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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年04月09日

温暖化に加担しない食べ方:5つのポイント(2009.04.08)

温暖化
食と生活
 

<内容>

■温暖化に加担しない食べ方:5つのポイント

■2つ星シェフと3つ星シェフの違いとは……?

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いまインドネシア出張を終えて、ジャカルタの空港です。ようやくネットに接続できました〜。出張の報告はまた追って、ということで、ホテルで準備していたメールニュースをお届けしますね。

シューマッハ協会から届いた「食と気候変動」(キャサリン・クラーク)がとても興味深かったので、実践和訳チームに訳してもらいました。もとは、エティハド航空機内誌(2008年8月号)に掲載された記事のようです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

食糧の生産は地球に負荷をかける。このことは広く知られるようになってきた。

現状は深刻だ。人的要因による温室効果ガスのうち18%が畜産業だけから排出されている。この量は運輸産業全体が排出する量の合計を上回っている。数百ページに及ぶ2006年の国連レポートに記載されているこれらの数字は、食糧生産がどのように気候変動を悪化させてきたかという問題を、恐らく初めて浮き彫りにするものになった。

米国には、食糧生産と気候変動との破壊的な関係について精通している人物で、精力的に活動を展開しているアンナ・ラッペがいる。この米国の若い著述家は講演者としてもひっぱりだこで、持続可能性、食糧政策、グローバリゼーション、社会変革という分野では今や有名人だ。

彼女の名前は、タイム誌の「環境問題における著名人」やコントリビュート誌(訳注:援助を必要とする世界中の社会問題を取り上げ、慈善事業や寄付の対象となるよう啓発することを目的に出版されている雑誌)の「変革を生み出す40歳未満の21人」に取り上げられている。アンナ・ラッペは私たちに、絶望してさじを投げてしまうのではなく地球が健康な状態に戻るような食べ方をしよう、そうすべき時が迫っていると訴える。

この問題に関して人々の意識を高め実行可能な解決策を探るというのが、アンナの使命とするところだ。「気候変動については人々の間で広く認識されるようになってきました。でも、『食』が気候変動問題の一因であるとか、その解決策の一つであるということは、今はまだ人々に認識されるまでになっていません」と、アンナは語る。

なぜそうなのかといえば、食システムのさまざまな側面--どのように栽培・飼育され、その過程で何が使用され、どのように輸送され、どういう包装がされたか--は、それぞれ異なるカテゴリーに分類されるからだ。「それぞれを調べ上げるのはなかなか難しいことです。私自身は、食糧生産に起因する温室効果ガスの総排出量を全体の31%と推定しています」とアンナは言う。

二大要因として挙げられるのは、家畜生産と、世界中のスーパー、ホテル、レストランに農産物を供給している化学物質と化石燃料に依存する大規模農園だ。「こうした農園は化石燃料がないとやっていけない仕組みになっています。使用される化学物質は化石燃料由来のものだし、肥料には窒素系が使用されています」とアンナは言う。

その影響は発展途上国全体に及んでいる。皮肉なことに、持続可能なやり方で食物を生産している小規模農家が最も被害を受けるのだ。気候変動がもたらす天候異変によって農場を失うことになった農家が出てきている。

「最も問題なのは、私たち人間は人類全部を養うに足るだけの食糧を生産しているのだということです。それにもかかわらず、お金がないために人々はその食糧を手に入れることができない、そのことが問題なのです。これは食糧『価格』危機というべきであって、食糧危機とはまったく異なる筋書きになるのです」とアンナは述べる。

こうした状況は一般の人々にとって何を意味するのだろうか? アンナとその同僚は、気候に優しい食事法を編み出したが、それは驚くほど受け入れやすいものだ。「私が強調しているのは食における5つの重要な選択です」とアンナは言う。

まず第一に、化石燃料を使い、工業的に生産された農産物は買わないようにすること。「オーガニックの食品、または無農薬の地元産のものを選びましょう」。

第二の、そして最も重要な点は、肉の消費量を減らすことだ。「欧米人は大量の肉を食していますが、ほとんどの人がその量を減らすことができるのです。何も完全に断つ必要はありません。単に朝食では肉を食べないとか、週に2〜3回食べるだけにするということです」。

そして第三は、食材を丸ごと、つまり食材を自然な状態で食べることだ。「果物や野菜、穀物を加工するのに大量のエネルギーが使われます。食べ物を丸ごと食べるようにすればカーボン・フットプリントが減るのです」

アンナの第四のルールは世界中で言われていること、つまり地元の農産物を買うことだ。「これはとても道理にかなったことなんです」とアンナは言う。「輸送が減るので、フードマイレージが減ります。地元の農家たちもそこで農業を続けて行くことができますし、お金も地元に落ちるのです」。

第五の提案は、簡易包装の食品を買うことだ。「食品生産の工程の中で包装の占める部分は非常に大きいのです」とアンナは言う。「水を瓶詰めするのもかなりの負担になります。安全な場合は、水道水を飲みましょう」

こうした気候に優しい食の選び方は、カンカル(フランス)産のサスカヤ牡蠣や日本産の和牛など、地理的に多様な食材を求める現代の高級外食産業にどのように取り入れられるのだろうか? 

この問題に取り組んでいる高級レストランのひとつに、ニューヨークの高級料理店「ブルー・ヒル」がある。ここは、農村とのつながりやみずみずしい食材を売りにしており、その食材のほとんどは近郊のバークシャー地方にある同店所有の農場でとれたものだ。

ブルー・ヒルの経営者であり料理長であるダン・バーバーは、彼が考える気候に優しい食材とは「地元で生産され、最もよい時期に収穫され、農家から直接購入されたものであること」だと説明する。「そういうものは、保存や輸送の間にも栄養や風味が損なわれることなく、環境を犠牲にすることもない」と彼は言う。

ダンは、「地元の食材は、すばらしい風味と物語をもたらしてくれるんだ。僕がどんな味付けをしてもかなわないほどだよ」と話す。自分が刺激を受けた人として、農地保護活動家である祖母やエリオット・コールマンのような農業家の名を挙げながら、ダンはこう続けた。

「12月から4月初めまで、うちで使う食材の2割は、ブルー・ヒル農場やストーン・バーンズ・センターなど半径約400キロ圏内の生産者から届く。でも夏になると、それが9割にまで増えるんだ」

だが、高級レストランとなると、この信条に従うことは必ずしも簡単とはいえない。「隣の農場から食材を手に入れるのは、何千キロも離れたところから入手するよりも不便なことがある。これが私たちの食物システムの皮肉なところなんだ」とダンは言う。「電話すれば、カリフォルニアや南米産の新鮮できれいな生産物一箱だって、その翌日には玄関先で受け取れるんだ。値段もわずかなものだ」。

しかしこれは創造的でやりがいのある挑戦である。「旬の料理は、材料が限定されるけど、それ以上にインスピレーションがわく。いや、限定されるからこそ、いい思いつきをするのかもしれない。どう思う?」ダンは考えながらそう言った。「トマトの季節がくれば、僕はどの料理にもトマトを使いたくなるからね!」

ダンと彼のチームの取り組みは注目されている。ブルー・ヒル・レストランと、その姉妹店であるストーン・バーンズ・センター内のブルー・ヒルは、米国の料理界で名高いジェームズ・ビアード財団から、新しくオープンしたレストランに贈られる「ベスト・ニュー・レストラン賞」を受賞した。ダンは、ほかのレストラン経営者に向けて、「生産者と知り合いになることだ」と助言する。「何とかして、毎週同じ生産者から食材を購入することだ」と言う。

一方、アンナは、米国内およそ65の都市を回り、自らの思いを伝えてきた。この問題に対する意識は高まり始めており、彼女に対する応援と激励の声が道中で相次いでいる。アンナは、「メディアは、人々が参加できる建設的な解決法を伝えることで、非常に大きな役割を果たしています」と言う。

「先月号の『オプラ・マガジン』誌(女性のライフスタイルを追求する月刊誌)に掲載された、地球を救うための方法トップ3のうち、第2位となったのは肉の消費量を減らすことでした」

「この国の政府は、気候変動に対しどのように対処するのか。政府がその方法を見つける絶好のチャンスがあります」とアンナは語る。「私たちは、持続不可能なやり方で生産されている農産品に何十億ドルもの税金を費やしています。米国の農業法案が次に見直されるのは2012年ですが、そのとき、納税者が納める税金が持続不可能な食システムから離れ、根本的に違う方向に流れるようになることを私は願います」。そしてこう続けた。

「私たちがそれまでにできることは、地球のことを考えた食べ方で私たち自身を変えることしかないのです」


(翻訳担当 古谷明世 飯田夏代 荒木由起子)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この「温暖化に加担しない5つの食べ方」、わかりやすくてよいですね! いきなりすべてを変えなくても、少しずつシフトしていけたら、少しずつシフトを呼びかけられたら、と思いました。

そういえば、まえに、スポーツジャーナリストの二宮氏の講演を聞いていたら、「星2つのシェフと3つ星シェフの違いを知っていますか?」という話がありました。

2つ星のシェフは、「最高の料理を作るために最高の材料を集められる」。
3つ星のシェフは、「そこにある素材で最高の料理が作れる」。

上のダンさんの話とも通じますね。

二宮氏はこのあと「組織とリーダーに置き換えても同じことです」と続けられました。それぞれの持ち味をどう引き出し、どう相乗効果を高めて、最高の料理に仕上げていけるか……料理も組織運営も奥義は共通しているのかもしれませんね。

 

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