★メールニュースはこちらにアップされます★
http://www.es-inc.jp/lib/archives/index.html
昨日お送りした「米国80km退避の指示」について、今日の日経新聞にわかりやすい解説がありました。かいつまんでご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご紹介〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・どの範囲の住民避難が望ましいか、日米政府の判断が異なり、混乱が生じている。
・経産省原子力安全・保安院は、国際的な尺度で米スリーマイル島原発事故と同等の「レベル5」に匹敵するとの暫定評価。日本政府は、原発周辺20km圏の住民に避難、20〜30km圏に屋内退避を指示。
・一方、米国は16日付で80km圏の米国市民に避難を勧告。
・国際原子力機関(IAEA)天野事務局長は18日の会見で、「日本の指示はIAEAの基準に則った措置」。
・米国の原子力規制委員会(NRC)の資料を見ると、放射線物質の広がりを計算するにあたり、出力235万kWの原子力施設の事故を想定している。これは、福島大1の2〜4号機タイプの原子炉(出力78万4戦kW)の3基分に相当する。
★NRCは複数の原子炉が炉心溶融などに至り、多量の放射性物質が放出されても安全な距離を示したようだ。
・日本の指針、日本が準拠したIAEAの基準も、原発1基の事故を想定したようで、同時に複数の原子炉が危機にさらされる事態は想定外だったに違いない。
・日本には緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)ネットワークシステムと呼ばれるしくみがある。原発で放射性物質が放出されたとき、その広がりを瞬時に予測する。原子力安全技術センターが管理・運用しているが、今のところ存在感がない。
・同センターの石田会長は「現在計算している。結果の公表は原子力災害対策本部など全体の判断による」。
・予測システムがあれば、周辺のどこがいつ危険な状態になるのか、シナリオが描ける。政府はシステムの存在を国民に知らせ、活用すべき。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご紹介ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
早く緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)ネットワークシステムの情報を出してもらいたいと思います。
ある方からのメールニュースへの返信、許可を得てご紹介します。
> ここ数日、有益な情報をありがとうございます。> 原発が怖くて怖くてしかたなかったのですが、自分で> 情報を得て知ることで「正しく恐れる」ことができるように> なりました。
「正しく恐れる」力を、私たちも身につけなくてはならないし、政府も「国民を不安にさせないほうがよいから」と情報を出さないのではなく、きちんと伝えてほしいと思います。それでこそ、大人の民主国家ではないかと。
今の状況を見ていると、情報を出さないと、逆に「出せないほど悪いのでは」とまた疑心暗鬼が不要な不安やパニックにつながる……可能性もあります。
「80km圏避難指示は米国だけは?」という声もありましたが、英国大使館のウェブサイトには、以下のようにあります。
http://ukinjapan.fco.gov.uk/en/news/?view=News&id=569114782
Q: Why are you advising to evacuate within an 80km radius of the plant,when the Japanese authorities only have a 30km exclusion zone in place? (問:日本の当局は30km圏としか言っていないのに、なぜ英国は80km圏なのか?)
A: This is a precautionary measure. Similar precautionary measures havebeen taken by the US. (答:これは予防的措置です。同様の予防的措置は米国もとっています)
そのほか、各国の退避や出国などの勧告について、一部ですが載っています。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110317-OYT1T00477.htm
繰り返しになりますが、私は放射線や原子力の専門家ではないので、残念ながら自分の判断で「○キロ以内の人は避難した方がよい」など伝えることはできません。私にできるのは、いろいろな情報を伝えることで、それぞれがそれぞれの判断をするときの参考情報を増やすお手伝いぐらいです。
私自身が重要情報源の1つとして参考にさせてもらっている環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんが、「楽観はできないがチェルノブイリ級の破滅的事象はない見込み」との現時点での見通しを出されました。
Ver.0 2011年3月20日「最悪シナリオ」はどこまで最悪か
〜楽観はできないがチェルノブイリ級の破滅的事象はない見込み〜
環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也
http://www.isep.or.jp/images/press/script110320.pdf
要旨をご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【要旨】・ 2011年3月11日に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故が、この先に辿りうる最悪シナリオを検討したところ、再臨界と水蒸気爆発の可能性は否定できないが、核爆発やチェルノブイリ事故のような破滅的事象は、おそらく起こらないと判断できる。
・ したがって、首都圏や仙台などの大都市の避難勧告のような事態は、おそらく避けることができるものと判断できる。
・ ただし、最悪シナリオで放出される放射能は、これまで一時的に放出された放射能よりも桁違いに多い可能性があるため、状況の推移によっては、現状の避難範囲(避難20km、屋内退避30km)の再検討やヨウ素剤の配布計画、広範な地域で被曝を最小限に抑えるためのマニュアルの周知徹底などが必要と考える。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
詳細はぜひ上記のウェブをご覧ください。
ここからは余談です。『朝2時起きで、なんでもできる!』という本に、こんなことを書いた節があります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
*しまった!と思ったら、最善・最悪のシナリオを描く
いくら気をつけていても、失敗することがあります。「失敗」は、「何かをすること」に絶対についてまわるリスクです。何もしなければ、「失敗」もありませんから(でも、何もしないことこそ、人生にとっての最大のリスクだと思っています)。いろいろなことをやろうとすればするほど、失敗のリスクも回数も増えます。
私も、小さな失敗から大きな失敗まで、「うわぁ、やっちゃった!」ということがよくあります。「講演用のスーツをスーツケースに入れるのを忘れてきた!」などという、あとでは笑いのタネにしかならないような失敗でも、そのときは大いに焦ります。
笑いのタネになれない失敗もあります。幸か不幸か、一年に一度ぐらいですが、「もうこの活動を続けられないかもしれない」というほど大きな失敗をすることもあるのです。目の前が真っ暗とはこのこと……。
ことの大小はともかく、どのような失敗でも「あ、しまった!」と思った瞬間、私はいつもその結果の「最善のシナリオ」と「最悪のシナリオ」を描きます。
仕事に間に合うはずの電車に乗り遅れた、という失敗なら、最善のシナリオは「次の電車に乗って、滑り込みセーフ!」ですし、最悪のシナリオは「会議が始まるのに通訳がきていない! と会議場で大騒ぎになり、通訳会社に怒りの電話が入って、私はクビになる」となるでしょう。
このような「最悪のシナリオ」を描くことは、気を滅入らせる反面、気を楽にしてくれる面もあります。これは不思議なのですが、たぶん「井戸に落っこちてしまったときに、井戸の深さを知っていれば、知らないで落ちていくより気が楽」(?)ということでしょう。
「しまった!」というとき、「この結果、どうなっちゃうんだろう」という不安がとても高まります。それに対して、「最悪こうなっちゃうかもね」と自分で線を引いてあげる、ということです。
そして、「最悪の事態」に対して、潔く腹をくくります。「この通訳会社をクビになるかもしれない。でもそれは自分の失敗が原因なのだから仕方ない」。腹をくくりながら、同時に、「最悪の事態を緩和できる方法があるか?」と考えます。
たいていあります。電車に乗り遅れたなら、少なくとも通訳会社に電話を入れて「○分遅れそうです。すみません」と客先に伝えてもらうことはできます。これで怒りが解けるかどうかわかりませんが、先方としても、「通訳がいないじゃないか! いつ来るんだ!」というより、「通訳が○分遅刻するそうだ! まったく!」という怒りの方がまだマシな気がします。
このとき、「もしかしたら、次の電車でもギリギリ間に合うかもしれない。それなのに、電話をしたら、わざわざ自分の失敗をばらしちゃうことになる」という思いも一瞬よぎります。そのときは、リスクと確率を天秤にかけることになります。ほとんどの場合、「自分でばらしても、結局間に合えば、怒られることもないし」と連絡することになりますが。
電車に乗り遅れるぐらいなら(そのときは焦りますが)まだいいですが、大失敗をしてしまったときには、「最悪のシナリオ」もかなり自分にキツイものになりますから、大変です。腹をくくるのに時間がかかることもあります。命が縮む思いをします。
しかし、「最悪の状況」を描いて、少しでもその手前で悪影響を抑えるためには何ができるか? を考える方が、「どうなってしまうんだろう。困った、困った」と不安になったり、「ああ、あんなこと、やらなければよかった」と後悔するより、ずっと自分自身が楽です。
この「失敗したときの最善・最悪シナリオ」を長年描いてきた経験から、よい知らせ?があります。実際の結末がどうなったかを振り返ってみると、だいたいは、「最善シナリオ」に近い方で決着がついている、ということです。
めざしていた電車に乗り遅れたことが何度かありますが、実際に遅刻したことはありませんし、「もうこの仕事はやっていけないかも」と思ったことも何度かありますが、幸い仕事生命は続いています。それでもいつも「最悪の事態」を予測しておくことが、「底なし沼に落ちていく恐怖」から救ってくれます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本にはすぐれた観測・予測技術やネットワークがあるのだとしたら、「底なし沼に落ちていく恐怖」から一刻も早く国民を救ってほしい!と切に願います。
※メールニュースに掲載されている内容・情報はそれぞれのご判断の上、出所(枝廣淳子の環境メールニュース http://www.es-inc.jp)を添えて、引用・転載くださってけっこうです。ただ、どの情報も「その時点での情報」であって、のちに修正・追加等される可能性がある情報であることをご理解・ご明記いただければ幸いです。
※翻訳してお伝えする情報は、原文通りに訳したものとなります。原文に誤りがある場合でも、著者にを確認し修正してもらうことはできないため、翻訳にも事実と異なる部分が残っている場合があります。その点ご了承の上、お読み下さい。