[No. 1563] で世界の太陽熱発電の広がりについて、レスター・ブラウン氏の研究所からお伝えしました。最後に、
> 世界ではこんなに力を入れて増やしているのですね。日本では太陽熱発電はどう
> なのでしょうね? どなたかご存じでしたら、教えて下さいな。
と書いたところ、さっそくお詳しい方から情報をいただきました。ご快諾を得て、みなさんにもお伝えします。
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太陽熱発電は、「直達光しか集光利用できない」ので、残念ながらわが日本のように散乱光の多いところでは、無理といえます。
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日本では、1980年代に電総研(つくば)の田中忠良さんという方が熱心に太陽熱発電の調査・研究をされていましたが、やはり同様な結論に達しています。
同じ頃、通産省のサンシャイン計画が始まり、太陽熱発電か太陽電池か?ということで香川県仁尾町で小規模実験(1MW)も行なわれましたが、反射鏡集光がうまくできなくて、日照量はかなり豊富なのに、ほとんど発電はできず、計画倒れに終わり、サンシャイン計画最初の5年間のみの実験でで打ち切られました。(同時に並行して行なわれた四国・西条市のPV発電所は、コスト高ではあるが、計画通りの発電率を実証できました)
一方、太陽電池(PV)の方は、反射集光できない散乱光でも拾って、到達全光に比例する発電率(当時10%)が可能です。PVはサンシャイン計画第2次以降にも、発電率向上とコストダウンを目指して引き続き採択されました。
1992年に私も加わった視察団で、カリフォルニア・モハベ砂漠で、PV発電プラントと太陽熱発電プラントの双方を見学致しました。
→大阪科学技術センター「欧米新エネルギー利用技術調査報告書」64P,(1992).
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砂漠では、PV発電は●高コスト・低効率(10%)で、◎太陽熱発電率17%(集光率=53%、熱発電率33%、SEGSⅢで)に全く太刀打ちできないことが明瞭でした。 だが、ちょっとう薄雲がかかっただけでも、日照量は誤差範囲の変動なのに、反射鏡集光率が急減して、発電量が激減するのがメータで観察できました。団員一同、「砂漠でなきゃ、だめだ。年中、うす雲が絶えないわが日本では無理。PVするしかないなあ」との感想でした。
立地条件としては、日照量がいくらあっても「直達光率何%?」と聞いておかないと、とんだケガをすることになります。
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その後、十数年、太陽熱発電の技術は熱機関ですから既に飽和しているのに対して、PVの高効率化・低コスト化はまだ進歩が続いており、わが日本も、そう悲観した太陽立地ではなくなりつつある、と認識しております。
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詳しい情報をありがとうございました! 太陽熱発電の場合、日照量だけではなく「直達光率」が大事なのですね。その点で日本は好適地ではないとのこと、勉強になりました。でも、太陽光発電(PV)だったらだいじょうぶとのこと、こちらの普及がやはり大きな鍵を握ります。
さて、今回もアースポリシー研究所のレポートより、もうひとつの再生可能エネルギーである地熱発電について、実践和訳チームの翻訳でお届けします。世界では現在何カ国で地熱発電をおこなっているでしょう? 世界の「地熱発電王国」はどこでしょうか?
レポートのあとに、日本の現状についても載せてあります。
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アースポリシー研究所
プランB最新レポート(2008年8月19日)
世界の地熱発電、爆発的拡大の兆し
http://www.earthpolicy.org/Updates/2008/Update74.htm
ジョナサン・G・ドーン
化石燃料の価格が急騰し、各国が石油への依存度を減らす方法や温室効果ガス排出量の削減方法を探る中で、発電への地熱の利用に新たな注目が集まっている。
地熱エネルギーによる発電は、1904年にイタリアのラルデレッロで始まり、今では24カ国で行われている。そのうち5カ国は、自国の全電力の15%以上を地熱発電で得ている。
2008年の前半に、世界の地熱発電の設備容量は合計1万メガワットを超え、現在、ほぼイギリスの人口に相当する6,000万人分の電力需要を満たすに十分な電力が生産されている。2010年には、46カ国で地熱発電が行われ、合計設備容量は1万3,500メガワットにまで増えるかもしれない。これは石炭火力発電設備27基分に相当する。
地球の表面を覆う地殻の最上部、厚さ約10キロメートルの範囲に存在する熱エネルギーは莫大で、すべての石油と天然ガスの資源を合わせたエネルギー量の5万倍にもなる。このエネルギーは、地球の核で生じるエネルギーと、ウラン、トリウム、カリウムといった天然の放射性同位体の崩壊によって生じるエネルギーによるものである。
チリ、ペルー、メキシコ、米国、カナダ、ロシア、中国、日本、フィリピン、インドネシアなどの環太平洋火山帯(太平洋を取り巻く火山活動の活発な地域)に位置する国々は、地熱エネルギーが豊富である。アフリカのケニアやエチオピアなどにまたがる大地溝帯も、地熱に富む。世界全体では、自国の電力需要をすべてまかなうに足る地熱資源を持つ国は39カ国あり、その人口は合計7億5,000万人以上に上る。(
www.earthpolicy.org/Updates/2008/Update74_data.htm のデータを参照。)
地熱発電を行うには、通常、蒸気タービンを動かすために熱水や水蒸気が溜まっている地下の貯留層(槽)が必要であった。しかし、現在では、閉じた熱交換システムで沸点の低い液体を用いる新しい技術により、これまでよりもずっと低い温度での発電が可能である。
この画期的な進歩により、地熱資源に関しては名の知られていないドイツなどでも地熱発電が可能になってきている。また、この進歩が、2010年までに地熱発電を行う国がほぼ2倍になるかもしれないという理由の一つである。
地熱発電所には、低炭素で燃料費のかからない地元のエネルギー資源で発電できるということ以上に、常時必要なベースロード電力が1日24時間供給されるという長所がある。蓄電や非常用電源は必要ない。
米国は世界で最も地熱発電量が多い国である。2008年8月時点でのアラスカ、カリフォルニア、ハワイ、アイダホ、ネバダ、ニューメキシコ、ユタの7州の地熱発電容量の合計は、約2,960メガワットに達する。
設備容量が2,555メガワットと世界のどの国と比べても多いカリフォルニア州では、電力の約5%を地熱エネルギーから得ている。この設備のほとんどは、サンフランシスコ北部の地質学的活動が活発なガイザーズという地域に導入されている。
「2005年エネルギー政策法」により、地熱発電が米国政府の再生可能エネルギー生産税控除を受けられるようになったため、米国西部の多くの市場では現在、地熱資源で発電される電力のコストが化石燃料による電力コストと等しくなっている。経済情勢が追い風となり、地熱産業は急速に活性化している。
2008年8月時点で、97もの新規地熱発電プロジェク97もの新規地熱発電プロジェクトが承認されており、その設備容量の合計は最大で4,000メガワットに上る。これらのプロジェクトは13州で開発中であり、そのうち約550メガワットのプロジェクトはすでに建設段階にある。
新規設備には、バルカン・パワー社のネバダ州ソルトウェルズとオーロラ近くの350メガワットと245メガワット、カルエナジー社のカリフォルニア州南部のソルトン・シー近郊の155メガワット、およびダヴェンポート・パワー社のオレゴン州ニューベリー火山近くの120メガワットなどの、大規模プロジェクトが多く含まれているため、7,000人の正規雇用の創出が見込まれている。
現在、開発されているのは、可能性のごく一部にすぎない。米国エネルギー省の推定では、低温度技術の登場により、少なくとも26万メガワットの米国内地熱資源が開発可能である。マサチューセッツ工科大学が主体となった研究では、地熱の研究開発に15年間で約10億ドル(約1,000億円。石炭火力発電所1基分の建設コスト程度)投資すれば、2050年までに10万メガワットの商用設備の展開につながると指摘している。
欧州で最も地熱エネルギー開発が進んでいるのは、イタリア(810メガワット)とアイスランド(420メガワット)である。イタリアでは2020年までに容量がほぼ倍増すると予想されている。電力需要の27%を地熱利用でまかなっているアイスランドは、発電に占める地熱の割合が世界で最も高い。設備容量がわずか8メガワットのドイツは遅れを取っているが、2004年に導入されたキロワット時当たり0.15ユーロ(約20円)の固定価格買取制度の効果が現れはじめ、バイエルン州を中心に、現在では150のプラントが建設中である。
地熱発電量が多い上位15カ国のうち、10カ国は発展途上国である。電力の23%を地熱エネルギーでまかなっているフィリピンは、米国に次いで世界第2位の地熱発電量を有する。フィリピンは、2013年までに地熱発電設備容量を60%以上増やし、3,130メガワットにすることを目標としている。
世界第3位のインドネシアは、さらに大きな目標を掲げている。今後10年間で新たに6,870メガワットの地熱発電容量を開発するというもので、これは現在同国がすべてのエネルギー源から得ている発電量のほぼ30%に相当する。インドネシア国営石油会社のプルタミナは、この事業の大半を手掛けることを期待している。そうすれば、再生可能エネルギー市場に進出し始めた在来型エネルギー企業のリストに名を連ねることになるのだ。
アフリカの大地溝帯には、地熱開発の可能性が無限にある。他国にさきがけて開発をリードしているのはケニアだ。2008年6月下旬に、ムワイ・キバキ大統領は、およそ1,700メガワット分の地熱発電を10年以内に新たに導入すると発表した。これは現在の地熱発電容量の13倍で、ケニアがすべてのエネルギー源から得ている総発電容量の1.5倍に相当する。
また、アフリカの地熱エネルギー事業に1億5,000万ドル(約150億円)資金提供するというレイキャビク・エナジー・インベストの支援で、ジブチは数年以内に電力のほぼすべてを地熱でまかなうことを目指している。さらに開発を後押ししているのは、世界銀行から一部資金援助を受けている国際機関のアフリカ地溝・地熱開発機構(ARGeo)だ。ARGeoは、地熱開発の初期段階で損失を受けないように投資家を保護して、大地溝帯の地熱エネルギー利用を促進しようとしているのだ。
世界のエネルギー消費の30%以上を占める産業界も、確実で低コストの地熱エネルギーへの転換を始めている。世界的な大手産金会社のリヒール・ゴールドは、パプアニューギニアに56メガワットの地熱発電所を所有し、石油火力発電よりはるかに低いコストで、自社の電力需要の75%をまかなっている。アイスランドでは、レイキャビク近郊に地熱発電設備を5基建設する計画がある。2012年に完成すれば総容量は225メガワットになり、その電力が新設のアルミニウム製錬所に供給される予定である。
再生可能エネルギーである地熱には数十万メガワット規模の開発の可能性があるが、その開発はまだ始まったばかりである。しかし、価格変動が大きく炭素含有率の高い化石燃料に代わるものとして、費用対効果が高く低炭素の再生可能エネルギーに各国の指導者がますます関心を寄せる中、今は利用の少ない地熱発電もこれから一気に主流になるだろう。
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2020年までに炭素排出量を80%削減する計画の一環として、アースポリシー研究所は世界全体の地熱発電量を20万メガワットにすることを目標に掲げている。詳細は『プランB3.0:人類文明を救うために』(Plan B 3.0: Mobilizing to SaveCivilization)の第11章から13章(
http://www.earth-policy.orgにて無料ダウンロード可能)を参照。
問い合わせ先:
メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線 12
電子メール:rjk @earthpolicy.org
研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線 14
電子メール:jlarsen @earthpolicy.org
アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:
www.earthpolicy.org
(翻訳 A.I. 小林紀子 山田はるみ)
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日本の地熱発電の歴史と現状です。
●歴史
日本では、1919年に海軍中将の山内万寿治氏が大分で地熱利用のための噴気孔掘削に初めて成功し、その後事業を引き継いだ、太刀川平治博士が1925年に日本最初の地熱発電(出力1.12kW)に成功しました。
以来、国内の各方面で実用化に向け研究開発を重ね、1966年、日本で最初の本格的地熱発電所として松川地熱発電所が運転を開始しました。
(日本地熱学会の「地熱発電の歴史」より抜粋)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/grsj/gaiyou/index1_4.html
●現状
日本全体では、18箇所、21プラント、合計容量約53万5260kWあります。
内訳は、北海道と関東(八丈島)に1箇所ずつ、東北に7箇所、九州に9箇所。そのうち、電力会社などの事業用は13箇所、ホテルなどの自家用が5箇所。(2007年3月末時点)
(資源エネルギー庁の施策情報の「地熱発電の現状」より抜粋)
http://www.enecho.meti.go.jp/energy/ground/data/080826.pdf
レスター・ブラウンが日本に来るたび、「これだけ温泉があるってことは地熱がとても豊富ということなんだよ。もっと活かせるのに」と言います。
確かに、温泉に行っても、脱衣場の照明も暖房も、「そこにある地熱」ではなく、化石燃料などによる遠くの発電所からの電力です。(_ _;
「そこにある地熱」をもっともっと使っていけるよう、技術開発もそうですが、普及のためのしくみを作っていかなくてなりませんよね(上記のレポートを読んでも、税金その他で普及のしくみができれば大きく広がることがわかります)。
日本の「低炭素社会づくり」のための行動計画などでは、太陽光発電は突出した注目と投資を集めていますが、太陽光発電以外の日本にある自然エネルギーの利用拡大にも同じように力を入れていく必要があります。
余談ですが、地熱発電ビジネスを舞台にした経済小説『マグマ』が面白いそうです。私も読んでみようと思っています。熱くなれるかも。(^^;
「マグマ」(朝日文庫)
真山 仁 (著)