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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年10月01日

正しい観測こそが基本なのに、気候観測所の環境が悪化している (2010.10.01)

温暖化
 

今朝の日経新聞に「気象庁のアメダス6箇所で、絡まった植物などのせいで気温や雨量が正確に測れていなかった」という記事がありました。

最後に「気象庁が記者会見を開き、『再発防止を徹底したい』と陳謝した」とのこと。

これは“たまたま”起こったことではありません。1箇所だったら、「あ、しまった、手入れを忘れていた!」ってこともありますし、「オマエ、だめだろ、しっかりやれよ」と終わるかもしれません。

でも、全国の6箇所で同じような状況とのこと、システム思考でいう「繰り返し起こる問題、あちこちで起こっている問題は、人ではなく、構造が引き起こしている可能性が高い。構造を変えない限り、人を代えても謝罪しても、同じ問題が必ず起こる」状況ではないかと思います。

私が強くそう思うのは、今年の春先に近藤純正先生の勉強会に参加させていただいたからです。そのときの自分のメモをお見せしますね。

上記の問題が何を意味するのか、「ツタがからまっていなくても同様の問題が起こっているであろうこと、つまり、不正確な測定は6箇所では収まらない可能性もあること」、そして「このままだと必ずまた起こる」ことがおわかりになるのではないかと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

近藤純正先生の勉強会メモ

測候所、今年中に2個所以外無人化する・敷地を余剰地として売り出し・管理不足

気象庁は「管理できている」と言うが、機械を見ているだけでその周りの環境は見ていない

本日の主張(1)正しい観測こそが基本(2)観測にはさまざまな誤差(情報)が含まれ、解析は慎重に(3)最近、気候観測所の環境が悪化

気温に影響する要素(1)観測方法の変更 時刻、回数、機械、1日の区切り(日界)。昔は午前9時などが区切りだった。

(2)都市化の影響、緑地の減少、人工排熱の増加

(3)日だまり効果 

不正確なデータでは、懐疑論を含め、どちらの論も成り立つ。

管理不十分→雑木・雑草→風速の弱化→日だまり効果→気温上昇、観測の誤差(0.2〜1℃程度の誤差が出る)

日当たりと風通しが大切。

建物なら、建設されればすぐ変化が出てわかるが、樹木は少しずつ伸びるので変化がわかりにくい。

気象データは社会状況の変化も測っているといえよう。たとえば、燃料革命→木の成長→日だまり効果→気温上昇。

伊豆の先端部の例 年平均気温が0.25℃上昇している

観測所の周辺環境の維持には住民の理解が必要。全国でこのことを話している。気象庁がきちんとやるべき。気象庁に働きかけるには、国民の声と理解が必要。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

温暖化を論じるにも対策を講じるにも、基本的な気象データが必須であり、核であることは言うまでもありません。私たちは気象庁が国の役目として、ちゃんとそういった基本データを正確に測定してくれていることを信じています。

それなのに、アメダスの機器に植物が絡まるままになっているなんて!とびっくりしませんか? 植物が絡まっていればまだ「不正確な測定になったのでは?」とわかり、データの修正や調整が可能かもしれませんが、敷地を余剰地として売り出して、そこに建った建物や樹木が風を遮って、日だまり効果を生じ、それで温度測定が不正確になっても、なかなかわからないのではないでしょうか?

私も近藤先生の勉強会に参加する前は、「気温を測定する」というのがどういうことなのかよくわからず、測定器さえしっかりしていれば大丈夫なのでは?というナイーブなイメージを持っていましたが、本当は、その周囲の環境も含めてきちんと整備して保ってこそ、正しい測定ができるのだ、ということを教えてもらいました。

記事によると、「気象庁は『再発防止を徹底したい』と陳謝した」とのことですが、測候所の無人化や周りの土地の売却、あまり管理をしないという方針そのものを変更したということでしょうか?

システム思考的に、さらにもっと深い本質的なメンタル・モデルでいえば、気象庁は「日々の天気予報だけではなく、気候変動など長期的な気候の変化を測定するのも自分たちの役目」だと認識しているのでしょうか?

認識していない、自分たちの仕事ではないと思っているとしたら、そうさせていない構造(省庁間の役割分担、国としてのこういったデータの重視姿勢の有無など)は何なのでしょうか?(なにも気象庁の人たちが怠慢でまたは悪意があってやっていないのではなく、そうさせている構造があるはずです)

もし構造が変わらないなら、これからも「あちらの観測所でもデータがヘンでした」「時系列で見るとどうもヘンな気温グラフになります」といった事態がどんどん出てきて、私たちはそもそも何を頼りに考えたらいいの?という状況にもなってしまわないか……と心配です。

気象庁や詳しい方がいらしたら、今後どういうふうにしていくのか、どういうふうになっていくのか、ぜひ教えて下さい〜。

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