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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年05月30日

ガス業界の「エネルギー・パラダイムシフト」とは?〜太陽熱利用の可能性(2009.05.30)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

ピースボートの船は、ジブラルタル海峡を通り抜けて大西洋に出ました。スペインのマラガから中三日で、次はフランスのルアーブルに入港します。

ルアーブルからは、ナチュラルステップの高見幸子さんも乗り込まれる予定で、ふたりでの対談なども予定されていて、楽しみにしているところです。

<内容>

■ガス業界の「エネルギー・パラダイムシフト」とは?

■太陽熱利用の可能性はでっかい

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■ガス業界の「エネルギー・パラダイムシフト」とは?

ピースボートの船内では1日に2コマぐらい、講座やゼミをおこなっています。
今日は「日本のエネルギーについて考える」というゼミをおこないました。

ということで、メールニュースでも、エネルギーについての話題です。少し前ですが、「エネルギーフォーラム」という雑誌で日本ガス協会業務委員長の村木茂氏にインタビューさせていただいたときのお話をお届けしましょう。

かつてガス業界の人に「ガス会社は何屋さんになるのですか? いつまでもガスを売っていくつもりなのですか?」と聞いたことがあるのですが、業界の中でこんなふうに、新しい考え方が出てきて、次を模索する動きが活発化しているんだ〜、と、お話を伺っていて、とてもわくわくしました。みなさんはどうでしょうか?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(エネルギーフォーラム 2008年6月号 No.642 より)

特別対談
村木茂 日本ガス協会業務委員長(東京ガス取締役常務執行役員)
インタビュアー 枝廣淳子 イーズ代表
「『不都合な真実の翻訳者』が迫る! 2030年に向けたパラダイムシフト」


業界初の長期ビジョン

枝廣
まずは、日本ガス協会が4月に発表した「ガスビジョン2030」に対する評価から聞かせていただけますか。

村木
地球温暖化対策はいま世界的に重要なテーマになっています。08年は京都議定書の第1約束期間のスタートの年であり、同時にポスト京都の議論が出てきている。そういう意味では、10年前後を視野に入れるだけではなくて、30年、50年をにらみ、ガス業界がエネルギー産業として何を目指していくべきなのかをはっきりと打ち出すタイミングがきた。これが今回ガスビジョンをつくった最大の理由です。

長い目で見れば、再生可能エネルギー、原子力、さらには水素などゼロエミッションに近いエネルギーに変わっていくと思いますが、その過程では化石燃料が依然として重要な位置付けを担うわけです。

天然ガスは化石燃料の中では最もCO2の発生量の少ないエネルギーです。ただ、それだけではなく、さらに高度利用すべく、需要地で高効率の発電を行い、排熱も有効に利用し、さらにはバイオ、太陽エネルギー、風力などの再生可能エネルギーをうまく取り込んでいく。将来的には水素エネルギーに結びつけていく。こういう流れです。

枝廣
思い切った画期的な提案だと思います。

村木
天然ガス利用を軸にして、長期的なビジョンを打ち出したのは初めてのことです。低炭素社会の構築に向け、実効効率に基づく「適材適所のエネルギー利用」、再生可能エネルギーとの組み合わせによる地産地消システムの構築、都市部やコミュニティーでのエネルギーの面的・ネットワーク的利用推進などの「分散型エネルギーシステムの進化」、クールアース・エネルギー革新技術計画にも取り上げられている定置用燃料電池などを中心とした「イノベーションに資する中長期的な技術開発」、水素ネットワークと天然ガスネットワークを両立させる「複合型ローカル水素ネットワーク社会」の構築などを視野に入れて取り組んでいきます。


太陽エネルギーの利用

枝廣
ガス業界としては、需要サイドでエネルギーをつくる時代に向けて、天然ガスだけではなく、再生可能エネルギーや水素を含めて対応を図っていくということですね。そうした認識は、業界関係者の間で醸成されているのでしょうか。

村木
醸成されつつある、という感じですね。正直な話、ガスの販売量が減るじゃないかとか、一部には抵抗感もあります。しかし、個人的には、エネルギーシステムのパラダイムシフトが必要な時代だと思っています。ガス会社はずっとガスだけで生き続けるのではなく、新エネルギーも自分たちのビジネスとして取り込んで、どうやって事業を発展させていくかを考えなければいけない。

例えば、いま取り組んでいるダブル発電は、太陽光発電に燃料電池などを組み合わせ、最大効率で限りなくCO2を減らしつつエネルギーを創出する。需要地に密接した「地産地消」のクリーンエネルギー供給を目指すものです。

枝廣
エネルギーの地産地消というのは、すごく魅力的なコンセプトだと思います。冒頭で太陽エネルギーの利用に触れていましたが、ガス業界にとっての切り口は?

村木
いまわれわれは、太陽熱温水器を集合住宅に取りつけようと考えています。構造上や外観上の問題もあり、戸建てには先のダブル発電も含む太陽光発電がマッチします。屋根で発電した電気をそのままグリッドに流せるし、ためる必要もない。

ただ、集合住宅の場合、太陽光発電の設置スペースに限界があるため、戸別には太陽熱温水器が有効です。例えば、ベランダに太陽熱パネルを設置し小さな貯湯槽を置いて、足りない部分は瞬間湯沸かし器で給湯するというやり方です。さらに次の展開としては、太陽熱を業務用給湯に使ったり、集熱した高温の熱を冷房・空調に使うことも考えています。


環境への優しさで勝負

枝廣
太陽熱利用はぜひ推進していただきたいですね。

村木
われわれは現在、東京都と一緒にメーカーと協力し取り組みを進めています。また、建築研究所とも共同プロジェクトを推進しているところです。

枝廣
ガス会社の中には自分たちはガスを売っているという思い込みがありますが、お客さまが欲しがっているのは別にガスではない。ガスを通しての暖かさや調理の熱だったりするわけで、実はそれを提供するのがエネルギー会社の仕事になる。英石油メジャーのBPが1997年に、自分たちは石油会社ではない、エネルギー会社だという宣言をしました。まさに、そういった意味でのパラダイムシフトになるわけですね。

村木
そう。わが国の都市ガス業界には200以上もの事業者があるので、ひとつの方向にまとまるのは、なかなか大変ではありますが、ここは業界として力を合わせていく必要があります。

枝廣
そこが電力業界とは大きく違うところですよね。ところで、地方のガス会社は、オール電化の攻勢を受け、足元が崩されているような話をあちこちで聞きます。電力業界ではオール電化が環境に良いという売り方をしているので、ガス業界としては天然ガスを中心にクリーンエネルギーをミックスして、対抗していくのですか。

村木
おそらく、最終エネルギーの利用はどんどん電力化していくと思います。そうすると、われわれにとっての課題は、天然ガスでいかに効率良く環境に優しい電気をつくっていくか。これが勝負になります。

枝廣
例えば、天然ガスを使って燃料電池で発電し、さらに排熱を使って総合効率を上げるという試みはどの程度まで進んでいるのですか。


自動車と家の融合も

村木
家庭用コージェネに関しては、燃料電池の前にエコウィルがある。これは出力1kW級の小型ガスエンジンをベースにしているので、発電効率が20%台であるため、熱を多く使うことで高い総合効率を発揮できます。一方、燃料電池は固体高分子形で発電効率が40%程度、さらに固体酸化物形などになると45%程度になる。これが大きな魅力です。小型でそれだけの発電効率を引き出せるのは燃料電池しかない。ですから、家庭用や小規模の需要における地産地消の発電設備としては、燃料電池が戦略的に極めて重要なシステムになっています。

枝廣
高効率の燃料電池はいつごろ市販されるのですか。

村木
05年から08年にかけて4年間の大規模実証試験を行っているところです。09年からは本格的な市場導入ということで現在、支援策導入などの議論もされています。また、水素に関しては自動車分野がどうなるかもカギ。今後の展開で注目しているのは、トヨタやホンダが将来戦略の一環として自動車と家の融合を考えていることです。

枝廣
確かに、モーターショーなどを見ると、トヨタはプラグイン、ホンダは水素のコンセプトを打ち出していますね。

村木
こうしたコンセプトが実現されれば電気や水素での融合もあり得ます。家でつくった水素を自動車に充てんすることや、自動車に充てんされた水素によって発電することもできます。いざという時には、非常用電源としても活用できる。だから、自動車と家の融合、エネルギーの融合は十分可能だと思います。

枝廣
面白いですね。そうしていくと、ガス会社、石油会社、電力会社の位置付けが、大きく変わってきますね。

村木
それこそが、事業としてのパラダイムシフトなんです。


「対電力」競合の行方は?

枝廣
今後、ガス業界はどんな形態に変化していくのでしょうか。

村木
そこは本当に読みにくいところなんですが、今のガス事業者がこれからもガス単体の事業者として成長していくことは難しくなり、「総合エネルギー事業」化していくと思っています。アライアンスなども必要かもしれません。例えば、水素などの新たな取り組みが何らかの役割を果たすかもしれませんね。

枝廣
依然、電力会社とガス会社の間での需要争奪戦が続いていますが、お客さまが欲しいのは、電気でもガスでもなくサービスなわけですから、そのあたりで両者が融合していく可能性はどうでしょうか。

村木
どうですかね(笑)。われわれはご指摘の通り、お客さまの視点に立って、「総合エネルギー事業」化を進め、そのための「ソリューション」として、ワンストップのエネルギーサービスに取り組んでいます。しかし、業界や事業者がそこで融合するかどうかに関しては、競争政策の観点もあり結構難しい面もあると思いますね。

枝廣
欧米を見ると、電気、ガスの両方を手掛けているエネルギー事業者が多いですよね。

村木
確かに、欧米のエネルギー産業では、歴史的な背景もあり電力・ガス併給会社が存在していたし、昨今では自由化やエネルギーの需給変動といった環境変化の中で、さまざまな合従連衡も起きている。だから、日本でもそういうことが絶対に起き得ないわけではないと思うんですが、一方、競争が燃料電池などの技術開発を促進してきたという面もあるので適切な競争は必要です。

枝廣
確かにその通りですが、外から見ていると、オール電化だ、ガスだと、業界を挙げての競合が行き過ぎているように思えます。電気がいいところは電気を使えばいいし、熱のようにガスがいいところはガスを使えばいい。本来は、総合エネルギーサービス同士の競合ができれば一番良いわけですね。本日は、ありがとうございました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

■太陽熱利用の可能性はでっかい

今日のゼミでも話しましたし、上記にも出てきましたが、太陽光だけではなく、太陽熱の利用を進めることがとても大事です。ガスと太陽熱って、親和性が高い気がしていますが、どうでしょうか?。世界では太陽熱への期待が高まり、投資と設置ががんがん進んでいますが、日本ではまだまだです。ガス会社の「次の商売」にならないのかなあ?と思います。

かつてと違って、今の太陽熱給湯器は暖房用にも使うことができます。暖房のためのエネルギーを節約し、CO2も減らすことができるのですね。

昨年出版した『エネルギー危機からの脱出 最新データと成功事例で探る“幸せ最大、エネルギー最小”社会への戦略』から、少しご紹介しましょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

広がる太陽熱利用

太陽は光だけではなく、熱も大いに供給してくれます。その太陽熱を利用する給湯器はかつてから広く使われてきましたが、いまでは暖房用にも使われています。

太陽熱温水器の技術は比較的シンプルで、費用もあまりかかりません。都市部で広く使われているだけではなく、これまで電力のなかった村でも使われるようになってきました。村人たちは、2万円(200ドル)ほど払えば、屋根に太陽熱温水器を取り付けてもらうことができます。そうして、生まれてはじめてお湯のシャワーを浴びることができるのです!

この技術はいま中国で猛烈な勢いで広がっています。中国では約4,000万世帯の屋根に太陽熱温水器が設置されています。中国には太陽熱温水器メーカーが2,000社もあるほどです。中国政府は、現在の1億2,400万平方メートルの太陽光温水器の容量を、2020年までに倍以上の3億平方メートルにしようとしています。

おかげで、中国では、54基の石炭火力発電所が発電する電力に匹敵するエネルギーが利用されています。インド、ブラジルなどのほかの発展途上国でも、今後、何百万もの世帯が、この値段の安い温水器を使うようになるでしょう。

途上国だけではなく、先進国でも広がっています。屋根型太陽熱温水器が大変に魅力的なのは、最初の設置コストさえ支払ってしまえば、あとはずっとお湯がただで手に入るということです。エネルギーコストが比較的高いヨーロッパでも、太陽熱温水器が勢いよく広がっています。先進国では、電力代の節約分だけで、平均して10年以内に元が取れます。

ヨーロッパでのリーダー役は現在オーストリアで、は全世帯の15%が太陽熱温水器を使っています。中国と同じように、オーストリアには、ほとんどすべての家の屋根に太陽熱温水器が載っている村もあります。ドイツでも広がっており、約200万人のドイツ人が、屋根上の太陽熱による給湯・暖房システムのある家に住んでいるそうです。

これまでヨーロッパでは、太陽熱温水装置はドイツ、オーストリア、ギリシャに集中して広がっていましたが、フランスやスペインでも動きが始まっています。

スペインでは、新規住宅への太陽熱利用を義務づける「ソーラー・オブリゲーション」という法律ができました。2006年9月より、「ほぼすべての新築の建物は、給湯需要の30〜70%を太陽熱でまかなわなくてはならない」法律によって、普及が進んでいます。

ヨーロッパ太陽熱工業連盟(ESTIF)では、「EUには、長期的には1,200ギガワット分の太陽熱による給湯および暖房の開発可能性がある」としています。太陽さえ照っていれば、ヨーロッパの暖房需要のほとんどを太陽熱で満たすことができるのです。

化石燃料の価格が上昇するにつれて、太陽熱給湯暖房装置は「かつて流行ったけど、もう流行が過ぎてしまったもの」ではなく、「主なエネルギー源のひとつ」となっていくでしょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いまちょうど、ギリシャ、スペイン、フランス、そしてスウェーデンなど北欧を経て、アイスランドへ、という航路をたどっていますので、寄港国のエネルギーへの取り組みの話は、乗船客の関心にもアピールしているようです〜。

(もちろんそのためにこの区間に私が講師役で乗っているわけですけどね!)

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