<内容>
■海外のサイトでの紹介■
■国内排出量取引の試行制度:複数のルールや審判で試合ができるの?
3月26日、温暖化懇談会の政策手法分科会での発言録■
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■海外のサイトでの紹介■
たまたま、JFSの事務局のスタッフが検索をしていてひっかかったらしいのですが、米国のウェブサイト"Women's History Month 2009"で紹介されていました。
Women's History Month 2009 (英語)
Prominent Women Leaders in the Environmental Movement
https://hhsu.learning.hhs.gov/WomensHistory2009/women.html
レイチェル・カーソンやマータイさんと並んで載せてもらっているのを見てびっくりするやら何だか申し訳ないやら。
2008年11月26日付のジャパン・タイムス紙で、取材を受けた内容が、記事として掲載されたことがきっかけのようです。とてもステキに紹介して下さっています。
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/fe20081126sh.html (英語)
海外メディアからの取材依頼や、海外での会議へのお声掛けなどもずいぶんと増えており、世界が日本や東洋に注目していることを感じます。じょうずに時間をやりくりしながら、日本独自の価値観を伝えられるよう英語もトレーニングしつつ、日本や東洋が貢献できる内容をしっかり勉強しつつ、可能な範囲で参加・対応していければ、と思っています。
■国内排出量取引の試行制度:複数のルールや審判で試合ができるのかなあ?
3月26日、温暖化懇談会の政策手法分科会での発言録■
さて、3月26日に総理直轄の地球温暖化問題関する懇談会(オヤコン=親懇談会と呼ばれている)の3つある分科会の1つ、政策手法分科会が開催されました。国内排出量取引に関する議論を主にしてきた分科会ですが、久しぶりの開催でした。
議事内容は「排出量取引の国内統合市場の試行的実施について」ということで、
・試行的実施の現状報告について
・中間レビューについて
について議論する会でした。当日の資料はこちらにあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai04shuhou/04gijisidai.html
事務局からの説明のあと、各委員5〜6分で、ということでマイクが回されました。以下は、私が5分30秒ほどでしゃべった内容です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
質問というよりも、今後への期待を含めてということですが、海外のメディアから、最近非常にたくさん問い合わせ、取材が来ます。主に聞かれるのは3つあります。
1つ目は、「日本は減らしているのか」という。うーん。それはなかなか答えにくい。
2つ目が、「日本は減らせそうなのか」という質問です。それは、つまり、根性や気合いだけではなくて、本当に減らせる仕組みを日本は持っているのか、もしくは持とうとしているのか。
そのときに、排出量取引というのが大きな1つの仕組みになってくるわけですが、いまの施行制度は非常にわかりにくい。私から見てもわかりにくいです。目標設定もそれぞれでやっているし、所管省庁が目標の妥当性も審査しているし。
たとえばサッカーでも野球でも、1つの試合は1つのルールでやるから結果が出るのであって、それをいまの制度は、私から見ても、多分海外のメディアから見ても、ルールも複数だし、審判も複数いるし……それで「どうやってやるのか?」と聞かれるんですね。「うーん」と言って、なかなか答えられないのですが。
3つ目によく聞かれるのは、今日の議論と関係ありませんが、「減らすつもりはあるのか」ということで、これは中期目標にかかわりますので、今日は話をしませんが、外からはこのような見方をだいぶされているなと実感しています。
この排出量取引の仕組みというのは、お金を動かすことで、全体として効率よく、CO2なり温室効果ガスを減らしていこうという仕組みだと理解しています。いまのところ、いろいろな手順、手続きを整えるという、型から入るというやり方で進めていると理解していますが、やはり「仏」をつくったあとに、どうやって
「魂」をしっかり入れていくか、ということを考えて型をつくっていかないといけないと思っています。
今回の中間レビューは、手続き面に関するレビューですが、次は本当に効果があったのかという実効性のレビューになると思います。そのときには、いま植田先生もおっしゃった、実際に市場としてどれぐらいお金が動いたのか、それのおかげでどれぐらいCO2が減ったのか。このあたりのレビューをしっかりしていく必要があると思います。
どのような政策でも原理・原則、つまり排出量を取引するという制度で減らしていくという「原理・原則」と、それを実際にどうやって「政策」にするか。今回で言うと、日本型という施行制度をやっているわけですが、そして3番目としてどのように「運用」されたか。この3つのレベルで見ていく必要があると思っています。
もし仮に、日本型の今回の仕組みで初期の目標を達成できなければ、それは原理・原則を否定するのではなく、「方法を変えるということだ」ということを、確認しておきたいと思っています。
たとえば、原単位目標というのは、世界のほかで行われている排出量取引制度の中ではかなり日本の独特のものですが、これがあるから参加しやすかった、というところも大いにあると思います。
ですから、原単位の目標も含めて、うまくいくかどうかということは、かなり世界も注目している。つまりこれがうまくいけば、ほかの国でもきっと役に立つと思いますし、逆にうまくいかなければ、「やっぱり原単位の目標ではうまくいかなかったね。総量目標にしましょう」という話になると理解しています。
植田先生もおっしゃったことですが、この施行というのは、体験やノウハウを蓄積していくことだと思っています。そういった意味では、さまざまなモニタリング、検証等を含めて、手続き的な体験やノウハウは蓄積しつつあるような気がしますが、一番難しいところ、つまり、どうやって最初のキャップを設定するのか、
ということに関しては、今回の施行制度では体験もできないし、ノウハウも蓄積できない仕組みになっているように思います。
もしかしたら、キャップの設定に関して別の施行制度が必要なのか? いまのままだと、いろいろな手続きはうまくいっても、そもそもの最初の一番議論が分かれるところが、そのままになってしまっているという印象を持っています。
政府にしても企業にしても、多大なリソースを投入して、この施行制度をやっているのですから、リターンを大きく得られるような制度にしていかないといけない。
最初から完ぺきな仕組みというのはないわけですから、制度をPDCAサイクルで改善して、実効性を上げていくということだと思います。そういう意味で言うと、よい練習台になるのだろうと、今回の施行の制度を見ています。
温暖化の現状を見ても、ほかの国の――オバマさんのアメリカも特にそうですが、他国の動きを見ても、日本が国際的なリーダーシップを取って、しっかりと温暖化対策を進めていく必要がある。そのためには日本の中でしっかりCO2を減らすということが大事であることは、もう誰も反対しない。すべての人、すべての主体者の目的、目指していることだと思います。
どうも、仕組みそのものというよりも、細かい手続きの話になると、その細かいところに目が行きがちですが、究極の目標はCO2を国内でしっかり減らすことです。つねに、そこに照らし合わせて、これは役に立つのか、そのままで進めるべきなのか、変えていくべきなのか、それを見ながら進めていっていただきたいし、そういう目で、私も見ていきたいと思っています。以上です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先ほど資料がアップされているとお伝えした同じサイトに、そのうち議事録もアップされますので、ぜひ他の委員の方々の発言も読んでもらえればと思います。
排出量取引の制度にしても、固定価格買取制度にしても、「やらない」と一点張りだった経産省を中心とする政府が、「まずはやってみましょう」という姿勢に転換してきたことは大いに認めた上で、「どうせやるなら実効性のある制度にしましょうね」と、今度は制度設計を少しずつでも改善していく方向に推していく。そのようなタイミングになってきたようです。