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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年05月28日

第24回基本問題委員会での発言録 (2012.05.28)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

基本問題委員会では今日、選択肢案をとりまとめる予定です。

18:30〜会議のインターネット中継はこちらです。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv91444934?ref=top&zroute=index  

私の今日の資料は18時過ぎにイーズの新着にアップします。
http://www.es-inc.jp/

これまでの委員会の資料・録画映像はこちらにあります〜
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/index.htm

以下は先週2回目(!)の基本問題委員会での私の発言です。このときに提出した私の資料はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/24th/24-5-1.pdf

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今回ずっと議論してきて、選択肢の絞り方という点ではかなり議論が収れんしてきたように思っています。事務局の方も非常にがんばってくださっていると思います。

もうひとつ残っているのは、「示し方」だと思っています。国やこの委員会に対する信頼を損なうのではなくて、信頼につながる示し方にしたいという思いで、いくつか修正追加のお願いをしたいと思います。

まず1点目、今回の資料でいうと40ページになりますが、各選択肢の経済影響分析ということで、以前も指摘したことではありますが、「原発比率が低いとGDPの下落率が大きい傾向となっている」という表記になっています。

左下の図がそのグラフになっていますが、ふつうこれをみると、「大きいという傾向」とはなかなか言えないのではないかと思います。どちらかというと、あまり変わらないのが4つ、RITEモデルは確かにそういう傾向を示していますから、「ひとつ例外がある」というのが、ふつうの見方ではないかと思います。

RITEのモデルも、前回の分析をみると電源構成というよりも、炭素制約のほうが大きいということで、それは5ページにのっていますが、炭素制約を外したときにはRITEでも選択肢によるGDPへの影響はかなり小さいものになります。

ということで、国民に示すときに、誤解や、「これは選択肢Bを選ばないように誘導しているのではないか」という疑惑を避けるためにも、以下のように修正の提案をします。

「原子力の比率による実質GDPの下落率への影響については、おおむね影響があるという結果は出なかった。ただし、影響が大きいという試算結果も存在した」これが、ほかの場所で使われている表現で、妥当ではないかと思っています。

もうひとつは、選択肢とともに、判断に必要な情報を国民に提示していくことが、これから求められているわけですが、そのときに、局所的な規模ではなくて、全体としてどうなんだ、ということをきちんと伝えないと、判断がしにくい、もしくは間違った判断をしてしまう可能性があると思っています。

8ページですが、「○%減る」という話になるわけですが、比べるのは慎重ケースでの2030年のGDPであって、これは、現在2010年が511兆円だったのが、これまで慎重ケースでいくと、1年で1.1%、0.8%の成長率で617兆円になります。そこからどれだけ減るか、ということであります。

多くの人は、「マイナス○%」というと、現在のGDPから減って、私たちは貧しくなってしまうのか、という誤解をしてしまいますので、この出し方はしっかり注意する必要があると思っています。

それで9ページに、たとえば、いちばんGDPへの影響が大きいという結果が出ている選択肢B(原発ゼロ)の場合ですが、これも慎重ケースの611兆円から20年かけて成長率が1〜5%減ると、2030年の段階では、今の511兆円に比べて、586〜611兆円まではいくわけです。

この差は、たとえば、リーマンショックで1年で3.7%GDPが減ったというのと比べて、年率として、果たして大きい規模と思うかどうか? それは国民ひとりひとりの判断ですが、少なくとも、その規模感をきちんと等身大で、全体像で伝える必要があると思います。

10ページは、それを年率に直してみたものです。これまでの景気の変動、リーマンショックなど含めて、年率の成長率がどう動いているか、ということに比べて、2030年段階での私たちの選択肢による選択肢B(原発ゼロ)の場合、どれくらいマイナスになるのか、というと、RITEのモデルでもほかの景気変動に比べるとそう大きいとは、私は思いません。もちろん、大きいという意見もあるかもしれませんが、少なくとも、こういう全体像を伝える必要があると思っています。

11ページに、参考として「経済影響分析のトリセツ」というのを書いてみました。さきほど辰巳委員がおっしゃったように、経済モデルに入っていないものがあるとか、あくまで全体の一部であるということを含めて、多くの国民はこういう経済影響分析をみたことがありませんので、これはどういうもので、どういうふうなところに気をつけて見るべきかということを、ちゃんといっしょに伝えないといけない。結果だけ、%を渡しても、誤解につながってしまうかと思います。マイナス成長といっても、今から減るわけではない。経済は成長を続けるわけであります。そういったことを伝えていく必要があります。

もう1点、別の観点です。

これは、今回の事務局資料の6ページに載っていますが、省エネ、節電に関してです。「原発ゼロを選べば、一生懸命やるんじゃないか」ということが書いてあるのですが、前回、前々回でしたか、「原発ゼロであれば、原発のためのコストを省エネ、節電に投資できるので、その分、省エネ、節電は進むはず」という発言をしました。

こちらのほうは取り上げていただいていませんが、簡単な計算をしてみました。それが13ページです。

日本の原発関連予算は、約4,000億円。うち、核燃料サイクルなどの既存の研究開発予算が1,300億円。少なくとも、この1,300億円は、原発ゼロになったら要らないだろうと思われます。

安全対策等ありますので、4,000億円すべてが要らないかどうかは別として、たとえば、今の住宅用の太陽光の買い取り制度では、差額が18円/KWhあたりはありますので、節電になっていると言われています。

では、この1,300億円、もしくは4,000億円を、この差額として、インセンティブとして投資したらどうなるか。実際に節電がどれくらい定着するか、というのはいちばん低めの数字をとっていますが、非常にラフな計算です。私が簡単に計算しただけなので、必要であればもっときちんと計算していただければと思いますが、この簡単な計算でも、このように気持ちだけではなくて予算を振り返ることで、ちゃんと7〜21%の節電が進むということです。

繰り返しで申し訳ありませんが、今回の国民からのご意見の(1)にもやはり「省エネ、節電はもっと選択肢を増やすべきではないか」というのがありました。

ということで、ぜひ、「原発比率にかかわらず、省エネ、節電は20%、10%の一律」ではなくて、「原発比率が低いものは、もっと省エネを進めることができる」という選択肢をつくっていただくことができたら、と思っています。

それから、もうひとつ、今回の資料でいうと、42ページの表6にかかわってきますが、電気料金がどれくらい上がるかという計算があります。これはちょっとおかしいなと思ってみていました。経済モデルというのは、「価格が変われば需給が変わる」という関係をみるモデルだと理解しています。

ですから、選択肢によって電気料金が変わると、電気使用量も変わるはずです。しかし、このときの計算は、「1カ月当たりの家庭の電気使用量を290KWhとし」と、すべて固定になっています。とすると、電気料金の高いところは節約効果が見込めませんので、不利な、多めに見積もる結果になると思います。これは、もういちど計算していただいて、42ページの表6を修正していただければと思います。

もうひとつ、今回の資料の31ページ、選択肢(4)の書き方です。3箇所、小さいけれど大事な修正をお願いしたいと思います。

選択肢(4)のところに2箇所、「バランスのとれたエネルギー構成」という言葉があります。「バランスのとれた」というのは、価値判断が入ってしまいますので、好ましい表現ではないと思います。ですから、「より多様な」というように変えていただくのがよいかと思います。

もう1点は、選択肢(4)の基本的考えで、a)のところで「一定の比率を中長期的に維持する」というのがありますが、そのあとに続けて、「そのために必要な新増設をおこなう」というのを入れていただきたい。これは、選択肢(3)では「新増設が難しいので15%」という説明がありますので、選択肢(4)を選ぶとしたら新増設が必要になる、ということは、情報として提供する必要があると思っています。

それから、最後に、追加の資料で、資料5-2、5-3、というのは、これは対話のために、市民の方が井戸端会議をするようにエネルギーについて考えて話し合ってもらおうと思って、以前つくったものです。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/24th/24-5-2.pdf
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/24th/24-5-3.pdf

世論調査のためのものではないのですが、前々回提案した、「情報を提供しながら考えてもらって意見を得る」といった国民的議論のひとつのプロセスの例としてお付けしてあります。これは非常にラフな例ですが、こんなかたちで情報提供しながら考えてもらって意見をとるということも設計できると思っていますので、ぜひ考えていただければと思います。

以上です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

委員の意見が一巡したあと、発言を求めました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

はい、ありがとうございます。終結に向けて、できるだけ仕上げに近づけていくためにいくつか、最初のほうに発言させていただいたので、その後のご意見を踏まえて。

最初の点で、エネルギーミックスの選択肢の原案の40ページで、「原子力の比率が低いほうが実質GDPの下落率が大きい傾向となった」という表現を変えてほしいという点に関して、松村委員のほうからいくつかお話、ご指摘がありました。RITEがもしかした正しいのかもしれない、など。

ただ、こういった形でグラフを載せて、その結果として取りまとめをするとしたら、今の言い方だと言い過ぎ、もしくは誘導的に受け取られると思います。どれが正しいかわからない。いろいろ前提が違うというお話だったので、それを全部明記しても、なかなか一般の人にはわかりにくいと思うので。私の表現がもし適切でなかったら、事務局に考えていただきたいですが、今のままの表現だと誘導的だと取られると思います。

GDPの1%が大きいか小さいか。「それは小さいです」と、私がそれを押しつけようとしているわけではなくて、それは結果的に何と比べて、ということだと思います。ただ「GDPの1%よこせ」と言われたら、私だって「嫌です」と言います。だけど、何と引き換えにということですよね。原発の心配なく暮らせることと引き換えにということを考えたら、じゃあ1%は大きいか小さいか。それは国民の一人ひとりの判断ですので、大きいとか小さいとか出さないで、淡々とデータを出すべきというのはその通りだと思います。

全体像を出すべきということで、2030年のGDPに対してこれぐらい減るという。それを、減るところだけのパーセントの違いを浮き彫りにするのではなくて、どちらにしても成長はするんだと。どの選択肢も成長するんだと。その姿からどれぐらい減るかという形で出さないと、なかなか一般の人には伝わりにくいと思います。

それから細かい話ですが、豊田委員が「バランスの取れた、という言葉のままでいいんじゃないか」とおっしゃっていた点ですが、翻訳をずっとしてきた立場として、言葉のニュアンスの受け取り方は、人によってかなり違うと思っています。「バランスの取れた」と言うと、それは良いものだとか好ましいという価値判断が入っていると受け取る人も少なからずいると思うので、できるだけ誤解のない表現にしたほうがいいと思います。

「多様な」というよりも、もう少しバランスということをお出しになりたいということだと、たとえば、「多様な電源オプションをできるだけ等分に近い形にしたエネルギー構成」。長いですが。たとえばの例です。表現はいかようにでも考えられるので、価値判断をできるだけ除いた形で出す必要が、国民の信頼という点で大事だと思っています。

それから、選択肢の3の先送りのうんぬんですが、これをやっぱり取りたくないという1つの考えの背景としては、国民の不信感があると思うんですね。最終的な着地点を決めないで、目標値で縛らないで置いておくと、政府はずるずるになっちゃうんじゃないかと。結局、先送り、先送りになってしまうんじゃないかという不信感は確かにあります。

ですから、もし選択肢の3を残すのであれば、その不信感を払拭するためのプロセスであるとか、メカニズムであるとか、ロードマップであるとか、じゃあ、どういうタイミングで、どういうふうに判断するのかということを含めて出す必要があります。「その辺りになったら考えましょう」だけではあまりにも悪い意味での先送りになってしまうと思っています。

それから省エネに関してですが、豊田委員から、「技術があっても導入するかどうか」という話がありました。これは41ページにも書いてあります。前回、榊原委員のご発言だと思いますが、電力価格が上昇すると企業にとっては死活問題だと。

ほかの委員も指摘されていたように、これは電力の価格弾力性が高いということだと思います。今、十何%電力料金を上げるということでも、企業は大変だというふうに言って、いろいろな措置を取ろうとしているわけなので。

そういった意味で言うと、価格が変わればそのあたりは動いていくと思いますし、逆に、RITEモデルの想定は価格弾力性が非常に低い想定だと思います。それが果たして実態に合っているのかどうかということも検証すべきではないかと思います。

省エネ、節電に関していうと、10%以上やろうと思ったら、今以上の政策を作るはずです。たとえば、前回も言いましたが、住宅の省エネ基準を厳しくするとか、それを既築にもちゃんと使っていくとか。たとえば既築の改修に省エネ基準を義務化。ヨーロッパのいくつかの国がやっているように義務化したらどれぐらい減らせるのか。そういったことを積み重ねていけば、一律10%しかできませんという選択肢にはならないと思っています。

それからこれは、先ほど槍田委員がおっしゃったことですが、選択肢の4を選んでいらっしゃる理由は、「分散・多様化が安定、リスクマネジメントだ」というお話でした。基本的な考え方は私も同じです。基本的な考え方が違うから違う選択肢を選んでいるのではない、ということをお伝えしたいと思います。

分散・多様化は大事だと思いますが、もしその中の1つが、すべてを吹き飛ばすような、非常に大きなリスクを持っていたとしたら、それは分散・多様化のプラスよりもマイナスのほうが大きくなると思います。

ですから、原発事故の可能性とか核廃棄物の処理について、そのリスクと影響の大きさをどれぐらいで見積もっているかという違いだと思っています。選んでいる選択肢は違いますが、分散・多様化を否定しているわけではない。それは大事だと私も思っています。

最後に、これ、事務局へ質問ですが、前からわからなかったんですが、選択肢5のところに「P」と書いてある。このPというのは何なんでしょうか? ペンディングのPなのでしょうか?

選択肢として出すということは、「どうぞ選んでください」ということになります。この委員会の中では、「自分は推しません、35%も置いておくべきです」という意見はすごく聞かれます。山地先生も選択肢を2つ出されているわけで、「別のところでは先生も35%ではないほうを推している」と聞いたこともあります。誰も押していないものを選択肢として残すのはいかがなものかと。比較のために必要だということであれば、「比較のための参照ケース」と書くべきで、選択肢という言葉をつけて出すのはどうかと思います。

以上です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

くだらない余談ですが、Pは何ですか?という質問に対して、三村委員長が「Pはどうしようかな、ということです」と答えて下さったので、「どうしようかな、だったらPじゃなくて、Dでは?」とつまらないツッコミが浮かびましたが、止めておきました。(^^;

さて、今日はどんな展開になるのでしょうか……?

 

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