今朝フェイスブックに書いた内容ですが、昨夜は日本エネルギー会議のシンポジウムでモデレータを務めました。パネリストはみんなのエネルギー・環境会議の発起人仲間の澤田先生、澤さんのほか、作家の鈴木光司さん、田口ランディさん、ジャーナリストの山岡淳一郎さんという豪華な顔ぶれで、あっという間の2時間でした。
「選択肢」と「国民的議論」がテーマだったので、冒頭私から選択肢について説明したあと、会場に「皆さんならどれを選びます?」と手を挙げてもらったら
・ゼロシナリオ:4〜5人
・15シナリオ:4〜5人
・20〜25シナリオ:残りのほぼ全員(80〜90人ぐらい) でした。
ほかの機会でも尋ねることがあるのですが、今回の割合はかなり違うのでびっくりしました(あとで主催者に聞いたところ、たまたま告知のチャンネルの関係で、電力・原子力関係者が多かったようです)。
シンポジウムの後半、会場の皆さんに登壇者への質問を書いてもらい、それぞれに配って答えていただく、という時間をとったのですが、私(モデレータ)への質問がいちばん多くてまたびっくりしました。
議論の中でお話しした「エネルギー需要と経済成長と幸せの関係」について、多くの方が、(質問という形もあれば、反論・批判という形もありましたが、いずれにせよ)関心や興味を持って下さったことがわかりました。
ふだんはゼロシナリオを選ぶ方が多い場面でお話しすることが多いのですが、今回は20〜25シナリオを選ぶ方にも響いた!ということは、ある意味心強く、また「伝え方」の勉強になりました(あ、こういう言い方をすると、不要な誤解を生んでしまうのだな、など)。
昨日は会場に、まさにそういう興味を持って下さった方に読んでいただきたいと新刊を持って行っていたのでした(が、アピールするのを忘れてしまって、あまり気づかれなかったかもしれません、もったいないことをしました〜。^^;)
みなさんにもぜひ読んでいただきたい、私にとって初めての「幸せと経済成長」を正面から取り上げた、アラン・アトキソンとの共著の本です。
『GDP追求型成長から幸せ創造へ』
アラン・アトキソン・枝廣 淳子(著) 武田ランダムハウスジャパン
現在、日本を含め世界中で「幸福度など経済成長以外のものを指標として求める動き」などが起こっています。さまざまな意味で「このままではだめだ」「何か違う」という思いがわき起こっている時代なのでしょう。
本書はそういった問題意識をもとに、そもそもの「経済成長」の歴史的背景や経済成長を考え直す代替的な枠組みや指標、これから時代の見通しなどについて、この分野の世界的な第一人者であるアラン・アトキソンによるレポートをお伝えし、最後に、今後日本や世界がどこへ向かっていくべきかを考える上で重要だと思われるいくつかの問題提起をしています。
「何が何でも経済成長を」という経済成長至上主義から脱却し、経済成長の実態や構造、そこから生み出されているものについて、じっくり考え、代替案を考えていくために本書が少しでもお役に立てることを願っています。
あとがきをご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おわりに
さまざまな意味で、「このままではだめだ」という状況が広がっている。その根本的な原因は、「有限の地球の上で、無限の経済成長を続けること」ではないか。
そういった問題意識から、日本を含め、世界のあちこちで、「脱成長」「反成長」「幸福度など経済成長以外のものを指標として求める動き」などが起こっている。
本書では、そもそもの「経済成長」の歴史的背景やパラダイム、そして経済成長のパラダイムに代わるもの、経済成長を考え直す代替的な枠組みや指標、今後の時代の中での意味合いと見通しなどについて、この分野の世界の第一人者であるアラン・アトキソンによるレポートをお伝えし、最後に、それを踏まえた上で、日本や世界がどこへ向かっていくべきかを考える上で重要だと思われるいくつかの視点を述べた。
「何が何でも、どんなものでも、経済成長が必須」という経済成長至上主義から脱却し、経済成長について、その実態や構造、そこから生み出されているものについて、じっくり考え、必要があれば代替案を考えていく作業は、世界でも日本でも、まだ緒についたばかりである。
経済成長が「手段」であるのと同様、「脱経済成長」「経済成長の代替」も手段である。目的は「だれもが(未来世代も含め)幸せに生きていける社会を創ること」ではないだろうか。その目的は変わらないが、時代が変わり、地球の状況と私たちとの関係性が明らかになるにつれ、手段は当然変わっていくだろう。
人類の共有ビジョンである「だれもが(未来世代も含め)幸せに生きていける社会を創ること」に向けて、どのように変化を創りだしていくことができるのか、その目的に向かって幸せ経済社会研究所の活動を展開していきたいと考えている。
意見や思いの重なるところがあったら一緒に進めていけたら幸甚である。また本書がみなさんの胸の中にちいさな「!」や「?」を生み出せたとしたら、著者としてこれ以上うれしいことはない。
本書の刊行に際しては、すばらしいレポートを作成してくれたアラン・アトキソン、アランのチームメンバーであるハル・ケイン、キャサリン・ケイジー、ダイアナ・ライト、レポートの翻訳を担当してくれた小野寺春香、小林紀子、野村麻衣子、新津尚子、中小路佳代子、長澤あかね、佐藤千鶴子の各氏、武田ランダムハウスの編集者・大森春樹氏に深く感謝申し上げる。
枝廣淳子
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アランが書いてくれた部分を読めば、経済成長の歴史や、GDPに代わる指標や取り組みのさまざまな試み、「グリーン成長」「グリーン経済」「持続可能な社会」などはどう違うのかなどがわかります。
私が書いた序章と終章を読んでいただければ、この時代の日本に生きている私たちの問題意識を共有していただけるかなと思います。
特に終章では、今後深めていこうと考えているテーマをいくつか紹介する形で、私自身の経済成長と幸せの関係についての現在の問題意識を共有しています。
・GDP成長至上主義からの脱却を促進する
・レジリアンス(しなやかな強さ)
・消費社会への心理学的アプローチ
・個人や組織、地域の移行のサポート
・日本や東洋の知恵の世界的な活用・対話というアプローチ
などです。
幸せ研をはじめ、ここ数年のさまざまな(一見ばらばらに見えるかもしれない)取り組みが、なるほど、こういう問題意識でつながっているのだな、と思っていただけるのではないかと思います。
今後も力を入れて勉強し、実践し、伝えていきたいと思っています。その最初の「ガイドブック」として、ぜひご一読いただけたらうれしいです。
『GDP追求型成長から幸せ創造へ』
アラン・アトキソン・枝廣 淳子(著) 武田ランダムハウスジャパン