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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2008年12月30日

レスター・ブラウン氏「新しい物質経済のもとでエネルギー効率向上へ-Part I」(2008.12.30)

エネルギー危機
 
年の暮れ、いかがお過ごしでしょうか。今年はどんな1年だったかな〜、来年はどんな1年になるのかな〜、と思いつつ、私は相変わらずPCに向かってます(^^; きっとレスターも相変わらず、夕暮れを窓から臨む自分の部屋で、本や資料を読んだり、自分の原稿に手を入れているのだろうなあ、と思います。(レスターの部屋はいつもきれいに片づいているのですよねー、そこが私と違うところ。^^;) そのレスターからの『プランB3.0:人類文明を救うために』より、というニュースレターを実践和文チームが訳してくれましたので、お届けします。 「使い捨て経済そのものが歴史上のガラクタとして葬られる」なんていう、聞く人に残る表現を、レスターはじょうずに作るのですねぇ。内容だけではなく、「伝えるスキル」の面でも、勉強になります。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 新しい物質経済のもとでエネルギー効率向上へ-Part I http://www.earthpolicy.org/Books/Seg/PB3ch11_ss6a.htm レスター・R・ブラウン 現代の使い捨て経済では、物を生産、加工、あるいは処分する際に、物ばかりかエネルギーも浪費し、気候変動を引き起こす二酸化炭素を不要に排出している。自然界では、一方向に向かう直線的な流れは長く続かない。その延長で考えれば、拡大を続ける地球経済においてもそのような流れが続くことは不可能なのだ。過去半世紀にわたって進化してきた使い捨て経済は異常なことであり、今や、使い捨て経済そのものが歴史上のガラクタとして葬られる運命にある。 原材料としての物質の使用を劇的に減らすことは可能だという声が最初にあがったのはドイツである。1990年代初めに、まずフリードリヒ・シュミット・ブレークが、次いでドイツ連邦議会の有力な環境保護推進派であったエルンスト・フォン・ワイツゼッカーが、資源の生産性効率を上げるべきだと訴えた。 彼らは、当時広く利用されていた天然原料について、その使用量を1/4にしても近代産業経済は十分に効率よく機能するのだと主張した。数年後、シュミット・ブレークはフランスで「ファクター10研究所」を設立し、適切な奨励策があれば、既存の技術と管理方式で資源生産性をさらに高い10倍にまで上げることも可能であることを示してみせた。 2002年には、米国の建築家ウィリアム・マクドノウとドイツの化学者ミヒャエル・ブラウンガートが共著で『Cradle to Cradle: Remaking the Way We MakeThings(仮邦題:ゆりかごからゆりかごへ:ものづくりの新しい方法)』を出版した。彼らはその中で、廃棄物や汚染はすべて避けることができると結論づけ、マクドノウは次のように述べている。「汚染は設計の失敗の象徴なのだ」と。 世界で消費されるエネルギーを見ると、プラスチック、肥料、鉄鋼、セメント、紙などを生産する製造業による消費エネルギーが全体の30%以上を占めている。製造業の中でも最も多くエネルギーを消費しているのが、プラスチック、肥料、洗剤を製造する石油化学産業だ。その量は、世界の全製造分野で消費されるエネルギーの約1/3を占める。 製造部門で消費される化石燃料は、大部分がプラスチックなどの原材料として使われており、リサイクルが進めばその量を減らすことができる。世界全体で、リサイクル率を高め、さらに製造システムを現在稼動している最も効率のよいものに移行させるなら、石油化学産業のエネルギー消費は32%削減できるだろう。 製造部門で2番目にエネルギー消費量が多いのは、2006年の生産高が12億トンを超える鉄鋼業で、エネルギー消費量は部門全体の19%を占めている。高炉システムを現在普及している中で最も効率の良いものに変えたり、使用済み鉄鋼を100%回収するなど、エネルギー効率を高める手立てを講じれば、鉄鋼業界はエネルギー消費量を23%削減することが可能だ。 原材料消費の削減には、鉄鋼のリサイクル--鉄鋼消費量はそのほかの金属すべてを足し合わせたよりはるかに多い--が鍵となる。鉄鋼消費の大半を占めるのは、自動車、家電、建築の3分野である。米国では、自動車のリサイクル率は100%に近い。車の価値を考えれば、辺ぴなガラクタ置き場で錆びるにまかせることなど到底できないのだ。 また米国における家庭用電化製品のリサイクル率は推定90%、同じくスチール缶は60%、建築用の鉄鋼については、鉄骨・鋼桁は97%回収されているが、補強鋼は65%程度となっている。それでもなお、米国では毎年、国内自動車産業のニーズを十分満たせる量の鉄鋼が廃棄され続けている。 鉄鋼のリサイクルは、30年以上前にアーク式電気炉が登場したのをきっかけに増え始めた。鉄鉱石からの製鉄と比べわずか1/4のエネルギーで、鉄スクラップを原料にした鉄鋼生産が可能になったのだ。現在、この電気炉製鉄法が国内生産の5割以上を占める国は20カ国を超え、ベネズエラ、サウジアラビアなど、すべて電炉法に頼る国もある。 現在は鉄スクラップが不足しており電炉法に完全に移行することはかなわないが、2020年、発展途上経済の国々が老朽化したインフラの撤去を始める頃には、大量の鉄スクラップが出回るようになるだろう。全体の3/4が電炉法に移行すれば、鉄鋼業のエネルギー消費量は40%近くも削減できることになる。 次に、製造部門でエネルギー消費量の7%を占めるのが、2006年の生産高23億トンのセメント産業である。世界のセメントの5割近くを生産する中国は、生産量が同国に続く上位20カ国の合計量を上回るほどだが、その製造方法は驚くほど非効率なものだ。 もし中国が日本の技術を用いたとすれば、製造時のエネルギー消費量は45%削減できることになる。また世界中の製造業者が、現在利用されている中で最も効率の良い乾式キルン(焼成窯)に切り替えれば、セメント産業のエネルギー消費量は42%削減可能だ。 交通システムの再構築も、原材料使用の削減に大きく貢献し得る。例えば都市交通を改善し、自家用車60台分(重量各1.5トン、計90トン)の交通をバス1台(12トン)でまかなうようにできれば、原材料使用量は87%の削減になる。個人が自家用車を1台所有する代わりに自転車1台を選ぶことで、原材料の使用量は99%も削減できる。 世界各地の都市では、廃棄物に含まれる多くの物質をリサイクルすることが大きな課題となっている。リサイクルして物を作るときのエネルギー消費量は、同じ物を天然原料から製造する場合に比べてほんのわずかで済むからだ。 今では、ほぼすべての紙製品がリサイクル可能となった。ガラスやほとんどのプラスチック、アルミニウム、そして建物が取り壊される時に出るそのほかの材料も同じだ。 ヨーロッパや日本などのように、人口が安定し、高度な産業で成り立っている経済社会では、天然原料を使うよりもまず、その社会にすでに蓄積されている材料に頼ることができるのだ。しかも、鉄鋼やアルミニウムのような金属は永久に利用でき、そして何度でも再利用できる。 リサイクルを促進する最も効果的な方法の一つは、埋立ゴミ処理税を導入することである。最近の例では、米国のニューハンプシャー州がゴミ処理有料制度を導入した。同州では、この制度の下、すべてのゴミ袋に対して住民に料金を課すしくみが各自治体で進んでいる。 同州にある人口およそ2,000人のライム町も、埋立ゴミ処理税を導入しており、2005年には13%だったゴミのリサイクル率が2006年には52%に上昇した。リサイクル材の量も2005年の89トンから2006年には334トンに急増している。その中には、ダンボール、紙類、アルミニウムが含まれており、それぞれ1トン当たり、90ドル(9,700円)、45ドル(4,850円)、1,500ドル(16万2,000円)で買い取られている。この制度の導入は、リサイクル量を増加させたのと同時に、町の埋立ゴミ処理料金を下げ、その上、リサイクル材の販売によるキャッシュフローも生み出した。 カリフォルニア州のサンノゼ市は、埋立地に持ち込まれていた一般廃棄物の62%をすでに再利用するかリサイクルしているが、今、同市が着目しているのは、建物の建設現場と解体現場から出る大量の廃棄物の流れだ。 これらの廃棄物は、市内二十数カ所のリサイクル専門工場のうちのいずれかにトラックで運ばれる。例えば、同市内のプレミア・リサイクル社には、毎日300トンにものぼる建物の瓦礫が運び込まれている。搬入された廃棄物は、巧みな技術で、リサイクル可能なコンクリートや金属くず、木材、プラスチックに分別され、山積みにされる。こうした材料は、同社が販売したり、無償で提供したりするほか、中には、有料で引き取られていくものもある。 ゴミ処理有料制度が導入される前は、再利用かリサイクルされる量が、建材と廃材を合わせて年間およそ10万トンしかなかったが、今ではそれが50万トン近くになった。回収された金属くずはリサイクル工場に運ばれ、木材は農業用マルチフィルムや発電所の燃料となる木材チップへと変わる。 コンクリートもリサイクル可能で、道路の傾斜角を固めるのに使われている。一つの建物も単純に壊してしまうのではなく解体すれば、使われている建材のほとんどを再利用かリサイクルができる。そうすれば、エネルギー使用量と炭素排出量は劇的に削減できるのだ。サンノゼ市は今、あらゆる都市の模範となりつつある。 材料の使用量削減、エネルギー効率向上を可能にする、企業、自治体、個人レベルでの方法はまだある。続きは、プランBを抜粋した次のアースポリシー研究所リリースで。 出典:レスター・R・ブラウン著『プランB3.0:人類文明を救うために』 (Plan B 3.0: Mobilizing to Save Civilization) 第11章「二酸化炭素排出量削減をめざし、省エネを」 2008年、W.W.ノートン社(ニューヨーク)より刊行。 www.earthpolicy.org/Books/PB3/index.htmにて無料ダウンロード及び購入可。 問い合わせ先: メディア関連の問い合わせ: リア・ジャニス・カウフマン 電話:(202) 496-9290 内線 12 電子メール:rjk @earthpolicy.org 研究関連の問い合わせ: ジャネット・ラーセン 電話:(202) 496-9290 内線 14 電子メール:jlarsen @earthpolicy.org アースポリシー研究所 1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403 Washington, DC 20036 ウェブサイト:www.earthpolicy.org (翻訳担当:古谷明世 山本夕佳 荒木由起子) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 この中にも登場しているシュミット・ブレーク氏に、来日時に何度かお会いしたことがあります。最初の何回かは通訳者として、でした。その後も、バラトングループの仲間が氏と一緒に仕事をしていたこともあって、ずっと資源生産性の向上(ファクター10)に熱意を燃やして活動を続けていらっしゃるようすを聞いていました。 そのシュミット・ブレーク氏から、「ジャパン・タイムスの記事を見たよ」と先日メールが届きました。来年秋にスイスのダボスで「世界資源フォーラム」を開催するとのこと。ぜひ日本の取り組みの話やアジアのGNH(Gross National Happiness)の話などをしにきてくれないかと、とても光栄なお声掛けをいただきました。 いっぱい勉強してこようと思っています。来年もとっても楽しみな1年になりそうです!
 

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