<内容>
■ツバルから帰国しました
■ツバルの写真展のお知らせ
■「ツバルは沈んでなんかいない」という意見について
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■ツバルから帰国しました
おとといの夜9時ごろに成田空港に到着、夜中に帰宅しました。久しぶりの日本の印象は……「さむ〜い!!」 気温差が30度ぐらいあるのですよね。。。寒さのおかげで、シャキッ!としましたが。(^^;
さて、「カイ・カイ・クリームのことなんかどうでもいいから、ツバルは本当に沈んでいるのか、どうなのか?」というメールもいただいています。(^^;
ツバルで見聞きしたことや、政府担当者のレクチャー、南太平洋の研究所の専門家のレクチャー、そして、最後の日にはツバル首相にもインタビューさせていただくことができたので、その内容などをいま、整理しているところです。
「百聞は一見に如かず」と言いますが、本当に現場を見、現地の人に聞かないと、わからないことがたくさんあるだなあ!というのが、現在の率直な感想です。日本で作られている「ツバル」のイメージと、現地で感じたことのギャップがとても大きく、どのように伝えていったらよいのだろう?とツバルにいる間からずっと考えています。
何らかの形で整理して、私なりにいちばん大事な学びをきちんとお伝えできる形にしていこうと思っていますので、もう少しお待ち下さい〜。m(_ _)m
もし、「自分もこの目で見に行きたい!」という方がいらしたら。今回私たちが参加したツバル・エコツアー、次回は3月末に開催されるそうです。こちらに案内が出ると思いますので、ぜひチェックして下さい。
http://www.tuvalu-overview.tv/
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■ツバルの写真展のお知らせ
今回のエコツアーの主宰者である遠藤さんが、仙台で写真展を開かれます。今日、仙台入りされたようですが、「酷寒です」とメールが来ています。(^^;
さむーい仙台で、暑いツバルの、温かい人々の写真をぜひどうぞ〜!
ツバル写真展「ツバルに生きる一万人の人類」
日時:2010年2月6・7日(土日)10:00〜17:00
場所:仙台メディアテーク1階オープンスクエアー
http://www.smt.city.sendai.jp/
主催:ストップ温暖化センターみやぎ 後援:宮城県・仙台市
問合:電話022-301-9145
http://www.melon.or.jp/melon/contents/Global_Warming/tsvalupicture.htm
備考:入場無料
特定非営利活動法人 Tuvalu Overview代表理事であり写真家でもある遠藤秀一が10数年間撮り溜めたツバルの貴重な写真の中から、厳選した40点を一同に展示します。幅2mの大きな空撮写真、美しい風景や、現在見られる様々な問題の紹介、そして、ツバルの人々の素顔と生の声をお伝えするプロジェクト「ツバルに生きる一万人の人類」からは、ポートレートの展示と会場内の大型スクリーンを使用してプロジェクト成果をグーグルアースで公開するプレゼンテーションも行います。ツバルを通して私たちの暮らしを見直して、未来を創り出す有意義な2日間にしたいと考えております。会期中、遠藤も会場にいる予定です。近県の方も是非遊びにいらしてください。
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■「ツバルは沈んでなんかいない」という意見について
[No. 1552] でお伝えした「武田邦彦先生とのパネル・ディスカション」で、武田先生は、
「海水面なんか上がっていないですから、ツバルなんか。ツバルは沈んでもいないから。」
とおっしゃっていました。少し前に、武田先生と江守正多さんと作った『 温暖化論のホンネ ―「脅威論」と「懐疑論」を超えて』
の本では、ツバルを含め、温暖化の及ぼしている影響について議論を詰めることができず、残念でしたが、武田先生はあちこちで「ツバルが沈んでいるなんてウソだ。子どもたちにウソを教えてはいけない」とおっしゃっています。
武田先生は「ツバルは沈んでいない」という科学論文をお書きになっているわけではなく、おそらくだれかのデータや意見をもとにおっしゃっているのだと思いますが、これも以前ご紹介した IR3S/TIGS叢書No.1 「地球温暖化懐疑論批判」の中で、ツバルのテーマも取り上げられています。
http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho
この冊子(pdfでダウンロードできます)は、温暖化に関する日本の科学者が、日本での懐疑論を取り上げ、きちんとデータを示しつつ、反論・批判するペーパーを出してくれています。何度か改訂を重ね、このたび、無料でダウンロードできる書籍の形で刊行されたものです。
IR3S/TIGS叢書No.1
「地球温暖化懐疑論批判」
http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho
ここから引用します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
議論 28ツバルの海面上昇は、ここ25年の変化はゼロである(渡辺2005, p.96)。
まず一般論として、海面水位は付近の海流の自然変動や地盤の変動によっても影響を受ける。したがって、一部の地域で海面上昇が見られないことは特別におかしいことではなく、それが直ちに、実際に起きていることが明らかな全球的な海面上昇トレンドを否定する証拠にはならない。また、一部の地域の現象をとりあげて全体の傾向を否定する論法は、非常にミスリーディングなものである。その点を指摘したうえで、ツバルの海面上昇データについて反論する。
渡辺(2005)が主張の根拠として引用するウェブサイト(http://john-daly.com/)では、ツバルの首都フナフチに設置されたハワイ大学の潮位計による1977年〜1999年末までの約22年間の月別潮位計測データをグラフとして示している。渡辺(2005)はそのグラフに基づき「ここ25年の変化はゼロ」と述べているが、実際には、NTC(National Tidal Centre in Australia Bureauof Meteorology)が2005年6月に公表した国別レポート(NTC2005)によると、同ハワイ大学の潮位計データによる22年間の海面変化トレンドは+0.9mm/年である。これは最新のIPCC報告書(IPCC 2007)による1961年〜2003年の全球平均の海面変化トレンド(1.8mm/年)と同オーダーの数値であり、無視できるほど小さいものではない。
そのグラフの縦軸(潮位計の計測値)のレンジが-0.5m〜2.75mと広いため、その図から0.9mm/年の上昇トレンド(22年間で約2cmの海面上昇)を見出すことは渡辺(2005)にとって困難であったかもしれない。しかし、同グラフを引いて「ここ25年の変化はゼロ」と判断するのは不適切である。ただし、このハワイ大学潮位計データには別の問題があることをNTCの国別レポートは指摘していることには注意が必要である。長期の海面上昇傾向を観測するためには、地盤沈下等によって潮位計そのものの設置高さが変わる影響を補正(基準面補正)する必要がある。しかし、エルニーニョや短期的な海洋振動を観測するために設計されたこの潮位計では補正が不可能である。したがって、+0.9mm/年という数値の不確実性は大きく、その数値のみをもってフナフチにおける海面上昇の長期トレンドを断定出来ないことが指摘されている。
フナフチに関していえば、豪州国際開発局の資金援助により設置された(基準面補正された)精度良い潮位計による別の観測データも存在している。この観測データに基づき、観測開始(1993年)から最近(2005年)までの海面変化トレンドを見ると、1997年〜1998年のエルニーニョに関連した一時的な海面下降があったにも関わらず、+4.3mm/年の海面変化トレンドがあったことが分かっている。依然観測期間が短いことから、長期的なトレンドを断定することは出来ないものの、1993年〜2005年の期間については、ツバルでは海面上昇があったといえる。
なお、最近ツバルでは洪水の被害が甚大になりつつある(たとえば、Patel 2006)。その要因としては、ローカルな人間活動でサンゴの健康がそこなわれたことや、人口増加に伴って土地利用が浸水常襲地帯まで広がったこともある。しかし、グローバルな海水準上昇も上に述べた程度には寄与しており、温暖化が進めば、それはますます重大になると思われる。
<追記:2009年4月23日>2009年になって豪州国際開発局の出資による精度の良い潮位測定に関して、2005年6月以降のデータも用いた新たな研究論文の公表があった(Aung et al.2009)。これによると、観測開始(1993年)から2008年9月までの平均潮位上昇傾向は5.9mm/年である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
IPCC 2007による1961年〜2003年の全球平均の海面変化トレンド(1.8mm/年)に対して、ツバルでの豪州国際開発局の出資による精度の良い潮位測定は、観測開始(1993年)から2008年9月までの平均潮位上昇傾向は5.9mm/年、ということなのですね。平均潮位が大きく上昇していることは間違いなさそうです。
ツバルでは、ここに出てくる2つの潮位計(ハワイ大学のものと、豪州国際開発局の出資による精度のよい潮位計)も見てきました。
ハワイ大学のものは、壊れてしばらくたっており、いまは稼働していません。話によると、ブッシュ大統領が京都議定書に入らない!と言ったら、壊れたとか。何かの怨念なのか、ブッシュ氏が否定していた温暖化を証明してしまう海面上昇データが公表されたら困るからなのか、いろいろな憶測があるみたいです。(^^;
いずれにしても、気候変動という長期的な変化を10〜20年ぐらいのデータで(どちらの結論にしても)断ずることは難しく、これまでの計測データを見て、「1993年から2008年9月までの平均潮位上昇傾向は5.9mm/年である」ということしか言えないし、現在のところは、そのデータをもとに、「それをどうとらえるのか、何をすべきなのか」を考えるしかありません。
それに(実際に海へ行って、海岸の浸食現場のようすを見て、潮位計とそれが何を測っているのかを見て、初めて実感として思いましたが)、海水面が上がっているのかどうなのか、正確に知るのはなかなか難しいのだろうなあ、と。
湖水だったらわかりやすいですが、海だと波が寄せては引くたびに、あがったり下がったりするし、1日の中でも満潮と干潮の水位の間を動いているし、1ヵ月の中でもそうだし、今回は特に大きな大潮(キング・タイド)にあわせていきましたが、そういう、もっと長い周期の潮位の上下もあります。そういうのが組み合わさって、プラス、風がどのくらいの強さでどういう向きで吹いているかの瞬間瞬間の影響も合わさって、「今の潮位」が決まるのですよねぇ。
そんなことを考えながら、波の上下を見ているうちに、頭がふわふわしてきました。(^^; 「日本に帰ったら、ちゃんと専門の先生にしくみを教えてもらわなくては」と思いながら、自分も波になったみたいな気分でした〜。