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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年01月15日

エネルギー高騰、経済困窮……2020年、最悪のシナリオ〜日刊工業新聞の「卓見異見」への第4回寄稿より (2010.01.15)

エネルギー危機
 

■エネルギー高騰、経済困窮……2020年、最悪のシナリオ


日刊工業新聞のオピニオンページ「卓見異見」への第4回の寄稿文が掲載されました。

今回は年始の回ということで、「2020年の日本」を2つの可能性として描いてみました。文字数の関係上、2つめの姿は来月の掲載になりますが。。。

今回は、私の思い描く「こうなってほしくない(けど、このままだとこうなりそう)な日本」です。「こうなってほしい、こうできるはず!」という日本の姿は来月をお楽しみに-。

未来を思い描くことに正解はありません。みなさんもぜひ、「自分だったらどう考えるか」「望ましい未来は? そして、望ましくない未来は?」と考えてみてください〜! 私の小文がその1つのきっかけとなればうれしいです。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


エネルギー高騰、経済困窮
2020年、最悪のシナリオ

新しい10年が始まる。年始に当たり、10年後の日本、つまり「2020年の日本」の姿を二つの可能性として描いてみようと思う。

今回は「このままの状態が続くと……?」という10年後である。

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2020年を迎えたところだ。09年末に行われた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、世界は具体的な目標や取り組みの枠組みを設定できず、その後も、先進国と途上国が「過去の責任」と「未来の責任」を巡って争いを続けた。皆が“後出しジャンケン”しようと腹を探り合い、問題を先送りしたまま10年がたってしまった。

○問題先送りのまま…

問題構造の根底にあるのは、「経済活動はエネルギー消費量に比例し、エネルギー消費量はCO2排出量に比例する」という構造のままでは、CO2削減=経済活動の縮小を意味するため、自国の繁栄を求める各国間で話が進まないという事実である。

このような国際情勢の中、「2020年に25%削減」という目標を「主要国が参加するなら」という条件付きで掲げた日本も、「主要国が参加すると言っていないから」と、目標実現のための対策着手を先送りし、日本の温室効果ガス排出量は増え続けている。

○ピークオイル到来

しかし、その間に、専門家がかねて12-14年にやってくると警告していたピークオイル(産油量がピークに達した後減少していくタイミング)が到来した。09年8月に国際エネルギー機関(IEA)が「世界の産油量の4分の3を占める800の油田を調べたところ、主要な油田のほとんどはすでにピークを過ぎていた。これまでの我々の見通しは甘かった。世界全体でも10年以内にピークが来るだろう」と予測した通りの世界になっているのだ。原油価格は1バレル200ドルを超えており、さらなる価格の高騰は火を見るより明らかである。

エネルギー自給率は4%で、一次エネルギーの約8割を化石燃料に頼る日本では、くるくる変わる政策に中長期的な投資を阻まれて自然エネルギーは拡大せず、地震のたびに原子力発電も停止する状況で、輸入の化石エネルギーに依存する構造のまま、経済も社会も動きが取れなくなりつつある。

何しろ、08年には約23兆円だった化石エネルギーの輸入コストが、消費量はほとんど変わらないのに、18年には50兆円近くになっているのだから。

当時から財政赤字の大きかった日本は、今や財政破たんの瀬戸際に立たされている。高騰を続ける輸入エネルギーの支払いに加え、国内でのCO2削減が進んでいないため、京都議定書やその後の枠組みの目標の帳尻合わせのため、海外からの排出権購入を余儀なくされ、国内の産業や社会を活性化する原資が乏しくなっている。

加えて、余力のあるうちに自立的な食料経済への転換をはからず、「1カロリーの栄養をつくるのに10カロリーの化石燃料が必要」な食糧生産のやり方のままなので、原油価格の高騰が食料価格の高騰や不足を引き起こし、十分に食べられない人も増えている状況だ。

○企業の体力も限界に
 
政府は、長期的なビジョンがないまま、その時々の内外の圧力に補助金を付けたりやめたりを続けている。一貫性のないエネルギー・温暖化政策に産業界や企業は投資計画も立てられずに翻弄される一方、国際公約の帳尻を合わせるために排出権購入を強いられるという状況が続いている。

企業は短期的・局所的な効率性を求めるしかなくなり、将来に向けての研究開発などには資金が割けない。魅力的な新製品の開発もできなくなり、日本企業の国際競争力も日本の世界における存在感は薄くなる一方だ。

社会の覇気も明るさも失われ、こんな社会に子どもを送り出せないという恐れか、出生率も低下の一途をたどっている。


次回は全く異なる「2020年の日本」を描こう。こういう日本にしたい、できるのだ!という姿を。ぜひ読者の皆さまにも「2020年の日本」「2020年のわが社」を描いてみてほしい。

(日刊工業新聞 2010年1月11日付)

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