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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年04月19日

神奈川県のEV(電気自動車)シェアリングモデル事業

新しいあり方へ
 
■エダヒロゼミから、「持続可能なビジネスモデル」の事例誕生!   〜神奈川県のEV(電気自動車)シェアリングモデル事業 前号でご案内しましたように、5月15〜16日に開催する集中ゼミ「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける」の参加者を受付中です。 集中ゼミ「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける」 日 時:2009年5月15日(金)・16日(土)9:30-18:00(9:15開場) 会 場:東京都渋谷区「こどもの城」 (JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分) http://change-agent.jp/news/000190.html この集中ゼミの第1期生の神奈川県の職員の方が、1年近くかけて、ゼミでの学びを「カタチ」にしました。いまでは神奈川県のモデル事業として、実際に社会を変えはじめています。レポートをいただいたので、ご紹介します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 図表を含む全文ダウンロードはこちらから EV(電気自動車)シェアリングモデル事業 2009.3.26
枝廣ゼミ「持続可能ビジネスモデル」 1期生 穂積克宏 1 モデル事業の背景  マイカーをお持ちの皆さん、自分の自動車の使用頻度って、考えたことはありますか。 例えば、私の場合、平日は買い物や子供の送迎で1時間、土日はドライブなどで合計3時間、1週間168時間のうち、合計8時間と使用頻度は、わずか5%です。 神奈川県には約300万台の乗用車があり、その80%がマイカーですが、多くは低い使用頻度にもかかわらず、購入に数百万円、維持するために駐車場代、保険、税金をかけてまで、所有されています。 そんな中、2008年5月に開催された枝廣先生の「持続可能ビジネスモデル」のゼミに参加して、自動車を所有するという考え方は、今までのメンタルモデルであり、私たちが必要としているのは、自動車ではなく、移動という機能であることを教わりました。 自動車の使用形態は、所有以外には、リースやレンタル、カーシェアリングという形態があり、役所や企業等では、最近リースも増えてきているようですが、神奈川県内のデータでは、所有以外の形態は、5%以下に過ぎません。 ゼミの1期生として、こうした従来のメンタルモデルである自動車の所有という形態から、一刻も早く脱却し、「移動という機能が必要」という次のメンタルモデルに変革するため、神奈川県が力を入れている電気自動車の普及推進に絡めながら、新しいビジネスモデルのきっかけを作り、リースやレンタル、カーシェアリングという形態への移行していきたいと考えました。 【参考】神奈川県内の乗用車の利用形態 (乗用車合計はH19.3末時点の登録台数)
<表>図表を含む全文ダウンロードはこちらから 2 EVシェアリングモデル事業の概要 役所で使用する自動車は、平日のみに使用し、休日はほとんど利用されません。このため、県で使用する自動車を、休日に他者が利用できれば、その導入費用等をシェアする(曜日ごとのカーシェアリング)ことが可能となります。 また、今年の夏頃に三菱自動車等から市販が予定されている電気自動車は、国や自治体等の補助が想定されますが、当初は価格が高く、その環境性能や自動車性能などの良さ最も知って欲しいターゲットであるマイカー所有者が、気軽に購入し、体験することは難しいと思われます。 このため、神奈川県では、リース会社やレンタカー会社と共同して、県で導入する電気自動車を、平日は県で使用し、休日は、県民等がレンタカーとして利用できる、新たなカーシェアリングのビジネスモデル事業を、2009年度より実施します。 【参考】EVシェアリングモデル事業のイメージ
<表>図表を含む全文ダウンロードはこちらから 3 モデル事業の短期的な効果 (1)県民への電気自動車の体験機会の創出 電気自動車等のように導入費用が高い自動車は、そのレンタカー利用料金も高くなりますが、本モデルにより平日利用が担保されるため、休日のレンタル費用は、通常の自動車と同等か、それ以下にすることが可能となります。 このため、多くの県民に電気自動車の体験の機会が創出されます。 (2)導入費用の軽減 役所や企業等、平日利用が主な事業者は、休日に他者が電気自動車を利用すれば、リース費用や保険料等をシェアすることが可能となり、導入費用が軽減できます。 (3)レンタカー会社の電気自動車の導入促進 レンタカー会社は、導入したレンタカーの使用頻度を高め、導入費用を回収し利益を出すビジネスであるため、高価なハイブリッド車や電気自動車の導入は進んでいません。 しかし、本モデルにより平日利用が担保されるため、電気自動車等の高価な自動車の導入が促進されます。 4 モデル事業の中期的な効果 (1)カーシェアリング等の新たなメンタルモデルの普及 現在、カーシェアリングという言葉は、ほとんどの人に知られておらず、国内では普及が進んでいません。 モデル事業を通じて、多くの人が電気自動車を体験することで、休日だけでなく、本来の細かい時間毎のカーシェアリングやレンタルという新しいメンタルモデルを普及することができると考えています。 5 モデル事業の長期的な効果 (1)モーダルシフト等の環境改善 カーシェアリングは、利用する毎に利用料金が発生するため、自動車自体の利用(走行距離)が減少します。また、これに伴い、公共交通機関の利用や、自転車や徒歩などのモーダルシフトが進み、環境改善に大きく貢献します。 最もカーシェアリングが進んでいるスイスでは、公共交通の利用が35%増加し、自転車や徒歩が70%増加したデータがあります。 【参考】各国のカーシェアリングによる環境改善効果
<表>図表を含む全文ダウンロードはこちらから (2)新たなビジネスの創出 最もカーシェアリングが進んでいるスイス(人口720万人)では、1987年に数人から始まった会員数は、20年で7.7万人と大規模なビジネスに成長しています。 スイスのカーシェアリング大手会社の売上は約40億円、営業利益は1.3億円であり、神奈川県の人口がスイスとほぼ同じくらいであることを考えると、県内にも大規模なビジネスが創出できます。 【参考】日本とスイスのカーシェアリングの普及状況
<表>図表を含む全文ダウンロードはこちらから 6 モデル事業を進めるにあたり 本モデル事業は、2008年5月のゼミをきっかけに、自動車からのCO2排出量の削減に向けて、職場の人たちと議論を重ねてきたものです。 この結果、現在、環境行政の進めている施策は「走行距離当たりのエネルギー消費量」を削減するものがほとんどで、「走行距離」を削減するための施策が進んでいないことを、改めて認識しました。 【参考】自動車のCO2排出量の構成要素
<表>図表を含む全文ダウンロードはこちらから 神奈川県は、日産自動車やいすゞ自動車等の自動車産業が集積しているため、自動車の台数を減らすこと自体が、一種のタブーとなっており、道路を整備し、多くの自動車がスムーズに走ることが、施策のメインでした。 一方で、神奈川県内では、鉄道網や道路網は、かなりのレベルになっており、それでも自動車の走行量は、減っていない状況でしたが、事業を企画している間に、原油・原材料価格の高騰や、金融危機に端を発した経済の悪化が全世界に波及し、自動車を取り巻く環境は激変しました。 恐らく、これからは、自動車をいかに効率的に使用するかに、皆が知恵を絞っていくようになると思っています。 2009年度は、わずか数台で、本モデル事業をスタートしますが、電気自動車を導入する自治体や企業が、本モデルを利用して、安く電気自動車を導入できるようになり、電気自動車の普及と共に、環境配慮の車によるカーシェアリングが、本格的に普及すればと願っております。 枝廣ゼミ「持続可能ビジネスモデル」 1期生 穂積克宏
神奈川県 環境農政部 大気水質課 交通環境指導班 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 こうして、集中ゼミで学んだこと、仲間や私たちといっしょに考えたことが、実際の物事を変える力になっているようすを見せてもらって、とっても心強く、講師冥利に尽きる思いです。 経済危機も、これまでの自分たちのメンタルモデルを問い直し、新しい持続可能なビジネスモデルを考えていく上では、とても大きな追い風です。 この風は、従来型の資源・エネルギー制約の時代には通用しないビジネスモデルにとっては逆風になります。旧来のビジネスモデルをなおさら強く握りしめて身を縮めて風に向かって歩いていくのか。それとも、ますます強くなっていくこの新しい風に大きな帆を張ってするすると新しい時代に進んでいけるのか。 環境部・CSR部のベテランさんにも中堅さんにも、そして、配属されたばかりのルーキーさんにも、世界がこれからどうなっていくか、その構造と法則をじっくりとらえて、自社の今後を新しい視点で考えてみる2日間は、必ずやお役に立つと思っています。今年後半の開催は現時点で未定ですので、ご興味のある方は、ぜひお見逃しなく!  また、自治体や団体、個人事業主やNGOの方々もぜひご参加下さい。それぞれの立場や今後にとって、いろいろな意味で役に立つものが得られる2日間です。 ◎集中ゼミ「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける」 日 時:2009年5月15日(金)・16日(土)9:30-18:00(9:15開場) 会 場:東京都渋谷区「こどもの城」 (JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分) 詳細やお申し込みはこちらをご覧下さい http://change-agent.jp/news/000190.html
 

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