭にして市場で販売されるものもある。バイオマスは、多くの途上国で一次エネルギー総供給量の中で大きな割合を占めている。
例えば、2001年の従来型バイオマスが一次エネルギー総供給量に占める割合は、アフリカで49%、アジアで25%、南米で18%となっている。中でも、アフリカでは、同割合が90%を占めるギニアやニジェール、80%を占めるマリなど、比較的従来型バイオマスの活用度が高い。
そのような中、バイオマス消費量を削減できる効率的なバイオマス活用方法として、改良型バイオマス調理ストーブが開発された。これは、従来の調理方法と比べてバイオマス消費が10〜50%節約でき、温室効果ガスも削減できるストーブで、ここ20年もの間に世界で2億2,000万台が導入された。
特に取り組みが進んでいるのは中国、インド、ケニアである。また、製造、配給、販売のネットワーク化とあわせ、調理ストーブの改良や商品化を支援する計画や政策が奏功し、アフリカでは800万台を超える改良型ストーブが普及している。
女性労働時間の削減効果も期待できるとして、バイオガスプラントの活用も進んでいる。家庭用のバイオガスプラントが開発され、現在、世界2,500万家庭で明や調理に利用されている。中国、インド、ネパールでは政府が補助金政策を打ち出し、それぞれ2,000万戸、390万戸、15万戸の家庭に導入された。中国では、さらに産業用として、2020年までに4,500万台のバイオガスプラントを導入する計画を打ち出している。
また、バイオマスガス化も、途上国、特に中国やインドで成長している。生産されたガスは、暖房または電力や動力のためのガスタービン、ガスエンジンで利用されており、燃料消費量削減のほか、インドでは香辛料の乾燥時間短縮にもつながり、労働者の作業状態も向上している。
多くの村落では、小規模電力網によって電力の供給を受けている。遠隔地や離島における従来の小規模電力網はディーゼルや小水力によるものだったが、現在では太陽光発電、風力、バイオマス、バッテリーや補充用ディーゼル発電機との複合発電システムなどに徐々に替わりつつある。
また、太陽光や風力発電による灌漑用水、飲料水の揚水設備の計画や投資も増加している。風力電気付きポンプはアルゼンチンで100万台が普及し、南アフリカ(30万台)などアフリカ各国でも導入されている。世界で5万台を超える太陽発電付きポンプは、その多くがインドで利用されている。
独立型の住宅用太陽光発電システムも、2007年までに、途上国の250万戸の家庭で普及した。最も導入数が増えているのがアジアの数カ国(バングラデシュ、中国、インドなど)で、これは小口融資や現金での小規模システム販売制度で購入しやすくなったことや、政府や国際援助プログラムが市場を支えたためである。
アフリカでは、農村地域の電化率や一人当たりの国民所得が低いことなどから、導入スピードは遅いものの、独立型住宅用太陽光発電システムは数カ国で普及が進んでいる。ケニアでは20万台が導入され、小型モジュールの現金販売などで市場が拡大しつつある。アフリカ以外でもメキシコ、モロッコなどで導入されている。
家庭以外にも、小規模工場、農業、通信、衛生、教育のための電力源として再生可能エネルギーが注目されており、シルクやブロックなどの製造工場や映画館、学校などで活用されている。
政府の農村地域電化政策・計画や、国際支援計画では、戦略として再生可能エネルギーを利用し、電力ネットワークにアクセスをもたない農村地域の人々に電力を供給している。現在、世界で推定3億5,000万戸の家庭に電力が供給されていない。
アフリカの多くの国は電力に接続している割合が低く、特に厳しいのは、ケニア、マリ(5%)とザンビア(2%)である。対策として考えられるのは電力網の延長だが、コストや地理的条件が導入の妨げとなったため、再生可能エネルギー技術の導入拡大に弾みがついた。ブラジルの「すべての国民に灯りを」計画、中国の村落電化計画、インドの遠隔地農村電化計画など、農村地の電化計画を進める国家政策も出てきており、さまざまな途上国で再生可能エネルギー技術による電化政策が展開している。
巻末には、このサマリーで触れたグラフや表のほかにも、「上位10カ国の風力発電容量2006年」、「発展途上国、EU、上位6カ国の再生可能エネルギー容量2006年」、や「再生可能エネルギー追加・既存容量2006年」、「固定価格制を導入した国、州、地域の総数」など、図・表を多く盛り込んでいる。また、用語集を載せ、専門用語について詳しく説明している。
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読んでいるとわくわくしてきますね! 世界ではこんなに再生可能エネルギーへの移行が始まり、進んでいるんだ〜、と。
日本でも、さまざまな再生可能エネルギーの利用に向けて、民間の取り組みは盛んになってきたように思いますし、一般の人々の間でも関心が高まっています。自治体でも脱化石燃料への動きに力を入れるところも出てきています。
あとは国全体を動かしていく政府のビジョン(目標)と、そのための効果的なしくみ(補助金だけではなく、市場を作っていくための制度など)があれば、日本でもわくわくする展開になることでしょう。