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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2010年11月09日

アースポリシー研究所より「急増する風力発電、2009年は15万メガワット台に突入」(2010.11.09)

エネルギー危機
 

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さて、ちょっとクイズです。
Q1:世界には風力発電で電力を供給している国はいくつあるでしょう?
Q2:世界中の風力発電で、何人分の家庭用電力需要を満たせるでしょう?

答えはこちら! 実践和訳チームが訳してくれたレスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースをお届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

急増する風力発電、2009年は15万メガワット台に突入

www.earthpolicy.org/index.php?/indicators/C49/wind_power_2010

           J. マシュー・ロニー(アースポリシー研究所)

世界的な景気後退にもかかわらず、世界の風力発電産業は2009年もかつてない成長を続け、累積設備容量は15万8,000メガワットまで増加した。31%の伸びを記録した世界の風力発電は、今や2億5,000万人分の家庭用電力需要を十分まかなえる規模に拡大した。風力発電で電力を供給している国は70カ国以上にのぼり、そのうち17カ国が現在1,000メガワット以上の設備容量を有している。

【グラフタイトル】世界の風力発電累積設備容量(1980年-2009年)

【グラフ縦軸】メガワット

【グラフ下】出典:世界風力エネルギー協会(GWEC)、ワールドウォッチ研究所のデータよりアースポリシー研究所作成

2009年、中国は設備容量をなんと1万3,000メガワットも増やし、世界の風力発電をリードした。1年間に1万メガワット以上の発電設備を新規に設置した国はこれまでにない。風力発電の総設備容量が5年連続の前年比倍増で2万5,000メガワットに達した中国は、米国、ドイツに次ぐ第3位まで躍進した(データ参照のこと)。さらに、 すでに進行中の野心的なプロジェクトを考慮すると、中国がこのまま長く3位にとどまることはないだろう。

というのは、中国は前例のない規模で「風力拠点(Wind Base)」計画を進めているからだ。北西部の新疆から東部の江蘇省まで、風況面で優れた北部6省区の7カ所が、それぞれ1万から3万7,000メガワット規模の超大型風力発電施設の建設地として選ばれている。完成したあかつきには、7つの「風力拠点」の発電容量はおよそ13万メガワットにもなり、2008年末時点の全世界の発電容量を上回る。

このような風力発電の意欲的な拡大を後押しするため、国内法では画期的な、2006年の再生可能エネルギー法が改正された(2010年4月に発効)。中国の政府機関は「総発電量のうち、再生可能エネルギーによる発電が占めるべき割合」を決定し、達成するよう指示されている。これは、米国の29州で採択された再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)に類似するものだ。また、今回の法改正により、切望されている送電線と電力網の更新も進むだろう。

米国は、設備容量において長らく世界トップに君臨していたドイツを2008年に追い抜き、2009年にはリードを広げた。風力発電を1万メガワット近く拡大し、累積容量を3万5,000メガワットまで増加させたのである。テキサス州は、風力発電の新規設置容量(年間)、総設備容量ともに全米トップの座を維持し、総発電容量が9,400メガワットに達した。かなり離れて第2位につけた、総発電容量3,700メガワットのアイオワ州では、風力発電が州内の発電量の17%以上を占めている。

金融危機が信用収縮や投資の抑制を招いた2009年初頭、米国の風力発電業界は、この年の設置容量は史上最高となった前年の8,400メガワットから激減するにちがいないと腹をくくっていた。しかし、2009年の米国復興再投資法が風力発電に有利な条項を盛り込んでいたことが大きな要因となって、28州で合計100基以上の新規風力発電所が送電可能な状態になり、米国の風力発電建設は過去最高の活況に沸いた。

欧州連合(EU)では、2009年に風力の新規設置容量が最も多かった国はスペインだった。しかし、総設備容量2万6,000メガワットのドイツは、依然、欧州最大の風力発電設備容量を誇っている。ドイツ北部のザクセン・アンハルト州とメクレンブルク・フォアポンメルン州は、両州合わせても人口は400万人ほどだが、風力エネルギーで州内の電力需要の約40%を常にまかなっている。

欧州では、ドイツやスペインほど広範な風力インフラを持つ国はほかにないが、急成長中の数カ国は大きな可能性を秘めている。イタリア、フランス、英国は、2006年以降、総設備容量を2倍以上に増やし、3カ国とも2009年には4,000メガワットを超すに至っている。

風力発電を急速に拡大している国として、ポルトガルもあげられる。ポルトガルは2009年に3,500メガワットをわずかに超え、風力発電の歴史が古いデンマークを僅差で交わして世界9位となった。それでも、風力発電で1/5の電力をまかなうデンマークは、この分野で世界をリードしている。

【グラフタイトル】主要国の風力発電累積設備容量(1980年-2009年)

【グラフ縦軸】メガワット

【グラフ下】出典:ワールドウォッチ研究所、中国再生可能エネルギー産業協会(CREIA)、米国風力エネルギー協会(AWEA)、世界風力エネルギー協会(GWEC)、イタリア風力発電協会(ANEV)、欧州風力エネルギー協会(EWEA)のデータよりアースポリシー研究所作成

風力電力がこのように大きな割合を占めるのは、今後欧州全体ではもっと当たり前のことになるのかも知れない。というのは、EUには2020年までに全電力に占める再生可能エネルギーの割合を20%にすることを目標にした「2009年再生可能エネギー指令」があり、EU加盟国はこの指令のもとで自国の目標を達成しようと努力しているからである。実際、EUでは2009年には石炭と原子力による発電容量が純減していることと、全新規設置容量の40%近くを風力発電が占めたことで、風力が2年続けて新しい電力源の1位になっている。

風力発電関連のニュースの見出しは欧州、中国、そして米国が飾ることが多い。しかし、この豊富なエネルギー資源を利用している国はほかにも沢山ある。例えば、インドは2009年に1,300メガワットの風力電力を導入した。導入量は2008年より30%減ったが、それでも風力発電の設備容量は1万メガワットを超え、世界第5位の座は変わらない。インドの風力発電業界は、2009年後半に政府がいくつかの振興策を採ったことで、2010年からは風力市場が好転することに期待を寄せている。

カナダは2009年に風力発電の設備容量を950メガワット増やした。あと一歩で、総設備容量で世界のトップ10入りを果たすところまで来ている。カナダでは 2015年の完成を目指し、すでに約4,600メガワットの発電所建設計画が動いている。オンタリオ州の新固定価格買取制度、つまり、欧州で長年採用されているような、再生可能エネルギーで発電された電力を電力会社が割り増し料金を支払って買い取るという制度が実施されると、さらに多くの建設計画が生まれるはずである。

中南米とアフリカでは、共に豊富な風力資源に恵まれながらも、風力発電の開発は今日までわずかしか進展がなかった。しかし、ここでもその動きが加速している。2009年、中南米全体の風力発電設備容量は2倍以上増え、1,200メガワットを記録した。

この地域では、600メガワット分の設備容量を導入したブラジルがいまや風力発電開発の半分を占めている。またメキシコではこの年設備容量が約140%増えて200メガワットに達し、チリもわずか20メガワットの状態から170メガワット近くまで設備容量を増やしている。

2009年末までにアフリカ大陸に導入された風力発電設備容量はわずか760メガワットであり、その90%がエジプトとモロッコであった。しかし、商業規模での計画は、エチオピア、南アフリカ、ケニアなど、サハラ砂漠以南の数カ国で進んでいる。2012年中頃に、ケニア北西部に300メガワット規模のトゥルカナ湖風力発電所が完成すれば、アフリカ最大の発電所が誕生し、そこでケニアの電力の17%が発電されることになるだろう。

世界の風力タービンはそのほとんどが陸上に設置されている。しかし、現在設備容量が2,100メガワットの洋上風力発電も、急速にその容量を増やしつつある。2009年にはほぼ600メガワットが送電可能となり、これには洋上風力発電では世界最大級のプロジェクトとなる、デンマークが北海に設置した209メガワットの規模のHorns Rev2が含まれている。

洋上風力発電で世界をリードしているのは英国である。英国はこの分野では世界の設備容量の40%を占め、その地位を維持しようと努めているかに見える。2010年1月、クラウンエステートが領海の9つの海域で、3万2,000メガワットの風力発電を起こす独占風力発電開発契約を結ぶと発表したのだ。2020年までに国の電力の25%をそこから調達しようというのである。欧州では、全体としての規模が10万メガワット以上に達する洋上風力発電が、現在提案もしくは開発中である。

風力発電は、21世紀が始まってから総設備容量を9倍に増やし、世界のエネルギーミックスの中で重要な役割を占めながら、その地位を急速に固めている。各国政府が価格変動を受け易い化石燃料への依存を減らし、炭素の排出を減らそうとするなかで、広範囲にあり、豊富かつ無尽蔵で、燃料コストがゼロの風は、エネルギー源としてますます魅力的な選択肢となりつつある。

ハーバード大学の科学者たちは、世界の風力資源に関する2009年の研究報告で、「世界の10大二酸化炭素排出国が風力発電を使うなら、それだけでその国の全電力需要をまかなうことが可能だ」との結論を出している。

もちろん世界は将来のエネルギー需要を満たすために、さまざまな技術を駆使するだろう。しかし、どんな技術を駆使しようとも、次のことは疑いようがない。つまり、化石燃料に取って代わり、気候の安定化に関して中心的な役割を果す風力の潜在能力は途方もなく大きいということだ。

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さらに詳しいデータ・情報についてはwww.earthpolicy.orgを参照のこと。

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
Eメール:rjk@earthpolicy.org
電話:202-496-9290 内線 12

研究についての問い合わせ:
マシュー・ロニー
Eメール:jmroney@earthpolicy.org
電話:202-496-9290 内線 17

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW
Suite 403
Washington, DC 20036
http://www.earthpolicy.org

(翻訳:和田、酒井)

 

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