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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年01月22日

アースポリシー研究所より「世界中で加熱する地熱発電」 (2012.01.22)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

先日ご案内した2月10日のレスター・ブラウン氏を招いてのシンポジウム、順調にお申し込みをいただいています。お申し込み下さった方、ありがとうございます。ご一緒できること、楽しみにしております。そして、そのうちキャンセル待ちになると思いますので、お早めに振り込みのお手続きをお願いします〜。

さて、日本でも地熱発電の開発が少しずつ進みはじめているようですが、世界的には「加熱」と呼びたいぐらい、熱気があるようです。レスター・ブラウン氏の研究所からのリリースを、実践和文チームのメンバ-が訳してくれました。(日本についても言及があります)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アースポリシー研究所リリース

世界中で加熱する地熱発電
http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2011/update98

J. マシュー・ ローニー

1904年、イタリア皇太子ピエーロ・ジノリ・コンティが世界で初めて地中の熱エネルギーを利用し、電球を、正確に言うと5つの電球を灯すことに成功した。彼の実験から1世紀以上が経過し、今では24カ国で地熱電力が使われている。世界全体での地熱発電の設備容量は1万900メガワットで、再生可能な電気としては米国の600万世帯以上の電力需要に充分応えうる量が生まれている。ここ10年間、地熱発電の成長率は年率わずか3%だったが、2015年には新たに9,000メガワット近い発電設備の建設が計画されているため、成長スピードは、実際はさらに速まりそうだ。350ほどの開発計画が数十カ国で進行中である。

世界の地熱発電累積設備容量、1950年‐2010年に関するグラフ
http://www.earth-policy.org/images/uploads/graphs_tables/update98_geothermalpower.PNG

【タイトル】世界の地熱発電累積設備容量、1950年‐2010年
【縦軸】メガワット
 出典:ベルター二アースポリシー研究所 www.earth-policy.org
http://www.earth-policy.org/images/uploads/graphs_tables/update98_geothermalpower.PNG

地熱発電のエネルギー源は、地球の核やマントル、および地殻の中で崩壊している放射性同位元素から放出される膨大な熱である。開発業者は熱水や蒸気の貯留層がある、多孔質で透水性のある岩床まで井戸を掘り、そこから熱水や蒸気を地表に取り出してタービンを動かし発電している。かつては、そのためには熱水の温度は150℃以上が必要であった。

今もそのような熱水はアフリカ大地溝帯のほか、環太平洋火山帯沿いの国々、例えばチリ、インドネシア、日本、米国などで多量に発見されている。しかし、最近の技術進歩によって、それより低温の熱水でも発電が可能となり、ドイツ、ハンガリーなども自国の潜在的地熱発電エネルギーを利用し始めている。

地熱発電事業には多額の先行投資が必要である。特に、探査、掘削、発電所建設への投資が嵩む。しかし、地熱発電所の運転コストは、燃料費がゼロであることを含めて、通常低い。つまり耐用期間を通して、多くの場合、地熱発電所は化石燃料や原子力発電所よりもコスト競争力があるということだ。さらに、地熱発電所には、再生不可能な化石燃料発電からの補給を受けずに、ベースロード電力を24時間フルに供給できるというメリットもある。

米国は西部の9つの州全体で3,100メガワットの地熱発電を設置しており、その設備容量は世界で群を抜いている。(参照:www.earth-policy.org.)その半分がガイザーズに集まっている。ここは北カリフォルニアに17基の発電プラントを持つ世界最大の地熱開発基地である。

過去20年間に、米国で新規に導入された地熱発電は330メガワット足らずであった。しかし、最近、政府が融資保証、生産税控除、資金援助などの優遇措置を打ち出したことで、地熱産業は今ブームを迎えている。正式に認可され、総発電容量では1,400メガワット近くになる120以上の計画が、14の州で進行中である。その大部分は西部、に、カリフォルニア州やネバダ州のように地熱で定評のある地域であるが、ルイジアナやミシシッピー、テキサスのように東寄りの州でも計画が進んでいる。750メガワット以上の新規設備容量が2015年までに完成を予定されている。

米国は地熱発電の発電容量では世界一であるが、地熱エネルギーの普及という点ではアイスランドに勝る国は他にない。現在575メガワットある設備容量は、2015年までに2倍になる可能性があり、今も国内電力の1/4が地熱発電でまかなわれている。この国の国有電力会社は地熱や水力で得た電力をスコットランドに輸出するため、1,170キロにも及ぶ海底ケーブルの敷設さえも検討している。

しかし、アイスランド国民は地熱を発電に利用するだけでなく、地熱エネルギーをそのままでも利用している。住民は何世紀にもわたり天然の温泉を風呂として使ってきた。現代では地熱で温度管理された温室や養魚場も登場している。特に印象深いのは、この国の住宅暖房のおよそ90%が地熱によってまかなわれている点だ。地熱を直接利用している国は他にも80カ国近くある。

太平洋ではフィリピンも地熱資源を活用している国だ。地熱発電世界第二位のこの国は1,900メガワットの設備容量を有し、国民は電力の17%を地熱発電から得ている。フィリピンは今後4年間で2,550メガワットに増量する計画である。

しかし、世界で最も野心的な地熱発電目標を掲げているのはインドネシアである。この国の地熱発電は世界第3位、約1,200メガワットの設備容量がある。発電所の大部分はインドネシアの国有・石油ガス会社の子会社、プルタミナ地熱エネルギーが運営している。

政府は、化石燃料への依存を減らし国営電力部門に対する信頼を高めたいとの思惑から、2015年までに地熱発電の設備容量を現在の3倍以上に増やすことを目論んでおり、2025年までにそれを1万2,000メガワットにまで増やすことで現在の電力需要の7割以上をまかなおうとしている。これが実現すると、この国の電力分野で石炭や石油を使うことはほぼなくなる一方、利用される資源は同国の推定地熱資源量のわずか2/5ですむことになるだろう。

日本もまた地熱資源が豊富な国である(http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2011/update94)。しかし、これまでに開発されたのは540メガワット以下と、わずかでしかない。従来の技術を使って、日本が地熱発電容量を8万メガワットまで増やすなら、現在の電力需要の半分をまかなうことが可能になるだろう。原子力発電よりも再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上を重視する政府の最近の姿勢をみると、地熱発電の見直しはぐんと早まるかもしれない。

中南米では、メキシコが958メガワットの地熱発電容量を持っており、地熱発電では世界4位の座にある。今や,メキシコの地熱発電容量は、その他の中南米諸国の地熱発電容量の合計を上回っている。しかし、この地域には、メキシコ以外の多くの国に膨大な潜在的地熱資源が眠っている。米国に拠点を置く地熱エネルギー協会(GEA)が作成した1999年の報告書(http://geo-energy.org/reports/Geothermal%20Potential%20Preliminary%20Report%20April%201999.pdf)は、自国の電力需要を100%まかなうに足る地熱資源を持つ国を39カ国挙げている。それらの国の人口は現在、合計で8億人。このうち、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、ペルーなど、9カ国が中南米にある。人口600万人のエルサルバドルはすでに電力の26%、人口500万人のコスタリカは13%をそれぞれ地熱から得ている。

GEAの報告書が挙げたうち13カ国は東アフリカにあり、その多くは、北はエリトリアから南はモザンビークまで、地殻活動・火山活動が共に盛んな大地溝帯沿いに並んでいる。潜在的地熱エネルギーの利用に本腰を入れてきたのは、エチオピア(地熱発電容量は7メガワット)とケニア(同200メガワット以上)の2カ国だけだが、ルワンダやウガンダを含めた他国も、積極的に開発を進めようとしている。

ケニアが地熱開発を始めたのは1960年代、今では電力の約20%に地熱を利用している。この国は地熱発電を2020年までに2,300メガワット、2030年には5,000メガワットにまで増やすという野心的な目標を持っており、それが達成された暁には、数年以内に必要な電力の全てを地熱エネルギーによってまかない、また余剰電力の輸出を始めることが可能になるだろう。

現在従来型の地熱資源開発がブームを迎えている中で、新たな開発技術として強化地熱システム(EGS)が登場し、地熱開発の様相が根本的に変わろうとしている。EGSは、地殻の浸透性、多孔質が限られた場所からも地熱エネルギーの回収を可能にするため、推定される潜在的地熱資源の量が劇的に増える。例えば、米国地質調査所の2008年の報告書は(http://pubs.usgs.gov/fs/2008/3082/)、EGSによって、米国の地熱潜在量は従来型の技術で回収できる量の13倍以上になると推定している。

EGSの技術はまだ開発段階にある。しかし、今、オーストラリア、フランス、米国、および英国で進行中の試験プロジェクトが、数年以内に好ましい成果を上げるなら、投資熱が高まり、地熱発電の成長スピードは現在の予想より加速する可能性がある。

2011年のパイクリサーチ社の報告(http://www.pikeresearch.com/research/geothermal-power)は、この地熱エネルギーに対する世界全体の投資額は、地熱発電を後押しする新たな政策が実施されなくても、2020年には68億ドル(約5,500億円)となり、2010年の30億ドル(約2,400億円)の2倍以上になると予測している。

加えて、地熱電力を利用する国は現在24カ国だが、これが2015年には一気に46カ国にまで増えると見込んでおり、地熱電力が目覚しい発展を遂げる下地が整いつつあるようだ。地熱発電の可能性は無限に近い。というのは、EGSの導入や海底の熱水資源の利用を含めて、世界経済全体に現在のほぼ2倍以上の電力を供給できる潜在的地熱容量が、世界中で460万メガワットもあると推定されるからである。

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詳しい資料と情報についてはwww.earth-policy.org.を参照のこと。

メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電子メール:rjk@earthpolicy.org
電話:(202) 496-9290 内線12

研究関連の問い合わせ:マット・ローニー
電子メール:jmroney[at]earthpolicy.org電話:(202) 496-9290 内線17

アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403
Washington, DC 20036
ウェブサイト:http://www.earth-policy.org

(翻訳:酒井 チェッカー:小林)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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