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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年06月25日

第27回基本問題委員会「エネルギー政策の倫理的側面について」の意見提出と回答 (2012.06.25)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

エネルギー基本計画に向けての選択肢は、原子力委員会、基本問題委員会、中央環境審議会からのそれぞれの選択肢案が出そろい、エネルギー・環境会議でとりまとめて、今月中に国民に提示されることになっています(今週ですね!)

6月7日のメールニュース「将来のエネルギーについての議論と倫理」にたくさんのご感想やエール、ご意見をいただきました。ありがとうございました! どれも参考になり、特に他の委員にも見てほしいと思ったご意見の一部はご本人の了解を得て、基本問題委員会への資料にも入れさせていただきました。

そのあと、6月19日に第27回の基本問題委員会が開催されました。私は以下の資料を提出し、次のように発言しました。

未来世代への責任という趣旨での倫理面についての私の発言に対する、国家戦略室の担当の方の回答も抜き書きしてあります。

  1.エネルギー政策の倫理的側面について
   http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/27th/27-8-1.pdf

  2.前回の基本問題委員会での問題提起「エネルギー政策と倫理」とコメントに対する国民の思 
    い・考え(寄せられたメールから、ご本人の了解を得て抜粋)
   http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/27th/27-8-2.pdf

※これまでの委員会の資料・録画映像は以下のサイトをご覧ください (資源エネルギー庁HPより)
   http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/index.htm

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

※資料はこちらです。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/27th/27-8-1.pdf

はい、ありがとうございます。

2点あります。1つは、今、高橋委員がおっしゃったことと重なります国民的議論で、プロセスとか方法論を示していただきたい。

私の所にも、全国のいろいろな団体や地域の方々から、自分たちはどうやってその国民的議論にかかわれるのだろうか、自分たちが議論した結果がどのように政策に反映されるのか、どのように扱われるのか、ということの問い合わせがたくさん来ています。それは多くの国民が知りたいところだと思うので、それを出していただきたいというのが1つ。

もう1つは、エネルギー環境会議の「7つの視座」のところに、恐らく暗示的には入っているのだと思うのですが、私がこの委員会で何度も言っていますが、例えば「倫理」とか「未来世代」のような、どれぐらいの時間軸でこの7つの視座を考えているのか。資料8を作ってきたので、それを見ていただいて、私がお伝えしたい点を見ていただければと思います。

前回、この基本問題委員会で倫理について取り上げた時に、非常にたくさんのメール、それからさまざまな形で、いろんな方から意見が来ました。そのいくつかのメール、内容を末尾にも載せてあります。そのときの私の伝え方が多分上手でなくて、3人の委員からコメントをいただきました。

私が伝えたかったことは3ページ目にあります。もちろん、倫理を含め、いろいろなことを勘案して、私たち委員は議論しています。そのいろいろな要素のうち、経済的な側面は、明示的にここで専門家を読んで議論しました。しかし、倫理的な側面については、「専門家を呼んだらどうか」と私は提案しましたが、それは実っていませんし、議題としては、現時点まではそういった議論はしていません。

ですから、国民的議論をこれからするといったときに、経済的な影響はどういうふうに見たらいいか、モデル分析の結果も出ていますが、倫理的な面をどういうふうに考えたらいいかということを、やはり出していきたいと思っています。

倫理というのはさまざまな分野がありますが、5ページにありますように、多分これは環境倫理に近いのかなと思っています。その中でも特に「世代間倫理」ということで、少し資料を用意してきました。

時間がないと思うので、少し飛ばして、7ページに世代間倫理があります。今の倫理的な決定のシステムは、「君がやるんだったら私もやるよ」という相互性を基本にできていますが、そうすると、今話し合いができる相手、つまり同世代の間でしか、それは実現しません。

たとえば私たちが何かを未来世代に残すとしても、未来世代からの合意は取りつけることはできない。そういったときに世代間の倫理をどう考えるか。基本的には未来の人たちの生存条件を保証する、それを損なってはいけないという考え方だと思います。

私がここの場に代表性が少ない女性や若者の声を聞く活動をしてきたのは、皆さんにも報告をしてきましたが、やはりこの人たちの声でも、世代を超えて、未来の人たちのことを考えてほしいということをたくさん聞いてきました。そういった場をつくって声を聞いた責任としても、少し述べたいと思います。

10ページ目にありますが、私が「倫理」と言ったときには、未来世代の責任ということを今一番に考えています。つまり、私たちが今エネルギーを選択することは、将来世代に何を残すのか。この整理は私なりの整理なので、もし違ったら、皆さんにもいろいろ意見をいただきたいと思います。

「原発が残すもの」「石炭火力などが残すもの」「自然エネルギーが残すもの」と分けて書いてありますが、いろいろ将来世代に残すものがあって、今は極めて時間軸の短いところで議論をしています。しかしやはり、その後何が残るかということを出した上で議論したいし、国民にも考えていただきたいと思っています。

原発比率をどうするかということが一番大きな焦点でありますので、ここに書いてある原発のところのいくつかの考えるきっかけを用意しました。もし違ったら、また皆さんで議論していただきたいです。

まず、12ページにあるように、選択肢によって必要な原発の新増設またはリプレースは当然違ってきます。原発比率をゼロにすれば新増設はいりませんが、ある程度維持するとしたら必要になってきます。

どれぐらい必要かという計算をしてみたのが13ページです。たとえば原発比率20%維持ということですと、2030年までに9基、2050年までに計24基の新増設、リプレースが必要になってきます。

事故の被害の大きさはいうまでもないですが、たとえば1つの数字を取っても、福島の方々がこれだけの被害を受けている。それから、じゃあ事故のリスクはどうかということを考えたいtp思います。

これは前にも出した資料でもありますが、原発事故の補償料です。15ページですが、これの計算の仕方をいろいろ教えてもらったところ、これまでの実績からこの事故の発生率というのを想定していて、今、20個所で操業しているわけなので、そうすると35年に1回事故が起こる確率に相当するそうです。

今回、料率を改訂したわけですが、この料率を見ると、これは想定としては「25年に1回」、今回のような事故が起こっても支払に困らないような形で集金をしている。「1000年に一度」とか「想定外」という言葉はよく聞きますが、実際にはこれぐらいの想定をして料率が変えられているということは、ほとんどの国民には伝わっていないのではないかと思っています。

4番目が、核廃棄物です。当然ながら、核廃棄物は原発比率をどうするか、ずっと続けるかどうかによって変わってきます。19、20ページを読んでいただくとわかるように、これはかなり大きな、未来世代に処分してもらわないといけないものを残すことになります。

21ページはちょっと付け足しです。原発はいつも「安定した電源」と言われてきました。それから低コストとも言われます。コストについてはこれまでも検証してきたと思いますが、「安定電源かどうか」ということでみると、稼働率はかなり上下していて、本当に安定なんだろうかと思います。

最後に、メインテーブルだけですが、北大の吉田先生から寄贈いただいた本を載せてあります。これは、何度かこの委員会でもご紹介した、ドイツの倫理委員会の報告を、全文翻訳されたものを載せていらっしゃいますので、ぜひそちらを見ていただければと思います。

以上です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

配付させていただいた書籍はこちらです。ドイツの倫理委員会がどのように考え、議論を進めていったかがわかります。日本が学べること、ぜひ読んでみて下さい。

「脱原発時代の北海道-これからのエネルギーの話をしよう」
 著者:吉田文和氏 (北海道大学大学院教授)

委員からの意見が一巡したところで、エネルギー・環境会議の事務局である国家戦略室の方が、意見や質問にお答えになりました。私に関する部分を引用します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

高橋委員、枝廣委員、飯田委員のほうから、「国民的な議論のプロセスについて」という議論でございます。

やるべき手段はすべて講じたいというのは、前回ちょっとお答え申し上げたんですけれども、少なくてもこの委員会の中でご指摘を受けている、世論調査をやってはどうか、あるいは討論型をやってはどうか、それから枝廣委員のほうから国民同士が対話をするというプロセス、要するに政府と国民が対話をするという議論も大事なんだけれども、国民同士が対話をするプロセスという工夫ができないかという議論については、6月にエネルギー環境会議で複数のシナリオを出すときに、どの方法でやるのかというのはお示ししたいと思います。

すべてのものを採用するかどうかは、今申し上げられませんが、仮に、なかなか採用できないものがあるとするならば、ご提議いただいていますので、なぜこういう手法を選んだのかという議論についても説明責任があるかなと思っておりますので、一度預からせていただければありがたいと思っております。

それから、討論型の世論調査は、いろんな所でやったほうがいいのではないかというご議論がありますが、一方で非常に時間がかかるといいますか、非常に手間暇がかかるプロセスですので、それについてどう処理するか、ちょっと真剣に考えたいと思っております。

それから、7つの視座に絡んで、倫理の側面のご議論が、枝廣委員からご指摘を受けております。実は、配布された資料をあらかじめ読ませていただいて、恐らく、あるとすれば、将来の世代に、それぞれの選択肢が付託をする課題だとか、解決を委ねる課題というのが違うのではないかといった点は、確かにご議論としてあるかなというふうに感じております。

従って、先ほどこのシナリオごとのパフォーマンスについて、CO2がどうなるか、コストがどうなるか、化石依存度はどうなるかという議論に加えて、将来世代に付託をしなければいけないテーマという議論で、整理ができるかどうかという議論は、一度トライをさせていただこうと思いますが、いかんせん、本来ならば総合エネルギー調査会のほうで、ある程度ご議論が煮詰まっていれば、という感じはちょっとしております。

すみません。従って、どこまでできるかどうかわかりませんが、いただいたご議論については、どう整理ができるか、一度やらせていただければと思います。ただ、ちゃんと書けるかどうかについては、若干自信がないところはございますので、その点、お許しいただければと思っております。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

エネルギーミックスをつくる基本問題委員会では、倫理面の議論は何度か提議したものの、ほぼ完全にスルーされていましたが、とりまとめる国家戦略室で、まったくスルーはせず、整理してみる、と約束してくれたことは一歩前進できたようでうれしく思っています。

国家戦略室やエネルギー・環境会議には、直接私たちの声を届けるチャンネルは(今のところ)ありません。基本問題委員会の「ご意見募集」のところから伝わると思いますので、ご意見があったらぜひ届けて下さい。

http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ikenbosyu.htm

ここへ寄せられた意見は毎回とりまとめられて委員への資料にもなり、すべてウェブにもアップされます。議論の進め方についての意見は別途とりまとめて、見やすい資料にしてもらっています。

どのような選択肢として最終的に提示されるのか。何が議論され、何が議論されずに、作られた選択肢なのか。国民的議論をどのように進め、どのように政策に反映していくつもりなのか。

今週発表される予定ですので、ぜひウォッチしていきましょう。

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