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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年03月27日

東電原発事故を受けての国内・海外の原子力発電をめぐる動向 (2011.03.26)

 

福島は加害者ではなく犠牲者なのだから、「福島原発」でなく「東京電力原発事故」と呼び方を変えよう、というツイッターで回っていた呼びかけにそうだよなあ、と思い、私もそれから「東電原発事故」と書いています。

さて、東電原発事故以後、原発に対するいろいろな発言や動きが出てきています。

北海道新聞などによると、日本経団連の米倉弘昌会長は16日、東京都内で記者団に対し、福島第1原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べ、国と東京電力を擁護したとのこと。

時事通信によると、与謝野馨経済財政担当相は22日の閣議後会見で、福島第1発事故に関連し、「日本中どこの地域を探しても環太平洋火山帯の上に乗っている国だから(地震が多いという)その運命は避けようがない」と述べた。これは原発推進の立場から、地震が多いことは原発を止める理由にならないとの考えを強調した発言で、同相は「将来とも原子力は日本の社会や経済を支える重要なエネルギー源であることは間違いない」と語り、あくまでも原発を続けるべきだとの考えを示した、とのこと。

ブルームバーグによると、原子力安全・保安院の西山英彦審議官は22日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「少なくとも今回のような自然災害が起こるという前提のもとで政策を推し進める必要がある。原子力は人類にとってはどうしても必要だからどうやって人々に受け入れられるかを考える必要がある。慎重論が勢いを増すことは間違いが、必要であることは間違いない」と述べたとのこと。

同時に、原発立地地域でもさまざまな動きが出てきていますね。「日本の原子力政策やエネルギー政策は、今回の原発事故を受けて、どう変わるのか?」という問い合わせが世界からやってきます。少しでも国内の動向を伝えようと、JFSでは日本語/英語で新しいページを立ち上げました。

原発事故後の原子力発電所の立地自治体や電気事業者の動きと、政府レベルの原子力政策の動向をお伝えするページ

●原子力発電所の立地自治体・電気事業者の動向

●日本政府の原子力政策の動向

> 2011年3月11日に発生した巨大地震は大きな被害をもたらすと同時に、この地震
> ・津波により、東京電力福島第一原子力発電所で大きな原発事故が起こってしま
> いました。今回の原発事故を契機に、日本国内でも原子力発電のあり方を見直そ
> うとする機運が高まっています。原子力発電所の立地自治体や電気事業者の動き
> と、政府レベルの原子力政策の動向についてお伝えしていきます。
>
> できるだけリアルタイムで動向を伝えるために、日本のメディアで報道されてか
> ら、3日以内で日本語での要約→英訳→本ウェブページへのアップまで行いたい
> と努力しています。ただし、JFSはボランティア中心で運営しているため、対応
> 能力に限りがありますことをご了承下さい。


海外で、日本の原発動向にご関心のある方がいらしたら、ぜひこちらのページをご紹介下さい。

限られた人員で拾えた報道情報の範囲でアップしているため、網羅性は十分ではないことをお断りしておきます。全部でなくても、一部でも、日本国内の動きを世界に伝えたいという一念で取り組んでいます。見逃している報道も多いと思いますので、お気づきになったら教えていただけたらありがたいです。

さて、日本での東電原発事故を受けて、海外でも原子力発電をめぐる動きが出てきています。こちらも可能な範囲で拾えた記事の紹介ですが、まとめてもらいましたので、ご紹介します。世界の動向が感じられることと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

海外の原子力発電をめぐる動向をご紹介します

★東電原発事故を受けて、海外でも原子力発電をめぐる動きが出てきています。報道記事から拾えた分だけになりますが、ご紹介します★

##可能な範囲で拾えた記事を紹介する形で、各国の動向を紹介しています。すべての記事や動向を拾っているわけではないこと、記事自体の正誤の確認はしていないことをご了解の上、参考情報としてご覧ください。


2011/03/25現在

<北米>

●米国
米カリフォルニア州エネルギー委員会のメリサ・ジョーンズ事務局長は3月中旬、州内に2つあるサンオノフレとディアブロキャニオンの両原発の運転許可の更新手続きについて、「日本の状況が、地質学的にわれわれの原発にも大いに当てはまると判断された場合、更新されない可能性もあるだろう」との見方を示した。(共同通信による)

米国の民間機関「憂慮する科学者同盟」は3月21日、福島第1原発と同じ型の米原発が東日本大震災と同規模の自然災害に見舞われた場合、「福島第1原発と同じ結果になるだろう」と述べ、重大事故に陥るとの見方を示した。米国に104基ある原発のうち23基が、福島第1原発の1〜5号機と同じ沸騰水型軽水炉。(西日本新聞による)

オバマ米大統領は3月17日、国内の原発の安全性を包括的に見直すよう、原子力規制委員会(NRC)に指示したと明らかにした。自国の原発の安全性を強調してきた従来方針の転換に当たる。(時事通信による)

<欧州>

●英国
英国では3月18〜20日、1,000人を対象に電話による世論調査が行われ、原発の新設に35%が賛成し、28%が反対していることが分かった。2010年11月の別の世論調査では、賛成(47%)が反対(19%)を大きく上回っていた。キャメロン首相は、日本の原発との設計の違いや、英国に地震や津波の恐れがないことを強調し、「原発は必要」としている。(朝日新聞による)

ヒューン英エネルギー・気候変動相は3月17日、原子力施設検査庁に対し、東日本大震災による福島第1原発事故の教訓などについて報告書をまとめるよう指示した。英政府は、老朽化した原発の更新や新規建設を計画している。(共同通信による)

●ドイツ
ドイツのメルケル首相は、1980年までに建設された同国内の原発計7基を3カ月間、一時停止すると発表した。(共同通信による)

●フランス
フランスのフィヨン首相は3月17日、同国が製造する原発施設について「一定の技術水準に満たない国には今後は輸出しない」と述べ、輸出先を制限する意向を示した。(日本経済新聞による)

スペインのサパテロ首相は3月16日、同国内6カ所で稼働する原発の安全管理体制について新たな点検を命じた。ただし、現時点では原発の安全性について不安を抱く必要はないとも強調した。(CNNによる)

<アジア>

●韓国
李明博(イ・ミョンバク)大統領は3月18日、福島第1原発の放射線漏れ事故と関連し、「韓国も(原発を)一斉点検する契機にすべきだ」と話した。(聯合ニュース日本語版による) 韓国政府は、3月20日から4月8日までの20日間、原子力発電所や石油・ガス備蓄施設などの耐震能力を点検することにした。国内にある21機の原子炉すべてが対象。(朝鮮日報日本語版による)

韓国の野党・民主党は3月16日、政府が推進する「原子力ルネサンス計画」を正面から批判し始めた。孫鶴圭(ソン・ハッキュ)代表は同党の最高委員会で「原発を基本とするエネルギー政策に対しては、根本的な再検討が必要だ」と語った。原発増設計画は、李明博(イ・ミョンバク)政権の重要政策課題である「グリーン成長」のシンボルと言われる。(朝鮮日報日本語版による)

●中国
中国政府は3月16日、国内の原発の安全点検を命じるとともに、新たな建設計画の承認を凍結する決定を下した。同国では現在13基が稼働、20基以上が建設中。(AFPによる)

●タイ
タイ政府は3月18日までに、日本などの協力で原発5基を建設し、2020年に1号機を初稼働させる計画の中止を含めた見直しに入った。(産経新聞による)

●フィリピン
フィリピンのアキノ大統領は、「原発に代わる安全性に問題がない代替エネルギーを検討していく」として、1984年に完成しながらも、安全上の問題から閉鎖されているバターン原発を再開する考えがないことを表明した。(産経新聞による)

●ベトナム
ベトナム科学技術省は、南中部ニントゥアン省で進められている原発建設計画について、安全対策の研究・設計を徹底し、計画を堅持するという政府方針を示した。3月17日にカフェエフが報じた。(サーチナによる)

●マレーシア
マレーシアのムヒディン・ヤシン副首相は3月15日、原発建設計画に対する否定的意見が国内で増えていることを受け、原発開発が既定路線というわけではないことを示唆した。ピーター・チン・ファークイ エネルギー・グリーン技術・水資源相は、「国民に知らせないまま原発建設に着手することはしない」と言明した。(マレーシアニュースによる)

●イスラエル
イスラエルのネタニヤフ首相は3月17日、同国初の商業用原発の建設計画を停止する方針を明らかにした。(読売新聞による)

●トルコ
ギリシャのパパンドレウ首相は3月18日、地震国トルコが計画している初の原発建設計画の中止を求める考えを示した。(共同通信による)

現地メディアの報道によれば、トルコのユルドゥズ・エネルギー天然資源相は3月18日、日本と交渉している原発建設計画について「3月末の交渉期限を延期する可能性もある」と話した。原発の計画自体に変更はないとしている。(日本経済新聞による)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今回の震災以前から、温暖化対策やピークオイルなどを背景に、世界のエネルギー事情は大きく変わりつつあり、日本も(目をつぶって見ないふりをしている人も多いのですが)そのまっただ中にあります。

そして、今回の震災・原発事故は、日本と世界のこれからのエネルギー事情に大きな影響を与えています。影響を受けて、どういう方向に動くのか......?

私たちはどういう方向に動かしていきたいのか?

エネルギーはインフラ事業なので、立ち上げや移行に時間がかかり、「すぐに」大きく変えることは難しい部分もあります(もっとも、太陽光発電のパネルはすぐにつけられますし、風車も数ヶ月で立ち上げられます。水力発電所、火力発電所はそれよりも時間がかかりますし、原子力発電はもっとかかります)。

「明日からこうして!」というのは難しいとしても、10年後、30年後、50年後に、日本のエネルギーはどうあってほしいですか?

今回の東電原発事故は、これまで疑いもなく受け入れてきたことや、無意識の前提としていたことを、「本当にそう?」「そうでないあり方もあるかも」と問い直し、思い込みをゆるめ、新しい考え方を試してみたりする機会でもあります。

「50年後、100年後の日本のエネルギー」をバックキャスティングで考えたとき、原子力発電はみなさんの中ではどのような位置づけになっているのでしょうか。

※メールニュースに掲載されている内容・情報はそれぞれのご判断の上、出所(枝廣淳子の環境メールニュース http://www.es-inc.jp)を添えて、引用・転載くださってけっこうです。ただ、どの情報も「その時点での情報」であって、のちに修正・追加等される可能性がある情報であることをご理解・ご明記いただければ幸いです。

 

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