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「放射線に関する情報を(少しでも)自分で判断できる力をつけるために」
(その1)放射線って何?
(その2)「放射線」と「放射能」と「放射性物質」を区別しよう
(その3)放射線や放射能の「単位」に気をつけよう
(その4)「危険な放射線」と「日常生活で普段浴びている放射線」を区別しよう
つづきをお届けします。今回は(その5)
放射線の危険性「急性障害」と「晩発性障害」を区別しよう です。
本シリーズは、放射線医学総合研究所の保田浩志氏に監修していただいています。
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「放射線に関する情報を(少しでも)自分で判断できる力をつけるために」(その5)放射線の危険性「急性障害」と「晩発性障害」を区別しよう
原爆や原発事故などのせいで、日常生活で自然に浴びているレベルよりはるかに高い放射線を浴びたとき、人体が受ける影響は2種類あります。
1つは「急性障害」、つまり短時間に大量に被ばくした際に急性に生じる障害です。短時間に極めて強い放射線を浴びると、臓器・組織を構成する細胞が破壊されたり、染色体が壊れて細胞の再生ができなくなったりします。その結果、皮膚・粘膜障害を起こしたり、白血球や赤血球が減少したりします。死に至る場合もあります。
受けた放射線が100ミリシーベルト以下程度なら目立った症状はないとされていますが、500ミリシーベルトで一時的な白血球の減少、1シーベルトで吐き気や脱毛などの症状が出てきます。全身に7〜10シーベルト浴びると死亡すると言われています。
1999年9月30日、東海村JCOで核燃料加工の工程中に、ウラン溶液が臨界状態に達して核分裂連鎖反応が発生するという臨界事故が起こり、ふたりの作業員が亡くなりました。ひとりは17シーベルト(83日後に死亡)、もうひとりは6〜10シーベルト(7ヵ月後に死亡)の放射線を被ばくしたとされています。このとき同時に推定1〜4.5シーベルトの被ばくをした方は、一時白血球がゼロになりましたが、骨髄の治療を受けて回復し、退院されました。
こういった「急性障害」に対して、もう1つは「晩発性障害」です。その名の示すとおり、「後になって出てくる障害」です。これは放射線によって遺伝子DNAが傷つき、そのために発がん(白血病を含む)の確率が高まるというものです。
東京電力原発事故の現場で、今まさに命をかけて修復作業をしていらっしゃる作業員の方々にとっては、「急性障害」をいかに避けるか、が大事です。事故現場には放射線が極めて強い場所があり、そこで長時間作業すると、上に書いたような急性障害を起こす心配があるためです。そのため、防護服に身を固め、短時間で交代するやり方で作業にあたっています。
私たち一般市民は、今回の原発事故でいえば、急性障害を心配しなくてはならない場面はないと考えてよいでしょう。私たちが心配なのは、「その場で死んでしまうほどの放射線ではないにしても、あるレベルの放射線を浴びることで、将来の発がんの確率が高まる」ということです。
ここで、「ちょっとだけややこしいけど大事な区別」の説明をします。
ここで説明した放射線の急性障害は、「確定的影響」と呼ばれるもので、「ある値を超えてはじめて症状が起こり、線量が高いほど症状が重くなる」影響です。「この線を超えたら××が起きる」という値を「しきい値」と言います。
「確定的影響」を考えるときは、「卵を割るとき」を想像してみて下さい。コンコンとやさしくたたいても割れませんよね? ある一定の力(しきい値以下の放射線)より小さければ割れません(症状は出ません)。しきい値以下であれば大丈夫、ということです。
さきほど、放射線障害の例として、「500ミリシーベルトで一時的な白血球の減少」と書きました。それを超えてしまうとそういう症状が出るけど、100ミリシーベルトだったら影響は出ない、ということです。
でも、ある一定の力以上で「ガンっ!」ってぶつけると卵は割れます。その力が「しきい値」です。
もう1つの、放射線の晩発性障害は、「確率的影響」と呼ばれています。こちらは、「この線を超えたら症状が出る」というしきい値があるわけではなく、ちょっとの被ばくでもちょっとなりのリスクがある、というものです。そして、被ばくの量が大きいほど、リスクは高くなっていきます。
たとえば、喫煙が肺がんの可能性を高めることはよく知られています。では、たばこを一日何本吸ったら肺がんになるでしょうか?
この場合、「1日○本以下なら絶対に肺がんにならない」ということはありませんよね。1日何本であっても、吸ったら吸っただけ、リスクが増します。だから「とにかく少なく抑えましょう」となります。
放射線の「確率的影響」もこれと同じです。具体的には、がんと白血病です。がんと白血病は突然変異の一種ですが、浴びた放射線量に応じて突然変異の確率が上がっていきます。そして、少量の被ばくであっても少量なりのリスクがあると考えられています。
「確定的影響」の場合は、被ばく後にすぐに生じ、因果関係も明確です。一方、「確率的影響」は長期間経過したあとの発がんという形で現れます。がんは被ばくしなくても一定の頻度で生じうるため、「被ばくしたからがんになった」という因果関係を示すためには統計的な取り扱いが必要となります。
ある量の被ばくをした「私」ががんになるかどうか、でなく、ある量の被ばくをした人が○人いたとしたら、そのうち、△人の割合でがんが増える、という話になります。
(放射線医学総合研究所の保田浩志氏に監修していただいています)
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同じ被ばくといっても、人体への影響を考えると、2種類の被ばくを区別する必要があります。シリーズ次回は、2種類の被ばくの区別について説明します〜。
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