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■ただやるのではなく、「本当に役立つ」固定価格買取制度にしよう!
■日本地熱学会からの緊急提言―効果的な固定価格買取制度(FIT)の導入を期待する―
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■ただやるのではなく、「本当に役立つ」固定価格買取制度にしよう!
新政権になって、ダムにしてもほかのいろいろなことにしても、「やると決めたからやるんだ」というこれまでの進め方ではなくて、「本来の目的は何なのか?本当に大事なのは何か?」というそもそもの見直しや、「やるとしても、どうおこなうのが効果的なのか?」という制度設計や運用ルールの見直しがおこなわれています。さまざまな混乱は当然あるものながら、いまの日本に本当に必要なことなのだろうと思います。
環境政策にしても、前政権が「やらないと言っていたけど、やることにする」と決めたことに対して、「ただやる」のではなく、「実効性があり、将来に禍根を残さないやり方でやる」ことが大事、という考えで、必要な見直しがいろいろと出てきています。
そのひとつが、再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度です。固定価格買取制度については、以前メールニュースでも書きましたが、「日刊 温暖化新聞」にアップされていますので、おさらいをかねてどうぞ!
http://daily-ondanka.com/edahiro/2009/20090309_1.html
前政権が11月1日から導入すると決めたのですが、上記にあるように、本当に日本が再生可能エネルギーをどうしたいのかというビジョンに基づいて作られた制度設計ではないので、実効性や広がり、将来足を引っ張らないかという意味で、経産省の提案の形でそのまま進めてよいのか……?
現在の形では、たとえば、全量買取ではなく、太陽光のみの余剰分の買取となっています。しかし、民主党の考えでは全量買取となっていたと思います。
駆け込みで開始してしまわないで、一度じっくり考えて、本当に役立つ制度設計にしてから実行した方がよいのではないか、という意見書が出ましたので、ご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
http://www.isep.or.jp/press/090930press_fit.pdf
**大臣 殿 平成21 年9 月
「25%削減」に向けた緊急のお願い
(フィードインタリフに関する緊急措置)
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
この度、晴れて政権交代が実現し、発足したばかりの新政権で首班指名された鳩山総理大臣は、マニフェストどおり、先の国連気候変動ハイレベル会合において、1990 年比で25%削減をいち早く国際公約されたことは、国際的にも国内的にも時宜に適った適切なものとして、私ども自然エネルギー推進に携わるものとして、高く評価しております。
その『1990 年比25%削減』を実現するためには、自然エネルギーの全面的な推進を欠かすことはできず、中でもマニフェストに書かれているとおり、「全量・全種類のフィードインタリフ」の一刻も早い施行が不可欠と考えます。
ところが、前政権が駆け込みで公布した『太陽光発電の電力買取制度』は、総選挙の真っ最中に、7日という異様に短期間のパブリックコメント(通常は30 日)で、官僚が既成事実づくりで成立させたものであり、民主党が掲げたマニフェストを阻害するものです。にもかかわらず、鳩山政権の精査を待つことなく、目前に迫る11 月1日の施行へと突っ走っています。この「前政権の残滓」とも言うべき制度は、鳩山政権のマニフェスト履行にあたって、後に著しい障害が予想されますので、制度実施を急がずに慎重な検討をお願いいたしたく、この要請を差し上げる次第です。
つきましては
① 前政権の買取制度の開始時期をいったん延期する
② 自然エネルギー政策の知見を持つ有識者を交えた新体制で、検証・見直しを行う
③ 法制度の手当の不要なものについては、必要な見直しを行った上で半年後に再施行し、法制度の手当ての必要なものは必要な見直し・法手当てを行った上で1年後の実施を目途とする
政権発足直後の時期、ご多忙の極みと拝察申し上げますが、事態は極めて深刻でございますので、ご検討賜りますようお願い申し上げます。なお、本件の理由につきましては、添付の理由書をご拝読賜りたく存じます。
敬具
【提出者】
自然エネルギー政策プラットホーム(JREPP) 全国小水力利用推進協議会
日本地熱学会 日本建築学会気候変動対策小委員会
環境エネルギー政策研究所
【本件のお問い合わせ先】
環境エネルギー政策研究所(ISEP) 松原・山下・澤木
E-mail: info01@isep.or.jp TEL: 03-5318-3331, FAX:03-3319-0330
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■日本地熱学会からの緊急提言―効果的な固定価格買取制度(FIT)の導入を期待する―
日本地熱学会からも緊急提言が出ています。地熱発電の可能性の大きさもわかりますね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
我が国の再生可能エネルギー利用に関する緊急提言
―効果的な固定価格買取制度(FIT)の導入を期待する―
平成21年10月5日
日 本 地 熱 学 会
日本地熱学会は平成20年10月31日、「我が国の地熱エネルギー利用に関する提言」を取りまとめ、発表した。この提言では、地球温暖化問題およびエネルギー問題に重要な貢献をすることのできる我が国の地熱エネルギー資源の有用性が、政策担当者に十分理解されず、したがって、十分活用されていない現状を指摘した。
そして、我が国が、真の地熱大国になり、持続可能な社会構築に貢献するために、政府を始め、各機関、そして国民が、我が国の地熱エネルギー利用促進に十分な理解を示していただくことを強く呼びかけるとともに、日本地熱学会がそのための努力を惜しまないことを宣言したものである。
2008年12月、経済産業省・資源エネルギー庁に「地熱発電に関する研究会」が設置され、我が国に地熱エネルギー資源が豊富に存在することを改めて確認するとともに、その開発利用において種々の障害が存在すること、そして、それらの改善に対する議論が真剣に行なわれ、現在、改善に向けた具体的な動きがなされている。
同時に、同研究会では、2020年における地熱発電可能量を試算し、現在の地熱発電設備容量53万kWの3倍を超える166万kWを発表している。地熱発電は24時間安定して発電が可能であるため、この数値は、実際の発電量から見ると、太陽光発電設備1000万kWに相当するものであり、我々の足元には有望な再生可能エネルギー資源が存在しているのである。
さて、鳩山首相は、去る9月22日に開催された国連の気候変動サミットにおいて、我が国の地球温暖化対策の中期目標として、世界の全ての主要国が意欲的な目標に合意することを前提に、2020年において、1990年に比べて、温室効果ガス排出を25%削減することを国際的に公約した。これに対し、世界各国の首脳からは大きな称賛を受けるとともに、パン・ギムン国連事務総長は野心的と高く評価し、国際的な流れを変えるものと強く支持を表明した。
この25%削減という目標はたやすく実現できる数値ではないのは確かである。現に、国内では、産業界をはじめ、危惧する声があるのも事実である。しかし、そのような議論の中で、我が国において再生可能エネルギーがはたす役割に関する認識が大きく欠けていることを指摘したい。
我が国には十分な再生可能エネルギーの供給ポテンシャルがあるのである。IPCCが警告する地球温暖化の進展状況、そして、エネルギー問題、特に、ほとんどのエネルギー資源を海外に依存している我が国は、自国に存在する再生可能エネルギーをより一層理解し評価すべきである。
現在、新しい政権の誕生に伴って、種々の分野で新しい動きがあり、再生可能エネルギーの利用に関しても積極的な政策が取られることを期待したい。このような中で、重要な再生可能エネルギー利用促進策と考えられる、固定価格買取制度(FIT)の議論が進められているが、旧政権による政策では太陽光発電だけが対象とされ、かつ、非常に限定的な運用が想定されている。
温室効果ガス25%削減を目指すのであれば、固定価格買取制度の適用を再生可能エネルギー全体に広げ、かつ、実際に導入が促進されるように、適切な制度設計が行なわれることを期待したい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レスター・ブラウン氏もよく「日本はこれだけ温泉があるというのは、地熱に恵まれていることなのに、あまり使っていなくてもったいないよね」と言います。
「太陽光のみ」(産業政策としてはまずは太陽光発電メーカーを振興しようということなのかもしれませんが)ではなく、それぞれの地域にそれぞれ得意な再生可能エネルギーがあるわけですから、それぞれの地域の再生可能エネルギーをどれも応援できるような制度にしてもらいたいと思います。
(この太陽光のみという固定価格買取制度案に対して、あちこちの地域から文句が出てもよいのでは?と思うのですが……)