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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2011年04月10日

「放射線に関する情報を(少しでも)自分で判断できる力をつけるために」(その6)「内部被ばく」と「外部被ばく」を区別しよう(2011.04.10)

 

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「放射線に関する情報を(少しでも)自分で判断できる力をつけるために」(その1)放射線って何?(その2)「放射線」と「放射能」と「放射性物質」を区別しよう(その3)放射線や放射能の「単位」に気をつけよう(その4)「危険な放射線」と「日常生活で普段浴びている放射線」を区別しよう(その5)放射線の危険性「急性障害」と「晩発性障害」を区別しよう

つづきをお届けします。今回は(その6)

「内部被ばく」と「外部被ばく」を区別しよう です。

本シリーズは、放射線医学総合研究所の保田浩志氏に監修していただいています。

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「放射線に関する情報を(少しでも)自分で判断できる力をつけるために」(その6)「内部被ばく」と「外部被ばく」を区別しよう 

今回は、同じ「被ばく」といっても大きな違いがある、「外部被ばく」と「内部被ばく」の区別です。

被ばくとは「身体が放射線にさらされること」ですが、放射線を身体の外から受けるのか、身体の内側から受けるのか、によって、その影響は大きく違います。放射線を身体の外から受けるものを「外部被ばく」といい、身体の内側から受けるものを「内部被ばく」と言います。

放射線と放射性物質の区別のところ(その2)で、放射性物質は「蛍」、放射線は「蛍の出す光」と例えました。目の前を飛んでいる蛍が発する光が身体に当たっているのが「外部被ばく」、蛍が身体の中に入ってしまって、身体の中から光(=放射線)を出しているのが「内部被ばく」です。

外部被ばくは、蛍の発する放射線を受けている間だけ続きます。蛍の光を遮蔽したり、蛍の光が届かないところに避難したりすれば、外部被ばくはなくなります。放射性物質が身体に付着した場合、付着している間は外部被ばくが続きますが、放射性物質を除去(=除染)すれば、外部被ばくはなくなります。

一方、内部被ばくの場合は、放射性物質が体内に存在する限り被ばくが続きます。身体の中に入った蛍は、蛍でありつづける限り、身体の中で光を出しつづけますから、一般に放射線の影響は大きくなります。

蛍(=放射性物質)が体内に入ってしまう経路には、(1)口から取り込む(放射性物質のついた食べ物や飲み物を摂取するなど)、(2)皮膚の傷口から血管に入る、(3)放射性物質の気体を肺で吸い込む、などがあります。放射性物質はいったん体内に入ってしまうと除去することが簡単ではないため、より長期間被ばくすることになります。

原発事故現場のリスクと、浄水場の放射能のリスクの違いがわかりましたか?

事故現場は外部被ばくのリスク、浄水場の水は内部被ばくのリスクであるといえます。現場では専門家が防護服やマスクを着けており、蛍(放射性物質)を飲み込むという内部被ばくのリスクはないようにしています。でも、そこここで群れをなしている蛍からの光(=放射線)が強いので、急性障害につながるような外部被ばくのリスクを警戒します。

一方、事故現場から離れた場所にある浄水場では、飛んでくる蛍(放射性物質)の数は少ないので、それらが発する光(=放射線)は急性障害を起こすような強いものではありません。でも、蛍を飲み込んでしまうと、その蛍は、蛍であり続ける限り、身体の内側から光(=放射線)を発します。「がんなどの晩発性障害は、少量の被ばくでも少量なりにリスクがあり、被ばく量の増大につれてリスクも大きくなる」ということ、前回出てきましたね。

このように考えれば、原発事故現場の話では「シーベルト」(放射線)という単位が、浄水場についての話は「ベクレル」(放射能=放射線を発する力)という単位が使われていたことも、納得がいきますね。

(放射線医学総合研究所の保田浩志氏に監修していただいています)

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何度か「蛍は、蛍である限り、光を出しつづけます」と書きました。蛍はいつまでも光を出しつづけるのではなく、光を出すと別の虫に変身していくのです。次回はこのことについて書く予定です。

本シリーズの3回で、「放射性物質が拡散することによる環境中や水道水中の放射線や放射能」と、「X線検査の放射線」とをあたかも比較可能なもののように並べて論じることはおかしいと書きましたが、ここまで区別ができるようになってきて、その理由もわかりますね?

1つには、X線検査は一瞬であるのに対し、空気や水に放射性物質が存在している場合、その影響はその状態が続く時間を通しての影響として考える必要があるからです。

もう1つは、X線検査は外部被ばくであるのに対し、空気や飲食物を通して、私たちが放射性物質を体内に取り込むのは内部被ばくです。この場合、体内から放射性物質がなくなるまで、体の中から影響を与え続けることになります。

※メールニュースに掲載されている内容・情報はそれぞれのご判断の上、出所(枝廣淳子の環境メールニュース http://www.es-inc.jp)を添えて、引用・転載くださってけっこうです。ただ、どの情報も「その時点での情報」であって、のちに修正・追加等される可能性がある情報であることをご理解・ご明記いただければ幸いです。

 

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