レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを実践和訳チームのメンバーが訳してくれました。お届けするのが少し遅くなってしまいましたが(すみません!)内容は古くないので、ぜひ読んでいただければと思います。
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中国から学ぶ:なぜ今の経済モデルは破綻するのか
http://www.earth-policy.org/data_highlights/2011/highlights18
レスター・R・ブラウン
私の記憶する限りほぼずっと、「世界人口の5%を占める米国が地球資源の1/3以上を消費している」といわれてきた。確かにそうだった。しかし、もはやそれは事実ではない。今や中国が基礎資源の消費で米国を凌駕するようになった。
穀物、肉、石油、石炭、鉄といった主要な一次産品の中で、石油以外はどれも中国の消費が米国を上回っている。石油については、その差はだんだん縮まっているものの、米国がまだ大きく引き離している。穀物については、中国の消費は米国より1/4多い。肉は米国の2倍、石炭は3倍、鉄は4倍である。
グラフ:中国と米国の石炭消費量(1965年-2010年)
http://www.earth-policy.org/images/uploads/graphs_tables/highlights18_coal.PNG
【縦軸】単位:100万トン(石油換算)
これらの数字は国の消費量を示すものだが、中国の一人当たりの消費量が米国のそれに追いつくようになったらどういうことになるだろう。仮に、中国の年間経済成長率が近年の11%から8%にダウンすると控えめに見積もったとしても、2035年には、中国の一人当たりの所得水準が現在の米国レベルに達することになる。
グラフ:中国の一人当たりの購買力平価ベースGDP(1980年-2010年 および 2035年までの予測値)
http://www.earth-policy.org/images/uploads/graphs_tables/highlights18_gdp.PNG
【縦軸】米国ドル(その年の購買力平価で調整)
さらに、中国人が、多少の違いはあれ現在の米国人と同じような所得の使い方をするようになると仮定すると、彼らの所得を消費量に置き換えることが可能だ。例えば、中国人一人ひとりが現在の米国と同じペースで紙を消費するとすれば、2035年には、13億8千万人の中国人が現在の世界の紙生産量の4/5を消費することになる。これでは世界中の森林が消滅してしまう。
グラフ:中国の紙消費量(1998年〜2010年 および 2035年までの予測値)
http://www.earth-policy.org/images/uploads/graphs_tables/highlights18_paper.PNG
【縦軸】単位:100万トン
【凡例】
Current World Paper Production:その時点での世界の紙生産量
Chinese Consumption:中国の消費量
穀物についても、中国人が米国人並みの消費をするようになれば、2035年に中国は15億トンの穀物を必要とするようになる。これは現在の世界の年間穀物収穫量22億トンの70%近くにあたる。
グラフ:中国の穀物消費量(1960年-2010年 および2035年までの予測値)
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【縦軸】単位:100万トン
車については、2035年、中国が、今の米国並みの4人に3台という割合で車を所有すると仮定すると、中国には11億台の車があることになる。現在の世界の車保有台数は10億台を少し超えたところだ。中国は、車に必要な道路、幹線道路、駐車場を整備するために、現在米作に使用している土地の2/3以上にあたる土地を舗装しなければならなくなるだろう。
グラフ:中国の稲作面積(2010年)および車11億台に必要な舗装面積の予測(2035年)
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【縦軸】単位:100万ヘクタール
【凡例】One Hectare= 2.471 Acers:1ヘクタール=2.471エーカー
Rice Area, 2010:コメ栽培面積(2010年)
Paved Area for Cars:車両用舗装面積(2035年)
2035年までに、中国は1日あたり8,500万バレルの石油を必要とするようになるだろう。現在、世界の石油生産量は1日あたり8,600万バレルで、これより大幅に増えることはあり得ない。世界に残されている石油資源は枯渇してしまう。
グラフ:米国と中国の石油消費量(2010年)および予測(2035年)
http://www.earth-policy.org/images/uploads/graphs_tables/highlights18_oil.PNG
【縦軸】単位:1日あたり100万バレル
中国の事例をみると、化石燃料に依存した、車中心の、使い捨て経済を基盤とする欧米型経済モデルは、将来、世界的に機能しなくなることがわかる。中国で機能しないのであれば、人口が2035年までに中国を抜くと予測されるインドでも同じだろう。さらに、同じく「アメリカン・ドリーム」を夢見ているその他の途上国の30億人に対しても、欧米型経済モデルは機能しなくなる。そして、ますます一体化が進むグローバル経済では、私たちは皆、同じ穀物、石油、鉄に依存しており、欧米型経済モデルはもはや先進国においても機能しなくなるだろう。
私たち世代が取り組まねばならない最重要課題は、新たな経済を構築することである。エネルギーを再生可能なエネルギー資源に大きく依存し、もっと多様な輸送システムを備え、あらゆるものを再利用、再資源化する経済を。この新たな経済、すなわち、経済発展の持続を可能にする経済を構築する技術は、私たちにあるのだ。問題は、この潜在能力を実現させようという政治的意志を呼び起こす力が私たちにあるかどうかである。
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レスター・ブラウン氏はアースポリシー研究所長で、『崖っぷちに立つ世界』(World on the Edge)の著者。さらに詳しいデータおよび資料についてはこちらへwww.earth-policy.org
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(翻訳:古谷明世 チェッカー:梶川祐美子)