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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年08月21日

温暖化をめぐって様々な事象のつながりが明白になりつつある (2012.08.21)

温暖化
 

日本では3.11後、原発事故と電力逼迫状況に「温暖化どころではない」雰囲気が色濃くなってしまっていますが、だからといって温暖化の進行が待っていてくれるわけではありません。

○2012年3月23日
世界気象機関(WMO)は、2001〜10年までの10年間の世界平均気温が1961〜90年の平均より0.46度高い14.46度と推定され、1850年以来「最も高温な10年間」だったと発表しました。

○5月16日
気象庁の国内観測地点において、観測開始以降初めて大気中の二酸化炭素濃度(月平均値)が400ppmを超えました。

○5月24日
国際エネルギー機関(IEA)は、化石燃料の燃焼に伴う世界の二酸化炭素排出量が、2011年は316億トンとなり、過去最高を記録したと発表しました。

こういったニュースと並行して、新聞の別の面ではこういったニュースも取り上げられていました。

> 北極海航路 現実味 日本から欧州まで距離3分の2に
>
> 北極海の氷が急激に減っているため、欧州との間を行き来する日本船の航路とし
> て利用される可能性が出てきたとのこと。従来ルートに比べ距離は3分の2にな
> り、航行日数の短縮や燃料代の削減が期待でき、インド洋で多発する海賊被害を
> 避けるメリットもあるとのこと。

8月上旬には国交省に「北極海航路に関する省内検討会」が設置されました。

> 北極海の海氷が減少し、北極海航路の活用の可能性が高まっています。本年3月
> にとりまとめた国土交通省海洋政策懇談会報告書においては、「フロンティアへ
> の挑戦」に関する施策として、北極海航路に関する検討を位置づけたところです。
>
> 当該報告書を踏まえ、北極海航路に関して国土交通省が取り組むべき課題及び対
> 応の方向性について、関係各局等より構成される「北極海航路に関する省内検討
> 会」を設置し、関係省庁、民間事業者、有識者等の知見を踏まえつつ検討を行う
> こととしました。

コスト削減になるだろう、活用できたらうれしい、という喜ばしいトーンですが、、、なぜ北極海の氷が減っているのか? それは何を意味するのか? を忘れてもらっては困ります。

「この夏、北極海の海氷の面積が最小記録を更新する見込み」というニュース、今朝の新聞にも載っていましたね。

こちらに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の出している海氷面積のグラフがあります。見ていただくとわかるように、2012年の減り方は「どこまで減ってしまうのだろう……?」と恐ろしいほとです。
http://www.ijis.iarc.uaf.edu/jp/seaice/extent.htm

私が温暖化による北極海の氷の減少について初めてメールニュースでお知らせしたのは、2000年3月9日 [No. 127] の「世界の氷が消える日」でした。

> 地表の氷は、地球にとっては「鏡」の役割を果たしており、太陽熱の大部分を反
> 射して、地球の温度があがらないようにしてくれています。その氷が、温暖化に
> よって縮小しつつある、ということは、ますます温暖化を加速する、という悪循
> 環に陥る危険があります。また、海抜の上昇、洪水や暴風雨の増加などを引き起
> こすのではないかと、恐れられています。

この頃レスター・ブラウン氏は、「温暖化で北極海の氷が溶け出すと、北極海航路が拓けると喜ぶ人たちが出てくるだろう。南回りより安くて便利だからと、北極海航路が使われるようになれば、残っている氷もあっという間に消えてしまうだろう」と言っていました。。。12年まえの予言?が現実のものになりつつあるのかと思うとぞっとします。

「短期的なメリットを求めることが、長期的な破滅を呼ぶ」一例になってしまうのでしょうか。

「短期的なメリットを求めることが、長期的な破滅を呼ぶ」悪循環は、世界のあちこちで見られます。特に、温暖化によってもたらされた事態に短期的に対応することが、中長期的に温暖化を悪化させ、ますます自分たちの首を絞める……、という悪循環です。

昨日、ナショナルジオグラフィックからのニュースに「アメリカ、猛暑と干ばつで原発停止」という記事がありました。

ご存じのように、アメリカはこの夏、記録的な猛暑と干ばつに襲われているのですが、そのため、発電所に深刻な影響が出ているとのこと。

コネティカット州のミルストン原子力発電所では、猛暑によって冷却水の水源であるロングアイランド湾の水温が上昇して水温規制値を超えてしまい、原子炉1基の停止を余儀なくされたそうです。

また干ばつによって、水力発電も影響を受けます。「カリフォルニア州の水力発電所では、昨冬の干ばつの影響で、この夏の電力生産量が例年に比べて1137メガワット減少すると予測されている」とのこと。ここの水力発電の源となるのは、シエラネバダ山脈の積雪ですが、春の段階で例年の50%しかない場所もあったとのこと。

こうして、原発や水力発電の稼働率が下がる一方、電力需要が変わらなければ、そのギャップを埋めるためには、火力発電が多く使われるようになります(もちろん自然エネルギーで代替するのが望ましいのですが、すぐに大量に普及することは難しいでしょう)。

こちらにある各国の電源構成をみると、米国はもともと火力発電が7割です。
http://ishes.org/es/energy/2012/eng_id000495.html

シェールガスのおかげで今後はガスシフトが進んでいくと思われますが、現状ではその多くが石炭火力発電です。原発や水力の代わりに、こういった火力発電が増えると……ますますCO2が排出されて、温暖化を悪化させ、この夏米国を襲っているような干ばつや猛暑、水温上昇が起こる可能性も高まるでしょう。

そんな気が滅入るニュースの中で、希望が持てるニュースはこちら。

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日本の7月の電力需要実績(速報、10社合計)によると、家庭向けの需要は前年同月比12.4%減だった。7月としては1972年に電力10社体制になって以来最大の減少率で、初めて2ケタのマイナス。全体の需要も6.3%減時で、2カ月連続のマイナスだった。

===

検針期間中の気温が昨年より低く冷房需要が減少したほか、節電の浸透が需要を押し下げた、とのこと。

「使いたい放題使って、何で発電するかに悩む」のではなく、「できるだけ、安全安心に(現在だけでなく、温暖化も含め未来世代にとっても)発電できる範囲で、使う」ように、発想自体を切り替えていくべきだし、それが可能だ、という世界へのお手本ではないかと思います。

ところで、「温暖化どころではない」という風潮に少しでも「温暖化に取り組むことも重要」ということを伝えたいと、JFSにコーナーを設けています。

CO2/GHG排出削減に意欲的な目標を掲げて取り組んでいる自治体
http://www.japanfs.org/ja/toprunner_japan.html
http://www.japanfs.org/ja/toprunner_overseas.html

<国内自治体編>と<海外自治体編>があります。同じ情報を英語で世界にも発信しています。

「われこそは!」という自治体がありましたら、ぜひ自薦・他薦問わず情報をお寄せ下さい。

自治体といえば、私も委員を務めている「環境モデル都市」もあります。
http://ecomodelproject.go.jp/

「低炭素社会」と言われても、イメージが湧かない……!そんな声に応え、目指す社会の姿を具体的に分かりやすく示すのが、「環境モデル都市」です。高い目標を掲げて先駆的な取組にチャレンジする都市を国が選定し、その実現を支援しています。現在、13都市が選定されています。

北九州市、京都市、堺市、横浜市、飯田市、帯広市、富山市、豊田市、下川町、水俣市、宮古島市、檮原町、千代田区

このたび、この13都市とともに日本と世界の自治体をひっぱってもらいたいと、環境モデル都市を追加選定することになりました。

環境モデル都市及び環境未来都市の追加選定について
http://futurecity.rro.go.jp/boshu2nd/kouhyo.pdf

自治体関係者の方、ぜひチャレンジ下さい!

短期的のみならず、中長期的な低炭素社会を構築しようと思ったら、石油や石炭にも頼らず、地域の資源を活かし、人々が幸せに暮らせる地域になっていくのだと思います。たとえ、「温暖化対策どころじゃない」時期だと思っても、このテーマ自体は自治体が生き残りのために乗り越えるべき課題ですものね。

 

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