この夏の改定に向けて、エネルギー基本計画についての議論が進んでいます。
私が委員として参加している基本問題委員会では、エネルギーミックスの選択肢を提案することを目的としており、2月22日の第13回委員会で、以下の要請(宿題?)が事務局から出されました。
エネルギーミックスの選択肢提示に向けた御意見の照会について
冒頭にあるのが
1.【需要サイド】省エネ割合とその根拠について
2. 【供給サイド】電源構成と一次エネルギー供給について
です。「どのくらい省エネできるか」「残りをどうやってまかなうか」と聞かれているのですね。
この要請を受け、「これじゃ、エネルギー基本計画じゃなくて、電源供給計画じゃない?」と思いました。
日本の今後のエネルギーについて考えるのは、電源構成を考えることとは違います。今回の原発事故を受けて、どういうエネルギーシステムにしたいのか、たとえば、これまでのような大規模集中型を続けるのか、それとも、地域分散型に変えていくのか、といった基本的な考え方をまず議論すべきではないか?
国民に議論してもらう選択肢も、「原発○%、自然エネ△%、化石燃料□×%がいいか、原発●%、自然エネ▲%、化石燃料■%がいいか?」のまえに、たとえば、これまでのように供給者主導型なのか、消費者選択型にしていくのか、といった日本という国のエネルギーに対する考え方を問うべきではないか?
そして、もちろん、電源(エネルギー)構成も考え、選択肢として出していく必要はありますが、それにしても、「省エネ+電源(エネ)構成」と最初から聞かれるのでは、「パイの大きさはわからないけど、パイの切り分け方を考えなさい」と言われているようなもので、考えようがないのではないか。
2030年を考えるなら、その時点で「どのくらいのエネルギーが必要なのか」を考え、それからはじめて、「どのうちどのくらいを省エネで減らせるのか、残りをどういうエネルギー源でまかなうのか」が考えられるはずです。
そして、原発事故が契機となった見直しですから、仕方ないところはありますが、「電源構成」の議論に集中しがちです。日本全体のエネルギーを考えるなら、電力はその23%だけなので、残りの大きな部分についても、しっかり考える必要があります。
そのような問題意識で、提出した私の資料がこちらです。
http://www.es-inc.jp/news/20120309edahiro.pdf
パワーポイントを読んでいただくだけで伝えたい内容がわかるように作りましたので、ぜひ見ていただけたらと思います。
そして、議論の進め方について、同じ問題意識の委員が8人、連名で意見書を出しました。以下の資料の159ページにあります。
「エネルギーミックスの選択肢提示に向けた委員からの御意見」
(この資料には、意見を提出した委員全員の意見書が載っています)
共同意見を以下にご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エネルギーミックスの選択肢に向けた意見
阿南久、飯田哲也、植田和弘、枝廣淳子、大島堅一、高橋洋、辰巳菊子、伴英幸
事務局より意見提出を求められている「エネルギーミックスの選択肢」について、そもそもこのような枠組みは適切でないと考え、議論の進め方の再考を求めます。
提案事項:
・経済モデル中心の「定量的なエネルギーミックス」を、選択肢と同一視しない。
・エネルギー需給の観点から見た新たな社会像、それを実現する政策の基本方針を軸とした、「定性的・戦略的なエネルギー政策」こそが選択肢であり、今後の議論の中心に据える。
・ これをもとに、国民に開かれた参加型の議論のプロセスを工夫する。
提案の理由:
1) %で示すエネルギーミックスの問題点
・基本問題委員会の役割はエネルギー基本計画の案を作ることであり、エネルギーミックスましては何%という数字を示すことではありません。数字を選択肢と同一視することは適切でなく、議論を矮小化する恐れがあり、国民的議論に資するとは思えません。
・これまでにも「ベストミックス」こそが基本計画であるかのような発想から策定がなされてきましたが、そのような数字が現実になったことはなく、過去の手法に問題があったことは明らかです。それを抜本的に見直すための当委員会が、同様の手法で議論を進めることは問題です。
・経済モデルは既存の社会経済を前提とし、構造改革や技術革新の効果を十分に織り込めないため、その試算の妥当性には疑問があります。
・更に、そのような数字はあくまで予測の試算に過ぎず、政府が墨守すべき計画や目標ではないことを強調しておきます。目指すべき社会像とそれへ至る政策の下で、消費者たる国民が選択した結果が%の数字となるはずだからです。
2) 今回の基本計画の見直しの前提
・そもそもエネルギー基本計画とは、「エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針」や、それに関連した施策からなるものです(エネルギー政策基本法 12 条)。
・特に今年度の基本問題委員会については、福島原発事故を受けて基本計画を「ゼロベースで見直し、再構築を図る」ために設置されたこと(第 1 回委員会枝野大臣ご発言)を再認識すべきです。
・エネルギー需給の観点から社会経済のあり方を構造改革することが問われているのであり、従来からの延長線上の発想で数字合わせに終始しても意味がありません。
・社会経済のあり方の選択肢とは、例えば、①供給者主導か消費者選択か、②計画経済か市場メカニズム活用か、③経済産業優先か市民の安全安心優先か、④大規模集中型か地域分散型か、⑤短期的経済合理性か長期的持続可能性か、といった点が問われるべきです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして、提出された意見を事務局がとりまとめた資料を作り、迎えた3月14日の第15回基本問題委員会は、上記の共同意見の説明からはじまり、今後の議論と選択肢の出し方について、委員や委員長の議論が展開されました。
○%という定量的なものだけではなく、基本的な考え方や政策などの定性的なものも大事、という認識は、当然のことだと委員会でも共有されたと思いますし、多くの委員が(私も含め)数字を出すまえに、定性的なものを議論する必要があるということも述べたのですが、委員会の最後は「定量的なものを出して、モデルを回して、それに近づけるための定性的なものを考えていく。そのため、次回、いくつかの選択肢を事務局から出します」と終わったので、目が(・)になってしまいました。。。
そういう議論の進め方が、本当に市民の求めているものなのか?自分たちが考え、検討する選択肢は、どのようなものをどのように出してもらいたいと思っているのか?
上記の資料や議論の進め方を見ていただいて、ぜひご意見をください。
できる範囲で、委員会や事務局にもフィードバックし、できるだけ、慣行に基づく形式的な議論ではなく、本当にすべき議論をしていくために、役立たせていただけたらありがたいです。(アンケートは3月25日まで)
どうぞよろしくお願いいたします。