「環境問題」や「持続可能な社会」を考えるうえでは、単なる技術開発を追求するのではなく、「私たち」と「地球」や「社会」とのつながりや関係性、そして「本当の幸せ」を見つめ直す必要があると思っています。
なぜなら、私たち一人ひとりの「幸せの追求」や「アイデンティティの持ち方」が、「消費」やそのほかの「行動」を通して、「地球」に直接的な影響を与えるとともに、「社会のあり方」にも影響を与えるからです。「社会のあり方」は、それ自体、また「個人の行動」を通して、地球に影響を与えます。
2000年10月に [No.285] で「幸せの脱物質化」ということを書きました。
(そのころから考えていたのですねー。^^;)
そのころにご紹介した『たのしい不便』という本があります。「エダヒロの本棚」にも取り上げています。
http://www.es-inc.jp/lib/shelf/index.html
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『たのしい不便 大量消費社会を超える』(福岡賢正著:南方新社)
「現代を生きる我々が消費している「モノ」(情報や快楽、便利さも含めて)の多くは、実は人が幸福になるために必要なのではなく、単に我々が中毒症状を起こしているに過ぎないのではないか」という仮説を立て、中毒物ではないかと思う「モノ」や「便利さ」を実際に自分の生活から排除するという実験を体当たりで行い、その面白くも切実な実体験談が語られます。これは面白いですよぉ。体験の後の対談集も唸ってしまいます。「体重は減り、お金は残った」という、何とも魅力的な帯がついています。
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この本の最後に、著者との対談で見田宗介氏が述べられていることを [No.287]でご紹介しました。引用します。
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「人間の幸福というものが何から得られるかということを計算できると仮定すると、原始時代などの資源経済の中では、商品経済なんて全くなくても100%自然とか他の人間との付き合いとかで幸福を得ていたわけですね。
それがだんだん時代が上ってくると、よその共同体が作るものと交換するということで10%くらいは商品に依存するようになってくる。それからだんだん商品に依存する部分が多くなって、商品中毒になっちゃうわけですね。現代人は90%くらいが商品に依存する幸福しか考えられなくなってきていて、そうじゃないものは10%くらいになっているわけでしょ。
それを原始時代に戻せということは言えないけれど、6対4くらいにする。60%くらいは商品に依存しないところから幸福を得よう、で40%を商品に依存しようというくらいにまですることは、割と現実的に考えられると思うんですね。」
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これを読んでも、「幸せのあり方によって、地球への影響が違ってくる」ことがわかると思います。さらには、「他人に愛されるには、他人に認められるには、他人と仲間でいるためには、コレを買わないとダメ!」と消費をあおる広告や経済のあり方にも、問題はつながっています。
同時に、「個人の幸せ」を左右する「その個人を取り巻く環境」(家族や友人、職場など)や、「社会全体」(社会の規範や社会保障など)も、考えていく必要があります。
「個人の幸せ」は、本人がどのようなビジョンや夢を描くか、という個人レベルの条件によっても規定されますが、そもそもの必要条件として、「何かあっても食住の心配をしなくてもすむ」という社会の基盤があるかないかも、決定的に重要だからです。
ヨーロッパでは、仕事を定時に切り上げて家族との時間を楽しんだり、定年退職後は悠々自適の人生を送る人も多いですが、日本ではどうしてそれができにくいのだろう? 定年退職したあとも、生活費や老後の蓄えのために働き続けなくてはならない、ワーキングプアはかわいそうに思うけど、自分だっていつそうなるかわからないから、ワークシェアよりもできるだけ今働いて稼いでおかなくては、という強迫観念にも近い感覚はどこからくるのだろう……?
まえにも書きましたが、日本の高い貯蓄熱はよく称賛されますが、貯蓄する理由の上位は、「老後のため」「家を建てるための資金」「教育資金」です。これらは、社会保障がきちんとしていたら、個人が憂える必要のないものではないか……。
こういった問題意識から企画した「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座、先週の金曜日に始まりました!
第1回は、千葉大の広井良典先生をお迎えし、「定常型社会=持続可能な福祉社会の構想」というテーマで、「分配をめぐる課題」「これからの社会保障」「定常型社会の可能性」「コミュニティの再構築」など、とても学びの多いお話をお聞きし、受講者のディスカションや先生とのやりとりで、気づきを深めることが
できました。
受講者の感想から一部をご紹介します(掲載の了解をいただいています)。
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●あっという間に終わってしまいました。目からウロコ、というような事ばかりで本当に有難かったです。もっと知りたい!と思う部分については本を読ませていただきます。
●同じテーブルでそれぞれ仕事を頑張っている女性と話せたこと、ふつう知り合うことができない出会いの場があった。いい刺激をもらえた。
●産業、時間、哲学と、めくるめく旅をしてきたようなひとときでした。
●ワークシェア、ケアetc日本のかかえている問題の構造を再認識しつつも、明るく前向きにとらえることができたのでよかったです。
●予想もしていなかった幅広い内容でした。哲学的なお話もあり、示唆を得ることができました。ありがとうございました。
●定常型社会については、まったく予備知識が無いまま参加させていただきました。が、話はわかりやすくおもしろく、新しい視点も気付きも多々いただけました。
●「つながる」ことが、Key Word としてありましたが、閉鎖的になり続けた現状において「人とつながることの恐さ」をどうのりこえてゆくか、そのアプローチはたいへん難しいと思います。その取り組みは身近なところとおっしゃっていましたが、そのコミュニティ単位ごとにつながるのも課題かと思います。
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あー、受講すればよかった!と思われた方、これからでもぜひどうぞ。
途中からでもご参加いただけます(それまでの回の内容は、音声ファイルと資料をお届けします)。30人ほどが受講中ですが、せっかくの(2度とない)機会ですので、ぜひ多くの方にレクチャーを聞いていただき、考えて、話し合って、持ち帰って、活かしていただければ、と願っています。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座(全4回)のご案内
●日時:2月6日(金)/13日(金)/20日(金)/27日(金)
いずれも18:00開場、18:15〜20:45
●会場:こどもの城 906研修室(JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-1 /TEL 03-3797-5666(代)
●内容:
2月6日(金)定常型社会=持続可能な福祉社会の構想(千葉大学法経学部教授 広井 良典氏)
2月13日(金)ブータンの開発政策GNHは日本に応用可能か(GNH研究所 平山 修一氏)
2月20日(金)幸せと持続可能性を考える枠組み(枝廣 淳子)
2月27日(金)(仮題)日本を「幸せを創り出せる社会」にするために(NPO
法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長 反貧困ネットワーク事務局長 湯浅 誠氏)
●受講費:30,000円(全4回分)
※4回一括のみの受付となります。ご都合のつかない回は代わりの方にご出席いただくか、資料と音声ファイルをお送りします。
○通信会員
遠隔のため、または時間的に来場できないがぜひ話を聞きたい!という方に、当日の音声ファイルと資料をお送りします(料金は同じです)。
○お申込み
電子メールでお申込ください。件名に「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座申込と書いて、以下の申込書をinfo@es-inc.jp までお送り下さい。(通信会員ご希望の方は、備考欄に「通信会員希望」とお書きください)折り返し、受講費のお支払い方法のご案内を自動返信メールにて送信いたします。
受講費のお支払をもって正式受付とし、受講票を電子メールでお送りいたします。
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■「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座(全4回)
参加申込書
ご氏名 [ ]
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連絡先電話番号 [ ]
備 考 [ ]
※この講座をどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 枝廣淳子のメールニュース(enviro-news)
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. イーズのウェブサイト
( ) d. その他 ( )
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※お申込後、数日たちましても受付票が届かない場合は、メール送受信のトラブルの可能性がございますので、その際は info@es-inc.jp もしくは電話03-5426-1128までお問い合わせください
○お問合せ:
有限会社イーズ 担当 飯田
E-mail:info@es-inc.jp/電話:03-5426-1128
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第2回の講師は、昨年11月にブータンでご一緒したGNH研究所の平山さんです。ブータンだけではなく、幅広くかつ本質的なお話が聞けることを楽しみにしているところです。よろしければぜひごいっしょに〜!
※有限会社イーズは、2017年12月25日に移転いたしました。
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