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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年05月11日

原発ゼロだとGDPはどうなるのか?〜「京都・エネルギーを考える若者の集い」のご案内 (2012.05.11)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

欧州出張から帰国した翌日、5月9日に第21回基本問題委員会が開催されました。

今回は、選択肢の原案(原発比率でいえば0%、20%、25%、35%)について、経済モデルで分析した結果が示され、その分析や解釈についての議論が主な内容となりました。

資料1-1
「経済影響分析について(試算結果の中間報告)」

この回に提出した私の資料はこちらにあります。
http://www.es-inc.jp/news/20120509edahiro.pdf

提出した資料に基づいていくつかの点について発言しました。その中から2点、ぜひみなさんにも考えていただきたいことを書きます。

1つは、経済影響分析の解釈についてです。

これまで経済モデルといえば、「温暖化対策をするとこんなに経済に影響が出すよ、家計に影響が出ますよ(それでもやるんですか)」という脅し?のように使われてきたという印象(トラウマ?)があって、今回はどんな結果が出て、どのように使われるのか、しっかり見ていきたいと思っています。

「経済影響分析について(試算結果の中間報告)」
5枚目に載っている「試算結果についてー主な項目(2030年における実質GDP、家計消費支出への影響)」を見てみてください。

5機関がそれぞれ経済影響分析をおこなった結果が1つのグラフに載っています。
みなさんはこれを見て、どう解釈されますか?

このグラフについての私が大事だと思うポイントは2つです。

●地球環境産業技術研究機構のモデル以外の4つは「原発比率は2030年のGDPにほとんど影響がない」ことを示している。

●GDPへの影響が最も大きい地球環境産業技術研究機構の結果をどう読むか?

グラフを「選択肢B(原発ゼロ)」だと「GDPが5.0%減少」、「えー、原発ゼロにすると経済はマイナス成長になってしまうの!」と読んでしまうと間違いです。

「現在の電源構成のまま、年率1%程度のGDP成長率を続けて2030年になったときのGDP」に比べると5%少ない、ということです。

日本のGDPは2010年は511兆円で、これが2030年には617兆円になる、というのが計算の前提となっています。地球環境産業技術研究機構の計算では、「原発ゼロだと、2030年のGDPは617兆円ではなく、586兆円になる」ということで、現在の511兆円からGDPは成長し続けます。成長のペースが少し遅くなる、ということなのです。

「GDPが小さくなる」のと「GDP成長率が小さくなる」のは、大きく違うのですが(上記のように、GDP成長率が小さくなってもGDP自体は成長する、など)そのあたりを意識して読まないと「え、マイナス5%!?」とびっくりしてしまいます。

もう1つ、大事なことは、このグラフを見ればわかるように、「どの選択肢を選んでも2030年のGDPは、現在の電源構成のまま年率1%程度のGDP成長率を続けて場合に比べると若干小さくなる」ということです。

ですから、地球環境産業技術研究機構の分析は、選択肢間の比較として見る必要があります。どれかの選択肢を選ぶわけですから。選択肢E(35%)は、「原発依存度の低減」という政府の方針に反することからも、選択肢としては考えにくいので、次に原発比率の高い「選択肢D」と比べましょう。

選択肢D(25%)は、3.11前の原発比率が27%でしたから、ほぼ3.11前の現状維持、という選択肢になります。

原発ゼロの「-5.0%」と、原発比率25%の「-3.5%」の差がグラフでは、大きく見えますが、実際には「2030年時点でのGDP」を比べてますから、「20年間で1.5%の差」ということです。

つまり、その規模のGDPに達するのが1〜2年遅れる程度の差です。

「20年間で1.5%の差」を年率にすれば0.075%(0.075%の20 乗)となります。617 兆円の0.075%は約5,000 億円ですから、それを1.2億人の人口で割ると、一人当たり年に4200円ほどになります。

つまり、「経済影響が最も大きいという試算でも、最大で月350円/人ぐらいを覚悟すれば、2030 年に原発維持(25%)ではなく原発ゼロ(0%)が達成できる」と読むことができます。

ちなみに、基本問題委員会の議論では、今回の分析にあたった機関の担当者の間でも「差はないと考える」「大きな差がある」と意見が分かれました。委員の間でも、「経済への影響について原発比率による差はあまりないことがわかった」という意見がいくつかあったのに対して、「大きな差がある」という意見もありました。

純粋な差の大きさというより、何と何を比べるか、ですよね。原発があってもよい(あったほうがよい)と思っている人にとっては、同じ大きさのGDPに達するのが1〜2年遅れる程度でも「不要なマイナスだ」と思うのでしょうし、原発のリスクや安全性を優先して考えたい人にとっては「それぐらいの違いで、原発をゼロにできるならそちらを選びたい」と思うことでしょう。

何と何を比べて、どのような選択肢を提示していくのか--まだまだ議論は続きます。


もう1つ、今回発言したこと(前にも発言したことですが、いつもスルーされてしまうので、もう一度言いました)は、「長期的な方向性こそが選択肢として提示されるべきもの。長期的な方向性を欠いた2030 年断面の数字だけでは国民の求めるものに足りない」ということです。

今回の基本問題委員会の任務は、「原発事故による甚大な被害への反省に基づき、エネルギー基本計画をゼロベースで見直す」ことです。そのためには、「原発をゆくゆくはゼロにしたいと思っているのか」「減らしていくが一定比率保つのか」が議論の大きな焦点になるはずです。

ところが、現在の選択肢は2030 年断面の数字しか出していません。これでは、原発事故を受けて日本が今後のエネルギーをどういう方向性で考えているのかがわかりません。

「2030年に原発比率が20%」という選択肢を出した数人の委員にも、「20%ぐらいは保つべき」という意見の方もいるし、「長期的にはゼロに近づけていくが、2030年の段階では20%ぐらいは残るだろう」という意見の方もいます。この違いこそが大事な選択肢だと思うのですが、それを選択肢に入れさせないという力が働いているように感じます。

「国際情勢等、長期的に将来を見通すことは不可能なので、せいぜい2030年ぐらいまでしか責任を持って言えないから」という意見もありますが、「様子見」「問題や判断の先送り」は解決になりません。

国際情勢等、長期的に将来を見通すことは不可能だからこそ、大きな方向性を定め、そこへ向けて進みながら、その時代の状況や情勢によって調整していくというプロセスが重要なのだと思います。


基本問題委員会は次回は14日、その後も週1〜2回のペースで続きます。今月中に選択肢の原案を作るため、詰めた作業が続きます。


さて、市民の声を少しでも枝野大臣と基本問題委員会に伝えたいと、1月に「エネ女」、3月に「エネ若(えねやん)」の集いを開催しました。

明日は京都で「eneyan エネルギーを考える若者の集い」が開催されます。

直前のご案内で恐縮ですが、関西地方の方、ぜひご参加下さい〜。
(この議論の結果も、基本問題委員会に報告したいと思っています)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

eneyan エネルギーを考える若者の集い

 2012年5月12日(土)13:30〜17:00
  @京エコロジーセンター、in京都
http://www.miyako-eco.jp/about/access.html
申し込みフォーム http://p.tl/IUvg-


エネルギーのあり方に不安を感じていませんか?
この夏、これからのエネルギーが決まります
エネルギーや政策に関心のある方も、少し難しく感じている方も大歓迎です☆
みんなでエネルギーについて考えてみませんか♪


○日時:2012年5月12日(土)13:30〜17:00(13:00受付開始)
○会場:京エコロジーセンター 第1・2会議室
    http://www.miyako-eco.jp/about/access.html
○当日プログラム(予定)
  13:30〜13:50  開始、趣旨説明、主催団体挨拶
  13:50〜14:50  講演「日本のエネルギーの未来を考える!」
           講師:伊与田昌慶(気候ネットワーク研究員)
  14:50〜15:00  休憩
  15:00〜16:30 ワークショップ
           *5人1グループになりディスカッションを行います
  16:30〜17:00  アンケート記入、まとめ
○参加者:先着35名 (高校生、大学生・大学院生、若手社会人)
○参加費:無料
○お申込み方法
  下記の申込フォームから必要事項を記載し、お申し込みください。
  申し込みフォーム http://p.tl/IUvg-
○主催:京エコロジーセンター
○企画運営:自然エネルギー学校・京都
○お問い合わせ先:気候ネットワーク
  TEL 075-254-1011、E-Mail kyoto@kikonet.org

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 3.11以後原発稼働に対する国民の支持が大幅に低下しています。
自然エネルギーの役割やその普及策について考えることは必要不可欠といえるでしょう。
 このような状況の中、今夏のエネルギー基本計画見直しにむけて6月頃に政府からエネルギー政策の選択肢が提示されます。将来を担う若者が積極的にこの問題について知り、議論に参加していくことが求められています。

 しかし、エネルギー基本計画の見直しについて検討している資源エネルギー庁の基本問題委員会の委員25人のうち、60歳以上の委員が6割以上を占め、39歳以下の委員は1人もいません。

 この状況を受け、若者の視点をエネルギー政策に取り入れるため、委員の一人である枝廣淳子さんによって、「若者の視点からエネルギーを考える〜エネ若の集い」が3月に東京で開催されました。
(会議の模様や報告書については下記URLからご覧ください)
http://ishes.org/news/2012/inws_id000342.html

 関西でも若者の意見や想いがエネルギー政策に取り入れられるための場を設けたいと思いこの会を開催するに至りました。
 今後の日本のエネルギーをどうするかは、あらゆる人に影響を及ぼすことであり、性別や世代などを含め、広く国民的議論をおこなって、政策に反映すべきと考えます。

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主催:京エコロジーセンター
企画運営:自然エネルギー学校・京都
お問い合わせ:特定非営利活動法人気候ネットワーク
URL http://www.kikonet.org
〒604-8124 京都市中京区高倉通四条上ル 高倉ビル305
TEL 075-254-1011、FAX 075-254-1012
E-Mail  kyoto@kikonet.org


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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