■日本の「25%削減目標」への世界のまなざし
9月28日から10月9日まで、タイのバンコクにおいて2009年で4回目となる国連気候変動会議が開催されています。8月にドイツのボンで開かれた会議に引き続いて、2013年以降の国際的な温暖化対策のあり方についての議論が行なわれています。
日本にとっては、政権交代で誕生した新政権のもとで、初めて臨む国連気候変動会議です。世界の日本への見方や態度がこれまでとは大きく違ってきている!WWFジャパンから参加している方の現地レポートです。ぜひお読みください。
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http://www.wwf.or.jp/activity/climate/world/kyoto/un-bnkk4/20091004.htm
2009年 国連気候変動バンコク会議報告【1】日本の25%削減目標発表!
2009年10月4日
○新政権初の国連気候変動会議
タイ・バンコクでの国連気候変動会議(2009年9月28日〜10月9日)は、日本の鳩山新政権にとって、初めてとなる温暖化防止のための国際会議です。
2009年6月にボンで開かれた同じ国連の会議で、当時の自民党の麻生前政権は、日本の中期目標を「2005年比15%削減(1990年比では8%の削減目標。京都議定書の目標6%から、その後の8年間で2%削減を増やしたのみ)」と発表、国際社会からは失望の声が上がっていました。
その後、誕生した鳩山民主党政権は、選挙中の公約通り、2020年に「1990年比で25%削減する」ことを早々と公表し、9月22日の国連気候変動サミットにおいて、世界に向け、その目標を正式に発表しました。
○日本へのまなざしは変わったか
今回のバンコク会議では、この日本の新しい25%目標が、世界(特に途上国)の国々からどのように受け止められるか、そして、迫る12月のコペンハーゲンでの合意までの交渉に、どのような影響を与えるかが、大きな注目点の一つとなりました。
バンコク会議初日の9月28日、AWGKP(京都議定書の下の特別作業部会:京都議定書に参加している先進国の次の目標を決める場)の本会議、途上国の集まりであるG77の各グループに所属する、ほぼすべての途上国は、日本の決断を高く評価しました。
「日本の新政権が発表した「2020年に1990年比で25%削減」を歓迎する。他の先進国は日本を見習って、野心のレベルを上げるべきである」。
同様の発言が、G77全体グループ、小島嶼国グループ、アフリカ・グループ、低開発途上国グループ、インド、ブラジルの各国代表からありました。
日本政府の発表も期待されましたが、時間切れで、午後のコンタクトグループでの会合に移りました。そして、このグループで日本代表は、「新政権の方針で、日本は目標を2020年に1990年比で25%に上げた」と発表。しかし、この発表に際しても、代表団は、「これは他の大量排出国のすべてが参加する効果的な枠組みが前提である」と念を押していました。
○変革がもたらしたもの
この、「日本の25%は、他の大量排出国の参加が前提」というフレーズは、日本代表団が発言のたびに、くどいほど幾度も繰り返している主張です。まるで、日本だけが突出して高い目標を持つことを、ひどく恐れているかのようです。
実際、今回のバンコク会議に臨む日本の政府代表団(通常100人規模の外務省、経済産業省、環境省の官僚)は、前政権時とメンバーが基本的に全く代わっていません。
会議3日目、日本の政府代表団は、途上国の激しい質問に対しても強硬な物言いを続けましたが、翌日になると、「日本は25%削減を発表した。それは他の大量排出国の参加を願ってそれを促すものである」と、和らいだ表現に立ち戻りました。
おそらくこちらの方が、新政権の交渉姿勢をあらわすものと考えられます。
いずれにしても、政治のリーダーシップによる変化が、ここでも見受けられました。前政権までの日本政府は、気候変動の国際交渉には非常に後ろ向きで、削減から逃れるための議論にエネルギーの大半を注いできましたが、今回のバンコク会議では、その代表団も一気におとなしくなったように見受けられました。
むしろ、待っていたのは、世界の温暖化防止をリードする、ヒーローの座。今までのように、「基準年を1990年から2005年に変えるべき」などという主張に声を張り上げる必要もなく、日本を激しく責める発言も、途上国の間からはほとんど聞かれなくなりました。
○国際舞台での期待
先進国が野心的な削減目標を持つと同時に、もう一つ大切な課題は、途上国が受けている温暖化被害の「緩和」と、影響への「適応」をサポートする資金の話を進めることです。
鳩山首相は、国連気候変動サミットにおいて、「相当量の新規で追加的な公的、私的資金が必要である」新たな資金メカニズムは「国連の気候変動に関する枠組みの下で」と語りました。これも、今までの日本の交渉姿勢にはなかった新たなリーダーシップです。
そして、日本政府代表団は、一週目の最後の中間報告で、25%の目標と合わせて「日本は資金や技術のサポートについてもリードしていく」と発表しました。
鳩山首相の発表から一週間しかたっていない、このバンコク会議の時点では、実際の資金サポートの提案までは望めませんが、早急な対応が期待されています。
そして、バンコクでの会議は前半の1週間が終わった時点で、日本は「化石賞」(毎日、温暖化防止に後ろ向きな国に贈られる不名誉な賞)を、一つもとっていません。これまで、交渉を妨げる常連国だった国が、一週間の間、この賞を一つもとらなかったのです。
○政治主導による交渉のこれから
いずれにせよ、今回の日本の鳩山政権の誕生は、政治のリーダーシップというものが、どれほど、日本の方向性を変える力があり、世界からも正当に評価されるものであるかを明らかに見せ付けるものとなりました。
これまでの日本は、野心のない提案を出しながらも、それが野心的であると言い立て、世界の交渉団から久しく酷評を浴びてきました。それが今、変わろうとしています。
また今回の会議では、世界の温暖化防止に取り組むNGOの間からも、日本のNGOのメンバーが、拍手を浴びて「おめでとう!」と言われ続けています。
交渉は、これからが真の政策提案の場となります。WWFをはじめ、各NGOのメンバーも、政治のリーダーシップの威力を強く感じ、高揚した気分の中で、改めて気を引き締めています。
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「リーダーシップ」ってどういうものなのか、つくづくと考えさせられますね。そして、日本だって、リーダーシップをとることができるんだ!という(これまでなかった)ことは、私をはじめ、多くの人に、胸を張って他国と堂々とやっていける勇気と裏付けを与えてくれていると思います。
WWFジャパンから、会合の一週目報告も出ています。交渉の焦点やようすなどはぜひこちらをどうぞ。
http://www.wwf.or.jp/activity/climate/world/kyoto/un-bnkk4/20091005.htm