今年の第1号で書いたように、環境問題や持続可能性を考えるうえで、「幸せ」について考えることは必須であると考えるようになってきました。
以来いろいろと「幸せ研究」を進めています。(^^;
かつてヒルティやアランが『幸福論』を書いたころから、幸せはほとんど100%個人的な内的なものとして捉えられてきたように思います。「心の持ち方」みたいな感じです。確かに、同じ状況に置かれていても、幸せな人もいれば不幸せな人もいます。それはそれぞれの「心の持ち方」によって違いが出てくるのだ、ということですね。
いつの頃からか、それぞれの幸せを定義する「心の持ち方」が自分の内面だけに関するものではなくなってきたようです。そこに「他人との比較」「世の中の考え方やものの見方」なども入ってくるようになりました。現在では「自分の幸せ」の定義をほとんどすべて「外的なもの(持ち物や行動)」にゆだねている人も増えているように思います。
そうなってくると、それぞれの「幸せの定義」が、消費行動その他を通して、環境負荷に影響を与えるようになり、ひいては地球の持続可能性にも影響を及ぼすようになります。
ですから、私たちはいま「本当の幸せと持続可能性」をしっかりと考えなくてはいけない。
そう思って、昨年7〜8月に「本当の幸せと持続可能性を考える」4回連続講座を開催しました。
第1回:辻信一氏(明治学院大学国際学部教授)
「幸せってなんだっけ?--GNHとスローライフ」
第2回:ダグラス・ラミス氏
「Happy, Happen, Hap - 幸せは追求できるものだろうか」
第3回:草郷孝好氏(大阪大学グローバルコラボレーションセンター 副センター長・准教授)
「自然と人をつなぐ思想と実践:ブータンのGNHと水俣の再生からの学び」
第4回:向山邦史氏(向山塗料株式会社相談役) × 枝廣淳子(対談)
「本当に大事なことを企業を実践するということ」
辻さんは「幸せと豊かさは両立しない」と述べ、ラミスさんは「幸せイコールGNPに代表される経済成長という考え方」に対する鋭い疑問を投げかけました。草郷さんは、GNPに代わる国づくりの指標を模索・実践しているブータンのGNHの考え方を紹介し、向山さんは実際に企業で「売上ではなく、GCH(総社員幸福度)」を企業経営の軸に据えた20年にわたる実践と成果について話してくれました。
(参加できなかったけど、内容をぜひ聞いてみたいという方は、通信で講座内容を学んでいただけますので、よろしければ、詳細をごらん下さい。http://www.es-inc.jp/shop/5_55.html )
前回は、主に「私たちは幸せをどのように考えているのか」を見つめ直す学びとなりました。そして、そのメンタルモデル(「幸せとはこういうものだ」という意識・無意識の前提や思い込み)が現在も成り立つものなのか、それとも、メンタルモデルそのものを変えていく時期に来ているのか、という問いかけでもありました。
各自のメンタルモデル(無意識の思い込み)は、各個人のものですが、同時に社会の規範や価値観の影響も受けます。日本の社会が集合的に持っている「幸せとはこういうものなのだ」という価値観や価値観に基づく規範自体を考え直していく必要もあります。ブータンのGNHはそういった点でとても貴重な洞察と勇気を提供してくれるものです。
この「幸せをめぐる社会と個人との関わり」をさらに広い観点で深く考えていくため、2月に「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座その2を開催することにしました。
ブータン研究所の平山さんを講師に、GNHなどをめぐる考え方をさらに学ぶと共に、「幸せをめぐる社会と個人との関わり」のもうひとつの面について学びます。規範や価値観といった目に見えないものではなく、「幸せの基本的な基盤」ともいえる、「安心して生きていけること」に関する側面です。
残念なことに、この衣食住の安定・安全の確保ができなくなりつつあるのが現在の日本の状況です。過去大いにGDPが増えたはずなのに、そのお金はどこへ行ってしまったのでしょう? しっかりと社会保障の充実を通じて国民の幸せ基盤の構築をしていれば、たった1回の金融危機で多くの方々が路頭に迷うような事態にはならなかったでしょう。
千葉大学の広井先生は、「これまでの日本は、経済成長によって富を増やし続けることで、富の分配の問題を考えずにきた」と言います。パイが大きくなっていくなら、パイ自体の分配を考えなくても、問題が出てこないからです。かくして、主にパイの分配(再分配)を担当するはずの「政治」は不在のまま、パイの拡大を担当する「経済」ばかりが国や社会の中心課題として重視されてきました。
現在私たちが直面している問題の根源は「成長しつづけることができなくなってはじめて分配の問題に直面した日本」だと言うことができるでしょう。
としたら、どのようにこういったことを考えればよいのでしょうか? どのような方向や方法で、日本人にとっての「幸せの基本的な基盤」を立て直すことができるのでしょうか?
広井先生と、このお正月も「年越し派遣村」などで活動を続けていらっしゃるNPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅さんを講師に、目の前の現象だけではなく、「幸せをめぐる社会と個人との関わり」の問題構造を考えていきます。
そして、私が講師を務める回は、いま少しお話ししたような「幸せ」をめぐる構造について考えてきたことをお伝えするとともに、ユング心理学やマズローの自己実現論など、心理学的なアプローチで「幸せ」を考えてみたいと思っています。
今回も刺激と学びの大きな講座になること、間違いなし!です。ぜひ奮ってご参加下さい。なお、前回の講座との連続性はありませんので、今回からのご参加でもまったく支障ありません。
本講座は、話を聞くだけの一方通行型ではなく、自らの気づきを深め、共有し、学びあっていく「ワールド・カフェ方式」でおこないます(これは前回と同様です。前回もとても好評でした)。より深い学びのための「対話のアプローチ」を学ぶ上でも役に立つと思います。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座その2(全4回)
○日時:2月6日(金)/13日(金)/20日(金)/27日(金)
いずれも18:00開場、18:15〜20:45(予定)
○会場:こどもの城 906研修室
http://www.kodomono-shiro.jp/access/index.shtml
(JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分)
○講師:
2月6日(金) 広井良典氏(千葉大学法経学部教授)
2月13日(金) 平山修一氏(GNH研究所)
2月20日(金) 枝廣淳子
2月27日(金) 湯浅誠氏(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長
反貧困ネットワーク事務局長)
○ファシリテーター:枝廣淳子
○定員:約50名
○料金:30,000円(全4回分)
※4回一括のみの受付となります。ご都合のつかない回は代わりの方にご出席いただけます。
○通信会員
遠隔のため、または時間的に来場できないがぜひ話を聞きたい!という方に、当日の音声ファイルと資料をお送りします(料金は同じです)。
○お申込み
電子メールでお申込ください。件名に「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座申込と書いて、以下の申込書をinfo@es-inc.jp までお送り下さい。(通信会員ご希望の方は、備考欄に「通信会員希望」とお書きください)折り返し、受講費のお支払い方法のご案内を自動返信メールにて送信いたします。
受講費のお支払をもって正式受付とし、受講票を電子メールでお送りいたします。
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■「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座その2(全4回)
参加申込書
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※この講座をどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 枝廣淳子のメールニュース(enviro-news)
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. イーズのウェブサイト
( ) d. その他 ( )
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※お申込後、数日たちましても受付票が届かない場合は、メール送受信のトラブルの可能性がございますので、その際は info@es-inc.jp もしくは電話03-5426-1128までお問い合わせください
○お問合せ:
有限会社イーズ 担当 飯田
E-mail:info@es-inc.jp/電話:03-5426-1128
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この大事なときに、この大事なテーマについて学び、考えていけることをうれしく思っています。ぜひごいっしょに! お待ちしています。