システム思考の新しい入門書『もっと使いこなす! システム思考教本』が東洋経済新報社から刊行されました。
2007年に『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』を出しました。システム思考の基本的な考え方や、「ループ図」「システム原型」などのツールの使い方を中心に紹介した入門書です。(今でも多くの方々に読んでいただいていて。うれしく思っています)
「もっと事例も知りたい!」「身近にどのように使えるの?」というたくさんの声をいただき、今回は「視点を変えよう」をテーマに、個人編、組織編、事業戦略編、社会編で合計32の事例・エピソードを紹介しています。システム思考についてのわかりやすい解説もありますので、前書を読んでいない方にも、システム思考が初めての方にも、無理なく読んでいただけます。
以下、本書のはしがきと目次を紹介します。よろしければぜひご覧ください。きっと「へ〜、システム思考って、「いつもこうなっちゃう」という自分のクセみたいな、こんなに身近なことにも使えるんだ〜」「仕事や会社でよく出会う問題と同じだ、そうか、こうやって視点を変えて見れば、解決策が見つかるんだ」などなど、きっかけやヒントが見つかるのではないかな?と思います。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
はしがき
今から10年ほど前のこと、ハンガリーでの国際会議で私ははじめて「システム思考」に出会い、「これだ!」と感動しました。「私自身にも必要だ。そして多くの日本の人たちもこの考え方を身につけたら、きっと物事がずっとラクになるに違いない」と思ったのです。
システム思考とは、見えている部分だけではなく、要素のつながりをたどって全体の構造を見ることで、真の解決策を見つけるための考え方です。
私たちは、何らかの問題やうまくいかないことが起こると、「私が悪いのだ」「あの人(あの部署/あの組織など)が悪い」と自分や人を責めがちです。しかし、それでは問題解決にはならないどころか、互いに嫌な気持ちを抱いたり挫折感や自己嫌悪が強まったりして、さらに状況が悪化することも多々あります。
そんなとき、システム思考は「繰り返し起こる問題は、人が悪いのではなく、構造に問題がある。自分や他人を責めるよりも、その状況を繰り返し引き起こしている現在の構造を見抜き、構造を変えることに注力したほうがよい」と教えてくれます。そして、そのためのさまざまなツールがあるのです。
システム思考を学び、実践するようになってから、それまで自分や他人を責めることに向けていたエネルギーを、より建設的な問題解決に向けることができるようになりました。そのおかげで、いろいろな人々と様々な取り組みを進めること――そして生きることがとてもラクになってきたのです!
本書では、視点を変えることがどのように重要か、それをどのように行えばよいか、様々なツールとともに説明したあと、個人や組織、事業戦略、および社会に関わる事例を30以上取り上げます。「あ、私にも同じようなことがある」「このような状況に陥ったことがある」というケースがいくつも見つかることでしょう。
そのようなときに、いつもの悪循環に陥るのではなく、望ましい変化を創り出していくためにはどのように状況を考えればよいのか、どのように手を打てばよいのか、わかりやすく丁寧にその考え方の道筋を解説しています。
システム思考をできるところから採り入れていけば、一人一人の幸せも増し、組織やビジネスの成功にもつながり、さらにはよりよい社会を創っていくことができる――私たちはそう信じています。
読者のみなさんが本書を活用し、自分らしい幸せな生き方や、企業や組織のよりよい運営や事業戦略の成功、持続可能で住みよい社会に向かって着実に進んでいっていただければ、これ以上幸せなことはありません。
枝廣淳子
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目次
序章 視点を変えよう
◎視点を変えて全体を見てみよう
◎視座の高さ・視野の広さ
◎時間軸の長さ
◎視点の多様性
◎全体の視点で見る―「全体最適」
◎すべては自分のものの見方次第―「メンタル・モデル」
◎メンタル・モデルはいつでもどこでも存在する
◎最大の失敗は自身のメンタル・モデルの間違いに気づかないこと
◎好循環を作る人たちと悪循環を作る人たちの違い
第1章 視点を変えよう<ツール編>
◎視点を変えるツールと手法
1.氷山モデル
2.時系列変化パターングラフ
3.ループ図
4.ストック/フロー図
5.システム原型
6.推論のはしご
7.左側の台詞
8.関係性マップ
9.ダイアログ
10.U理論
11.学習する組織
第2章 視点を変えよう<個人編>
1.成功のための行動習慣が根付かない
2.ダイエットがうまくいかない
3.受験を控えた子どもがなかなか勉強しない
4.「マネージャーの仕事は問題解決?」
5.なしくずしにずり落ちる目標
6.机の上が手をつけられないほど乱雑に
7.仕事がなかなか終わらない
8.ある日突然のできごと
9.「このロットは全部不良品です」
10.「家の鍵を落としたのだけれど」
11.「私はだめ人間?」
第3章 視点を変えよう<組織編>
1.「売上予算に届かない」
2.「プロジェクトがどんどん遅れていく」
3.価値連鎖で改善を図る
4.問題解決がまた新たな問題を作る
5.「俺がやったほうが早い」
6.ゆでガエル症候群
7.できる人のパラドックス
8.押し付けのビジョンは願い下げ
第4章 視点を変えよう<事業戦略編>
1.成功の秘訣はつなぐこと
2.成長企業の罠
3.「敵の正体見たり。それは己だった」
4.「景気循環がうらめしい」
5.泥沼の価格競争
6.「見積もりをとるのに何でこんなに日数がかかるのか?」
7.期日どおりに開発を
8.深く潜る(U理論)
第5章 視点を変えよう<社会編>
1.「乾いた雑巾をこれ以上絞れない……」
2.対処しての、野良犬だらけ
3.イースター島モアイ像の謎
4.U理論によるサステナブル・フード・ラボ
5.目に見えない資本がものをいう
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『もっと使いこなす! システム思考教本』、きっとお役に立つことと思います。ぜひご覧くださいー。
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