<内容>
■2010年を迎えて想うこと
■JFS(ジャパン・フォー・サステナビリティ)での新年の挨拶
■チェンジ・エージェントからの新年のご挨拶
■何年か後の自分に向けて
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■2010年を迎えて想うこと
明けましておめでとうございます!
この数年間、特に昨年1年間を振り返ると、「世界も日本も望ましい方向に進みつつあるなあ」と思います。
もちろん、COP15で願っていたような進展がなかった、国内でも25%削減の目標は出たものの、具体的な政策メニューはまだほとんどない、相変わらず「温暖化対策をやると、経済にマイナスになって、家計も苦しくなるぞ」という産業界のコミュニケーションが新聞に載っているなどなど、がっかりすることも、足りないことも、逆行する動きも多々あります。
それでも、数年前に、「数年後には、サミットでも国会でも産業界や環境省以外の省庁での会合でも、あらゆる分野の企業の念頭所信でも、必ず『環境』『温暖化』が出てきますよ。多くの企業がこれからの競争力を環境対応力で規定し始め、そのための投資や技術開発、ビジネスモデルの変革を競い始めますよ。人々も、身を粉にして働いて、そのお金でモノをガンガン買って所有して幸せを感じようとするよりも、みんなで共有することを選んだり、お金よりも自分のやりたいことを大事にしながら生きるようになりますよ」と言ったら、「いつかはそうなるかもしれないけど、数年では無理じゃない?」と言われたのではないかと思うのです。
暮れの大掃除で、2002〜2004年頃の資料やメモが出てきました。それからわずか数年なのに、こんなに大きく変わりはじめている!とびっくりし、うれしく心強く思いました。
ぽたぽたと雨滴は1つ、2つと集まってできていった水たまりが、いよいよ「こちらだ!」という方向を見つけて流れ出したかのようです。望ましい方向への流れは、途中で幾多の水滴が合流しながら、どんどんと大きく、加速していきます。あっという間に、新しい時代へ向けての激流になることでしょう。
川の流れにも、よどみもあれば、分子レベルで言えば、逆流しようとする水の分子もあちこちにいます。目先の利益や私利私欲に突き動かされて、長期的に本質的に大事にすべきことを軽んじようとする動きは、日本でも世界でも、これからも続くでしょう。急流でも逆行しようとする水の分子はいるのですから。
でも、全体としての流れが正しい方向に向かっていく動きは、もう止められないレベルの勢いがついた、と思うのです。残念ながら、温暖化や生物多様性をはじめとする地球の環境問題と私たち人類への影響の悪化が進行していきますから、ますます、変化へ向けての勢いは増していくことでしょう。
すでにその地球規模の流れの中に位置する私たちの役目は、流れができるだけ効果的に正しい方向に向かっていくようにプッシュしていくこと、そして、逆行する水の分子の力に負けないだけの「向かっていく水の分子」を結集していくことです。
昨年、何度も「本当に面白い時代に生きているなあ! うれしいなあ!」とつくづく思いました。私、サーフィンはしたことがありませんが、この時代の波乗りは本当にエキサイティングでわくわくするでしょう!
慎重に、そして大胆に。
しっかりと考えて、でも完ぺきはめざさないで。
進んでいくのが大変だと思ったら、振り返って、これまでに進んできた距離を見てみよう。こんなに進んできたじゃない?って。
私たちの働きかけで、時代が変っていけば、私たちの働きかけや役割も変わってきます。「これまでこうだったから」にこだわらないで、「今、いちばん効果を発揮するにはどうしたらいいかな?」を考えよう。
私も「自分の活動や存在が、時代や社会を少しでもプッシュする上でもっと役立つには?」を考えていきたいと思っています。例年にも増して、変化の必要性を感じ始めているので。
昨年、その参考にしたいとメールニュースでアンケートをお願いし、数十人の方々から回答をいただきました。本当にありがとうございました。個別のお返事は出せませんが、ひとつずつ大事に参考にさせていただきます。
2011年の年頭には「へぇー、この一年でこんなにいろいろなことが進んだのですね!」という話をしていることでしょう。どんな「いろいろなこと」がどのくらい進むのか、それは、私たち一人ひとりの思いと行動が決めていけることです。それぞれのペースで、それぞれの立場と役割で、変化を楽しみながら、時代の流れを推していきましょう!
今年もいろいろ考えたり、試したりしながら、「伝える・つなげる」活動を進めていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
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■JFS(ジャパン・フォー・サステナビリティ)での新年の挨拶
日本の環境情報を世界に発信するNGO、JFS(ジャパン・フォー・サステナビリティ)の8回目のお正月にあたって、いつも活動を支えてくれているボランティアやサポーターの方々への「事務局便り」で、共同代表として、短いご挨拶をしました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
明けましておめでとうございます。
2000年代の10年間が終わり、新しい10年(decade)が始まりました。
未来の人々は2010年代をどのように記憶・記録することになるのでしょうね? それはだれかが決めるものではなく、私たち一人ひとりが考え、行動していくことで、創り上げていくものなのだと思います。
2010年代が「世界が真の持続可能性に舵を切り、加速した10年間だった」となるよう、私たちJFSもコツコツと情報を集め、記事を書き、英訳し、ウェブに載せ、ニュースレターを出し、海外からのリクエストや問い合わせに答え、海外の声を日本につなぎ、あるべき日本の姿を打ち出していきましょう!
日本も世界も、当面苦しい状況に直面することと思います。
そういうときこそ、「希望の泉」が大事になってくるのです。
苦しいときも悲しいときもどんなときでも、渾々と水が湧き出て、大地を潤し、緑を育て、旅人たちを癒し、さらに先に進んでいく元気を与えてくれる、そんな希望の泉になりたい--
ご一緒できるご縁に心からの感謝を込めて。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
枝廣淳子
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■チェンジ・エージェントからの新年のご挨拶
http://change-agent.jp/news/archives/000338.html
あけましておめでとうございます。
2010年の始まりは、2010年代の幕開けでもあります。2000年代という十年間を振り返り、これからの十年間について考えてみるよい機会ではないでしょうか。
私たちは、過去10年の間、企業、政府、NPO・NGO、大学などのさまざまな組織と関わりながら、2005年にはチェンジ・エージェント社を設立しました。組織変革や社会変革のための知恵を培い、技を磨き、実践を進める事業を進め、おかげさまで、この4月には設立満五年を迎えます。
過去の十年間は、「新しい経済」と「古い経済」、「新しい市民社会」と「古い市民社会」の入れ替わりが始まった時期ではないかと考えています。とりわけ、組織や社会の中で対話への渇望が生まれ、そのための手法や場が大きな広がりを見せました。「ダイアログ」、「ワールド・カフェ」、「AI」などがその一例です。
「NPO・NGO」や「社会起業家」などが当たり前の存在となっていく一方で、「ウェブ2.0(または3.0)」などのさまざまなIT技術が、市民の発信力、ネットワーク力を格段に高めました。(このメルマガも、「ブログ」で書かれ、「メーリングリスト」で4千人以上に発信され、さらに「ソーシャルネットワーキングサイト」で共有されたり、「ツィッター」のつぶやきに登場したりしています。)
発信、対話、そして人と人とのコミュニケーションへの渇望は、今、古い社会経済システムが徐々に機能しなくなっていることから起きている現象でしょう。欧米においてもミルトン・フリードマンの主張するような「株主のためにリターンを最大化する企業モデル」は疑問視され、企業活動では「向環境」・「向社会」的な側面は必須の要請となって、「CSR」、「トリプルボトムライン」、「サステナビリティ」、「ガバナンス」などの新しいキーワードが生まれ、世界の大企業の経営のあり方がずいぶんと変わってきました。
しかし、経済全体に関してはその「グローバル化」「フラット化」や「新興国の台頭」が進む一方で、根本的な構造変化は起こらないままでした。世界の景気は、資産価値の上昇によって信用を膨らまし、その信用で消費を拡大して資産価値をさらに高める北米市場によって牽引されたものの、「サブプライム問題」、「リーマン・ショック」などを境に、未曾有の「世界同時不況」に陥り、景気の下支えを続ける「政府の財政赤字」は危機的な状況まで膨らんできました。今回の不況は、景気刺激策で浮揚する性質を超えるもので、経済全体の「バランスシートの調整」や「余剰供給能力」の整理に加えて、根本的な社会経済のインフラ転換と起業家精神によるイノベーションの数々が必要と考えられています。
そこで、一時しのぎやそもそもその問題を作り出した解決策の繰り返しには終わらない、本質的な構造改革に向けて、新しい社会経済システムのプロトタイプが模索され、或いは胎動を始めています。「グリーンニューディール」や「ネットワーク型経済」、「BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)」、「自然資本」や「生命資本」の再生・強化などはそのような潮流の一例です。
また、私たちの文明の進歩を測る指標として「GDP(国内総生産)」を使うことは無意味であるとの認識が世界の各地で急速に広がり始めて、「GPI(真の進捗指標)」、「GNH(国民総幸福度)」など、GDPに代わる指標がOECDや政府レベルで検討されています。新しい社会経済のインフラを生み出すには、私たちの思考の前提にまで踏み込んだ議論が必要とされるということでしょう。
これからの十年間は、今までの政策や経済社会活動の後遺症が、「通商問題」、「財政破綻」、「環境問題」、「食糧危機」、「エネルギー価格高騰(ピークオイル)」、「経済格差・貧困」、「紛争・テロ」、「難民」など、さまざまな症状を呈しながら、ますます強まっていくことが予測されます。
そのような環境変化に対応しつつ、その根本原因に対処するために、今の社会経済システムの全体像とその思考の前提を理解し、幅広い利害関係者間の対話を行い、新しい「経済の姿」、「国の形」のビジョンが広く共有することが求められていくことでしょう。これからの十年間は、その新しい共有ビジョンをもとに集まった同志のネットワークが「学習の生態系」となって、新しい「知識のフロー」を創造し、さまざまな「イノベーション」の数々を生んで、新たな社会経済システムを形作っていくことでしょう。
新しい社会経済システムが具体的にどのような形になるのかは、私たちにもわかりません。それがどのようなものになるかは一握りの人たちが決めるものではなく、幅広い利害関係者の参画するプロセスの成果として形作られるものだからです。
私たちチェンジ・エージェントが目指すのは、そのようなプロセスを加速する「触媒」となって、真に人々が望む社会改革や組織改革の後押しをすることです。そのためにも、この十年間で、変化を加速する「変化の担い手」を200名育成応援し、変革者たちのネットワークを広げていきたいと考えています。
その十年間の最初の年となる2010年、私たちは次のような抱負を掲げます。
1.変革のための理論、技、実践を広げる
効果的な変化を実現するための基礎となる「システム思考力」「共創的対話力」「共有ビジョン策定力」を培うための情報提供、本、講演、セミナーを引き続き提供していきます。
昨年、ジョン・スターマン著の『システム思考―複雑な問題の解決技法』を上梓しました。
今年はこの本をもとにしたシステム思考の講演や上級者向けセミナーも開催していきます。
2.チェンジ・エージェント養成講座開催と実践ネットワークの形成
昨年までに組織変革の担い手を育てる「学習する組織リーダーシップ研修」を6回、社会の変革の担い手を育てる「持続可能なビジネスモデルを考える力をつける集中ゼミ」を3回してきました。
○集中ゼミ
今年もこれらのコースを継続して提供しながら、新たに「チェンジ・エージェント養成講座(仮称)」を開発し、今年中に提供を始める予定です。
また、チェンジ・エージェント設立5周年を記念して、4月25日に5周年記念イベントを開催し、過去のセミナー受講者・卒業生の実践ネットワークを形成するキックオフとしたいと考えています。実践ネットワークを通じて、継続的に変革の後押しを図ります。
※実践ネットワークなど「ネットワーク指数」についての本も翻訳しました。
○マイケル・ダルワース著、枝廣淳子訳「NQ ネットワーク指数」
3.「新資本主義」モデルの研究
昨年、「環境変化をふまえた新しい経済・ビジネスモデルを探求すること」を一つの目標にあげ、枝廣は12月に行われた政府の「成長戦略策定会議」のヒヤリングなどで提言を行いました。今年は、政策などの実践面に影響を与えていくために、より突っ込んだ制度設計や、起業家によるイノベーションなどの研究を進めていきたいと考えています。
4.ピーター・センゲ「The Fifth Discipline」完全版/第2版の翻訳
20世紀を代表する書籍として多くのビジネス書で賞賛され、「システム思考」をマネジメントの主流に伝えたのが1991年に出版された「The FifthDiscipline」。日本では1996年に『最強組織の法則』として紹介されました。
欧米では2006年に第2版が出版されて、第1版ではまだ少なかった実践事例を中心に、100ページも書き加えられています。その第2版の日本での翻訳権を、リーダーシップや社会変革の書籍を多数出している英治出版が取得し、チェンジ・エージェント社が日本語訳を担当することとなりました。発売時期などは未定ですが、「学習する組織のバイブル」とも言われるこの本のエッセンスを広くお伝えできるよう、この翻訳に全力を注ぎます。
5.社会変革・組織変革の第一人者/オピニオンリーダーの招聘
2009年は、チェンジ・エージェントのアドバイザーを務めるデニス・メドウズ氏が「日本国際賞」を受賞・来日した際に、社会起業家育成などで知られる田坂広志氏とのシンポジウムを開催しました。
http://change-agent.jp/news/archives/000177.html
本年も、国内外の社会変革・組織変革の第一人者達を招聘を企画、或いは、開催協力を進めます。
4月には、U理論やシナリオ・プラニングを駆使して、世界でも「変革ファシリテーター」として名高いアダム・カヘン氏が来日し、4月12日にはSoLジャパン主催の講演が行われる予定です。
6.日本から海外への貢献
昨年は、アメリカのシアトルで行われた国際会議「ペガサス・カンファレンス」
でシステム思考のワークショップを開催したほか、JICAがアフリカからの研修生を迎えた機会に、開発課題についてシステム思考による状況分析や解決アプローチの探求を指導しました。
また、インドネシアで行ってきた現地NGO組織の能力開発プログラムや自然エネルギーによるコミュニティ開発プロジェクトについて、メンタリング・コーチング、研修を行っています。
本年も、継続して海外の研修生や現地組織の学習と実践の支援にあたり、日本で培ったシステム思考を持続可能な開発のために活かしていきます。
7.持続可能な発展への貢献
昨年は、温暖化問題と生物多様性問題を中心に、執筆、翻訳、講演などを行いました。昨年上梓した主な著書・翻訳書は以下の通りです。
○枝廣淳子・小田理一郎著『企業のためのよくわかる生物多様性』
○アル・ゴア著 枝廣淳子訳『私たちの選択』
○武田邦彦・江守正多・枝廣淳子著『温暖化論のホンネ』
○ドネラ・メドウズ著 枝廣淳子訳『地球の法則と選ぶべき未来』
○デヴィッド・デ・ロスチャイルド総監修 枝廣淳子監訳 「地球環境図鑑」
○リサージェンス誌選集 枝廣淳子訳「つながりを取りもどす時代へ」
枝廣は2008年に引き続き、内閣の「温暖化問題に関する懇談会」メンバーを務め、中期目標設定などへのアドバイスを行ったほか、温暖化問題に関するアンケートや国民ダイアログの場を設定し、国民の声を拾い上げる役割を果たしました。
本年も引き続き、国際的に重要な議題となる温暖化問題や生物多様性問題に関する啓発と市民対話を進めると共に、経済上の課題や社会上の課題と融合して、政府や企業の政策・戦略立案を後押ししていきたいと考えています。
また、昨年に引き続き、オフィス使用電力について省エネを進めた上で利用分については100%グリーン電力でまかない、出張は経路を吟味した上でやむない飛行機搭乗に伴う二酸化炭素排出量は自然エネルギープロジェクトで相殺して、環境負荷の総量及び正味を可能な限り削減する努力を続けます。
社会の要請に応え、社会の役に立ち続けることができるよう、今年も今まで以上に努力・邁進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願いします。
小田理一郎・枝廣淳子
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■何年か後の自分に向けて
2003年に自分にとって2回目になるバラトン合宿に出て、その帰途に書いたメモが出てきました。「以下の本は、日本でもきちんとした形で出したい」と3つ挙げられていたのが、
(1)ドネラ・メドウズさんのコラム集
(2)システム思考のバイブル、ジョン・スターマンの『Business Dynamics』
(3)「学習する組織」の教祖と言われるピーター・センゲの『The Fifth Discipline』
だったと知って(すっかり忘れていた......)、びっくりしました。
(1)は、ドネラ・メドウズ著 枝廣淳子訳『地球の法則と選ぶべき未来』
(2)は、ジョン・スターマン著 小田理一郎・枝廣淳子訳『システム思考―複雑な問題の解決技法』
として、昨年出版することができ、(3)は昨年末に日本での出版が決まり、チェンジ・エージェントに翻訳の依頼をいただいたのです。
2003年に「出したい」と持ち帰った3冊が、2009〜2010年に本当に出せるなんて!
数年にわたって翻訳の準備を進め、根気よく出版社に相談を持ちかけてきたものもあれば、システム思考の勉強とバラトンのネットワークから著者とのつながりができて、一気に話が進んだものもあります。そうした実績を見て、出版社から声を掛けてくれたものもあります。
いま思っていることがすぐに実現しなくても、思い続けていれば、その方向への取り組みを続けていれば、きっと数年後にはカタチになる。
としたら、いま何を考え、何を思い、何を願うのかも大事。それが数年後の自分を決めていくのだから。
今年は、情報発信や行動だけではなく、「考える」ことを大事にしたいと思う今日この頃です(年始の閑散期だから言えるコトかもしれませんが。^^;)
みなさんにとっても素敵な1年になりますように!