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というサイトです。
ここのインタビューを受け、その記事がアップされました。
http://www.mammo.tv/interview/archives/no280.html
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
#280 システム思考のもたらす知で“つながり”を取り戻したい
枝廣 淳子さん(環境ジャーナリスト)
インターネットの普及によって、情報量は爆発的に増えた。しかしながら社会や環境問題が解決に向かうような知恵なり変化をつくり出す力の増大にはなかなかつながっていないようだ。情報が真の変化をもたらす思考と行動を実現するには、何が必要なのか。今回はシステム思考に関する著書を書かれ、また翻訳者・環境ジャーナリストとして活躍されている枝廣淳子さんにお話をうかがった。
--ビジネスや教育の世界では、ロジカルシンキングの重要性が指摘されています。一方でロジカルに考えることが断片的な事実への囚われになることもあります。システム思考は、そういう問題をどうクリアーしているのですか?
ロジカルシンキングは情報を分類するには役立ちます。しかし、ただ分類していては互いの情報の関係性、ダイナミクスが見えてきません。ダイナミクスが実は物事を動かしているので、そこを見る必要があります。
そのため何か問題があったとき、それだけを捉えて対応するのではなく、問題の起きた背景やさまざまな要因、自分が気づいていなかったもの、見えていなかったものも含め、つながりを辿って全体像を見ることが大事です。
まず膨大な量の情報をいかに「知」にしていくかが問われています。システム思考に即して言えば、それぞれの情報を個別に見ているだけでは、変化をもたらす知恵になりません。情報同士がどう関連し、どういう位置関係にあるかを見て行くことがすごく大事です。
実際に起きた例をあげて説明してみましょう。奄美大島にはハブが棲息しています。人々を噛んで困るから退治しようという話になりました。「ハブが問題だから退治する」。この範囲で問題を捉えた人たちは、天敵であるマングースをたくさん島に放せばいいと考えた。
実際に何が起きたかと言いますと、マングースは確かにハブと同じ檻に入れられたら必死に戦いますが、広い野原に放されたら、わざわざハブと戦いません。この方策は、島の天然記念物である黒ウサギが絶滅寸前の被害を受けるという結果に終わりました。
--「冷静に考えたらわかりそうなものだ」と事後的には言えますが、そのときは、マングースを放つことが最善策に思えたのでしょうね。
システム思考の特徴のひとつは、短期的な見方と同時に中長期的時間軸を意識するところです。
いまの生活は、「いま行うことがすぐに良い結果をもたらすかどうか」といったような価値観に基づいて営まれており、かなり短期的な時間軸で動いています。
そのため選択した事柄が後に及ぼす影響についてあまり考慮されません。狭い範囲だけ見て、短い時間軸だけで判断すると、これから先に起きることやつながりを見失うので、物事を考えるにあたっては、いかに未来の視点を取り入れるかが問われます。
--学生の就職活動の早期化、ビジネスの短期間のうちの収益化など、世の中全体がいっそう急く傾向が高まっています。なぜでしょうか?
たとえば企業が短期的な利益をあげることに邁進してしまうのは、企業が悪いわけではなく、社会の構造がそのように企業に要請しているからです。人や組織はある構造に置かれると、その構造に従った行動をとってしまいます。
現在、四半期ごとに株価の発表がありますが、株価が落ちていると社長が交代されてしまいます。企業は市場の求めに応じ、短い間に成果の向上を求められています。
確かに株主を保護するために、できるだけリアルタイムで経営の現状を伝えることは正しいかもしれません。
しかし、それだけでは企業の成長に欠かせない研究開発は行われなくなります。研究開発費を投入すれば、短期的に収益は悪化するからです。だからといって組織や人を責めても仕方がありません。そこで「構造を変えましょう」と提唱するのがシステム思考です。
--企業の構造の変化にどのような方策が考えられますか?
ひとつには投資家に向けた企業情報を変えていく必要があります。いまのように「うちに投資したら儲かりますよ」という情報提供だけでは、長期的な経営は成り立ちません。
アメリカにジョンソン&ジョンソンという企業があります。彼らが重視しているのは顧客、社員、地域で、いちばん最後が株主だと明言しています。実際、利益の多くを地域に還元しています。
ある年の株主総会で株主のひとりがそれに異議を唱え、「もっと株主に還元しろ」と求めました。
そのときジョンソン&ジョンソンの副会長がこう言いました。「ご存知の通り私たちは地域社会を株主より重視しています。もし、その方針に賛成できないなら、よその会社に投資してください」
そこまではっきり言えば、企業理念を気に入った株主が集まり、投資するようになり、長期的な経営を支援します。
--短期間のうちに収益を求められ働いているのに、日本の生産性はOECD加盟30カ国中第20位、主要先進7カ国では最下位。現状の仕事のあり方そのものを見直す必要がありそうです。
製造現場とオフィスワークの生産性を分けた場合、前者の生産性は世界の中でも高いほうです。低いのは後者で理由のひとつはワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が定着していないからです。
たとえばスウェーデンをはじめ北欧では仕事を行う時間を決めて、その間は集中して行い、午後5時には退社。その後はコミュニティや家族と過ごします。日本は出社してから夜の飲み会まで付き合うわけですから、そういう時間の過ごし方で生産性を高くするほうが無理な話です。
ワーク・ライフ・バランスの確立は、生産性の問題だけではありません。長時間労働は社員のメンタルヘルスに、個人の暮らしが充実しない働き方は、少子化とも関わってきます。職場にずっといるからレジャーにもお金を使わないから経済も低迷する。
長くオフィスにいることが仕事だと思われ、それを評価する。そういう価値観や構造を変えていかないといけないでしょう。
--ワーク・ライフ・バランスに関する議論では、北欧と比べて「人口規模が違う」から日本では難しいとか、断片的な情報で良し悪しを決める内容も散見します。システム思考を用いた場合、どのようにワーク・ライフ・バランスを根付かせることが考えられますか?
まず「私たちの暮らしで大事なのは何か?」という本質的な問い直しが必要です。どれほど生産性が低くても、長く働いて売上を出せばGDP(国内総生産)は伸びます。
日本人は戦後一貫して、GDPを伸ばすことに必死になってきました。GDPを拡張さえすれば食べられるようになり、誰もが幸せになれる。その考えからいまなお完全に抜け出していません。
果たしてGDPを向上させ続けることで幸せになれるのでしょうか。調査によって明らかになりましたが、ひとりあたりのGDPと幸福感の上昇はあるところまでは並走しますが、途中からGDPが伸びても幸福感は横ばいになります。
当たり前の話ですが、私たちはGDPのために生きているのではなく、幸せになりたいと思って生きているからです。その上で大事なのは何か。
フランスやイギリスでは右肩上がりの成長を基盤としない国のあり方を議論しています。日本でも鳩山政権時に少し議題になりかけました。
ただ、政府の動きはいつも遅いので、議論の結果を待っていては、これ以上望まないGDPや会社の売上のために命を磨り減らす人が続出するので、自分の人生にとって何が大事なのかを考える必要があります。
日本でも「半農半X」(注1)といった動きが出ていますから、そうした実例によって考えられるのではないでしょうか。
企業がCSR(企業の社会的責任)活動によって、NGOと組んで環境配慮型ビジネスを行うようになっています。長期的な時間軸への移行は期待できますか?
NGOと対等な関係を結び、互いの強みを活かして新しいビジネスをつくり出すような活動を行っている企業はごくわずかです。ブランドイメージや報告書に載せるために行っているところがまだ多いのです。
これは企業に限った話ではありませんが、私たちは目に見えるものを評価の対象としがちです。企業は資本と聞けば、どれだけお金があるか(金融資本)、どんな設備があるか(生産資本)、どういう組織か(人的資本)を評価します。
けれども企業の活動を底辺で支えているのは、見えない社会資本や自然資本。つまり社会の信頼や自然環境です。
「CSRを行えば製品の売上につながる」という短期的な目標だけではなく、企業の存続そのものを支える社会資本や自然資本を手入れする。それが長期的な視野に立ったとき、ビジネスにもなり得ることに気づいている企業は少ない。
--目に見えない関係や短絡的な捉え方では見えて来ない構造に気づくには、どうすればいいでしょうか?
自分が興味をもったり、大事そうだと思ったことをうわべで判断するのではなく、来し方と行く末を考えてみる。
トイレに入って、トイレットペーパーを使うとき、「これはどこから来て、どこへ行くんだろう」と少し考えてみれば、そこに森と海が視野に入ってきます。つまり、どういう経路でいまここに存在し、この後どうなっていくのか。過去と未来に時間軸を伸ばし、考えるトレーニングをすることです。
情報がたくさんあっても、それらを点でしか捉えていなければ、物事を立体的に見ることはできません。昨日と今日の情報をつなげてみたとき、それを「つなげた自分の視点」があるはずです。
これは「誰かが言っていたから」とか「根拠が本に書いてあったから」では培えない視点です。
「どうしてそうなったんだろう?」「このまま状況が進めばどうなるんだろう?」と考えてみる。そうやっているうちに自分なりの視点が徐々にできてきます。そういう視点を自分の身に起きた出来事だけでなく、社会の事象や関心のあることに向けてみるのです。
--自分の視点を確立して判断をしていく際、必要以上に自責的になったり、他罰的になるのを避けるにはどうすればいいですか?
目指す方向を「自分の成長」と定めたならば、何か物事が起きたとき、「どういう捉え方をすれば自分が成長するだろうか?」と問うてみます。その上で、他罰的な振る舞いはあまり役立たないことがわかります。
ごく一部、やや自責的に反省することで伸びる人もいますが、多くの場合、萎縮してやる気を失いがちです。いつもの考え方が自分を萎縮させ、立ち止まらせているならそういう考え方を変えてみる。
先述したようにシステム思考では、「ある構造に置かれると人は構造に従った行動をとってしまう」と考えています。だから「あんな判断をしてしまったのは、自分が悪いからだ」ではなく、そういう判断をしてしまうように至った構造に目を向け、変える取り組みをするのです。
--構造を把握する上での予見や偏見を抱くリスクについて、どう考えていますか?
ある構造を理解し、何らかの判断をするとき、自分の予見や偏見が「入りがちだ」と意識しているのと、「これが正しい」と思っているのとでは、もたらす結果はまるで違います。予見や偏見を意識していれば、当初の判断を覆す事態が起きたとき、柔軟に対応できます。
比べて、「これが正しい」と思い込んでいると、新しく目の前に生じた事実を見ないで切り捨ててしまいます。
いずれにせよ「これは良い・悪い」といった価値判断は必ず起きます。ただし、価値判断は状況によって変わる可能性があります。その時には見えなかったものが見える時期が訪れます。だから、いつも自分の判断は仮置きだと思っておくことも大切です。
--あくまで一時的な基準を用いて物事を見ていることを意識しておくわけですか?
仮置きであっても、それが物事を整理することのできる枠組みであれば、いろんな情報が入って来ても、右往左往せずにそれぞれを関連づけ、位置づけられます。「物事を決めつけない仮置きの自分」でいられることが大事です。そうでないとやはり決めつけたくなってしまいます。
自分なりの枠組みをもつことは、自信にもつながります。自分に対する自信があれば決めつけなくてもいい。何事にも柔軟に取り組めます。
--お話をうかがっていますと、自分の心の動きに敏感になった経験があって、いまのような考えに至ったのだと思います。どういう経緯があって現在の仕事を選択するようになったのでしょうか?
高校生の頃、心理学に興味をもちました。自分の心の動きに関心があったからです。人から何か言われて傷ついたり、揺れたり、意地悪な気持ちが湧いたりしたことを克明に日記に書いていました。
大学で心理学を選び、不登校や職場で鬱になった人の話を聞くトレーニングを受けました。そういう経験から「相手の話を本当に聞き、伝えるべきことを伝えるというのは、どういうことなのだろう?」と思うようになりました。
その後、アメリカに渡った経験から通訳をするようになり、さらに通訳の仕事で環境問題について多くを知るうちに、情報を整理していく必要にかられました。情報を整理する枠組みができると共に環境ジャーナリストとして活動するようになりました。
カウンセラーも通訳も、そしていまの仕事も見かけは違っても、思いは同じで、「大事なことを伝える」「大事なものとのつながりを取り戻す」です。
「人からどう見られたいか」と「自分のありたい姿」が断絶したとき、人はメンタルの危機に陥ります。いま関わっている環境問題も、人と地球とのつながりが切れたから起きていることです。
かつては里山が近くにあり、そこでの恵みを利用して人々は暮らしていたから、つながりが意識できました。やがて化石燃料を使用する生活の中で里山の必要がなくなった。つながりが切れたとき、環境がどういう状況にあるかをあまり気にしなくなった。
私の希望は早く環境ジャーナリストのいらない世界になること。そのためにも大事なものとのつながりを取り戻したいと思っています。
[文責・尹雄大 撮影・佐藤類]
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
このように人生にも仕事にも役立つシステム思考を、ぜひ身につけませんか。
○「システム思考トレーニング」ベーシックコース
2011年2月16日 東京開催
2011年3月1日 大阪開催
2011年3月2日 名古屋開催
2011年3月8日 福岡開催
○システム思考入門〜 ビールゲームとシステム原型/メンタルモデル」コース
2011年1月18日 東京開催
3月1日の大阪、2日の名古屋には、講師として私も参加する予定ですー。ぜひご一緒に。
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