今日から6月ですね! 環境月間でもあるし、CSRレポートの時期でもあるので、環境・CSR担当部門の方は特にお忙しい時期かも知れませんねー。どうぞ“持続可能に”お過ごし下さい。(^_^)Y
さて、先日のレスターとのおしゃべり会で、「地球の状況は悪化の一途だけど、どこに希望が見える?」と聞いてみました。レスターは勢いよくいくつかを挙げてくれましたが、その1つが風力発電の躍進です。
ちょうど、レスターのアースポリシー研究所からのリリースを実践和訳チームが訳してくれていますので、お届けします。グラフは英文サイトを見て下さい。
(注:このリリースは2009年12月10日に発信されたもので、2009年が終わって初めてわかることについてはすべて「予測」や「見込み」段階で書かれています)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
中国、風力発電で世界トップを目指し米国に挑戦
http://www.earthpolicy.org/index.php?/indicators/C49
J・マシュー・ロニー
世界の風力市場で首位の座が交代しようとしている。現代の風力発電産業の発祥の地、米国は、2005年以来、新規設置容量ではずっと首位の座を維持しており、年間成長率は50%、2008年には発電容量を史上最高の8,540メガワット増やしている。
しかし、信用収縮に苦しむ米国の風力発電業界が、予測通り2009年には容量を8,000メガワットしか増やせないなら、新たに約1万メガワットを増やす中国が年間の新規設置容量で世界トップに躍り出るだろう。このどちらかというと新参者の中国は、過去5年間ずっと設備容量を倍増させてきており、今や、これからの風力エネルギー業界を支配する態勢も整っている。
===※図あり
【グラフタイトル】
Net Annual Wind Power Capacity Installations in the United States and China, 1998-2008, with Projection for 2009米国と中国による風力発電の純設置容量、1998-2008各年の実績と2009年の予測
【棒グラフ】
United States 米国China 中国
【グラフ縦軸のタイトル】
Megawatts メガワット
【グラフ横軸のタイトル】
Source: Worldwatch-GWEC; AWEA; CREIA; EER出典:ワールドウォッチ研究所-世界風力エネルギー協会(GWEC)、米国風力エネルギー協会(AWEA)、中国再生可能エネルギー産業協会(CREIA)、エマージング・エナジー・リサーチ社(EER)(●申し送り3)===
中国の新しい「風力拠点(Wind Base)」計画ほど、この国の「風力で優位に立ちたい」という思いを如実に示したものはない。2008年、中国国家エネルギー局は、それぞれ1万から3万メガワット規模という超大型風力発電施設の建設地として風況面で優れた6カ所を選んだ。その後、さらに7番目の場所も決まった。
2009年8月、中国北西部の甘粛省で、最初のプロジェクトである1万3,000メガワット級の発電所建設が始まった。これらの「風力拠点」が完成すれば、発電容量は全部で石炭火力発電所110基分に相当する11万メガワット以上となる。
中国が世界の新しい風力市場のリーダーとして浮上した2009年は、驚異的な状況であった2008年の翌年である。2008年は、すべてのデータが出そろっている直近の年である。この年、世界の風力発電容量は29%増加し、史上最高の2万7,000メガワットが新たに増えたことで、設備容量は世界全体で12万1,000メガワットに達した。これは約2億人分の家庭用電力需要が十分賄える容量だ。
2008年、米国は8,500メガワット以上増やしたことで、その設備容量が全体で2万5,400メガワットになった。1997年以来、総設備容量でドイツに次いで2位に甘んじてきた米国は、これによって首位の座を取り戻すことができたのである。中国は、新規設置容量が6,300メガワットで2位、総設備容量では4位に入った。新規設置容量における世界のトップ5の残りの国は、1,800メガワットのインド、1,660メガワットのドイツ、そして1,610メガワットのスペインであった。(www.earthpolicy.org/index.php?/indicators/C49のデータを参照のこと)
風力発電の地域別累積設備容量で断然トップの欧州は、2008年、新たに容量を8,800メガワット増やした。これまで欧州の風力開発主要国といえば、国内の総電力における風力発電の割合がそれぞれ7%、12%、21%のドイツ、スペイン、デンマークだけだった。
しかし、イタリア、フランス、そして英国が風力拡大の「二度目の盛り上がり」を引っ張っていることから、風力市場は急速に、なおいっそう多様化しつつある。これらの国々のおかげで、2008年のEU域内で新たに増えた電力のうち、風力が電力源としてトップを占めた。
米国では2008年、新たに増えた発電容量のうち、すべての電力源の中で風力が42%を占め、天然ガスを除けば、4年連続1位である。総設備容量では、テキサス州がほかの州をおさえ首位に立っている。同州の総設備容量は2009年後半の時点で約9,000メガワットで、2位のアイオワ州のほぼ3倍である。もしテキサス州が国であったなら、世界6位の風力大国だろう。
現在、事業用規模の風力発電所があるのは36州。テキサス州西部では、ドイツのエネルギー会社、エーオン社が世界最大の780メガワットの風力発電所を最近完成させたところだ。だが、さらに大型のプロジェクトがすでに進行中であることから、この発電所ですら近いうちに小さなものに思えてしまうかもしれない。
そうしたプロジェクトには、ワイオミング州カーボン郡に計画中の2,000メガワットの風力発電所や、現在サウスダコタ州で建設の第一段階が進行中であり、5,050メガワット規模にふさわしい「タイタン(巨大)風力発電所」という名前の発電所もある。
年間の新規設置容量で米国を追い越した今、中国は爆発的な伸びに背を押され、すぐにも累積設備容量で首位に立つだろう。2004年時点では、中国の風力は800メガワットにも満たなかったが、それ以来15倍という驚異的な成長を遂げ、2008年末には1万2,200メガワットに達した。けれども、その可能性はやっと花開き始めたにすぎない。『サイエンス』誌に2009年に掲載された研究論文では、中国の陸地における風力資源で、現在の電力需要の7倍以上を賄うことが可能だと報告されている。
世界の洋上風力発電にも非常に大きな可能性があるが、洋上風力を利用しようという取り組みは、陸上風力の開発と比べるとはるかに遅れている。これまで設置されたのはたった2,100ワット分で、すべて、欧州の10カ国、中国、日本の沖合だ。とはいえ、その歩みは速まりつつある。上記の発電容量の半分以上は、2006年以降に増加した量なのだ。
870メガワットの洋上発電設備を持つ英国はこの動きの先頭に立ち、テムズ川河口域でのロンドンアレー計画のもと、さらに1,000メガワット増やそうとしている。欧州風力エネルギー協会の報告によると、欧州内で現在提案されているか、あるいは進行中の洋上発電プロジェクトは10万メガワットに及ぶ。
2009年には約3万メガワットが送電可能な状態になると見込まれており、世界の風力発電容量は同年末に15万メガワットを超えようとしている。この容量増加は、史上最高値を記録した2008年を上回るが、世界規模の経済危機が起きていなければ達成していたかもしれない容量にはとうてい及ばない。
風力エネルギーの伸びは、2009年の大幅な減速の後、勢いを取り戻すだろうと考えられている。アナリストたちは、2013年までに総設備容量は倍以上になるだろうと予測している。その後押しをするのは、米国や中国、それ以外の国でも経済刺激策の一部ともなっている再生可能エネルギー基準や、その他の風力エネルギー推進政策だという。
まだはっきりしていないのは、風力産業界トップの座と、その地位に付随し莫大になりうる経済的利益を、米国が中国に簡単に譲るかどうかだ。米国が第2位への転落を食い止めようと決意し、首位を奪還して維持するには、多くの面で大胆な施策が必要となるだろう。
一つには、米国の風力エネルギー開発を推進してきた主要な政策手段である生産税控除(PTC)の長期延長が挙げられる。PTCは2009年の米国復興再投資法によって2012年まで延長されてはいるが、これが2020年まで延長されれば、融資者、開発業者、製造業者は安心して長期投資ができるようになるだろう。
その次に有益な政策措置は、厳しい再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)を定めることだ。RPSとは、規定の日までに、総電力のうち一定の割合を再生可能資源で賄うよう定めた法律である。米国の風力発電の成長は、各州で設けた基準に支えられてきたが(現在、29の州が強制力のあるRPSを設定している)、国の強力な基準があれば、より多くの投資資金を呼び込み、製造業者に米国での事業拡大を促すため、急速な成長が維持できるだろう。
米国の風力発電の成長に大きく寄与する三つめの戦略は、国内電力網の改善、拡大を急ぐことである。都市部から離れている風力に恵まれた地域には、発電可能な量すべてを送電できるほどの能力がない。
送電設備開発事業については、新規設置容量3万6,000メガワットに対応できる送電線の設置など16件ほどが進行中で、2014年までに完成の予定となっている。これらの事業は心強いものではあるが、米国における莫大な送電のボトルネックを解決するのに必要なレベルにはほど遠い。約30万メガワットに及ぶ進行中の風力発電開発事業が、電力網への接続待ちをしている状態なのである。
最後に、二酸化炭素の価格を設定することもまた、もうひとつの起爆剤となろう。化石燃料を燃やすという気候変動のコストを電力価格に組みこめば、風力発電で作る電力は石炭発電による電力よりずっと安くなり、投資家にとって風力発電の魅力がさらに高まるだろう。
風力エネルギー開発の先陣を切る国は、世界が化石燃料から再生可能エネルギーに転換するにつれ、はかりしれないほどの経済的利益を手にするだろう。風力が新エネルギー経済の中心的存在として台頭してきているため、何百万もの新規雇用創出など多くのことが、風力産業における覇権争い次第で決まる。
30万メガワット近くの風力発電計画が順番待ちの状態で、現政権が風力に好意的な立場をとっていることを考えると、米国の首位奪還は可能であろう。ただし、国がそういう選択をするならばの話だが。
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本の状況をみていると、ここで挙げられている米国、欧州、中国でのすさまじい風力発電の躍進が「ほかの星での話かな?」と思えてしまいますね……。
上記には「ドイツ、スペイン、デンマークの国内の総電力における風力発電の割合は、それぞれ7%、12%、21%」とありますが、2008年の日本の送電力における風力発電による発電量の割合はどのくらいだと思いますか?
(答えは次号で! 当てずっぽうでよいので答えをメモっておいてください〜^^;)