国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問の末吉竹二郎さんが、電気新聞の「ウエーブ」というコラムに4月8日にお書きになっていた内容、震災後の日本を考えるうえで、あまり知られていないが大事な点を取り上げていらっしゃったので、お願いして転載させていただくことにしました。
みなさんはお読みになってどのような感想やお考えをもたれるでしょうか?
(メールでの読みやすさのために改行をいれさせていただいています)
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電気新聞「ウエーブ」 2011.4.8
ガイコクジンが消える日本 末吉竹二郎
日本外国特派員協会の”NUMBER 1 SHIMBUN 5月号”に「Gaijinは永遠に去ってしまったのか」という記事が載っている。J.ハリス記者の目線が面白いので少し紹介したい。
妻や子供に逃げられ東京に置いてけ堀をくった中年亭主たちが大酒を飲み慰めあうのはご愛嬌としても、3・11が引き起こした在日ガイコクジンの「エクソダス」は日本にとって笑って済まされる話ではない。
同記者は逃げ出したガイコクジンが再び日本に戻るのかを出入国記録、インターナショナルスクールの生徒数、ガイコクジンアパートのテナント動向、ガイコクジン専用のソーシャルクラブの加入者数などから探ろうとする。ガイコクジン去来の帰趨がトウキョウという世界都市の性格とその経済に大きな影響を与えると見るからである。至極当然の目線だ。3月12日〜4月1日の21日間で約47万人のガイコクジンが離日、内、再入国カードを持って出たものが約28万人だったそうだ。最終評価は今少し先になるが、どうも多くのガイコクジンはもう戻らないようである。
中でも気になるのが、ビジネスパーソンの流出だ。これは朝日新聞の報道だそうだが、大震災後の僅か半月の間に、香港当局は日本在住のガイコクジン270名に長期滞在ビザを与えた(通常の数週間の発行期間をなんと数日に短縮した)。その80%が高給取りの金融人。香港は在日ガイコクジンの争奪戦でライバルのシンガポールに勝ったとの同記者の見立てだが、それはともかく、「トウキョウの国際ビジネス都市としての魅力の低下に歯止めがかからない」との指摘は耳が痛い。
同じガイコクジンでもジャーナリストの多くが東京から北京などに拠点を移したことは過去の話(それだけ日本の発信力が落ちた)だが、3・11がさらに多くのガイコクジンビジネスパーソンを日本から追い出すとなれば、これは由々しき事態だ。ビジネスセンターとしての地位を失うだけでなく、彼らの家族を含めたインターナショナルコミュニテイが日本から消えるからだ。グローバリゼーションが進む中、「多様性と世界の視点を持ち込むミニ国際社会」が日本人の向こう三軒両隣からいなくなる損失は計り知れない。
思い出してほしい、3・11以前の日本の置かれた状況を。問題山積で国中に閉塞感が横溢していた。一方、世界では「環境革命」というメガトレンドが始まっていた。そこへ3・11である。もし、日本人が「暫くは国内問題で手いっぱい、世界のことはどうも」という気持ちになるとしたら、それは日本が世界の流れから自ら脱落することを意味する。日本が消えるだけならまだしも、いまや日本は世界の大国。存在に相応しい責任を世界に負っている。そのことを忘れてはならない。
世界との協調。これは日本の生命線だ。とすれば、復興で苦しくとも、世界と問題を共有し、その解決に取り組む。そうしてこそ、世界は日本をなくてはならぬ国として尊敬し、その言い分に耳を貸すのだ。深い議論もせぬまま、3・11をtake chanceし、2020年のCO2削減目標の引き下げを願い出るようなことはすべきではない。それが日本人の矜持というものだろう。
「アジアの皆さん、これからの日本は要注意ですよ。なぜならば、日本は20世紀の反省に立って21世紀が求める持続可能な国に生まれ変わるからです。日本は世界のグリーン国家のモデルになりますよ」。4月下旬、北キプロスで開かれたアジア太平洋地域の開発銀行の年次総会でこう述べてきた。それは温かい支援をくれた世界へのお礼であるとともに、日本国民への熱いエールでもあるのである。
(以上)