少し間があいてしまいました。レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からの新しいプレスリリースを実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。海に囲まれた日本でも大いに期待されている洋上風力、世界でも急成長中!です。(グラフは原文をご覧下さい)
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アースポリシー研究所リリース
急成長する洋上風力発電
J・マシュー・ローニー
http://www.earth-policy.org/plan_b_updates/2012/update106
風力発電は、水力発電を除けば再生可能エネルギーによる発電の先頭に立っており、世界全体の累計設備容量は2012年初めに23万8,000メガワットに達した。これまでこうした風力発電はほとんどが陸上で開発されており、洋上風力発電に関しては、2012年半ばの時点で世界全体でも4,600メガワットの発電施設が稼働しているに過ぎない。
とはいえ洋上風力発電容量は急速に拡大しつつあり、2006年以降6倍近くに成長している。現在12カ国が洋上で風力タービンを稼働させているが、今後さらに多くの国が洋上を吹く強い風の利用に加わろうとしている。
【グラフ】洋上風力発電の世界累計設備容量1991-2012年*
【グラフ縦軸】メガワット
出典:世界風力エネルギー協会、4Cオフショア、欧州風力エネルギー協会のデータよりアースポリシー研究所作成
洋上風力発電施設の90%以上は欧州にある。デンマークは1991年に、世界初の洋上風力発電施設を建設した。5メガワットのヴィネビュ洋上風力発電所だ。洋上風力発電は、スウェーデンとオランダが加わったこともあり、1990年代を通じて断続的に拡大した。
デンマークでは2001年から2003年の間に、洋上発電容量は400メガワット増えている。しかしそれ以降、ほかにも数カ国が参入したにもかかわらず、市場で圧倒的な優位に立ってきたのは英国である。2012年上半期、欧州における洋上風力発電の新規設備容量は520メガワットだったが、そのおよそ80%は英国のアイリッシュ海と北海に設置されたものである。残りはベルギー、ドイツ、デンマークが新設した分である。(データ参照)
英国の洋上風力発電容量は、2012年6月末までに、世界の総発電容量の半分を超える2,500メガワットに達した。しかも同国は、稼働中の施設としては世界最大のグレーター・ガバード洋上風力発電プロジェクトを北海で展開中である。
2012年半ばまでに総容量504メガワットのうち11メガワットを残して設置が終わり、送電網に接続された。また世界最大のロンドン・アレイ洋上風力発電所の建設も進んでおり、第1期分630メガワットの設備の1/3近くが2012年5月初めまでに完成している。第2期プロジェクトが承認されれば、発電容量は全体で1,000メガワットとなる予定である。
欧州以外で、稼働中の洋上風力発電所があるのは中国と日本のみである。中国が最初の洋上風力発電所を建設したのは2010年だが、すでに発電容量は260メガワットとなり、英国、デンマーク、ベルギーに次いで世界4位である。政府は「2020年までに洋上風力発電容量を3万メガワットに」という目標を掲げている。実現すれば、現在中国の家庭で消費される電力の約1/5が賄えることになる。
日本の洋上風力発電容量は25メガワットに過ぎないが、福島県沖では16メガワットの浮体式洋上風力発電基地の実証試験が進められている。東アジアではほかに韓国も、いくつかの大規模な洋上風力発電計画を打ち出しており、2019年までに発電容量2,500メガワットを目指している。
米国は陸上風力発電では中国に次いで世界2位だが、洋上にはまだひとつも風力タービンがない。マサチューセッツ州は10年以上をかけて許可を取得し、プロジェクト反対派による訴訟を切り抜けてきた。
2012年8月の時点では、米国連邦航空局(FAA)は「風力タービンが航空機のレーダー・システムに悪影響を与える可能性がないかどうか」を見極めるべく、同州のケープウィンド洋上風力発電プロジェクトを再検討していた(FAAはブッシュ・オバマ両政権下で数回に渡り同プロジェクトの安全性を認めているが、結局、こうした判決には反対派の不服申し立てが行われている)。それでも開発業者は依然として2013年の着工をめざしている。
米国の東海岸沖では、他にも2つの提案プロジェクトが2013年に着工予定で、どちらも米国初の洋上風力発電施設になろうと名のりを上げている。2012年7月には洋上風力発電の開発業者フィシャーメンズ・エナジー社に対し、ニュージャージー州アトランティック・シティー沖における25メガワットの風力発電所の着工に必要となる最終的な許可が下りた。
そしてロードアイランド州の海域では、ディープウォーター・ウィンド社が30メガワットの風力発電所を着工予定で、これが完成すれば近隣のブロック島の電力需要の大半を満たすことになるだろう。ディープウォーター・ウィンド社は他にも1,000メガワットの洋上風力複合施設を3カ所で提案しており、実現すればニューイングランドと中部大西洋地域に電力を供給する予定である。ただし、これらはまだ計画の初期段階にある。
米国でこれまで洋上風力発電が進まなかった理由の一つに、海岸から見えるタービンが美観を損ねるのではないかという懸念がある。連邦海洋エネルギー管理局は、「スタートからスマートに」というリース・プログラムによって、そういった議論を回避したいと考えている。
2012年後半に風力発電開発のために競売にかけられることになっているおよそ6,200平方キロメートルの海域は、東海岸沖の連邦大陸棚に位置し、岸からは16キロメートル以上離れているのである。また、同プログラムは渡り鳥や海洋生物、遺跡への影響を最小限にとどめるために慎重に用地を選定することによって、風力発電に関するほかの一般的な懸念にも進んで対処しようとしている。
岸から遠く離れた洋上の風力発電開発を促進するプロジェクトの一つが、大西洋沖風力送電網計画(AtlanticWind Connection)である。これは、きわめて効率的な高圧直流の海底ケーブルによる沖合の「基幹送電網」の提案プロジェクトで、グーグルや丸紅などの企業が出資している。
この事業は、ニューヨーク州からバージニア州までおよそ500キロメートルに及び、洋上風力発電により得られる約7,000メガワットの電力を中部大西洋地域の人口密集地に送ることができる。2012年の半ばに、このプロジェクトは連邦政府から送電網敷設権を得るための環境調査の段階に入った。建設完了までにはおよそ10年の年月を要するだろう。
太平洋岸が急に深くなっているのと対照的に、東海岸には浅い大陸棚が広がっており、洋上風力発電の開発にはことのほか都合がよい。米国立再生可能エネルギー研究所は、中部大西洋岸の浅瀬に設置される風力タービンの発電容量は、合わせて30万メガワット近くになる可能性があると見積もっている。これだけあれば米国で9,000万世帯に電力を供給するのに十分である。さらに深い海域も含めた大西洋岸全域では、風力資源は100万メガワット分あると見られている。
2010年に二酸化炭素排出量の多かった上位10カ国のうち9カ国(イラン以外)には、それぞれ現在の電力需要をすべて満たしてあまりある洋上風力エネルギーが潜在している。例えば、ロシアの洋上風力資源は、現在の同国の電力需要の23倍に相当する。カナダは現在の電力需要の36倍も満たせるだけの洋上風力資源を有する。
【グラフ】CO2排出量上位国における年間の洋上風力エネルギー賦存量と現在の発電量
【グラフ縦軸】テラワット/時
出典:Lu, McElroy, Kiviluoma (米国科学アカデミー紀要2009年)、エネルギー情報局の資料を基にアースポリシー研究所で編集
【棒グラフ表示】洋上風力エネルギー賦存量 現在の発電量
【グラフ横軸】中国 米国 インド ロシア 日本 ドイツ 韓国 カナダ 英国
稼働中の洋上風力発電施設を持つ12カ国に加えて、オーストラリア、ブラジル、インドなどおよそ20カ国に、少なくとも計画段階にある洋上風力発電プロジェクトがある。しかし、洋上風力発電は当面の間、現在リードしている国々が依然中心となって展開されると思われる。
国際エネルギー機関(IEA)は、たとえ海底送電ケーブルや建設用の船の供給不足によって開発が多少遅れたとしても、洋上風力発電は2017年までに6倍近く成長して2万6,000メガワットになると予測している。この新規設置分のうち、70%以上を中国、英国、ドイツが占めると見られる。洋上風力発電は、関心が高まり技術が進化するにつれて、世界の再生可能なエネルギーミックスの中で重要な存在になりつつあるようだ。
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さらに詳しいデータ・情報についてはwww.earthpolicy.orgを参照のこと。
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Washington, DC 20036
(翻訳:野村、川嶋)
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洋上風力発電は、陸上に比べ、風が安定して吹いている、数多く設置できる可能性がある、近隣住民への影響等の問題がない等、世界でも大いに期待されています。
これまでの洋上風力は、遠浅の海に、海底に土台を設置する着床式が主流です。日本の海は遠浅のところは少なく、海が深くなってしまうため、着床式では難しいところが多く、浮体式(土台そのものを海に浮かべる)が実用化されれば、膨大な海の風力を利用できるようになると期待されています。
浮体式は着床式には求められない高度な技術が必要とされています。日本での浮体式洋上風力発電技術の開発は、日本のみならず、世界へも提供できる技術になるでしょう。今後の展開に注目!です。