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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2009年07月27日

生物に学ぶデザイン〜バイオミミクリ(2009.07.27)

生物多様性
 

<内容>

■新幹線が2つの動物からヒントを得て作られていたって、ご存じでした?

■バイオミミクリって面白い〜!


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■新幹線が2つの動物からヒントを得て作られていたって、ご存じでした?


ときどきインタビューをさせてもらっている講談社の「エコログ」サイトに、とても面白かったインタビューが掲載されています。


「環境新時代の鍵は生物が教えてくれるデザインにある」

≫ 第7回:ジャネット・イェン、マーク・ワイスバーグ<前編>
http://moura.jp/ecologue/ecoist/index7_1.html

≫ 第8回:ジャネット・イェン、マーク・ワイスバーグ<後編>
http://moura.jp/ecologue/ecoist/index8_1.html

以下、サイトから「つまみぐい」でご紹介します。よかったら全文読んでみてくださいな。面白いと思います-。

新幹線が2つの動物からヒントを得て作られていたって、ご存じでした?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(前略)

枝廣 
お話を聞くにつれ、「生物に学ぶデザイン」に興味が湧きますが、たとえば、どんなものなのか、いくつか具体的な例を挙げていただけますか?

マーク 
そうですね、よく知られているのは、新幹線なんですよ。新幹線にはふたつの部分で生物学的な解決策が使われていることをご存じでしたか? ひとつは先頭車両の先端のデザインです。新幹線がトンネルに入るとき、トンネル内に大きな圧力がかかり、周辺一帯に破裂音が響きます。だから、似たような問題を抱えたカワセミのくちばしの形を真似ているのです。カワセミも空中から水中に飛び込むとき、同じような大きな圧力を受けるのですね。でもカワセミは上手に水中に飛び込みます。どうしてそれが可能なのか? それはカワセミの形状が優れているからなのです。そこで、技術者はカワセミのその形を真似て先頭電車の先端を造ったのです。

枝廣  
おもしろいですねぇ! ふたつあるとおっしゃいましたね? もうひとつは?

マーク 
もうひとつについてはそれほど知られていないと思うのですが、新幹線を電線に接続するために、出っ張っている部分です。

ジャネット 
電線と接続するパンタグラフですね。

マーク 
そうです。新幹線が走るときに、パンタグラフは高速で空気中を通過することになります。そのままでは、風の抵抗が強くて、大変な騒音問題が起きてしまうのですよ。それを防ぐにはどうしたらよいか? その技術者はフクロウに注目したのです。フクロウは鳥の中で一番静かに、飛ぶことができるのです。技術者がフクロウの翼の羽を調べてみると、特徴的な形をしていることがわかりました。その形が、風の抵抗から起こる音を出さないしくみになっていたのですね。そこで、その形をパンタグラフに採用しました。おかげで、高速で走ってもパンタグラフから大きな騒音を出さずにすむようになったのです。その技術者はバードウォッチングが趣味だったそうです。だから、「そうだ!」とひらめいたんですね。おかげで、鳥と電車を結びつけ、解決策を創り出すことができたのです。

ジャネット  
これは、直接技術者が自然に目を向けることでひらめきを感じた例ですね。生物学者がかかわる場合もあります。ちょうど私たちが研究しているように、生物学者は水中での物体の移動方法について学ぶことができます。フランク・フィッシュ博士という仲間がいるのですが、彼は、クジラはどうやって水中を泳ぐのかを研究しています。
 
クジラは速く泳ぐことができ、ターンなども上手です。フィッシュ博士は、クジラの推進力を生む付属物のいくつかに注目して、フクロウの翼と同じような特徴に気がつきました。翼の最先端に小さなこぶというか、突起物があるのです。これが風切り機能を果たし、抵抗を減らしているのです。フィッシュ博士がクジラの推進力について発表したところ、聴衆の中に風力タービンのデザインにたずさわる技術者がいました。彼は、「風車のタービンの先端にもこうしたこぶをつけてみたらどうだろうか?」と考えました。やってみると、風車が回る際に出る音が小さくなり、風がかなり弱くてもエネルギーを生産できるようになりました。それは、風から効率よくエネルギーを作り出す方法だったのです。持続可能性の取り組みとしても優れたものとなりました。

枝廣  
なるほどね、本当におもしろいですね。こうした研究をもとに、すでに開発された製品もあるのですか?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(中略)


ジャネット 
マーク、植物のハスの話をしたらどうかしら? ハスは真っ白な花びらの表面が、水をはじいて汚れを落とすナノ構造になっています。ドイツにはハスを参考にした塗料を開発した会社があります。自然の力できれいになる塗料です。

枝廣  
洗剤がいらないのですね!

ジャネット 
洗剤はいらないし、水の使用量も減ります。塗料の量も少なくてすむので、揮発性有機化合物(VOC)〔注1〕も削減されます。

マーク 
チリやホコリをきれいにするだけでなく、生物も付着しません。通常は塗料を塗るとカビが生えたりしますが、この塗料だったらカビも生えません。いわゆる多目的型解決策といえるでしょう。

ジャネット 
この研究に関しては、200以上の異なる特許をとったわよね? 

マーク 
ガラスに吹きつけると曇り止めになります。注射器の筒の部分や針などの表面コーティングにも使われています。医薬品を輸送したり、少量のサンプルを分析する必要があっても、内側に付着することがなくなります。繊維の防水加工用としても使うことができます。何かをこぼしても水でふきとれば、しみも残りません。

ジャネット 
もうひとつ、植物には葉で太陽エネルギーを吸収するという機能もありますね。つまり、葉をきれいに保つことで太陽エネルギーの吸収効率が高まるのです。

枝廣  
太陽光パネルにも使えますね。

マーク  
ええ、新世代の太陽光パネルが作られつつあります。

ジャネット 
太陽光パネルには、ほかにもよい技術があるのですよ。たとえば、ガのように暗い環境で生息する動物は、光をできるだけ多くとり込まなくてはなりません。ですから、その目には特殊な適応性があって、光を反射しないしくみになっているのです。入ってくる光は目の中にすべて吸収されるということです。ネコに似ていますね。ガの目は、空気中から物質に光が入る際の屈折を抑えるナノ構造でできているため、反射が少ないのです。つまり、より多くの光を吸収することができます。これは、太陽電池では新しい考えです。

マーク 
ジョージア工科大学でもこれについて詳しく研究して、太陽光パネルにどのように応用できるかに取り組んでいる人がいます。

枝廣  
すごいですね。ちょっと気になることがあるのですが、こういった特許の所有者は誰になるのですか? たとえばハスの葉の構造については特許を取得されているんですよね。ハスが特許を持っているのですか? その機能と形態を発見した人が特許を持つのでしょうか? 技術を使う権利を持っているのは誰ですか?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(後略)

<インタビューを終えて>

生物に学ぶアプローチである「バイオミミクリ」(ミミクリとは真似するという意味)には以前から関心があり、今回のインタビューもとても楽しみでした。バイオミミクリという言葉ではなく、生物にインスピレーションをもらったデザインという(インスピレーションが大事!)考え方をもとに研究し、また後進を教育しているおふたりとの話は、改めて「自然」への畏敬の念、「自然」の発見をもたらしてくれました。

お話しいただいた具体的な事例もわくわくと楽しかったし、何より、どのように自然を見たら、そのような発想が出てくるのか、そのプロセスを教えてもらえたことも勉強になりました。もともと自然と共生する価値観をもつ東洋と違い、「神が人間に、人間以外の生物のお世話をする責任と権利を与えた」という西洋の価値観の中で、素直に真摯に自然から学ぶこの考え方が広がっていることに、とても心強く思いました。

ぜひ、生物学者や技術者以外でも、誰もが畏怖と驚嘆と感謝の念をもって自然に対することができるよう、このアプローチの、科学だけではなく「価値観」への好影響も期待しています。


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■バイオミミックリーって面白い〜!

日本の環境情報を世界に発信しているNGOジャパン・フォー・サステナビリティのウェブサイトには「バイオミミクリ・プロジェクト」のページがあります。


バイオミミクリ・プロジェクト
http://www.japanfs.org/ja/pages/008926.html

バイオミミクリとは、「自然のモデルを学び、そのデザインやプロセスを真似て(又はインスピレーションを得て)人間界の問題を解決する、新しい科学。 -ジャニン・ベニュス(生物学者)」

> 「すごいなあ、どうしてこんなことができるんだろう?」
>
> レオナルド・ダ・ビンチは、トンボやハチが空中停止をする様子にヒントを得て、
> ヘリコプターの原理をスケッチしたと言われています。ライト兄弟もまた、鳥の
> 翼が「上面と下面で断面のカーブが違う」ことを発見し、飛行機の設計に取り入
> れました。
>
>
> これまで人類は、自然界からヒントを得て様々な技術を生み出してきました。そ
> してJFSは今あらためて、自然に学ぶ技術の可能性に注目しています。生命の歴
> 史38億年をかけて淘汰され進化してきた技術には、 持続可能性へのヒントがつ
> まっているからです。

わくわくしますよー。よかったらぜひのぞいてみてくださいな。

 

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