現在、閣僚からなるエネルギー・環境会議がエネルギー政策の策定を担当しています。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive01.html
エネルギー・環境会議とは、「(平成23 年10 月21日閣議決定)に基づき、エネルギーシステムの歪み・脆弱性を是正し、安全・安定供給・効率・環境の要請に応える短期・中・長期からなる革新的エネルギー・環境戦略及び2013年以降の地球温暖化対策の国内対策を政府一丸となって策定するため」開催される、となっています。
閣僚による会議であるため、一般の人の参加はなく、また会議自体も基本問題委員会などと違って、公開(傍聴や動画配信など)ではありませんが、各会議の配付資料や議事要旨はサイトに掲載されています。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive01.html
このサイトから、現在並行して行われている国民的議論についてのリンクもあります。
たとえば、いろいろと騒がれている「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」についても、説明資料のほか、各地での意見聴取会の実施報告も載っています。
http://kokumingiron.jp/
<実施報告>
映像で見る
文字で見る
参加申込者/
来場者数等内訳
映像ですべての回の意見発表や会場のようすがわかりますし、議事録として読むこともできます。
次回は明日富山でありますね。生中継もあります。
7月28日(土)富山 13:30〜15:30(予定)
※上記時間に中継生放送がご覧になれます。
それから、「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する御意見の募集(パブリックコメント)へのリンクはこちらです。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120702/20120702.pdf
数日前に「国会エネ調準備会」の議論で担当者から聞いたところでは、現在2万件を超えるコメントが集まっているそうです。
「100字を超える意見には概要も」とのこと。大論文を書かなくても、100字以内でも(ツイッターより短いですね!)十分だと思いますので、ぜひどうぞ!
そして、3つめが「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」です。
https://www.kokumingiron.jp/dp/
討論型世論調査については、基本問題委員会にも資料を出し、「ぜひ今回の国民的議論の一環としてやりましょう!」と発言してきたので、実施されることになってとてもうれしく思っています。
討論型世論調査とは、どのようなものなのか?
基本問題委員会事務局資料
「国民的議論」に関するこれまでの委員会における御意見
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy/genshiryoku_kocho_koho/pdf/004_09_00.pdf
に、「枝廣委員からご提示いただいた参考情報」として簡単にまとめてもらっています。
このもとになった第18回基本問題委員会(4月11日)に提出した資料「国民的議
論に向けて」はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/18th/18-9-2.pdf
この資料から、抜き書きしてご紹介しましょう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(参考)
「討論型世論調査 エネルギー選択で活用を」, 朝日新聞東京本社、2012年2月8日朝刊13頁
http://cdd.stanford.edu/polls/docs/flyers/DP-timeline.pdf
○討論型世論調査(Deliberative pollingR:DP)
・人々はふだん、政治や政策にあまり関心がない。
・従来の世論調査は、テレビで見た政治家のひとことや新聞の見出しの印象で回答される傾向がある。
・DPではバランスの取れた資料を読み、相反する意見の専門家に質問し、議論を重ねていく。
・その後の調査で得られた回答は考え抜かれた考えである。
○従来の世論調査
一般市民は情報を十分に知らないことが多く、表面的な印象で回答しがち。討論型世論調査 (DP)はこの問題に対する取り組みである。
○討論型世論調査(DP)のプロセス
-DPイベント前
1)第1回世論調査:対象は無作為に選ばれた一般市民
2)参加者の募集:DPイベントへの参加者を1)から選ぶ
3)バランスの取れた情報:参加者はイベント前に資料を受け取る
-DPイベント中
4)小グループ討議:小グループに分かれ討論
5)全体会議:小グループ討論で出た質問を専門家などに尋ねる
-DPイベント終了時
6)第2回世論調査
○討論型世論調査の歴史(1)―世界の動きー
1988年、米国スタンフォード大学ジェームズ・S・フィシュキン教授が提唱。
「私がDPを発案したのは1988年のこと。米大統領選に疑問を抱いたのがきっかけだ。最初にあるアイオワ、ニューハンプシャー両州の予備選・党員集会の結果が、大統領選の流れを決めてしまっていたからだ」(朝日新聞より)
1994年、初めてのDPが、英国(テーマは犯罪)で実施される。
その後1998年まで様々なテーマで実施される
1996-1999年、米国テキサス州(テーマはエネルギー選択)で実施される。
風力発電への補助金のために電気料金を値上げしてもよいという人が5割から8割に増加。
1999年、オーストラリアで実施。
2000年、デンマークで実施。
その後も、複数の国で実施されている。
○討論型世論調査の歴史(2)―日本の動きー
2009年12月 神奈川県で日本初のDP(http://kanagawadp.org/?ja)
テーマ:「道州制」、神奈川県自治総合研究センターと東京工業大学坂野研究室(次のスライド参照)
2010年1月 神奈川県藤沢市(http://keiodp.sfc.keio.ac.jp/?page_id=48)
テーマ「藤沢のこれから」、藤沢市と慶應義塾大学DP研究会(現慶應義塾大学DP研究センター)
2010年8月に第2回が実施された
2011年5月 慶應義塾大学(http://keiodp.sfc.keio.ac.jp/?page_id=37)
テーマ:「年金をどうする?世代の選択」、朝日新聞社(全国世論調査)と慶応義
塾大学DP研究センター(討論フォーラム)
全国から約300人を調査に招く計画
2011年11月 北海道大学(http://forum.hucc.hokudai.ac.jp/dp/)
テーマ「BSE(牛海綿状脳症)」、北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究部門、BSE(牛海綿状脳症)問題に関する討論型世論調査実行委員会
○日本におけるDPの事例紹介
2009年12月5日、神奈川県
日本で初の討論型世論調査
テーマ「道州制」
神奈川県自治総合研究センターと東京工業大学坂野研究室の共同研究
参加者の意識変化を調べる目的
参加者の意見変化の例
「都道府県を廃止してより広域な道州を設置し、国の権限を道州、市町村に移譲するのか?望ましい」と答える者が 30%から35%に増加(ただし統計的に有為ではない)。
教育と雇用について 、「国よりも地方自治体か?権限と責任を持つへ?き」と考える者が増加(統計的に有意)
(http://kanagawadp.org/?jaより)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今回の環境・エネルギーの選択肢をめぐる討論型世論調査の実施スケジュールなどはこちらにあります。
https://www.kokumingiron.jp/dp/
> 今実施している討論型世論調査は、無作為抽出による「電話世論調査」(全国20
> 歳以上の男女3,000名余りを対象予定、7月上旬〜中旬)と、 その回答者の中か
> ら200〜300名が参加する、2日間の「討論フォーラム」(8月4日、5日)で構成さ
> れます。
>
> 調査は、①電話世論調査②討論前アンケート③討論後アンケートの合計3回実施
> し、熟慮された意見の推移をまとめます。
>
> 調査結果は、討論フォーラム後、早期に報告・発表する予定です。
とのことです。
-DPイベント前
1)第1回世論調査:対象は無作為に選ばれた一般市民
2)参加者の募集:DPイベントへの参加者を1)から選ぶ
3)バランスの取れた情報:参加者はイベント前に資料を受け取る
どうやって偏りのないように参加者を集めるのか?
どうやってバランスのとれた情報を参加者に提供するのか?
このあたりがとても大きなチャレンジになりそうです。参加者の集め方や資料のつくり方によっては「国民を代表していない」「ある選択肢に誘導しようとしているのではないか」等、このやり方そのものへの不信等にもつながりかねないからです。
今回の討論型世論調査では、「討論資料及び質問紙に関して、議題についての専門的見地から、意見や助言を提供」するための「専門家委員会」が設けられていて、私もメンバーになっているので、できるだけよい討論や機会につながるよう、できるだけの努力をしているところです。
意見聴取会、パブコメ、討論型世論調査のいずれも、運営方法はそれぞれに改善していくべきところがあると思いますが、政策に国民の意見を反映していこうという基本的な方向性は正しいものだと思いますので、「今回の運営がだめだから、それ自体を否定する」のではなく、「正しい方向に進めていくために、どう運営を改善したらよいか」知恵をみんなで出し合えればと思っています。
意見聴取会についても、政府主催の意見聴取会ではなく、国家戦略室の担当者にも参加してもらうなどして、市民の意見を直接伝えるため、民間主催の「自主的意見交換会」も企画・実施されています。今後も広島、岐阜、横浜などで開催されるそうです。こういう動きもとても大切だと思います。
http://publiccomment.wordpress.com/2012/07/13/meeting/
パブコメは8月12日で終わりますし、国民的議論を経てのエネルギー政策も8月中に決まる予定です。でも、市民がエネルギーや政策について知り、考え、発言し続けること、そして政治家や政府が、市民との対話や議論、そのための適切な情報提供などを続けていくことに終わりはありません。(というか、今回やっと始まった!のですよね〜。温かく厳しく育てていきましょう! ^^;)