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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2012年09月19日

第32回基本問題委員会の発言と、新エネルギー環境戦略のゆくえ (2012.09.19)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

昨夜、第32回基本問題委員会が開催されました。エネルギー環境会議が決定した「革新的エネルギー環境戦略」について、国家戦略室から説明がありました。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/32th/32-1-1.pdf

その後、50音順をさかのぼる形で、順番に意見を言うよう、委員長が指示されました。こちらに、委員から提出のあった資料がありますが、経済界を代表する委員を中心に、「2030年代に原発ゼロ」というエネルギー環境戦略について、強い反対意見が表明されました。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/32th.htm

私はあ行なので、かなり終わりに近くなってからですが、以下発言しました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ありがとうございます。大きく3点申し上げたいと思います。

最初の点は、もともとこの私たちの議論がどこからスタートしたかと言うと、3.11の福島第一の事故からでした。今なお避難している方々、そして今後も長期的に自分の土地に帰れない方々がいる。そういった背景でこの議論がスタートしたということです。

これまで私たち国民は、あまりエネルギーのことを考えたりしてこなかった。それを多くの人は反省して、「任せて文句を言う」スタンスから、少なくとも引き受けて「ワガコト化」できるところからして考えていこう、と変わってきていると思います。

そのように考えている中で、これまではコストとか電気料金を非常に重要だと思っていたけれど、やはりそれだけではなくて、一見、目には見えない安全性であるとか、未来世代への責任であるとか、それもやはり同じぐらい、もしくは短期的なコストよりもそれのほうが大事ではないか、と思うようになった人が多いと私は実感しています。

安全性というのは事故の話だけではなくて、核廃棄物の処理の方法も最終処分地も決まっていない現状でそれを増やし続けることは、未来世代への責任を果たしていないのではないか、という議論も多々起こっています。

3.11は人災だったともいわれます。今、金本先生は「もう起こらない」とおっしゃいましたが、技術的・物理的な対応は確かにされていると思うのですが、私は、3.11のようなことが起こらないと信頼できている国民は少ないのではないかと思っています。

つまり、消防車を何台置きましたとか、電源車を置きますという物理的な対応は確かに進んでいるように見えますが、人的な対応、組織的な対応、それから空気を読むとか、安全神話とか、そういった文化もしくは風土的な対応というのが、きちんと取られているようにはとても思えません。

そういった意味で言うと、「30年代にゼロ」という、「代」が付いたということにいろんな評価はありますが、少なくともベクトルとして「ゼロに向かう」ということを明示してくださったことは、非常に高く評価している人々が多くいます。

先ほど、崎田委員は「ゼロがあるのは違和感がある」とおっしゃいましたが、これだけの国民的議論をして、ゼロがなかったら、その違和感のほうがずっと大きかったであろうと思います。「やっと伝わった」「政府が自分たちの不安なり思いをわかってくれて、これから一緒に進んでいける」と多くの人が思っていると思っています。

確かに、エネルギーの選択肢が多様であることは大事だと、総論としては私たちも思っていますが、しかしそれは、「不安があまりにも大きくない選択肢であったら」ということだと思います。とにかく選択肢が多ければいいんだという話ではないと思っています。

ゼロになったら困るという懸念を、たくさんの方が表明されていますが、それであったら、たとえば安全性への不信であるとか、核廃棄物への不安であるとか、ここを対処しないで、「なくなったら困る」という意見では、なかなか今の国民の不安には応えられません。

規制庁ができればすべて解決できるかのような言い方も、とてもではないけど、そのような信頼は、国民の間では回復されていない。3.11がなかったかのような議論をもう一度されているのはどうかな、というふうに私には聞こえました。

報道によると、本日委員長が反対の発言をされるとか、自民党総裁候補も全員がゼロ反対であるとか、国民の多くは、この夏の議論、私たちがいろいろ考えて、1つの方向性が見えたのに、またそれが裏切られるのかと、不安を持って固唾をのんでいるということを、まずお伝えしたいと思います。

2つ目に、この基本問題委員会の役割は、エネ環会議に対する選択肢案を作るということだったと思います。それをもってエネ環会議が選択肢を作り、国民的議論に付し、最終的に反映する形で決定をされたということです。

今回このように決定を報告していただいて、私たちの反応を聞いてくださるのはありがたいですが、基本問題委員会としては、その決定に基づいてエネルギー基本計画を作るというのが、私たちの役割ではないかと思っています。

何人もがおっしゃっているように、全員が満足する――それは委員にしろ、国民にしろ、全員を満足させるものはもちろん出ないわけで、今の決定を元に--もともとエネルギー基本計画はこの夏までに作るということになっていたと思いますが--、この後、いつまでにどのように策定していくかということを、これは事務局への質問かもわかりませんが、確認させてください。

不断の検証はもちろん大事で、国民との対話、政策への反映、情報提供をしていっていただきたいと思いますが、すべて完成してから、「じゃあ始めましょう」ということは、やはりタイミング的にも遅くなってしまいます。

たとえば国策を変更すれば、たとえば青森であるとか、立地地域への対策が必要になります。私も立地地域に何カ所か行って話を聞かせていただいていますが、稼働を続けること自体が目的ではなくて、国策に協力してきたのに急にハシゴを外されるということに対する不信感が大きいと思っています。ですから、たとえば産炭地域であるとかダム事業を廃止した時の地域振興など、そういったことをきちんとこれから、前もって出していく必要があると思っています。

最後の点は、ごく短く話をしますが、今、「スイーツ男子」とか「弁当男子」とかと並んで、「節約男子」というのがはやっているというのを、皆さん、ご存じでしょうか。この間、若者向けの世論調査を見ていましたら、気前のいい人よりも、節約がちゃんとできる人のほうが人気が高いという結果でした。

何を申し上げたいかと言うと、2030年代の政策を作るとしたら、その時代に社会の主流になっている人たちに、やはり考えてほしい、ということです。そういった節約男子とか聞くと、覇気がないとか情けないとか、思われるかもしれませんが、「右肩上り」を知らない人たちが、これから社会の主流になってきます。

2030年でしたら18年後でしたが、2030年代となると28年後。そのところに社会の主流の人たちに、どういう社会にしたいか、どういう社会に生きていきたいかということをぜひ考えていただきたい。この基本問題委員会は、そういう構成になっていませんが、そういったことも考えて議論を続けてきたと思っています。

以上です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

全員の委員が発言したのち、三村委員長もご自分のご意見を発言されました。また、

<原発に依存しない社会の実現に向けた3つの原則
>(1) 40年運転制限制を厳格に適用する

の「40年運転制限制」について事務局に確認されました。

これは「40年廃炉」のことだと思っていた人が多いと思います。私もそう思っていましたが、事務局の説明では「延長ができるということ」とのこと。。。

動画映像がありますので、よかったらご確認下さい。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/index.htm

今朝の報道では、1年をかけて委員会で議論して選択肢案を作り、多くの国民が議論してやっとのことでたどり着いたこの「原発ゼロ」の新戦略は、閣議決定されないことになったとのこと。単なる参考文書の扱いになってしまう?

本当に安心して暮らせる、原発に頼らなくてもよい社会づくりは、いばらのでこぼこ道のようですね。でもあきらめる必要はありません。行きつ戻りつのように見えるかもしれませんが、少しずつ確実に進んでいきましょう。

 

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