あっという間に12月ですね〜。
昨日、無事ブータンから帰ってきました。バンコク経由だったため、バンコク空港閉鎖に伴い、ご心配をかけましたが、現地にてチケットを再手配して、ニューデリー経由で戻ることができました。
ブータンでの第4回GNH会議も、そのあと少しだけですが、郊外に出かけたことも、毎日のブータンの方々との幸せや国をめぐるさまざまなディスカションも、とてもとても実りが多く、心に残る出張となりました。さっそく共同プロジェクトの話も始めたので、また行きたいと思っています。
ブータン・レポートについては、数百枚の写真を整理したあと、写真を入れながらお届けしたいと思っていますので、少しお待ち下さい〜。
さて、今日は太陽熱の利用についての話です。(ブータンでもこの話をしてきたのでした)
太陽熱の利用というと、屋根の上に載せる太陽熱温水器を思い浮かべることが多いでしょう。太陽熱利用技術の最初の特許を出願したのは1910年、日本人でした。
日本でも最盛期には年間出荷台数は80万台でしたが、その後衰退し、今では年間出荷台数は5万台ほどとのこと。スペインや中国その他で、太陽熱温水・暖房器が爆発的に広がっているのと、残念な好対照になってしまっています。。。
太陽熱は、温水器を通して利用するだけではなく、発電にも使えます。日本では「太陽熱で発電?」とちょっとピンとこないのですが、世界では非常に増えているとのこと。アースポリシー研究所からの「プランB最新レポート」を実践和訳チームの翻訳でお届けします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
熱く盛り上がる太陽熱発電
http://www.earth-policy.org/Updates/2008/Update73.htm
ジョナサン・G・ドーン
太陽熱発電は2006年に15年間の眠りから覚めると急激に発展し、2007年には全世界で新たに100メガワットの電力が供給された。1990年代は化石燃料が安かったことに加え、州や連邦政府の助成策が打ち切られたので、太陽熱発電の開発熱は下火になった。しかし近年のエネルギー価格の上昇や、地球規模の気候変動に対する不安の高まり、さらには助成金の新設などによって、この太陽熱発電が再び注目を集めている。
太陽光が地球に70分間降り注ぐだけで、そのエネルギーは世界全体の年間エネルギー消費量に相当する。このことを考えると、太陽エネルギーは無限の可能性を秘めているといってもよいだろう。集光型太陽熱発電(CSP)の発電能力は、今後5年間にわたり16カヶ月ごとに倍増すると見込まれており、2012年には世界中に設置されたCSP設備の発電容量は、今の14倍の6,400メガワットに達するだろう。
(
http://www.earth-policy.org/Updates/2008/Update73_data.htm#table1.のデータ参照)
半導体を用いて太陽光を直接電気に変換する太陽光発電(PV)と違い、CSPプラントは太陽熱で電気を生み出す仕組みだ。虫めがねで光線を集めるのと同じように、反射鏡を使って液体を充填した容器に太陽光線を集める。液体に吸収された熱を用いて蒸気を発生させ、その蒸気で発電用タービンを動かす。
余った熱は溶融塩を充填した大型の断熱タンクに貯蔵されるので、日没後も発電可能である。CSPプラントを効率的に運転するには膨大な日射量が必要になるため、砂漠は理想的な設置場所となる。
CSPが既存の発電方法に大きく勝る点が2つある。クリーンで炭素を排出せずに発電できることと、エネルギー源が太陽なので燃料費がかからないことだ。さらに熱としてエネルギーを貯蔵するのも、電力を電池貯蔵するよりかなり低コストであるため、CSPは経済的な方法で日射の途切れを克服し、急な需要に対しても送電できるようになっている。
太陽熱発電の開発が世界で最も進んでいるのが米国とスペインである。2012年までに供給開始予定の新規発電容量は、両国だけで合計5,600メガワットを超える模様だ。これは2012年までの世界全体の新規発電量の9割以上を占め、170万世帯の電力需要を十分に満たす量である。
現在稼動している最大規模の太陽熱発電所は、カリフォルニア州モハベ砂漠にあるSEGSプラント(Solar Electricity Generating Station)である。この出力354メガワットの複合型発電所は、1985年から1991年の間に順次供給を開始し、10万世帯分の電力をほぼ20年にわたって生産してきた。2007年6月には、ネバダ・ソーラー・ワン(出力64メガワット)が、米国で16年ぶりの大型商業用CSPプラントとして操業を開始している。
現在、米国には新たに計画中のCSPプラントが10基以上あり、2012年までに約3,100メガワットの電力供給が見込まれている(
http://www.earth-policy.org/Updates/2008/Update73.htm#table6. のデータを参照)。
特に目を引くのは、カリフォルニア州のモハベ・ソーラーパーク(出力553メガワット)や同州のソーラー1(500メガワット)・ソーラー2(300メガワット)計画、フロリダ州の発電所(300メガワット)やアリゾナ州ソラナプラント(280メガワット)などだ。
スペインでは、1980年代半ば以降では米国以外で初となる商業用CSPプラントが、2007年に操業を開始した。タワー集光型プラントPS10(出力11メガワット)である。このタワープラントは総合太陽エネルギー発電所ソルカル・プラットフォーム(設備容量300メガワット)の一部であり、2013年に全体が完成すると、CSPプラント10基を備え、15万3,000世帯分の電力の発電が可能になる。同時に年間18万5,000トンのCO2排出も抑制できる。スペイン全体では、60基以上のプラント建設計画が進んでおり、2012年までに2,570メガワットの電力が供給される見込みだ。
太陽熱発電が再び注目を集めているのには、経済的、政策的な奨励措置も一役買っている。米国では、連邦政府による30%の投資税額控除(ITC)が2008年末まで適用されており、期間延長となる見込みも高い。
また26の州が、一定の電力を再生可能エネルギーで賄うことを義務づけるRPS法(RenewablePortfolio Standards)を採用している。例えばカリフォルニア州では、電力会社に対し、2010年までに再生可能エネルギーによる電力の割合を20%まで引き上げるよう義務づけているし、ネバダ州も2015年までに20%(うち太陽エネルギー5%以上)とするよう求めている。
スペインでは、主な奨励策として固定価格買取制度がとられており、CSP電力については、電力会社が25年間、発電事業者からキロワット時あたり0.26ユーロ(約42円)で買い取ることが法的に保証されている。
米国南西部のCSP電力は、ITC減税後でキロワット時あたり約13〜17セント(14〜19円)である。今や、蓄熱機能を備えたCSPは、天然ガスのシンプルサイクル火力発電とコストの面で競合できるところまできている。米国エネルギー省はCSP発電コストを2015年までにキロワット時あたり7〜10セント(8〜11
円)に、さらに2020年までには5〜7セント(6〜8円)まで引き下げ、化石燃料発電と対抗できるようにする考えだ。
米国、スペイン以外でも、フランス、ギリシャ、イタリア、ポルトガルがインセンティブ規制によって、2020年までに3,200メガワット分のCSP設備の設置を促進する見込みだ。中国も、同時期までに1,000メガワット分の建設を予定している。他にも、オーストラリア、アルジェリア、エジプト、イラン、イスラエル、ヨルダン、メキシコ、モロッコ、南アフリカ、アラブ首長国連邦といった国々がCSPを開発中である
(
http://www.earth-policy.org/Updates/2008/Update73_data.htm#fig7. の地図参照)。
太陽熱発電所を電気自動車への電力供給に利用すれば、CO2排出量をさらに削減できるし、石油への依存度が下がることで戦略的な利点も生まれる。イスラエルでは、社会基盤省がCSPプラント建設に入札制度を採用したり、太陽エネルギー発電による電力を1キロワット時19.4セント(21円)とする固定価格を導入しており、これが後押しとなって、ネゲブ砂漠での最大250メガワットのCSP開発に大きな関心が集まっている。
自家用電気自動車による交通システムの構築をめざすプロジェクト・ベタープレイス社という企業が、2010年末までにイスラエル国内で電気自動車10万台の普及を計画しているが、ネゲブ砂漠の設備があれば、この10万台に十分な電力を供給することができるだろう。
カリフォルニアに本拠を置く太陽熱発電開発会社オースラ社の報告によると、太陽熱発電の利用によって、米国では化石燃料で発電している電力の9割以上と、輸送用として使われている石油の大部分が削減でき、しかもそのコストは石油輸入を続けた場合よりも低くなるという。
CSPの設置に必要な土地面積はおよそ3万8,850平方キロメートル(ネバダ州の面積の15%に相当)。随分広いように聞こえるが、使用される土地を等価電気出力当たりでみると、CSPプラントの方が、ダム建設で水没した土地面積を含めた場合の大型水力発電ダムや、石炭を採掘する鉱山を勘定に入れた場合の火力発電所よりも少ない。
また2008年1月に科学雑誌『サイエンティフィックアメリカン』に発表された別の報告では、2050年までに、国内電力の69%と交通や輸送を含めた全米のエネルギーの35%を、CSPプラントとPVプラントからの電力で賄うことが提案されている。
北アフリカから中東にかけて広がる砂漠地帯で、その0.3%にも満たない土地にCSPを設置すれば、この両地域の他、EU諸国の電力も賄えるのではないか。そう考えて、ローマクラブ、ハンブルグ気候保護基金、ヨルダン国立エネルギー研究センターの3団体からなる汎地中海再生可能エネルギー公社(Trans-Mediterranean Renewable Energy Cooperation)は、2003年、DESERTECと 呼ばれる太陽熱発電プロジェクトを立ち上げた。
中東や北アフリカから欧州に向けて送電するため、再生可能エネルギーのネットワークを拡げようとするこの公社は、2050年を目途に中東から北アフリカ一帯に10万メガワット規模のCSPプラントの建設を計画している。欧州への送電には地中海に敷設される送電線が使われる。
その実現に向けて先陣を切ったアルジェリアの計画は、同国のアドラールとドイツのアーヘンの間を3,000キロメートルの電線で繋ごうというものだ。この計画で、2020年までに太陽熱発電から生まれた6,000メガワットの電力を輸出しようというのである。
2012年までのCSPの予想年間成長率がそのまま2020年まで維持されるなら、世界のCSPによる発電量は石炭火力発電所135基分に匹敵する20万メガワットを上回ることになるだろう。CSP産業には数千億円の資金が流入し始めており、また米国が二酸化炭素の排出規制を急いでいることもあって、CSPの発電量が上記のレベルに近づく体制が整いつつある。
2020年までに炭素排出量を80%削減する計画の一環として、アースポリシー研究所は世界全体のCSP発電量を20万メガワットにすることを目標に掲げている。この件について、詳しくは『プランB3.0:人類文明を救うために』の11〜13章を参照。(
http://www.earth-policy.orgにて無料でダウンロードが可能)
問い合わせ先:
メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線 12
電子メール:rjk @earthpolicy.org
研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線 14
電子メール:jlarsen @earthpolicy.org
アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:
www.earthpolicy.org
(翻訳:山口 淳子、山本 夕佳、酒井 靖一)
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世界ではこんなに力を入れて増やしているのですね。日本では太陽熱発電はどうなのでしょうね? どなたかご存じでしたら、教えて下さいな。