市民の立場から温暖化に取り組む「気候ネットワーク」のニュースレターにとても興味深い記事がありました。
http://www.kikonet.org/
お願いして転載させていただけることになりました。ありがとうございます〜。
インドの自然エネルギーへの取り組み、日本も少しでも真似たいです。。。
また、フランスの取り組みも、日本とは規模も本気度も違います。「2020年末以降は、すべての新築の建物に再生可能エネルギー生産施設を設置することが義務化され「消費するエネルギー量を超えること」が求められる。住宅も事業所も太陽光発電施設や風力発電施設などを取り付け、自力でエネルギーをまかなわなければならない」なんて、「正しくすごい!」と思いませんか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気候ネットワーク「気候ネットワーク通信63号」2008年11月より
セミナー報告:インドの自然エネルギー利用報告会
気候ネットワーク、日本環境学会、自然エネルギー市民の会の共催事業として、国際講演会「インドの自然エネルギー利用報告会」を開催した。Prosanto Pal氏の報告を中心にその概要を紹介する。
日時:2008年9月29日(水)会場:ハートピア京都
報告者:Prosanto Pal氏(TERI研究所※)、和田武氏(自然エネルギー市民の会)、和田幸子氏(日本環境学会)
※TERI研究所はIPCCの議長であるラジェンドラ・パチャウリ氏が所長を務めるインドでは最も大きなエネルギー関係の研究所である。
◆インドの概要とエネルギー供給の現状
今インドは空前の経済成長を見せており、年率約7-9%の成長を達成している。その反面、まだまだ挑戦すべき課題もある。人間開発指数では世界で128番目に位置し、ラオスやカンボジアといった国と近い値になっている。また、一日当たり2ドル以下の低所得者層の割合は人口の77%に及び、さらに電力を使用する農村の世帯数が31%とまだまだ低い割合である。
インドのエネルギー供給の最大のエネルギー源は石炭である。旧来型の薪や炭と言ったバイオマスが80%以上の農業世帯での主要な厨房エネルギーとなっている。電力のピーク時の不足は14.6%になっており、石油の約75%が輸入依存であり、エネルギー安全保障が問題となっている。電力比では57%が石炭で、33%が自然エネルギーである。自然エネルギーの中の75%が水力で、残りの25%がその他の自然エネルギーになる。また、日本では原子力の割合が高いが、インドでは原子
力は3%程度に過ぎない。
◆政府による自然エネルギー利用の推進
インドでは、早くから政府が積極的に自然エネルギーを育成しようとしてきた。1970年代のオイルショックから自然エネルギーの認識が高まり、1982年に非伝統的エネルギー庁が設立され、1992年には省に格上げされた。2006年には新・再生可能エネルギー省に改称された。1970-80年は、自然エネルギーの資源量についての検討を慎重に重ね、1980-2000年には大規模実証実験と普及のための補助に力を入れた。最近では、燃料電池やバイオ燃料のような革新技術に力を入れようという流れになっている。
◆農村での自然エネルギー利用プログラム
人口の73%は55万の農村に住んでいるため、農村での自然エネルギー普及が重要になってくる。バイオガスプラントや太陽光発電、太陽熱利用などの普及促進に努めており、多く存在する未電化村落での電化を進めていく計画がある。
牛や水牛などの家畜の糞尿を活用するバイオガス利用は、国内で1200万個のバイオガスプラントの設置能力があるとみられており、400万個がすでに政府の支援によって設置されている。
バイオガス推進のメリットとしては、プラント建設に必要な費用が2年で回収でき、LPGと比較しても費用対効果は高く、およそ10年間の使用期間で、40万トンの薪が節約でき、140万トンの有機肥料が生産される。また大気汚染を改善するとともに、炊事場に立つ女性への健康被害を軽減でき、さらには雇用の創出にもつながっている。
電化政策の一環としては、家庭用照明と街灯を太陽光発電で設置するプログラムが進められている。TERIでも、農業用にレンタルできるソーラーランタンを10億個作ろうという計画を推進している。ソーラーランタンは、子ども達の教育にも大変重要で、夜間の学習時間の確保に役立ち、農村部での進学率の向上にもつながっている。
◆インドから何を学ぶか
まずインドの特徴として、政府の中に「新・再生可能エネルギー省」があり、高い普及目標を掲げ、国を挙げて計画的に自然エネルギー普及を積極的に推進していることである。
また、地域、とくに農村発展と関連づけて自然エネルギー普及を推進することで、食糧とエネルギーの自給にもつながっている。これは日本の農村再生にも参考になる取り組みである。さらに、こうした取り組みに当たって、地域住民たちが自ら導入主体となり、運営にも携わることで地域の自立的発展を促している点も特徴的である。
政策面でも、温暖化防止の観点からも自然エネルギー普及を重視し、多くの州で電力買取補償制度を導入し、普及補助制度も充実している。具体的な取り組みにおても、世界の木質ガス化発電普及、食糧問題を起こさないジェトロファ(食用に適さない自生植物)からのBDF生産など、国際的にも先進的取り組みを推進している。
途上国では伝統的自然エネルギー利用から化石燃料に転換が進む傾向があるが、インドは先進技術を活用した自然エネルギー利用への転換を重視するモデル的存在として注目を集めているのである。
まとめ:豊田陽介(気候ネットワーク)
(気候ネットワーク「気候ネットワーク通信63号」2008年11月より)
〜〜〜〜〜
Series海外温暖化政策レポートVol.1-フランス編-
急加速するフランスの温暖化対策
報告:古谷茂久氏(日経新聞記者)
フランス政府が民生・業務部門の二酸化炭素(CO2)排出削減規制を急加速している。その柱となるのが建物の断熱に関する新規制。古い建物が多いフランスでは暖房効率の向上が排出削減対策の課題となっているが、温暖化対策で欧州の主導権獲得を狙うサルコジ大統領は、積極策の導入で排出の大幅削減を狙っている。
「これで賃貸契約の説明は終わりました。次はエネルギー消費の契約書を説明します」。パリでアパートを借りると、電気やガスの消費量に関する「省エネ契約書」にもサインを求められる。それぞれのアパートごとに分析した各戸の年間の平均的なエネルギー消費量が示されており、電気やガスの消費量をその範囲内に抑える努力をすべしという内容だ。
契約の相手はフランスのエコロジー・持続可能発展省。日本の環境省と資源エネルギー庁にあたる。
住宅のエネルギー効率をランクで示す表示法は全国で統一されており、わかりやすく色分けで表示される。不動産屋の店頭にずらりと並ぶ物件紹介の張り紙にこの数値が書き込まれていることも多い。部屋を借りたり、買ったりしようとする人はおのずと、それぞれの物件の暖房効率も考慮するようになる。家主や売り主が所有物件の暖房効率の向上に努める動機付けにもなる。
さらに仏政府は今年夏、住宅やオフィスのエネルギー効率を高めるための包括的な対策法を成立させた。新築の建物には厳しい断熱効率を義務づけするほか、古い建物についても期限を決めて断熱向上のための改修を求める。フランスでは建築後百年を超える建物が大半を占めるため、住宅の断熱性能はこれまでほとんど手つかず。法律の制定で全国的に一気に向上させる狙いだ。
来年からは省エネ仕様の住宅の新築や改築を対象に、一戸当たり3万ユーロ(約450万円)の無利子融資を始める。来年の政府予算に10億ユーロの融資枠を設定する予定だ。太陽光発電施設の設置のほか、断熱材の使用などにも融資する。
さらに2020年末以降は、すべての新築の建物に再生可能エネルギー生産施設を設置することが義務化され「消費するエネルギー量を超えること」が求められる。住宅も事業所も太陽光発電施設や風力発電施設などを取り付け、自力でエネルギーをまかなわなければならない。
こうした意欲的な政策を迅速に導入できる背景にあるのは、強い権力を持つ大統領制だ。フランスの政策は大統領の意思決定に委ねられる部分が多く、日本と異なり議会の力は弱い。温暖化対策に熱心なサルコジ大統領は昨年、「環境グルネル会議」と称した有識者会議をつくり、秋にはフランスの環境政策について長期的なビジョンを示した。
会議は大統領を議長に国会、非政府組織(NGO)、研究機関、労働組合、経済団体など各界の代表からなり、国民の総意としての温暖化対策を示した。この会議でまとめた包括対策の柱のひとつが建物の断熱効率向上で、早速新規制として導入された格好だ。
会議はこのほか、様々な製品のエネルギー効率に応じて傾斜をかける新税制や、空港新設の凍結、路面電車と高速鉄道の整備など意欲的な対策を打ち出しており、順次導入される見込み。フランス大統領の強権的な政策は賛否両論あるが、温暖化対策については一歩先んじる結果になっている。
(気候ネットワーク「気候ネットワーク通信63号」2008年11月より)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここから〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この気候ネットワークなどが中心となって、「MAKE the RULEキャンペーン」が展開されています。
http://www.maketherule.jp/dr5/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
MAKE the RULEキャンペーンでは、地球温暖化をくいとめるために、日本国内で、次のことを実現することをめざします。
1. 京都議定書の目標である6%削減を守り、日本でのCO2などの温室効果ガスの中長期的な削減目標を定めること。
・2020年には1990年のレベルと比べて30%の削減をすること
・2050年には1990年のレベルと比べて80%の削減をすること
・2020年には一次エネルギー供給の20%を再生可能エネルギーにすること
2. 温室効果ガスを確実に減らすためのしくみ(ルール)を作ること。
・CO2を減らす人・企業が報われ、CO2をたくさん出す人・企業には相応の負担を求める経済社会にすること(炭素税・排出量取引制度など)
・再生可能エネルギーを大幅にふやすしくみをつくること(固定価格買取制度など)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そのための「気候保護法」という法律制定を求めて、署名活動もおこなっています。100万をめざしているとのこと、多く集まればそれだけ日本の政治や社会を動かしていく力になるでしょう。
私も呼びかけ人のひとりになっています。私からのメッセージもウェブサイトに掲載されています。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
社会のしくみの大部分は、現状を維持するためのしくみです。これまで私たちは、化石燃料に頼り、二酸化炭素を大量に排出する経済や社会を作ってきましたから、私たちの社会には、化石燃料を大量に使い続けさせるしくみやルールがたくさん存在しています。
社会の中にあるそういったしくみを見つけ、変えていくことで、人々や組織の行動を変えることができます。「二酸化炭素を減らしたい」と願うだけでは、二酸化炭素を大量に出し続ける構造は変わりません。意識啓発だけに頼るのではなく、ルールを変え、しくみを変えることによって、行動を変え、望ましい変化を創り出していくことができます。
意識啓発も大事ですが、意識があってもなくても行動したくなる(せざるを得なくなる)しくみづくりを進めなくては!と強く信じています。そのためになるキャンペーンに期待しています。
枝廣淳子