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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年04月22日

アースポリシー研究所より「地球を焼く猛火 気温上昇に伴って拡大する山火事」(2010.04.22)

温暖化
 

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのプレスリリースを、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします〜。

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

地球を焼く猛火 気温上昇に伴って拡大する山火事
http://www.earthpolicy.org/index.php?/plan_b_updates/2009/update85

ジャネット・ラーセン

消防士たちには、将来、厳しい任務が待ち構えている。世界中でオーストラリアほどそれを痛感しているところはないだろう。オーストラリアでは2009年初め、長引く干ばつ、強風、記録的な高温という悪条件が重なり、同国史上最悪の山火事が発生した。後に「暗黒の土曜日」と呼ばれるようになった2月9日、メルボルンでは気温が摂氏46.4度(華氏115度)まで上った。ビクトリア州で起きた複数の火事は100万エーカー余りを焼き尽くし、2,000軒以上の家屋が焼失、170人以上の死者を出し、何万頭もの牛や羊、そして100万もの在来動物が犠牲になった。

火事が起きやすい荒野への人間の進出が世界中で増えているのと時を同じくして、地球温暖化に伴う厳しい干ばつや気温の上昇が、多くの地域で火事の発生を増やし、その深刻さを増大させる傾向にある。国の人口の多くが集中しているオーストラリア南東部では、気候変動の影響で、山火事の危険性が非常に高いと予測される日数が2050年までに3倍になる可能性がある。

火事は普通、その規模が大きくなって生命や財産に危険を及ぼすようになる場合しかニュースに取り上げられないが、世界では、毎日、何千もの山火事が起きている。大地を裸にし有機物質を土に戻す働きをする火事は、多くの生態系において自然で重要な営みなのだ。地球上の陸地の約40%は火事が起きやすい植生で覆われている。また、ジャイアントセコイアや草原に生えるある種の草など数多くの植物は、繁殖したり繁茂に適した条件を作り出したりするのに火事を必要としている。

人間が増え、森林を伐採したり、草原地で家畜を過剰に放牧したり、新種の植物を持ち込んだりして地形が変わっていき、時が経つうちに火事の態様も変化してきた。例えば、米国西部のさまざまな場所では、頻繁に起きる火事に適応する一年草外来侵入種のチートグラス(cheatgrass)が、火事がさほど頻繁ではない環境でこれまで育ってきた自生の潅木、砂漠潅木、永年草植物に取って代わるようになった。

ほかの地域では、樹齢も種類も雑多な樹木から成る森林が、炎が木から木へと簡単に燃え移る単一樹種の人工林に取って代わられている。その結果、それほど深刻ではなく後の回復も可能だった火事が、あまりの高温のために土壌を長期にわたって痛めつけてしまうような火事に変わってきた。

人間が手を尽くして消火に努めたこともまた、火事の態様を変化させることになった。米国西部の300万エーカー以上にも及ぶ森林をたった二日間で焼失させた1910年の大規模な山火事の後、木材資源の保護を求める人々の強い要望により、迅速な消火を目指す政策がとられることになった。消防士たちは数十年にわたって初期消火を見事に成功させてきたのだが、そのために森は"燃料"でいっぱいになってしまい、いったん炎が制御の手をすり抜けるとたちまち危険な大火事に発展してしまうことになった。

現在は多くの地域で、火事によってはその成り行きを自然に任せる、あるいは管理された山焼きを行うことで火災予防を図るといった方向へ政策が変わってきている。しかし、地球温暖化のせいで、思っていた以上に火事の制御を諦めざるを得なくなりそうだ。地球の平均気温の上昇は、今後、極端な状況が待ち受けていることを意味している。気候変動によって、洪水が増える地域がある一方で、ほかの地域では干ばつや長期にわたる熱波に苦しむことになるだろう。

例えば1970年代から2000年代初めにかけての気温上昇を受け、世界の陸地の中で極度に乾燥した土地が占める割合は、15%弱から30%近くまで倍増した。地球がもっと暑くなって乾燥すると火事はさらに起こりやすくなる。地球の温暖化によって私たちはこれまでとは違う新たな状況に追い込まれつつあるのかもしれない。湿性熱帯林のような、過去にはめったに火の手があがることのなかった地域でも火事が起きるようになり、燃え方もより広範囲で長期にわたり、猛威をふるう火事が増えるという状況に。

気温の上昇と山火事の発生に関連があることについてはすでに証拠が挙がっている。スクリプス研究所のアンソニー・ウェスターリングとその同僚たちは、米国西部で森林火災が1980年代半ばから際立って増加しており、ここ15年間で山火事のシーズンがそれ以前の15年間に比べ78日長くなったことに気がついた。

同期間中、米国西部では春と夏の気温が平均して摂氏0.87度上昇しており、火事のシーズンの長さと一つの火事が収まるまでにかかる日数は、気温上昇に合わせて延びてきている。気温が上昇すると、春になって山頂の雪が解ける時期が早まり、夏季の湿度が低くなって、火事が拡大しやすくなる。

また、人間による土地利用は確かに西部全土の山火事の態様に直接影響を与えてきたが、その一方、米国において実際に山火事の発生頻度が最も増加したのは、北部ロッキー山脈中腹地帯にある人の手がほとんど入っていない森林であり、これは気候変動が関係していることを示している。

さらに北のアラスカやカナダの北方林では、このところ山火事の発生回数がさらに増え、数年内に純吸収源から純排出源に転じてしまいそうなほどの炭素が排出されている。1960年代から1990年代にかけては、山火事に見舞われた面積が全部で倍以上に増えた。

気温が高くなったために、木に被害を与えるトウヒノシントメハマキ(ハマキガ科のガの幼虫)は生息範囲をさらに広げ、ヤツバキクイムシについては、冬の寒さで成長が妨げられることもなくなり、通常2年だったライフサイクルがわずか1年になった。

干ばつによって、樹木の持つ防御作用が十分働かず、害虫と干ばつのダブルパンチで、何百万エーカーもの土地に枯れ木が残され、山火事を引き起こす燃料が提供されている。全体で見ると、温暖化によって、カナダ北部では火事で焼失する面積が2100年までに倍増すると予測されており、アラスカについては早くも2050年までにそうなってしまう可能性がある。

世界のほかの地域では山火事の状況は変わりつつあり、地球の気温が上がるにつれ今後さらに変化していくと見られている。欧州の多くの地域では、20世紀を通じてほぼずっと山火事の発生は減少しており、拡大した森林は炭素を吸収していた。しかし今、地域によっては以前より山火事は増え始めているのかもしれない。

地中海地域では、1980年代の山火事の発生件数が年に3万件だったのに対し、2000年から2006年にかけてはおよそ年間5万件だった。ただ、焼けた面積は全体では増えてはおらず、その理由の一つとして以前より消火に厳しく取り組んでいることが挙げられる。

2003年、ヨーロッパは記録的な熱波に見舞われ5万人以上が亡くなった。このとき、ヨーロッパ大陸全体でおよそ65万ヘクタールの森林が焼けてしまった。暖かく乾燥していたこの年、山火事は目立って多いわけではなかったというのに、焼失面積は記録的な数字を示した。

ポルトガルでは、5%以上にも上る森林が焼失した。これは1980年から2004年の年間平均の4倍であり、結果的に1,300億円(10億ユーロ)以上の経済的損失が発生した。今後、温暖化を抑制する努力がなされないなら、2003年のように暑くて乾燥した夏が1年おきに訪れ、山火事のリスクを大幅に高めてしまう可能性がある。

東南アジアでは、1997年から1998年にかけて見られた極度のエルニーニョ現象のせいで、ひどい干ばつが起こり、インドネシア、フィリピン、ラオスでは近年で最大規模の山火事が発生した。裸地にするために放たれた火が草原から灌木地、伐採地へと燃え移り、さらに、泥炭湿原へと移った炎は地下に及び、東南アジアの空は数カ月にわたり煙でかすんだ。インドネシアだけでおよそ1,000万ヘクタールが焼け、27州のうち23州に被害が出て、被害総額は約8,000億円(90億ドル)を超えた。

この同じエルニーニョ現象の期間、中南米では2,000万ヘクタール以上が焼け、損害額はおよそ1兆3,300億円(150億ドル)に達した。2001年、次のエルニーニョによってより深刻な干ばつが起こり、アマゾンの森林の何と1/3が山火事の危険にさらされた。気温の上昇が摂氏3度を超えると--炭素排出を抑制するために迅速な、そして大胆な行動を起こさない場合、今世紀の温度上昇の十分想定範囲内である--南米のほとんどの地域で山火事がより頻繁に起きる可能性がある。

人間は免疫力が低下すると、通常は害のない細菌にも感染しやすくなる。それと同じように、伐採や道路建設が行われているところへ、牧場、農場、プランテーション用にと意図的に森を焼き払い裸地にしていったため、世界の熱帯雨林は寸断され、ますます火事が起きやすくなっている。

このような負荷に気温の上昇が重なると、森林の回復力が完全に損なわれてしまう可能性がある。繰り返し起こる干ばつで森がカラカラに乾燥し、ちょっとした火事でも壊滅的な大火事につながる。私たちは、広大なアマゾンの熱帯雨林をそんな転換点に追い込む危険を冒している。

私たちはみな、温室効果ガスの吸収や炭素の貯留を森林に頼っている。広い範囲で森林が焼失すれば、山火事が増えることで大気中にますます多くの炭素が放出される悪循環を生みだす可能性がある。気候を安定させる、それも早急に安定させる。そうすれば、猛火で地球が焼かれることはない。そう考えると、この課題は新たな緊急性を帯びてくるのである。

ジャネット・ラーセンはアースポリシー研究所の研究担当部門長。
山火事について地域別の詳細情報は以下のサイトを参照のこと。
http://www.earthpolicy.org/images/uploads/graphs_tables/fire.htm

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線 12
Eメール: rjk@earthpolicy.org

研究関連の問い合わせ:
ジャネット・ラーセン
電話:(202) 496-9290 内線 14
Eメール:jlarsen@earthpolicy.org

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Ave. NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:www.earthpolicy.org

(翻訳:古谷明世、小宗睦美)

 

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