[No.2086] で、基本問題委員会の話を書きました。
エネルギー基本計画と経済成長率の想定〜「委員提案ケース:ゼロ成長」
http://www.es-inc.jp/lib/archives/120415_090440.html
電源構成(どうやって必要なエネルギーを供給するか)を考えるまえに、「どれだけの電力やエネルギーが必要なの?」を考える必要があります。そのために、まず2030年の経済規模をどう見積もるか(経済成長率の想定)を、現実的な選択肢も含めて考えよう、という発言と根拠を述べました。
エネルギーの供給を考える前の「供給すべき量」を考えるためには、経済規模の次に、もう1つ大事なポイントがあります。「省エネ」です。
省エネによってエネルギーを使わずにすんだ分は、供給方法を考えずにすみます。事務局では「経済モデルを回すのに、あまり数が多いと大変なので、揃えられるところは揃える」という考え方で、「省エネは一律2010年比10%」という想定で議論を進める考えのようです。
それに対して、「10%だけでなく、20%の省エネも選択肢に入れよう」という提案を、4月11日の委員会で資料を出し、発言しました。資料はこちらにあります。
http://www.es-inc.jp/news/20120411_1_edahiro.pdf
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)省エネの選択肢をもう1つ提示<電源構成の選択肢に行く前に>
基本認識・前提「ゼロベースで大きく変えていこう」「需要サイドを重視」「省エネを大きく進める」
今回の選択肢にも反映需要予測(GDP成長率:慎重+委員提案)省エネの度合い(10%に加えて、20%も)
理由① 供給対応でがんばるか、省エネでもがんばるか
理由② 昨夏の節電実績
理由③ 現在の「省エネ10%」に入っていない施策がたくさんあります
(民生部門)ビル・住宅の省エネ基準の義務化及び義務化水準の大幅引き上げ住宅リフォームの促進(既築住宅対策)省エネ性能の良いビルへの固定資産税軽減など
(産業部門)エネルギー効率が悪い設備の廃棄・リプレース促進エネルギー効率の悪い機器(白熱電球等)の製造禁止(MEPS:米国、カナダなどで、ルームエアコン、セントラルエアコン、暖房炉、冷蔵庫・冷凍庫などを対象に実施)など
特に既築住宅対策が遅れています
ドイツやフランスでは、新築だけではなく、既築建築物の増築・大規模改築等においても、新築同様に省エネ基準適合義務が必要(例)ドイツ:「Energy Saving Act」により、住宅・非住宅の新築・増改築において省エネ基準の遵守を義務付け
理由④ 生活者がワガコト化できる部分です
エネルギーの供給部分に取り組むのはなかなか難しい(→「任せて文句をいう」だけ)
需要抑制(省エネ)はだれでもどんな規模でも取り組めます
エネルギー問題を生活者にとっても、「引き受けて考え、行動」できるものに。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この点については、河野委員も「省エネの選択肢について」という資料で
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/18th/18-15.pdf
「現段階での「エネルギーミックスの選択肢に関する整理」では、省電力の前提は 2010 年度対比マイナス 10%とされている。しかし、2011 年実績(暦年)から判断すると、マイナス 20%のケースも分析の前提に加えるべきではないか」と発言されました。(上記資料に根拠が載っています)
一方、豊田委員は「現在想定している以上の省エネはムリ」という意見です。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/19th/19-9.pdf
前回4月16日の基本問題委員会で、もう一度この点について意見を述べました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(前略)
そのほかに3点述べます。
1つは、省エネに関しても、中環審では異なるシナリオを出しています。やはりその説明・議論をして、どういったシナリオがあり得るのかということを、ぜひ議論したいと思っています。
今の「一律、省エネ・節電10%」という形で、CO2がどうなるかということを書いてくださっていますが、これでは「悪魔の選択肢」になってしまっています。「CO2を減らしたいなら原発を増やすしかない」ということになってしまっています。
多くの国民は、温暖化も放射能もない社会を望んでいます。ですから、もしそうであったたらもっと省エネをやるとか、そういった選択肢もぜひ入れていただきたいと思っています。
この今の選択肢の出し方で、これは「原発推進のためにこういう出し方をしているのではないか」という反発もあちこちで聞いていますし、「これで出されても選びようがない」という声も聞いていますので、「悪魔の選択肢だけを出さない」ということをお願いしたいと思っています。
(後略)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
中環審(温暖化対策からエネルギー環境会議にインプットを出す役割)では、私の資料のスライド10にあるように、「原発をゼロにしたい、でも温暖化も進めたくない人たちは省エネをもっとがんばる」という選択肢の可能性を示しています。
省エネの可能性をどのように見積もるか、選択肢に反映するかについては、委員長が今後の議論にゆだねられました。ぜひ展開を見ていただきたいし、ご意見やコメントがあれば、以下からどしどし事務局までお寄せ下さい。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ikenbosyu.htm
お寄せいただくご意見はすべて資料として配付されますし、ここ2回の委員会では、「委員会の進め方」についての国民からの意見は別途資料として大きく取り扱われています。
「温暖化がイヤだったら原発しかないんだよ」という"悪魔の選択肢"だけを国民的議論に提示することは避けたい!と心から思っています。
私もがんばって委員会で自分の考えを発言したいと思いますが(次回は海外出張で欠席ですし、出席しても発言の回数も時間も限られているので)、選択肢を出されてからではなく、そのまえのこの段階で、ぜひ「国民はこういう選択肢を望んでいる!」というみなさんのそれぞれのお考えや思いを届けて下さい。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ikenbosyu.htm