昨夜、第9回基本問題委員会が開催されました。配付資料と録画映像はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/index.htm
昨日と次回の2回で、原子力の位置づけについて取り上げることになっています。基本問題委員会が始まって初めて、昨日は委員同士のやりとりを深められる場面も見られました(まだまだ足りませんが、冷静にどこは同じ認識で、どこは違うのか、それはなぜ違うのか、という議論ができはじめたことはうれしいです)
自分の発言をご紹介します。みなさんはどうお考えになりますか?
私の配付資料はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/9th/9-edahiro.pdf
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はい、ありがとうございます。原子力については、国民の最大の関心の的の1つなので、このようにしっかり議論の時間を取っていただいて、うれしく思っています。専門家ではない視点や言葉でお話しすることになると思います。
原子力を考えるときに、「エネルギー源としてのエネルギー」と、「エネルギー以外の目的のための原子力」と、2つに整理できるのかなと思ってお話を聞いていました。
「エネルギー源として」でよく、「推進もしくは一定維持」というご意見の理由として出るのが、「エネルギー選択肢の幅を持っておく必要がある」ということだと思います。エネルギーの選択肢の幅、もしくはエネルギー・セキュリティというのは、総論としては多分反対する人はいないと思うのですが、だけど各論として、「許容できない選択肢もあるだろう」ということはそれぞれ認識してよいのではないかと思います。「エネルギー選択肢の幅」は、水戸黄門の印篭にはならない。エネルギー・セキュリティも大事だけれど、国民の命のセキュリティも、やはり同じように考えていく必要があると思っています。
もう1つ、理由として挙げられるのが、今のご意見もそうだったかと思いますが、「温暖化対策として原子力は必要なのだ」というご意見です。これは、「二酸化炭素か放射線か、どちらを選ぶんですか」という、“悪魔の選択”のように聞こえる選択肢だと思っていて。おそらく、これも異論がないと思うんですが、もし可能なら、もしくは最終的には、放射線もなくCO2もないエネルギーを使っていきたい。これは恐らく誰も反対することはないのではないかと思っています。
原発が「公共のもの、国益だ」というお話もありましたが、恐らく国民の中では、現状は国益どころか"国害”だと思っている方々もたくさんいます。原発そのものが本質的に公共のもの、もしくは国益というものではなくて、これまで日本がそのように進めてきたというのは事実だけれど、これからも日本が国として、原発は公共のものだと選び続けていくのかどうか、というのを今議論しているのだと思っています。
もう1つ、エネルギー源としての原発ではなくて、技術開発の力を維持するために原発を続ける必要がある。原子力開発を続ける必要がある。それは日本の産業力のためとか、世界への貢献とか、安全保障とか、そういったために必要だと語られることがよくあると思います。
もし、エネルギー源としてではなくて、技術開発の力を持ち続けるために原子力を進めていく必要があるというのであれば、商業用の、つまり発電用の原子力をこれだけ持つ必要はおそらくないのではないでしょうか。その辺は素人なので、間違っているかもしれませんが、研究炉があればいいのかな、少なくても、こんなにたくさんはいらないのではないかなと思っています。
エネルギーの選択肢としても、私は、原子力は最終的には選択肢ではないという意見ですが、それには2つ理由があって、1つは安全性、もう1つは核廃棄物です。
安全性については次回で、ということだったんですが、すみません、次回出られないので、先ほど三村委員長が「よろしいですよ」と言ってくださったので、ちょっとだけ話をさせてください。
今日、私のほうから資料を、2枚だけですが配布させていただいています。これ、次回、安全性についてはしっかりと取り上げるというのは承知の上で、次回出られないので、取りあえず質問したいことがあったので、今日持ってきました。
たとえば3ページ目の、MITの「原発の立地と地震のリスク」という世界地図を見ていただくとわかるのですが、先ほど事務局の説明で、各国の原発に対する意見とかエネルギーのミックス、もしくは戦略についてお話がありました。やはり「原発そのものの安全性もしくはリスク」の問題と、「日本という立地の持つ安全性へのリスク」と、両方考えていく必要があると思っています。先ほどの意見のいくつかは、地震が起こらない国の意見もあったと思います。
1つ、安全性について、事務局の方に、今日でなくてもいいのですが、これは「国民の理解」というのが論点の12番目にあって、私たちが理解していく上で教えていただきたいということですが、私の資料の最後に補償料の話があります。この料率について、一番最後に「今回の事故は692回分の1の頻度で起きたことになる」と書かれています。これだけだと、一般の人はちんぷんかんぷんで、これをリスクとか安全性として考えることができません。
たとえば、日本全体で今、17個所プラス3個所で、20個所で計算していると思うんですが、日本全体で何年に一度こういう事故が起こるという頻度の想定で、この692分の1というのが出ているのか? そういうふうに平たく言っていただくとわかるので。これは計算の根拠がきっとあると思うので、それをぜひ、次回の安全の話をするときにでも構いませんので、私たちが考えやすいように教えていただきたいということが1つです。
最後にもう1つ、私が「エネルギーの選択肢としての原子力はないのではないか」と考えているのが、核廃棄物の問題です。これは、その処理ができるかできないかというのは、また議論になると思うのですが、「いつかできるようになるから」と原発を使い続け、廃棄物をため続けるというのは、おそらく間違っているのではないかと思います。
仮に技術開発が進んで核廃棄物の処理ができるようになったら、使うことを考えてもいいかもしれませんが、「いつかできるだろう」「いつかできるはずだ」と言って使い続けている今の様子は、やはり間違っているし、2030年まで考えると、おそらく難しいと思うので、そういった意味でもオプションではないと考えます。
ただ、原発を、樋川委員の言葉をお借りすると、「どうたたむのか」--どれから、どのような時間軸で、どのようにたたんでいくのか。その場合、たとえばエネルギー源が足りないとしたら、それはどうするのか。
そのときに、これは事務局もしくは委員長への、進め方への1つのお願いなんですが、今日は原発、来週もそう、その後、自然エネルギーという、エネルギー源ごとに議論するようなお話でしたが、まず、中上委員が繰り返しおっしゃっているように、需要の話を想定しないといけないと思います。
たとえばGDPの成長率をどれくらいと想定しているのか、もしくはそれが、希望とか掛け声とか、単なる目標なのか、リアリティのある成長率はどれぐらいで、そのときにそのミックスはどうなるかという話の順番だと思うので、ぜひエネルギー源ごとの議論とは別に、もしくはその前に、GDP成長率を含めて、需要の話をしていただきたいと思っています。
以上です。
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私が尋ねた補償料についての記事の、「万一の際」がどのくらいの確率と想定されての計算なのか、については、こちらの資料の最後のページにある、つい最近の新聞記事を見て下さい。http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/9th/9-edahiro.pdf
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政府は加日の閣議で、原子力発電所事故の際に最大1200億円を電力会社に払う補償契約について、電力会社から毎年集める補償料を約7倍に引き上げることを決めた。福島第一原発の事故で支払いが発生したことを受け、再計算した。
(中略)
対象は、電力会社の全国17ヵ所の原発と、「もんじゅ」など日本原子力研究開発機構の3カ所の研究施設の計20ヵ所。補償料は、万一の際に支払う補償額と損失発生の見込みなどを基にした料率で計算している。
料率は現在1万分の3だが、新たに1万分の20に改めた。原発1カ所ごとに1年間の発電実績を1回と計算すると、今回の事故は692回分の1(1万分の14)の頻度で起きたことになる。これらをもとにして見直した。
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これに対して、担当の方から回答がありました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
文部科学省でございますが、最後の補償料の話でございますが、これは、今回対象となりました熱出力が1万キロワットを超える原子炉の通算の運転時間。これは全部で20事業所ありますが、通算の運転時間が692年ということで、それで1回起こったということで、692分の1と。さらにそれに調整係数を掛けて、結果としてこの1万分の20という格好になっております。
(枝廣) そうすると、たとえば、20個所ということは――すみません、素人の質問で――692を20で割る? どういうふうに計算すればいいんでしょう。
すべての事業所について、運転年数を足し合わせたものです。
(枝廣) 計算はそうだと思うんですけど、たとえば、日本全体で見たときに、どれぐらいの頻度でこれが起こるという想定に、これは読めばいいんでしょうか。
今回の福島の事故が起こるまでの間に、すべての運転時間ということです。今までずっと運転している間、今回の事故が1回起こったということですので、今までの運転時間を全部足して、それで1回という。
(枝廣) そうすると、これの確率でいくと、これからも日本で、20個所で原子力発電をこれまでと同じように続けた場合、どれぐらい先にもう1回起こるという頻度の確率なんですか?
どのくらい先にというより、むしろ今までの実績をもとにということになってしまうかと思います。先を予測したというよりも、これまでの実績に基づいて決めましたと。もちろん、それにさらに1.4の調整係数を掲げておりますが、より安全側というか、より起こる確率の高い側に掛けておりますが。少なくても、今までずっと運転をしてきて、このような事故が今のタイミングで起こったわけですから、すべての運転時間が692年と。それで1回起こりましたと。それで692分の1。
(委員長)この計算の根拠はこうだということで、それをどうする……
次回、資料を別途、わかりやすく。
(委員長) そのほうがいいと思います。
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理解できない自分がすごーくアタマ悪い気がして、きまりが悪かったですが(中継観ながらのコメントで「コイツ、アタマ悪すぎ(笑)」などと書かれていたかも)、でも、わからないのはわからない、自分で考えていくために知りたいことは知りたい、のですよねー。
会合が終わった後、担当の方が席まで来て下さって、もう一度説明をして下さいました。何度か聞き直して、「692年で20箇所だから、35年に1度ぐらいの頻度」が実績で、それをもとに計算しているということ、とのことでした。
「35年に1度」--これなら理解できます!(^^;
そして、これをどう理解し、判断するか?
次回、私は出られませんが、原子力の安全についてしっかり取り上げるとのこと。ぜひ議論を見守り、それぞれ考え、よかったらまわりの方と話をしてみて下さい〜。
来週、「エネ女の集い」も行います。参加登録者は100名を超え、メディアも10社以上参加の予定。こちらも基本問題委員会にしっかりフィードバックしていきたいと思っています。