前号のつづきの、私がとても大事だと思っていることの雑談です。
『温暖化論のホンネ 〜「脅威論」と「懐疑論」を超えて』
武田 邦彦・ 枝廣 淳子・ 江守 正多 (著)
昨年の冬に刊行されたこの本に、ジャーナリストの池上彰さんが2月21日付の信濃毎日新聞に、とてもうれしい書評を書いて下さっています。少し引用させていただきます。
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(前略)地球に対する「懐疑派」と呼ばれる人たちが存在します。
一口に懐疑論といっても、その中身はさまざまです。
そもそも地球は太古より温暖化と寒冷化を繰り返してきたのであり、現在は温暖化が進行するサイクルに入っているにすぎないと主張する学者。都市に人が集中し、都市の気温が上昇したことで温暖化が進行しているように見えるだけだという考え方。温暖化しても、私たちはメリットもあり、大騒ぎすることではないという人。
こんな懐疑派の人たちは、どんな根拠にもとづいているのでしょうか。懐疑派と、「温暖化を防がねば」と主張している人たちは、果たして議論が噛み合うのでしょうか。
噛み合うかどうか、試してみようではないか。こうして誕生したのが、この本です。
「懐疑派」の代表格である武田邦彦氏と、「温暖化防止は急務である」と考える枝廣淳子氏、江守正多氏が、それぞれの論点を提示して議論を進めます。
冷静な議論が交わされているため、意外にも両者の議論は噛み合うことが多く、双方の相違点もまた明らかになります。たとえば「東京の温度は上がっている」としても、その場合の「東京の温度」とはどこの場所を指すのか等、厳密で科学的・理論的な議論が行われています。
この本を読むと、科学的なものの見方とは、どういうものなのか、世の中にあふれる情報を、私たちはどう取捨選択すればいいのかについて考えさせられます。
両者が繰り広げる科学的な論争は、いつしか私たちはどう生きるべきかという問題に帰着していきます。
自分と異なる意見を主張する人と向き合い、冷静に論点を整理していくのは、辛い作業です。それに取り組んだ3人。意見が対立する人同士の議論とはこうあるべきだというお手本のような本です。
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まあ、この本も最初から最後までスムーズに行ったわけではなく、いつだれがちゃぶ台をひっくり返してオワリになるかわからない……という緊迫した場面もいくつもあって成立したわけですが、やってみて「大変だったけど、やってよかった」と思う本です。
池上さんも書いていらっしゃるように、「自分と異なる意見を主張する人と向き合い、冷静に論点を整理していくのは、辛い作業」なのですよね。
私の場合、何が辛いかというと、自分と違う意見を聞いているときに自分の中に起こってくる「いらつき」「むかつき」「捨てばち」「嫌気」「非難したくなる気持ち」「切り捨てたくなる気持ち」「耳をふさぎたい気持ち」に、自分を持っていかれないようにすることです。
自分が大事だと思っていることであればあるほど、自分と違う意見に対する寛容性は失われがちですよね。どーでもよいことなら「あ、そうかもねー」ですませることができても、自分にとって大事なことであれば、感情的にもとても揺らされてしまいます。
私はいろいろな立場の方々と議論したり委員会でご一緒する機会も多く、そういう意味で「鍛えられる場面」には事欠かない、ともいえます。。。
前に、ある勉強会で、産業界代表のような立場の方と意見が食い違って、議論になったことがあります。そのときの様子を見ていらした別の参加者が「ちょっとした議論になったが、エダヒロさんは顔色ひとつ変えず、淡々と論を述べていた」とおっしゃっていたと、あとで聞きました。
いろいろな「鍛えられる場面」を通して、「むっとしても顔には出さない」「本質的に何に反論すべきかを考える」「相手との議論に勝つことが目的か、その議論を通じて、相手よりも傍聴者に重要なメッセージを伝えることが大事かを判断する」というようなことを、自分でも気をつけるようにしています。
人と意見が異なった場合の対処の仕方は、環境をめぐる議論だけではなく、組織運営をめぐる場面でも、自分にとっての悩みだった時期があります。3年ぐらい前でしょうか、その頃に、自分のために作成した「相手が自分の意見に賛成!ではないときの対応シート」のファイルを、つい先日見つけました。
当時はこのシートを手帳にはさんで、繰り返し自分に言い聞かせたり、自分を抑える手だてとしていたのですが、だいぶそれが内在化できたのかな、ある時シートはどこかに行ってしまって、見ることも思い出すこともなくなっていたのです。
こんなシートです。私のクセがよくわかるシートでもありますが、、、もし、どなたかの「鍛えられる場面」でお役に立つようでしたら。(^^;
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相手が自分の意見に「賛成!」でないときの対応シート
( 年 月 日)
※前提=すべての人が「諸手を挙げて賛成!」はない
※どちらかが押し切る・あきらめるではなく、新しく何かが得られたか、創れたかを測ること
【!】立ち止まる
あ、諸手を挙げて賛成!ではないのだな、と感じたら、まずは立ち止まる。すぐに感情的・論
理的に反論、説得しようとしない
【1】確認する
●現状:ここでの前提は何か? その前提は共有しているのか?
どこまでは賛成なのか?
●見解:どこの意見や見解が違うのか?
「〜については同じ意見だけど、××についての意見が違うわけですね」と確認
●理由:相手の意見や見解の理由、根拠を聞く。
「〜だと考えているからですね」とオウム返しで確認する。
【2】考える
●ストップ:「少し考える時間を下さい」と言う。
●自分の立場・思い:自分はそれに対して、どのような思いを抱いているのか、
自分にとっての位置づけや前提は何なのかを伝える。
※ここを明らかにしないで議論することが多い
●譲れない部分:自分にとって絶対に譲れない部分はどこかを考える
●相手の意見:自分の意見をsuspendして、相手の意見や見地を考え、
視野の広がりや違った角度などで自分の考えに資するところを考える
●ひっかかり:議論そのものではなく、自分がひっかかっている部分が きっとあるので、
まずは自分に対して明らかにする
【3】伝える
●確認:相手の意見と根拠を確認する
●自分の意見・見解:そのうえで、自分の意見や見解を伝える
【4】話し合う
●提案:どちらが強いか、ではなく、第3のよりよい道を提案する。
またはそういう道を一緒に考えることを提案する
●共創:1+1=3 または、まったく次元の違うオプションの可能性を探る
【5】振り返る
●評価:
0:結論は自分の提案そのまま、または相手の提案そのままで、しかも自分は何も新しい
考え方や情報を得ていない (いずれかが力で組みした場合)
1:結論は自分の提案そのままだが、立ち止まって相手の見解などから学ぶことはできた
場合
2:結論は、両者の見解の歩み寄りまたはパッチワークとなった
3:結論は、両者が最初に持ち寄ったものとは違う新しい次元のものとなった
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(こちらからPDF版をダウンロードできます)
最後の評価で「3」がつくことはなかなかないものですが、でも「ありたい姿」を自分で意識しておくことはいろいろな意味で役に立っています。(少なくとも、自分を失って後で後悔することは減りました、、、^^;)
ちなみに、このファイルの入っていたフォルダーを見たら、「相手のやり方に『〜すべきだ』と思ったときの対応シート」もありました。すぐに自分のやり方を押しつけてもうまくいかない、、、と悩んでいた時期もあったということですね。。。(悩みはいつになっても尽きないですよね、きっと)
さあて、このぐらいでやめておきましょう。そうしないと「人が読めないほどメールニュースを送らないための対応シート」をもらっちゃいそうなので。(^^;